LOAD SHOW

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染谷将太 × 菊地健雄

細田守監督最新作『バケモノの子』大ヒット記念企画対談

全国の劇場にて上映中

染谷将太が声優として出演しているアニメーション映画、『バケモノの子』(2015/監督:細田守)が、大ヒット上映中だ。若手実力派としてこれまで数々の映画に出演し、『ヒミズ』(2012/監督:園子温)で、第68回ヴェネチア国際映画祭 / マルチェロ・マストロヤンニ賞を受賞。2015年には、第14回ニューヨーク・アジア映画祭で、これからの活躍を期待する若手俳優に贈られる「ライジング・スター賞」を受賞した。今後も数多くの出演作公開を控えており、また自身の監督第二作『清澄(仮)』の上映・配信も年内に予定している。今回LOAD SHOWでは、細田守監督最新作『バケモノの子』の大ヒットを記念して、染谷が幼少の頃から公私ともに付き合いが深く、長編デビュー作『ディアーディアー』(染谷も出演)の公開を控える映画監督・菊地健雄とのサプライズ対談を企画! 知られざるエピソード満載でお送りする必見の内容です!

『地獄小僧』(2004)の現場にて
「こういうふうに撮ると、首がなくなったように見えるんだよ」(菊地)
「すげー!」(染谷)

染谷:『バケモノの子』大ヒット記念で、健雄さんと対談って謎過ぎますよね?(笑)。
菊地:謎だよねぇ(笑)。
(笑)。いや、これはですね、『バケモノの子』の主人公である九太は、登場時に9歳なわけでして、染谷さんが演じる青年期までの長い時間を熊徹とともに過ごすわけです。染谷さんと健雄さんの出会いも、染谷さんがそのくらいの歳の頃にまで遡るわけで、まさに打って付けのゲストですよ!
一同:(笑)。
染谷:出会いを遡ればですね、健雄さんは映画美学校という映画学校を卒業されているんですが、その美学校が……、あれはどういう制作体制でしたっけ?
菊地:ユーロスペースと美学校が、『映画番長』という、美学校の卒業生だったり、講師陣を監督に起用したシリーズを制作したんです。例えばそこで作られた映画で、高橋洋さんの『ソドムの市』(2004)があったりしますが、そのときにチーフ助監督だった安里麻里が監督に起用された作品が、日野日出志のザ・ホラー怪奇劇場『地獄小僧』(2004)という作品で、ソメショウとはその現場で出会ったんです。
染谷:『地獄小僧』以外にも何編か同じシリーズの作品があって、熊切(和嘉)さんも監督をされていたりとか。(※『爛れた家「蔵六の奇病」より』)
菊地:そうだね、僕は『地獄小僧』の後は、熊切組についたから。
染谷:まあ、その『地獄小僧』の現場で出会って、僕は当時まだ小さいながらにも分かったんですけど、とてもタイトな現場でしたから、凄くバタバタしていたんですよ。
菊地:僕もまだ助監督になって半年くらいだったかな。そう、タイトル通り地獄のような現場だった(笑)。
染谷:(笑)。そんな現場の中で、テンパっている健雄さんのことが何故かとても気になっていたんです。僕はまだ子役でしたから、あまり遅くまでの撮影はできなくて、現場が押していると「今、何待ちですか?」みたいな確認をすることになるんですけど、そしたら健雄さんが、「ちょっと、分からないっす!」みたいな(笑)。
菊地:ダメダメな感じね(笑)。公開が2004年だから、撮影が2003年かな。事故で最愛の息子をなくした母親が、その子のフランケンシュタイン化を図るというかね、蘇生を企てて……、というお話なんですけど。
染谷:撮影は無事終わって、その後の再会は、「桃まつり presents 真夜中の宴」の一編、『たんぽぽ』(2008/監督:深雪)に参加したときにユーロスペースのオフィスで会いましたよね。
菊地:うん、たまたまね。
その頃でいうと、健雄さんは、染谷さん出演の『14歳』(2007/監督:廣末哲万)や『涙壷』(2008/監督:瀬々敬久)の現場には関わっていなかった?
菊地:僕は関わっていないんですけど、ただ、僕の周りには関わっているスタッフがたくさんいましたから、ソメショウの話は聞いていましたよね。話を戻すと、僕も『地獄小僧』の現場で面白いやつだなと思っていて、普通はね、子役でホラー映画をやるってなると、ビビってしまったりするんです。結構過激な描写もあるわけで、例えば首が飛んだりね。マネージャーさんに「これ、やっちゃっていいですか?」と質問したのをよく覚えてます(笑)。低予算だし、CGでどうこうはできないから、撮影はアナログにやりますからね。ソメショウはそれを嬉々として演じていたんです。「こういうふうに撮ると、首がなくなったように見えるんだよ」とか言うと、「すげー!」って食いついてくる。
染谷さんはその頃何歳ですか?
染谷:10歳くらいですかね。
菊地:血糊とかいっぱい使いますからね、同じ現場で同世代くらいの子が、ビビってしまってもうできませんというのはあったし、感覚としてはそれが当たり前といえば当たり前なんですけど、ソメショウだけはひたすら喜んでやり続けていました。
染谷:好きだったんです、そういう特殊撮影とか。
菊地:初号試写も見にきてたよね。そういう映画だと、撮影はOKしても、倫理的に作品は見せないという親御さんが多かったりもするんだけど、ソメショウは見にきていて、「どうだった?」って聞くと、目をキラキラさせながら、「いやー、面白かったです!」って(笑)。
染谷:(笑)。
菊地:印象に残りますよね。色んな子役の子たちと会うわけですけど、明らかにこいつは毛色が違うなと。
染谷:毛色が違う(笑)。
菊地:毛色というかね、なんというのかな(笑)。そういったことを純粋に楽しめるやつなんだなと。

