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映画『赤い玉、』 公開記念 高橋伴明(本作監督)インタビュー

2015年9月12日よりテアトル新宿他にて全国ロードショー

1972年に『婦女暴行脱走犯』で監督デビュー以降、若松プロで数々の傑作ピンク映画を制作してきた高橋伴明監督が『愛の新世界』以来、20年振りにエロスに挑んだ意欲作『赤い玉、』がこの度公開となった。主演には旧知の仲で知られる奥田瑛二を迎え、人生の半ばが過ぎた映画監督であり教授の時田修次を軸に「老い」と「性」に苛まれ葛藤する男の人生が描かれる。本作の公開を記念してLOADSHOWでは高橋伴明監督にインタビューを実施。「虚構と現実が入り混じる混沌のなかにある、嘘のような現実を描いた」と語る高橋監督から本作の魅力と若い作り手に向けたメッセージをお聞きした。

「学生が作る映画を見てきて、性表現から逃げてるなという印象がずっとあった」(高橋)

今作『赤い玉、』は高橋監督が学科長でもあられる京都造形芸術大学 映画学部の授業の一環で制作されたとお聞きしました。詳しい制作の経緯を教えてください。
高橋伴明(以下、高橋):僕が教えている京都造形芸術大学 映画学科ではプロと学生が一緒になって映画を作る「北白川派」という授業を続けてきたんです。ところが、予算が枯れてきてしまいある時期、中断せざるをえなくなってしまったんです。するとある学生から「北白川派プロジェクトがあるから、この学校を選んだのに…」と言われてしまい「確かになぁ」と反省したんです。それで、ちょっとですけど、自分の老後に向けて蓄えておいた金を出せば、事業化はできないですけど、北白川派に代わる映画制作をすることができるんじゃないかと考えたんです。それがこの映画の出発ですね。
それでは『赤い玉、』の予算は高橋監督の私財からまかなわれているのでしょうか?
高橋:そうですね、もちろん全てではないですけど。
学生とプロが合同で映画を制作する「北白川派」では、これまでどのような作品が作られたのですか?
高橋: 2008年に美術監督の木村威夫さんの呼びかけで『黄金花』という北白川派 初作品が生まれ、その後は自分が監督した『MADE IN JAPANこらッ!』(09年)、山本起也監督作品『カミハテ商店』(10年)、林海象監督作品『彌勒 MIROKU』(13年)、福岡芳穂監督作品『正しく生きる』(15年)と続いていきました。
奥田瑛二さんを主演に迎え、「老い」と「性」がテーマにある作品ですが、内容自体はどのように決めていかれたんですか?
高橋:学生が作る映画を見てきて、性表現から逃げてるなという印象がずっとあったんです。なので、そんな学生に向け内容を考えていったという側面が、まずあります。それと「老い」と「性」が自分自身の最近のテーマでもあったので『赤い玉、』の話を思いついたんです。それでいざ台本を書き進めていったら自然と主人公は奥田だなって考えるようになって。でまあ、やんわりオファーを持ちかけたら奥田も映画界のエロスが後退している、という意識を持っていて、「僕たちで提示しないといけない」と賛同してくれたんです。

「男を描こうとすればするほど、必然的にみっともなくなってしまう」(高橋)

奥田さんと高橋監督は旧知の仲だとお聞きしました。現場での奥田さんの印象はいかがでしたか?
高橋:彼は現場では、これ以上曝けだせませんよという全開なところからスタートしてくれるので、周りにとてもいい刺激を与えていましたよね。表現者としての振る舞いを見せつけてくれたと思います。
安藤サクラさんと結婚した柄本佑さんと奥田さんの親子共演のシーンは、なかなか緊張感があるように感じました。
高橋:(柄本)佑は多少緊張してたかなぁ(笑)。奥田も想うことはあったと思うけど外には出してなかったね。ただ、佑の役が挑発的な役どころだから、本番は見えない火花が飛び交っていましたよ(笑)。
『赤い玉、』では主人公・時田修次の前に愛人でもある「唯」と時田の人生を狂わせる女子高生「律子」と2人の女性が現れますが、それぞれどのようなキャラクターをイメージされていたのでしょうか?
高橋:唯に関しては、ある種の男の理想として描きました。酒はちゃんと飲めるし、味も知ってる、料理も旨い。かといって、男を縛ろうともしない。理想そのものですよね(笑)。一方、律子は時田にはない若さや未来の象徴でもある。それだから、時田は律子のような初々しい女子高生に執着して、歪な妄想などしてしまうんでしょうね(笑)。
「みだらに狂ってこそ、映画」というコピーの通り、不二子さんや村上由規乃さんなど女優陣も奥田さんに応えるような堂々とした演技で驚きました。
高橋:奥田自身が何もかも晒しだして現場にいてくれたんで、女優陣もこの現場に関わる覚悟がついたんじゃないかな。
高橋監督は過去に多くのピンク映画も監督されていますが、濡れ場の演出をする上で、女優さんなどに対して工夫されていることはありますか?
高橋:一応ね、惚れようとします。今回の現場でも、自分自身のタイプなどは抜きに惚れました。なので、その女優さんの魅力を見つけて好きになることですかね。
濡れ場などで男の俳優には何を求めますか?
高橋:男はオスであってほしいということです。
時田演じる奥田さんは、大人っぽい渋さと反面、情けなさもありますよね。そういった「情けなさ」というのも男を描く上でキーワードにありますか?
高橋:僕の中ではあります。オスってみっともないものなんですよね。つまり、僕が男を描こうとすればするほど、必然的にみっともなくなってしまう(笑)。今までスーパーマンみたいなかっこいい男を描いてきたこともないですしね。

