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CO2東京上映展2013

上映に向けて、常本琢招(『蒼白者 A Pale Woman』)、安川有果(『Dressing UP』)、梅澤和寛(『治療休暇』)、の3監督に、CO2のこと、それぞれの作品の見どころ、上映すること、について、小雨降る市ヶ谷の町で話を聞いた。

まずはCO2での制作について、大枠を補足するような格好でお聞きをしたいのですが、CO2主催の俳優、制作、それぞれのワークショップがおこなわれていますね。それらは今回の映画制作に具体的な連動をしているのでしょうか?
安川:(以下Y)そうですね、始まったばかりの試みではあるんですが、ワークショップ参加者の中から梅澤さんの現場には何名か参加されていましたよね。
梅澤:(以下U)そうですね、ワークショップに参加した俳優さんがオーディションに来られて、その中から選考していく形も勿論ありました。スタッフでは助監督、小道具などで参加をしていただいてます。小道具に関してはほぼメインで参加していただきました。事務局からもそこから積極的に採用して欲しいという要請がありましたので。
60万円という助成金の他にも、機材提供ですとか、主要プロスタッフ派遣など、様々なバックアップがあります。
U:そうですね、助成金に加えて機材は学校にお借りしたりですとか、スタッフに関しても、カメラマンの方、録音の方ですとか、紹介をしていただいています。
クレジットを拝見した限り、協賛の文字もありましたが、外部からの出資も存在したのでしょうか?
Y:『Dressing UP』の場合は出資をしていただいているわけではなくて、アパートですとか、主に撮影場所の部分でご協力をいただいています。
U:僕の場合も出資はありませんでしたが、自分も含めスタッフで出資をして、助成金に上乗せをする形で撮影しています。
常本:(以下T)僕も同様に助成金に対して、自分の持ち出しと、地元が仙台なんですが、そこの友人からの協力を上乗せしています。
上映展のコピーにもあるように、それぞれ全く違う、バラバラな個性を持った3作品が並んでいるわけですが、共通点があるとすれば、いずれの作品も町が印象的に映し出されているということがあります。実際大阪での撮影が条件とされていることもありますし、製作発表の場で、昭和5年から8年ごろにかけて撮影された映像集『大阪百景』をご覧になったともお伺いしています。企画応募の時点、あるいは脚本に取りかかられた段階で、そういった部分はより強く意識されていましたか?
T:事務局が積極的にロケハンツアーを組んで、色々なところを見て回りましたし、その上で撮影に進んで欲しいという意図は事務局側には大きくあったと思います。
U:ロケーションに関しては、自分にとって面白いロケ地はどこだろうと探してみて、結果的に“大阪らしいね”と言われるところはあります。自分の中で“これが大阪やろう”と考えて選んだわけではないですね。
Y:ワークショップの中で大阪でロケ地を探すというものがあって、それに私も参加したんですが、色々と回った結果、事情もあって主に奈良が候補地になってしまい… 当然ながらそれでは大阪で撮影するという条件をクリアしてないよという指摘を受けまして、急遽大阪に遊びにいくっていうシーンを入れたりとかしました。
一同:なるほど(笑)
Y:ちょっとこなすようになってしまったんですけど…
結果として大阪へ向かう電車からの風景、子供達の訪れた大阪の町並みが鮮烈なイメージを残しているように思います。
梅澤さんは主に大阪の郊外で撮影されたのでしょうか?国道も印象的です。
U:市内ではあるんですけど、静かなところではありますね。ロケーション全般に関しては、基本的には自分が昔から好きなイメージ、それが残っている場所を選びましたね。車がたくさん通っていて、チェーン店だらけのネオン街、そうした場所が好きなんです。
常本さんは如何でしょう?
T:僕はですね、TVの仕事をここ数年間やっているんですけれども、様々な話題を各地方で取材するんですが、大阪にいくことが凄く多いんです。
それは大阪の土地柄が好きだということもあるんですが、通っているうちに、大阪に関する知識が蓄えられていったんです。それで、映画を撮るとしたらこの場所で撮りたいだとか、自分の中での大阪像が出来上がっていったんですね。ですから今回の下準備はここ数年おこなわれていたということでもあるんですが、そのような経緯で、撮りたいと思っていた場所を撮影させて貰ったところはあります。
また今回、既に長いキャリアをお持ちの常本監督の参加もありますし、年齢、性別ともにバラバラなお三方が並んでおられます。行動もご一緒されることが多かったかと思いますが、それぞれの印象などは如何ですか?
