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#14『映画と私』 高尾祥子さん(俳優)

「『サウンド・オブ・ミュージック』のサントラを歌えるようになるまで聴いていました」

母親が映画好きだったので小さい頃から映画はよく見ていました。1番最初に連れて行ってもらったのは『サウンド・オブ・ミュージック』(1965/監督:ロバート・ワイズ)だったと思います。広島のシネツインという映画館でした。その後、映画のサントラテープを空で歌えるようになるまでばかみたいに聴いて、でたらめの英語で歌いまくっていたら、父親が「英語習わせた方がいいんじゃないか」と言い出して、ちょうど私の家のお向かいさんが英語の先生をしていたので、小学校の低学年くらいからそこに通うようになったんです。
それと広島の地元の合唱団にも入っていました。そこは小学2年生で試験を受けて合格したら高校2年生まで続けられるんですけど、そこで小学2年生から高校2年生まで歌っていました。でも目立つタイプじゃなかったので実際にソロをもらえたのは10年間でたったの2回くらいでしたね。私ソプラノだったんですけど、ソプラノってメロディーラインを歌うのでソロのパートだったり、少人数でハモったりするパートが多いんです。でも全然選ばれなかった(笑)。ただ、演劇とは違いますけど、ミュージカルや定期演奏会があったので子供の頃から舞台に上がっていたんだなとは思います。合唱団をそんなに続けられたのは、もちろん歌が好きってこともあったんですけど、小学2年生からずっと同じメンバーでもう家族のようだったので、その友達たちと離れたくないっていう気持ちが強かったですね。

「単純にすごく好きな俳優の柄本明さんがいる劇団東京乾電池を受けたんです」

中学のときに間違って演劇部に入ってしまったんですよ。合唱団を続けるために、忙しい部活に入るのがいやで、2つ上の合唱団の先輩が演劇部だったので、演劇部だったら続けられるんだと思って入ったんです。演劇っていう言葉も何をするところかも知らないで入っちゃったんですけど、あまりにも恥ずかしくて退部しようかと思ったこともありました。でも当時、内申書に響くみたいな今じゃありえない噂があって辞められなかったんですよ(笑)。3年間本当にいやいや続けていました。でも思い出すと、同級生に見られるのが恥ずかしくていやだっただけで、みんなで台本を読んだりセットを作ったり稽古をしたりするのはすごく楽しかった記憶があります。だからどこかでまたやりたいと思っていたのかもしれないですね。広島の短大を卒業して、その頃には役者に興味を持っていたと思います。同時期に『カンゾー先生』(1998/監督:今村昌平)を見ました。広島だったので劇団とか事務所に関する情報を知らなくて、単純にすごく好きな俳優の柄本明さんがいる劇団東京乾電池を受けたんです。それで受かったので上京してきました。今も映画と演劇は区別なく出ています。
『なにもこわいことはない』の本を初めて読んだときは、水彩画のように情景が浮かんできてとても好きになりました。例えば、実際にはカットされていますけど、加藤君(岡部尚)が亡くなったあと、具合が悪くなって帰宅する電車で、座って目を瞑っているんですけど、目を開けると絵本を読んでいる男の人がいるっていうシーンは読んだとき鮮明に目に浮かびました。それとやっぱり劇中で朗読している「ひかりの素足」もこの本を作る上で大きな要素になっていると思います。

「『なにもこわいことはない』は一人の人間の中にあるいくつもの感情が描かれています」

私は恵理とは正反対の性格ですね。恵理は感情で物事をしゃべったりあんまりしないですけど、私は寒いとかお腹すいたとかすぐに不平不満を口に出しちゃうタイプなので(笑)。初めての顔合わせで、脚本の加瀬さんにお会いしたときに、私が脚本を読んで感じた恵理の雰囲気と加瀬さんの印象がなんとなくかぶって実はちょっと参考にさせてもらいました。斎藤監督には「高尾の恵理でいいんだから加瀬の真似をする必要はない」って当然言われましたが。
役は監督とじっくり話し合って作ったわけではないです。斎藤監督はとにかくテイクをたくさん重ねていきますが、リハーサル、テスト、本番と全部芝居を決めないんです。そこで私と吉岡さんだったり岡部さんの間に、目に見えても見えなくても何かが動くのをずっと待っているんだと思います。長回しでワンシーンワンカットが多いのと、本番も芝居を決めなくていいと言われていたので、私としてはすごくやりやすくて、毎度発見があって面白かったです。
人の気持ちって「こうだからこうなる」って簡単に説明できるようなものじゃないと思うんです。史也(吉岡睦雄)に何も相談せずに堕胎したところとか、自分自身は堕胎を選ぶのに、実家の犬のコマが去勢をすることを母親の電話で聞いたときにちょっと複雑な気持ちになるところとか一人の人間の中にあるいくつもの感情が描かれていると思います。恵理が史也のためを思ってやったかもしれないことが史也にとってはそうではないっていうズレや矛盾も、私たちの日常にもよくある矛盾やすれ違いだと思うし、大きなドラマは起きないけど、掘り起こしていくと奥行きがあって、それぞれ感じることがある触れ幅の大きな映画だと感じています。
■『なにもこわいことはない』公式サイト
http://kowaikotohanai.com/
■劇場情報
◆新宿K’s cinema 1/18(土)~1/31(金)13:00 ※予告篇なし http://www.ks-cinema.com
◆横浜 シネマ・ジャック&ベティ 1/18(土)~1/24(金)16:25 http://www.jackandbetty.net
◆川崎市アートセンター 1/25(土)~1/31(金)16:45  ※1/27(月)休映 http://kawasaki-ac.jp
  ・1/25(土)≪16:45≫上映後、舞台挨拶  斎藤久志監督、高尾祥子さん
  ・1/26(日)≪16:45≫上映後、トーク  瀬々敬久さん、斎藤久志監督
◆第七藝術劇場 2/1(土)~2/7(金)18:30、2/8(土)~2/14(金)20:45 http://www.nanagei.com
  ・2/1(土)≪18:30≫上映後、舞台挨拶  斎藤久志監督
◆シネマテークたかさき 2/8(土)より公開 http://takasaki-cc.jp
◆渋谷アップリンク 2/15(土)より公開 http://www.uplink.co.jp
◆京都みなみ会館 時期調整中 http://kyoto-minamikaikan.jp
◆名古屋シネマテーク 時期調整中 http://cineaste.jp
聞き手・構成・写真: 石川ひろみ
『なにもこわいことはない』
製作/監督:斎藤久志/脚本:加瀬仁美/撮影:石井 勲/照明:大坂章夫/録音:小川 武/編集:鹿子木直美/音楽:小川 洋/キャスト:高尾祥子、吉岡睦雄、岡部 尚、山田キヌヲ、谷川昭一朗、柏原寛司、角替和枝、森岡 龍
公式サイト:http://kowaikotohanai.com/
  • 『高尾祥子(たかお・さきこ)』
    広島県出身。2001年、劇団東京乾電池入団。2009年、角替和枝初演出の『秘密の花園』(作:唐十郎)にて舞台初主演。2010年『団地妻 昼下がりの情事』(監督:中原俊)にて長編映画初主演。最近作は『戦争と一人の女』(2013年/監督:井上淳一)。第6回田辺・弁慶映画祭、最優秀作品賞・映検審査員賞タブル受賞の東京芸術大学卒業制作『虚しいだけ』(2013年/監督・今橋貴)。