映画に制限はない。もっと自由なもの

性描写に対して学生が逃げ腰だ、ということですが最近の学生には多い傾向なのでしょうか? 
高橋:学生の映画を見ているとシナリオにそういうシーンがあるのに、サラッとすませちゃうんですよね。性表現って人間を描く上で大きな要素のひとつであると思うんですよ。だから、それを避けて通ると人間を描く姿勢みたいなものをいつか忘れちゃうような気がするんですよね。
なるほど。『赤い玉、』は若いフィルムメイカーに気づきを与えるための一作でもあったということですね。
高橋:結局、性的なことだけではなく「映画はもっと自由なんだ」ということを伝えたいという想いが強くありました。学生を見ていると、映画作りにおいて勝手に自主規制しているように感じるんです。ただ漠然とスタイリッシュなものを作ろうとしている。そういった雰囲気に嗜好が偏っていて、人間を描くという視点が足りていないように感じるんです。
主人公の時田は現実と激しい妄想が混同しながらも、映画の中では嘘のような本当の瞬間が垣間見えるようでした。
高橋:映画という仕事は「嘘つき商売」だと思っているので、台詞にも出てきますが、嘘をどうリアルに見せるかってことは、どの作品でも共通して自分の表現にあると思います。また、今回は特に虚と実が入り混じる混乱を強く描こうとしました。
最後の場面では、嘘と現実が美しい放物線を描いているようで感動しました。
高橋:最後のシーンは実は若松孝二さんへの想いもあったりしたんですよ。

「終わっていくもの」への郷愁の眼差し

タバコやお酒がおおく映され、時田や唯、学生たちそれぞれの振る舞いがとても印象に残っているのですが、監督のこだわりが反映されているのでしょうか?
高橋:そうですね、お酒は全部僕の好きなものを集めたんですよね。時田のウイスキーの飲み方も自分の癖のまま(笑)。
その反面お酒やタバコといった嗜好品は現実で、だんだんと衰退しているように感じますが、監督自身の郷愁の眼差しもあったのでしょうか?
高橋:そうですね。タバコやお酒も含め今回は「終わっていくもの」をとても意識しました。桜が散って花びらが川に流れるカットや、ゴミを捨てるカットなど。普段はゴミ箱のアップなんて撮らないですから(笑)。そして、ある意味それは僕もその一つなのかもしれない。
「赤い玉」というのは男子の打ち止めを意味しますが、それは高橋監督自身の映画作りにおける打ち止めという意識があったのでしょうか?
高橋:実はね、そんな気持ちもちょっとあったんです。でも、『赤い玉、』を撮って、逆に活力が湧いてきたんですよね。前向きになったというか、まだまだ命ある限り映画を撮ってやろうかしら、なんて(笑)。
映画のタイトルが句点で終わっているのも、次作を彷彿させます。
高橋:あの句点に関しては様々な意味を込めて置いたものなので、色々な考え方を持って見てもらえると嬉しいです。
『赤い玉、』の公開と次回作を楽しみにしています。本日はありがとうございました。
高橋伴明監督作品『赤い玉、』
2015年9月12日よりテアトル新宿他にて全国ロードショー
■公式サイト
http://akaitama.com/
■公式Facebook
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■公式Twitter
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取材・構成・写真:島村和秀
『赤い玉、』

監督・脚本:高橋伴明

製作:高橋惠子、小林良二、塩月隆史/プロデューサー:大日方教史/音楽:安川午朗/撮影監督:小川真司/編集:鈴木歓/宣伝・配給:渋谷プロダクション/制作プロダクション:北白川派/製作:「赤い玉、」製作委員会(ブロウアップ・渋谷プロダクション・ラフター)

出演:奥田瑛二、不二子、村上由規乃、花岡翔太、土居志央梨、柄本佑、高橋惠子

ストーリー:大学で映画撮影の教鞭をとりながら、自らは新作映画の撮影に入れないでいる映画監督・時田修次。映画とは自らの経験が投影される、そう考えている時田は、まるで自分が映画の登場人物ででもあるかのように人生を流浪しているようにも見える。新作の脚本にとりかかる時田の私生活には、30代の、理解のある美しい女・唯がいるが、その現実から虚構(映画)の世界に誘うように時田の前に現れる一人の女子高生・律子。世界の境界さえも喪失していくように、いつしか律子の存在が時田自身の人生を狂わせていく……。
  • 『高橋伴明(たかはし・ばんめい)』
    1972年、『婦女暴行脱走犯』で監督デビュー。以後、若松プロに参加。60数本のピンク映画を監督。1982年『TATTOO〈刺青〉あり』でヨコハマ映画祭監督賞受賞。以来、脚本・監督・演出・プロデュースと幅広く活躍。1994年『愛の新世界』でおおさか映画祭監督賞を受賞、ロッテルダム映画祭に出品。『BOX 袴田事件』(10年)でイラン・ファジル国際映画祭監督賞受賞。近作に『光の雨』(01年)、『火花』(04年)、『禅ZEN』、『丘を越えて』(08年)、『道-白磁の人-』がある。2012年度より京都造形芸術大学教授・映画学科長に就任。