Y:常本監督がいらっしゃると聞いた時は驚きました。大先輩なんですけれど、同じ厳しい条件の中で撮影をして、結果こうしてバラバラな作品が仕上がってきたのを見て刺激になっています。
常本監督は如何ですか?
T:作品で言いますと、お二人の作品は初々しいなというのはありますけれど(笑)いや、変わらないですね、映画は映画ですから。若い方の作品だからどうということはないんです。
『蒼白者 A Pale Woman』のような企画は、現在の日本の商業映画の枠組みの中では撮影することが難しいと思うんです。(常本)
それぞれの作品のお話を聞かせていただきたいと思います。
まず常本監督の『蒼白者 A Pale Woman』についてお伺いしたいと思いますが、日本でもヒットしたヤン・イクチュン監督作品『息もできない』に出演をされていたキム・コッビさんを主演に起用されています。2011年のゆうばり国際ファンタスティック映画祭(以下ゆうばり)でお会いになっていたということですが、今回CO2に企画を応募される段階で、キム・コッビさんへのオファーを想定されていたのでしょうか?
T:ええ、想定していました。時系列で説明しますと、お話したように、TVを中心に仕事をしていましたから、長編の撮影に入るのは中々大変なことで、強いモチベーションとなる何かを探していたんです。それでTVの仕事をやりつつも自主で2本の映画を撮影しました。今回CO2に応募した際に参考作品として提出した作品が、その内の2本目『アナボウ』という作品で、2011年のゆうばりに出品させていただいたんですが、そこにキム・コッビさんが別部門のゲストでいらっしゃっていて、お会いをしたんですね。その際に、この方を主演に映画が撮れたらという大きなモチベーションが生まれたんです。それで主催者の方を通してお話をお聞きしましたら、シナリオが面白ければという答えをいただきました。ですがその後3.11があったため取材が多忙を極め、6月くらいまで、そうした一連のことを忘れていたんです。ジャンピングボードといいますか、あるいは背中を押してくれる何かが必要だったということでもあるんですが、CO2がそうした存在となってくれました。その後キム・コッビさんにシナリオを送ることになったんですが、あとで聞いたところによると本当にシナリオが届くとは思っていなかったということでした。結果として良いお答えをいただいて、現在にいたるというわけです。
ロケーションに関してですが、韓国でも撮影がおこなわれています。
T:ええ、韓国に関しては冒頭のシーンだけですが、そうですね。
タイトルに関してお伺いしたいと思います。
『蒼白者 A Pale Woman』というタイトルですが、今年2月のゆうばりで上映された際に、クリント・イーストウッド監督作品『ペイルライダー』を意識されたとお話されています。『ペイルライダー』の設定を逆手に取って、悪い世界に囚われている忍成さんを助けに韓国から女がやって来て、救い出し去っていくという話にしようと。そして『ペイルウーマン』を日本語にすると『蒼白者』になったということでしたね。
T:ええ、ペイルライダーとダブルイメージにしてペイルウーマンにしたということは勿論ありますし、他にも様々なことが重なって『蒼白者』というタイトルになったんです。松田優作主演の『野獣死すべし』という映画がありますが、そこで萩原朔太郎の「漂泊者の歌」という詩を口ずさんでいるんですね。そこの刷り込みもあれば、更に「蒼白者の行進」という中井英夫の小説がありまして、それらが自分の中でごっちゃになってと言いますか、語感としても残っていたんです。それに、結局流れてはしまったんですが、10年以上前でしょうか、商業映画を撮る機会があったんです。実はその時にも「蒼白者」というタイトルにしていたんです。お話は違いますが、それもアクション映画ではありました。
キム・コッビさんの役柄ですが、表情からしてこの人は危機に陥ったりはしないだろうという、『ペイルライダー』のプリーチャーじゃないですが、そのように最強な、幽霊のようなイメージで登場しますが、物語が進むに連れて決してそれだけではない表情も見せるようになります。
T:ずっとにっこりしていてください、にっこりはしているけど怖いんです、というお話はコッビさんにはしていました。その辺りをコッビさんが咀嚼して、あのような演技になったのだと思います。