久しぶりの再会、いきなり主演の顔に

『たんぽぽ』は、現場は一緒ではなかったんですよね?
染谷:現場は一緒じゃないんですけど、衣装合わせでユーロスペースのオフィスにに行ったら、健雄さんが別組の準備で偶然きてたんです。
菊地:そうそう。
染谷:それで、「わ~久しぶりです」みたいな話になったんです。僕ははっきり顔を覚えてますけど、健雄さんにしてみたら、子供の頃からで4年も経ってるわけですから、見た目も大分変わっていたと思うんですけど。その後またしばらく間があいて、今度は『パンドラの匣』(2009/監督:冨永昌敬)の現場で再会しました。
菊地:僕は現場の応援で参加したんです。
染谷:『パンドラの匣』のプロデューサーが『地獄小僧』にも関わっていたので、「あの菊地健雄が来るよ」って言われて、「えっ!あの菊地健雄が来るんですか!」みたいになって(笑)。
なんなんだこの話は(笑)。
一同:(笑)。
菊地:(笑)。冨永組はスタッフ含め常連が多くて、僕は『パビリオン山椒魚』(2006)にも参加をしていて、現場に受け入れて貰える環境がありましたから、ソメショウに限らず、菊地が来るよみたいな感じになっていたんだと思うんです。
染谷:そうそう、そんな感じ。
菊地:現場には、たった3日間しかいなかったんですけどね。よく覚えているのは、『パンドラの匣』のキャラクターは、ソメショウなら「ひばり」といった具合に、劇中お互いをアダ名で呼び合うんだけど、スタッフにも同じようにアダ名が付けられていたんです。それでソメショウが僕のアダ名を付けたんだけど、何だったっけ?
染谷:肉団子(笑)。
菊地:ひどいね(笑)。
染谷:結構みんな酷かったんですよ。「替え玉」とかね(笑)。
(笑)。それは誰が始めたんですか?
染谷:はっきり分からないけど、照明部あたりから始まったんじゃないかな。みんな養生テープで名札を付けて。
菊地:役者は役者で名札が布で付いててね。
染谷:それで、健雄さんと一緒の現場は『地獄小僧』以来だったわけですが、こんな言い方をしたら失礼なんですけど、めちゃくちゃ普通にできる人になっていて(笑)。
一同:(笑)。
染谷:内心では、「めっちゃ働けるようになってる!」って(笑)。
菊地:そういうことで言えばね、お言葉を返すようですが(笑)、『地獄小僧』の頃は、本当にちんちくりんな感じで「わ~楽しい」みたいな感じで現場にきていたのが、久しぶりに会ったと思ったらいきなり主演の顔になっていたわけですよ。
染谷:お互い別々に成長を遂げていたと。
菊地:そうだね。応援で3日間しか現場にいなかったし、どちらかと言えばエキストラの方々を担当したりではあったんですけど、ソメショウに意見を聞かれる場面があったんです。「健雄さん、ここどう思います?」みたいに。それがなんというかね……。
染谷:役者みたいになったなと(笑)。
菊地:(笑)。みたいというか完全に役者だったよね。まあ、とにかく感慨深かったんです。単純に、あの少年がもうこんな青年へと成長を遂げているという驚きもあったし、とは言えまだ大人ではないその年齢で、もう「演じる」ということをかなりしっかりと考え始めているということが嬉しかったというか。現場も本当にみんなで作っていくという雰囲気で、3日間しかいなかったけど、凄く印象に残っていますね。