忍成修吾さん演じるシュウと、キム・コッビさん演じるキムの、少年少女時代の回想シーンが挿入されますが、そこではスタンダード画面に切り替わりますね。唯一切り替わらない場面も存在しますが。
T:ええ、スタンダードに関しては、カメラマンからスタンダードにしたいと要請がありましたのでそのようにしました。途中からスタンダードになる映画って、僕の好きな映画では良くあるんですね。フランソワ・トリュフォーの『突然炎のごとく』ですとか。なので全く抵抗なく、“分かりました”という感じであのようになりました。回想シーンに出演をしている女の子、コッビさんの少女時代の役を演じていますが、大阪の子なんですが、勘のいい子でとても助かりましたね。
女性は特に現場のことも含めて忍成さんのことを知りたいのではないかと思います。
T:忍成さんはですね、僕がある映画のメイキングを担当した際、その作品に主演をされていたんですね。その時の印象が、芝居臭さがない言いますか、とてもいいなと思っていたんです。それで機会があればお願いをしたいと考えていまして、今回その機会が巡ってきたということです。人間的には本当に謙虚でいらっしゃって、やりやすかったということに尽きますね。ただ、本人的には難しい役どころだったとは思います。漂うように生きていながら、女の子にはモテるし、最後はまたピアノをやろうと思い直すという、ある意味いい気な感じのキャラクターに見えもすると思うんです。それに受け身でもありますから、ご覧になってそこに不満を覚える方もいらっしゃるかも知れません。しかし、僕はいわゆる男らしい男性像がどうにも苦手なので… 忍成さんにはそういった難しい役をとても魅力的に演じていただいたと思っています。
キム・コッビさんに拳銃を持たせてみたかったということですが、忍成さんを救わんとするあのシーン、あまりお話するとあれなんですが、凄い使い手だと思います(笑)
T:ええ、そこは絶対に外さないということです(笑)
「メロ・ノワール」という本作のコピーを象徴するかのような、中川安奈さんの演技も見どころのひとつではないかと思います。
T:最近はあまりお出になっていなかったのですが、僕は昔から大好きな女優さんで、今回良いタイミングでお会い出来てオファーもさせていただけたんです。お引き受けをいただいて本当に有り難く、嬉しかったですね。
中川さんの件も含め、『蒼白者』というタイトルも10年以上前から存在していたということですし、今回の企画は常本監督にとって念願の企画であったのではないでしょうか? ※公開タイトルは『蒼白者 A Pale Woman』
T:ええ、色々なことが重なった結果、自分の思い描く作品を撮影することが出来て、有り難かったなと思っています。この手の企画は現在の日本の商業映画の枠組みの中では撮影することが難しいと思うんです。例えば今回の企画がVシネのような土壌で製作されるとすれば、主演が女性のアクションものですし、お色気のシーンを入れるですとか、そういった要請があるかも知れません。今回そのようなことは勿論ありませんでしたし、様々な支援のもと思い通りにやらせていただいた事は本当に有り難かったですね。
常本監督ありがとうございました。
あのシーンは一度OKは出していたんですが、四宮さんが “お前本当にあれでいいのかよ” という感じに仰ってくださいまして、無理を言ってもう一回撮影をさせていただきました。(安川)
では次に安川監督の『Dressing UP』についてお聞きをしたいと思います。
まずロケーションに関してですが、冒頭から非常に抜けが良いといいますか、電車のシーンなど本当にハッとさせられます。また、階段のシーンも3回ほどですか、登場しますね。やはりそういった場所はお好きですか?
Y:主に撮影したのは私の地元でもあるんですけれど、ぶらぶらしながらここを使いたいなと思っていた場所を使いました。抜けが良い場所は確かに好きで、いいなと思う場所が階段であるということも多いですね。電車のシーンに関しても、助監督の方が頑張って探してきてくださいました。それと、話の内容が精神的な話題に触れていてやや重たい部分もありますから、ロケーションくらいは開放的な場所を選びたいという気持ちはありました。
階段が撮影されているシーンのひとつについてお聞きしますが、あれはどこかの森ですか?
Y:あれは公園なんですけど、四宮さん(四宮秀俊:撮影監督『Playback』『へんげ』など)が頑張って森っぽく撮ってくださいました。
T:公園なんですかあれ?(笑)
一同:笑
Y:山には確かに繋がっているんですけど、公園なんです(笑)
学校、教室のシーンなど、主演陣はもちろんですが、全ての子供達がしっかりと演技をされていて素晴らしいですね。演出はどのようにおこなわれたのでしょうか?
Y:オーディションを同じ事務所に所属している子達が受けにきてくれたりもしたんですね。そこで、今回エキストラがたくさん必要なんですということで、事務所の方にご相談をさせていただきました。結果として同じ事務所の子供達も多くなりましたから、既に仲が良かったこともあって、教室がガヤガヤしているシーンなども、変によそよそしい雰囲気にならず、撮影することができました。それに、子供達がもともと勘が良いのもありますが、監督の私が頼りないばかりに、私たちが頑張るしかないみたいな感じで、逆に引っ張っていってくれましたね。ですから、あまり多くを指示する必要もなく細部を修正するくらいでした。
なるほど、そういったことがあったんですね。主演の祷キララさんと友人役のお二人に関しても、並んで電車に座っているシーンなど、微笑ましくもあります。
Y:はい、実際あの子達が凄く仲良くなって良かったです(笑)
祷さんの存在感には驚かされます。そして祷さんの表情を捉えたあの素晴らしい切り返しショットについてもお聞きしたいと思いますが、これは撮影は順撮りだったのでしょうか?
Y:祷さんは撮影当時まだ小学6年生だったんですけど、身体は小さいけれど表情は大人びていて、凄く迫力がありましたね。そのアンバランスさが今回の作品に合っていたなと思います。ちなみに今は身長も高くなってお姉さんぽくなっています。撮影に関しては全く順取りではなかったんですが、仰っていただいたシーンは実は撮り直していまして、最終日の前日に撮影した際には上手くいかなかったんです。それでも一応OKは出していたんですが、四宮さんが “お前本当にあれでいいのかよ” という感じに仰ってくださいまして、それで制作の方にもう一回どうしても撮りたいということで無理を言って最終日にも撮影させていただきました。最終日ですから “キララちゃん今日で撮影最後だね、頑張ったね” という話にもなりまして、そうした感傷的な部分もあり、結果としてあのような印象的なシーンにすることが出来ました。
少女の成長譚でありつつ、幻想的な、あるいは驚くような要素も入り込んできて、観客として一瞬どこにいるのか分からなくなることがありました。少女の前に現れる老人の存在が、単に老人が辿る結末に関して言うのではありませんが、そうさせる部分があります。
Y:あの老人に関して言えば、幻想なのか現実なのか、そこはあやふやで構わないと思ってやっていました。分かりにくかったかも知れませんが、祷さん演じる育美が夢に入っていくんだよと示唆するための記号を配置したりもしました。
ええ、そこは良く分かりました。ただ、如何ようにも考えられる部分があるというか、黒沢清監督が “分からなかったとして、果たしてつまらなかったですか?” という意味合いのことを仰っていたことがありましたが、引き合いに出すには少し違ったかも知れませんけど、『Dressing UP』には迷い込む楽しさのようなものがありました。
Y:黒沢監督がそのように仰っていたのを私も読んだことがあります。もっと飛躍できたら良かったのかもしれません。ミュージカル調にしてみたらという提案があったりもしたんですが(笑)私には演出的に難しくて、無難な方にいってしまいました。あの老人の描き方に関しても、もっと笑える感じに出来たかも知れませんし、全体的にもっとはじけられたんじゃないかなとの後悔はありますね。
安川監督、ありがとうございました。
太っていて僕くらいの年齢の方があんまり役者を目指してないんですね(笑)(梅澤)
最後に梅澤監督の『治療休暇』についてお聞きしたいと思います。
言い方は悪いですが、本当にまともだと思える人間が出てこないというか、そこを誇張して描いてらっしゃるわけですが、そうしたまともじゃなさというのは何も主人公の西村や、若者に限ったことではなく、大人も含め皆まともじゃないのだと、そのようにお伝えになりたかったのではないかと思いましたが、その辺り如何でしょうか?