教え教えられる関係性

染谷さんは、『バケモノの子』では九太の青年期の声を演じてらっしゃるわけですが、熊徹と九太の関係性と、お二人の関係性はもちろん異なるものではあるにせよ、なにかこう相通ずるものを感じてしまいます。
染谷:「バケモノ」(健雄さん)と「子」みたいなことですかね?(笑)。
菊地:(笑)。
そういうことです(笑)。
染谷:その後、『パンドラ』の打ち上げで、健雄さんと物凄く話をしたんですよ。健雄さんはお酒が飲めないですし、僕も未成年だったから、朝まで素面でずっと。
菊地:二人でずっと話し込んでたよね。
染谷:それ以降はコンスタントに会うようになって、時間を見つけてはご飯を食べに行って、珈琲飲みながら朝まで喋ってましたね。時を同じくして、現場で一緒になることも多くなりました。
菊地:がっちりやったのは『嘘つきみーくんと壊れたまーちゃん』(2011/監督:瀬田なつき)だよね。
染谷:そうですね。
『みーまー』で一緒になったのは偶然ですか?
菊地:偶然は偶然なんですけどね。ただ、監督の瀬田は映画美学校で同期だし、瀬田の短編『あとのまつり』は凄いよってことでソメショウにすすめてて、やるやらない以前に瀬田作品は見ていたんだよね。
染谷:そう。凄く面白くて、だから瀬田さんとは一緒にやりたかったんですよ。
菊地:『みーまー』では僕もスピンオフ作品(『嘘つきみーくんと壊れたまーちゃん episode.0 回遊と誘拐』)を監督しましたし、僕らの関係性で言えばひとつのターニングポイントになった作品ですよね。
染谷:『みーまー』の後は、現場でいうと『恋に至る病』(2011/監督:木村承子)になるのかな。この作品に関しては、先に健雄さんが現場に入ることが決まっていて、ソメショウに合う役がありそうだみたいな話を聞いていたんです。PFFスカラシップ作品は『14歳』で経験していて好きだったし、知っている面々も多かったので、やりたいなと思いましたね。
菊地:ソメショウの周りにいる人達って本当に歳上が多いよね。
染谷:そうですね。歳上ばっかりですね。
『バケモノの子』でも、九太の周りは歳上が多いですよね。
染谷:そうなんです。熊徹に限らず、九太を助け育ててくれる大人たちが周りにいる。僕にとっての健雄さんもそういう存在ですよね。
菊地:ソメショウとは映画だけでなくて、音楽とか写真とか趣向が被るところもあって、最初はこっちから「こういうのどう?」みたいなことが多かったと思うんだけど、最近は逆に「こういうのあるよ」って教わることの方が多くなりましたね。
それはまさに、熊徹と九太の関係のようでもありますね。
染谷:そういうところはあるかも知れませんね。教え教えられる関係性。
菊地:染谷将太という人間をずっと見てきましたけど、そういった関係をたくさん持っているように思います。
なんかいい話になってきましたね(笑)。
一同:(笑)。

渋谷で朝まで珈琲を

ところで、お二人が食事に行ったりとコンスタントに会い始めた時期というのは、どんなところで何を食べたりしてたんですか?
菊地:ご飯は食べにいってましたけど、食べ物に頓着することは特になかったように思いますけどね。
染谷:『バケモノ』に繋げるということで言えば、会っていた場所は大体渋谷でしたよ。
それはいい話だ(笑)。
一同:(笑)。
染谷:朝まで珈琲飲んで、その日のうちにまたディズニーランドに行ったりもしましたね。
それは二人で?
菊地:流石に二人ではなかったですね(笑)。僕の奥さんと瀬田と一緒に。
菊地:ところで、声の出演は、細田監督の前作への出演はあるにせよ、今回どうだった?やっぱり難しかった?
染谷:難しかったですね。
菊地:もう画は繋がっていて、動いているものに対して声をあててるの?
染谷:画は動いてなかったりもするんだけど、尺は決まってるから、リップも含めてそこに合わせていかなきゃいけない。
菊地:なるほどね。同じシーンのメンバーとはやっぱり一緒に演じていくの?
染谷:細田監督の現場に関しては、基本的に揃ってやっていたし、順撮りでしたよね。それで、最終的に収録し終えたものをみんなで見て、リテイクをしていく。
菊地:それはおもに監督が指示を出していくんだろうけど、自分で見てやり直したいということはなかった?
染谷:やり直したいというのはなかったように思うけど※△%□……
とまあ、こうして朝まで珈琲を飲みながら語らっていた頃のように、二人の映画談義は続いていきました。映画『バケモノの子』は全国の劇場にて大ヒット上映中!
企画・構成・写真 :岡本英之
『バケモノの子』
(C)2015 THE BOY AND THE BEAST FILM PARTNERS
声の出演