U:仰っていただいたように誰もがだらしない、だけれどもそのことが目立ってしまうのが若者であって、結果 “最近の若者は” と言われてしまう。また、そのようなだらしない若者に対して直接的に否定をすることはせず、喫茶店のシーンで象徴的に出していますが、“オムライスはメニューにないので帰ってください” という具合に遠回しに退ける、そうした大人も多いのではないかなと思っています。
西村の友人、武人の父親が登場するシーンがありますが、工場のロケーションとともに印象的に思い出されます。
U:あのシーンは企画段階では存在していなかったんですが、実際にあの場所に行ってそこで働いている父親を想像するうちに、泣き崩れ謝ることしか出来ない大人像も描いてみたいと思ったんです。
主人公である西村を演じた月亭太遊さんについてお聞きしたいと思いますが、スタッフの方が動画サイトで発見をされたとか?
U:太っていて僕くらいの年齢の方があんまり役者を目指してないんですね(笑)
一同:笑
U:ですから、劇団を当たったりですとか、年齢が合わなくても若く見える方はいないかですとか、色々と探してはいたんですが、そんな時スタッフから芸人さんはどうだろうという提案があったんです。漫才コンビだった時の太遊さんのネタ動画を持ってきてくれたんですが、僕はそれを見なかったんですね。それを見てしまったらいけない気がしまして。それでまず写真を見せて貰いオーディションに来ていただきました。実際お会いして波長が合ったと言いますか、何でもやりますというふうに仰っていただいて、お願いをすることになったんです。
体型に関しても、実際に体重を増やしていただいたりですとか?
U:ええ、増やしていただきました。本人は5kg増やしたと仰っていましたね。お菓子を食べているシーンなどでNGが出たりもしますし、そのシーンの間ずっと食べていますから、実際はもっと増えていたのではないでしょうか。で、今は結局体重が戻らないようです(笑)“どうやったら戻るんだよ” と不満が出ています(笑)
武人の父親に会いにいくところですが、国道の風景とともに移動が描かれます。
U:決してロードムービーのようにしたくはなかったんですが、主人公が相手によって変わる、変わっていくのを、色々な場面でどのように見せるかと考えたときに、友人との道中で何かが変化していく場面を撮りたかった。じゃあどこを走らせようかとなったときに、僕はああしたチェーン店が立ち並ぶ国道沿いが好きなので、そこで撮影をしました。スタッフには分かって貰えなかったですけどね(笑)
シューズ愛ランドがいいですね。
U:最初は某チェーン店で撮影しようとしたんですが、許可がおりませんでした。その後発見をしまして、是非にということでお願いをしたんです。
物語の最後に触れるわけにはいきませんが、当然狙いもあったと思いますが、着地点を探すのに苦労されたのではありませんか?
U:主人公の駄目さの部分は、本当はもっと後半まで出すつもりはなかったんです。ですが、撮影に入ってスタッフとも話をしていく中で、そうした駄目な部分というのは、はじめから出していった方が面白いのではないかという話になりまして、現在のような形となりました。結果として主人公のキャラクターが駄目過ぎになってしまいまして、この駄目過ぎる男をどのように終わらせたら良いのか、どんどん難しくはなっていきました。そこで考えたのは、いよいよ人から突き放されてしまい人との関わりがなくなってしまった主人公の西村はどうなってしまうのか、そこで本当の西村が立ち現れてくるのか、そのことを見せられたらということでした。
仰っているシーンでは、西村にとってはじめてと言っていい対話がおこなわれていますね。
U:ええ、その通りです。
ラストのシーンはいつ撮影されたのでしょう?ロケーションも良いですね。
U:あれは本当に本当の最後ですね。どの場面に使うかは決めていなかったんですが、最終的にラストがいいなということになりました。
梅澤さんありがとうございました。
上映すること、見せること、
最後に監督の皆さんに、「上映すること」「見せること」についてお聞きをしたいと思います。
私達は映画配信サイトLOAD SHOWを運営しておりますが、映画ファンとして、映画館で映画を見ることが最も理想的であると考えてはいます。しかし、インディペンデントで製作された全ての映画が全て劇場公開されるわけではありませんし、単発の上映で終わってしまうケースも少なくありません。単純にDVD、配信といった他の選択肢のお話をしたいわけではありませんが、その場合で言えば、DVDや配信で仕掛けてそこで話題を作ってからスクリーンを目指す、そのようなことがあっても良いと思いますし、作品を見て貰うためにどのような工夫が必要であるのか、それは製作そのものに関わることであるかも知れませんし、宣伝の領域でもあると思います。その辺りお考えをお持ちでしたらお聞かせ願えますでしょうか?
U:話題になってから公開というのは、そうですね、分かります。僕は個人の作品としては、今回東京の上映で色々な反応をいただいて、それを大阪に持ち帰りたいですし、CO2上映展という括りで言えば、例えば名古屋ですとか、日本全国で上映出来る可能性も今後あるんじゃないかと思っています。つまり劇場での上映をまず前提にしているところはやっぱりありますね。
T:僕は観客としてずっと映画館に通っていますので、自らを観客とした際にはまず最初に映画館があります。ですが作り手として観客の方々のことを考えたときには、色々な選択肢があった方がいいと思っています。実際個人的にも忙しい時間の合間にipodで映画を見たりもしますしね。作り手としては自らの作品を様々な選択肢に対して出せるようにはしたいです。出口を多くして、それを観客の方に選んでいただける環境があればと考えています。見る環境という意味でも、例えば忍成さんが見たいといった俳優さんへの興味という意味でも、とにかく見ていただけることが先決だと思っています。
Y:自分の中に監督としてやりたいこととプロデューサー的な目線のせめぎ合いがありつつ作ったような作品で、実際宣伝の段階での難しさはあります。外への開き方ということで言えば、少女の成長譚というだけではないインパクトのある打ち出し方も出来ると思いますが、その打ち出し方に対しての期待には十分に応えられないとも思いますし、現在興味を持ってくれている方の中には、逆に興味を失ってしまう方もいるかも知れません。
U:僕の場合は編集を終えて作品が完成したときと、一回目の上映を終えたときでは自分の気持ちが全く変わっていまして、予想以上にお客さんが反応して笑ってくれたんですね。僕としても、ニヤリというか、あるある、といった感じで見て貰えればという気持ちはあったんですが、それ以上の反応があったことで、そうした笑ってくれた部分を打ち出すような格好で予告編を制作したりですとか、そういったことはありましたね。どんな映画かを伝えるときも“ だらしなさが笑える映画だよ” と、そのように伝えるようにしています。
ー皆さんありがとうございました。
それでは最後に定番で申し訳ないのですが、C02東京上映展に向けて一言ずつお願いいたします。
T:本当にバラエティーに飛んだ作品が揃っていますから、是非そこに注目して見ていただきたいですね。『Dressing UP』『治療休暇』に関して言いますと、やはり若い二人の監督が、映画ってなんだろう?という問いと格闘しながら作っていらっしゃる、その事が作品を魅力的にしているとも思います。そうした部分を同じ若い、同世代の観客の方々に見ていただいて、フィードバックが起こっていけば良いなと考えています。
Y:そうですね、CO2東京上映展全体としては、同じ条件で同じ時期に撮影をおこなって、こうしたバラバラな3作品が出来上がったという部分にも、観客の皆さんはもちろん、作り手側の方々にも興味を持っていただけたらと思います。個人的には『Dressing UP』は子供達の演技がとにかく素晴らしいので、そこを見にきていただければなと思います。大阪では3本とも既に上映をしているんですが、これまでのところ関係者の方々を中心に感想をいただいている部分はありますから、今回より多くの方にご覧をいただき、感想をお伺い出来ればと思っています。
U:大阪で同じ時期に撮影した3作品が、東京で同時に上映されることで、何かしら意味が出てくるのかなと思っています。今回東京でのお披露目じゃないですけど、色々な観客の方に見ていただきたいという気持ちを持って臨んでいます。例えば同じ同世代で映画を撮っていらっしゃる方であれば、大阪で撮るとしたら自分ならどのようなアプローチをかけれるかですとか、そうした自分が住んでいる以外の土地、大阪について考えていただく機会になればとも考えています。
本日はどうもありがとうございました。
料金
一般=1500/学生=1300 円/シニア=1200 円 前売一回券=1200 円/前売り三回券 3000 円
スケジュール
2013年5月11日(土)~5月17日(金)
5月11日(土) 『Dressing UP』 5月12日(日) 『治療休暇』
5月13日(月) 『Dressing UP』 5 月 14 日(火) 『治療休暇』