役所広司/ 宮崎あおい 染谷将太

広瀬すず/ 山路和弘 宮野真守 山口勝平

長塚圭史 麻生久美子 黒木華 諸星すみれ 大野百花/津川雅彦

リリー・フランキー 大泉洋
監督・脚本・原作:細田守

作画監督:山下高明 西田達三

美術監督:大森崇 高松洋平 西川洋一

音楽:高木正勝

Story : この世界には、人間の世界とは別に、もう1つの世界がある。バケモノの世界だ。

人間界【渋谷】とバケモノ界【渋天街(じゅうてんがい)】。

交わるはずのない2つの世界に生きる、ひとりぼっちの少年とひとりぼっちのバケモノ。

ある日、少年はバケモノの世界に迷い込み、バケモノ・熊徹(くまてつ)の弟子となり、九太(きゅうた)という名前を授けられる。その偶然の出会いが、想像を超えた冒険の始まりだった――

公式サイト: http://www.bakemono-no-ko.jp
  • 『染谷将太(そめたに・しょうた)』
    1992年9月3日生まれ、東京都出身。9歳の時に『STACY』(01/友松直之監督)で映画デビュー。『パンドラの匣』(09/冨永昌敬監督)で長編映画初主演。以降、日本映画の新世代を代表する俳優として活躍し、2011年『嘘つきみーくんと壊れたまーちゃん』(瀬田なつき監督)で第66回毎日映画コンクールスポニチグランプリ新人賞、2012年『ヒミズ』(園子温監督)で第68回ヴェネチア国際映画祭マルチェロ・マストロヤンニ賞、『ヒミズ』と『悪の教典』(三池崇史監督)で第36回日本アカデミー賞新人俳優賞、2013年にエランドール賞新人賞を受賞、2015年に第14回ニューヨーク・アジア映画祭でライジング・スター賞を受賞、近年の主な出演作に『リアル〜完全なる首長竜の日〜』(13/黒沢清監督)、『永遠の0』(13/山崎貴監督)、『不気味なものの肌に触れる』(13/濱口竜介監督)、『WOOD JOB! 神去なあなあ日常』(14/矢口史靖監督)、『ぶどうのなみだ』(14/三島有紀子監督)、『さよなら歌舞伎町』(15/廣木隆一監督)、『寄生獣』(14/山崎貴監督)、『寄生獣 完結編』(15/山崎貴監督)。公開中作品に『ソレダケ / that's it』(15/石井岳龍監督)、『ストレイヤーズ・クロニクル』(15/瀬々敬久監督)、公開待機作品に『みんな!エスパーだよ!』(15/園子温監督)、 『先生と迷い猫』(15/深川栄洋監督)、『バクマン。』(15/大根仁監督)などがある。
  • 『菊地健雄(きくち・たけお)』
    1978年生まれ、栃木県足利市出身。映画監督。映画美学校在籍中に瀬々敬久監督に誘われ助監督となる。助監督としての参加作品は『ヘブンズ・ストーリー』(10/瀬々敬久監督)、『かぞくのくに』(12/ヤン ヨンヒ監督)、『恋に至る病』(12/木村承子監督)、『シミラー バット ディファレント』(13/染谷将太監督)、『ドライブイン蒲生』(14/たむらまさき監督)『岸辺の旅』(15/黒沢清監督)など多数。チーフ助監督を務めた『嘘つきみーくんと壊れたまーちゃん』(11/瀬田なつき監督) のスピンオフ企画『episode.0 回遊と誘拐』では監督も務めた。今年、満を持しての長編映画初監督作『ディアー ディアー』が公開予定。