5月15日(水) 『Dressing UP』
5月16日(木) 『治療休暇』
5月17日(金) 『蒼白者 A Pale Woman』先行プレミア上映
※毎夜ゲスト来場予定。
会場
オーディトリウム渋谷 TEL.03-6809-0538
東京都渋谷区円山町 1-5 KINOHAUS 2F(東急文化村前交差点左折・ユーロスペースのビル 2階)
『蒼白者 A Pale Woman』
2012年/日本/90分
監督 : 常本琢招
出演 : キム・コッビ、忍成修吾、中川安奈
ストーリー:ヒロイン・キムが日本に戻ってきた。最愛の男・シュウを汚れた世界から救い出すために。そのための危険な計画を、ためらうことなく進めていくキム。しかし、その行く手には、大きな試練が待っていた...。
サークやアルドリッチ、あるいは日活アクションや香港ノワールについて、議論はいくらでもできる。しかし、アクション・メロドラマを現在の夢として生き抜く、ワクワクするような映画を作るには、欲望と技術と執念が必要だ。われらがツネちゃん、常本琢招監督の『蒼白者』における果敢な挑戦に大きな拍手を送りたい。(福間健二〈詩人・映画監督〉)
『DressingUP』
2012年/日本/70分
監督 : 安川有果
出演 : 祷キララ(CO2新人俳優賞)、鈴木卓爾、佐藤歌恋
ストーリー:育美は父親の友則と二人暮らしの中学一年生。授業で「将来の夢」についての課題が出るが、自分の未来を想像することが出来ない。「母親のような立派な人間になりたい」というクラスメイトの発言を聞いた育美は、死んだ母親がどういう人だったのか興味を持ち始めるが、ある日、友則がひた隠しにしていた母親の過去を知ってしまう。
監督プロフィール:『安川有果(やすかわ・ゆか)』
1986年生まれ。大阪美術専門学校で映像制作を学び、09年桃まつり presentsうそにて『カノジョは大丈夫』を監督。渋谷ユーロスペース他にて上映される。この作品を参考作品に、11年大阪映像文化振興事業 CO2(シネアスト・オーガニゼーション・大阪)に出した企画が通り、『DressingUP』を監督。主演の祷キララが CO2新人俳優賞を受賞、第14回 TAMA NEW WAVEでグランプリに輝いた。最新作、青春H『激写!カジレナ熱愛中!』3月中旬公開予定。
『治療休暇』
2012年/日本/85分
CO2選考委員特別賞 Panasonic技術賞
監督 : 梅澤和寛
出演 : 月亭太遊、上岡郁、中川晴樹(ヨーロッパ企画)
ストーリー:自動車整備会社で働いている西村は、長期の休暇を取ることになった。理由は不景気と、社長に嫌われているから。そんな西村に優しい上司の吉崎は、痩せて社長を見返してやれと「2週間ダイエット講座」を勧める。無意識に面倒なことから逃げ出してしまう西村は、気付かないまま孤独になっていく。
空前絶後のガッカリ感。ここまで気持ちよく「主人公に裏切られた映画」はユージュアル・サスペクツ以来かもしれない。(黒田勇樹〈ハイパーメディアフリーター〉)
監督プロフィール:『梅澤和寛』
1985年生まれ大阪市出身。ビジュアルアーツ専門学校大阪を卒業し、CM・VPの制作会社に勤める。 退職後、自主映画『都会の夢』(高木駿一監督)で助監督をし、自身が監督する短編『男』で黒澤明記念ショートフィルム・ コンペティション2008に入賞。また『響く日々』で阿倍野ヒューマンドキュメンタリー映画祭で入賞した後、しばらく映像業界から離れる。今回が自身初の長編映画となる。
  • 『CO2』
    CO2とはシネアスト・オーガニゼーション大阪の略。2004年から始まった CO2の映像文化振興事業は、これまでに石井裕也監督(『舟を編む』公開待機中)や横浜聡子監督を筆頭に、多くの若手監督を映画界に送り出してきた。

    近年では今泉かおり監督作品『聴こえてる、ふりをしただけ』が、第62回ベルリン国際映画祭ジェネレーション部門にて「子供審査員特別賞」を受賞し、昨年全国でロードショー公開された他、CO2助成作品『やくたたず』の三宅唱監督は、この作品がきっかけとなり、第65回ロカルノ国際映画祭インターナショナル・コンペティション部門正式出品作『Playback』を監督。 映画芸術誌で年間ベストテンの第三位に選出されるなど、大きな話題を呼んでいる。