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#04『映画と私』 杉原永純さん(オーディトリウム渋谷:プログラムディレクター)

「作り手と併走するということが、まず一番大きなテーマとしてあります」

渋谷区円山町の映画館、オーディトリウム渋谷のプログラムディレクターを務めています。ざっくりと言うと映画館で上映する映画を選ぶ仕事です。オーディトリウムは少人数で運営していますから、それこそ何でもやります。上映前後の清掃から受付まで、僕は映写ができないのでそれ以外は本当に全て。映画の現場で言うと制作部ですよね。オーディトリウムでの仕事は、ある種一般的じゃないと思います。通常、商業映画は出口が見えたうえで作られているわけで、つまり公開規模だとか上映期間、あるいは動員規模まで計算した上で製作されているわけです。オーディトリウムで上映されている映画は、いわゆるインディペンデント映画が大半で、どういうことかと言うと、配給だとか興行先と距離があると言えばいいのかな。乱暴に言うと勝手に作られちゃった作品。そうした作品がいっぱいあるわけです。
プログラミングに関して言うと、こちらからアプローチをかける場合もあるし、提案を受けた中から選択していく場合もあります。小さな規模でやる場合、作り手と併走するということがまず一番大きなテーマとしてあって、例えば『サウダーヂ』 (2011/製作:空族/監督:富田克也)という作品は、オーディトリウムができる前から撮影がおこなわれていたわけですが、完成後まずは0号の試写を見にいくわけです。そうしてどういうふうに公開していくかを一緒になって考えていく。 『Playback』 (2011/製作:DECADE, PIGDOM/監督:三宅唱)なんかも同じやり方ですね。
オーディトリウムが他の劇場と違うのは、きわめて少人数でやってしまっているところ。スタッフのバッファがないから、ほかの劇場で時々あるような配給機能も持ったりってことがないわけです。つまり自分たちで配給すれば、単純に劇場にもたらされる収益も増えるわけだけど、オーディトリウムではそこをやらない分、入口が広いというか、それこそ映画以外のイベント、例えばアイドルイベントだったり、自主映画の上映会、ほかで言うと一般試写、園子温監督の『恋の罪』は舞台が円山町だったから、実際に立地が円山町のオーディトリウムを使ってプロモーション上映をおこなったりしました。

「僕は自己実現のために映画のプログラムをしているわけではないんです」

例えばですが僕がずっとこういう仕事をやりたくて、ビルを買って劇場作りましたって話であれば、今みたいな運営にはなっていないと思うんです。流れはあるにしても、突然僕はこの仕事をやることになって、とにかくオープンが2ヶ月後というだけで、本当に何も決まっていない状態。ほかの劇場と同じことをやっても仕方がないということと、とにかく日々の上映スケジュールを埋めていかなくてはいけないという現実。具体的にほかの劇場のことはわからないけれど、普通に考えればオープン後半年分くらいのスケジュールは決まった上で動き出すと思うんですが、10日先までしか決まっていない(笑)。だったら自分で考えるしかないわけですが、かと言って1本の映画を公開するとなると、宣伝期間もかかるし、準備がとっても大変。一方、特集上映はある種コンピレーションなわけで、ひとつの力が弱くても、総合力で勝負できるし、告知期間が短くてもなんとかなる場合もある。ですから、スケジュールを埋めていかなくてはならない状況の中で、まず特集上映を考えていきました。そうした作業を1年くらい繰り返していくうちに、こういう企画をやりたいんです、といった具合に提案もいただけるようになりましたね。
オーディトリウムの運営には色んな可能性があったと思うんですが、それが今こんなふうになってるってことは、結果としてこれが自分のやりたいことなんだろうなとは思います。案外人から言われたことをやってみて、これ面白いかもって思ったりもするわけで、アイドルイベントなんかは自分が映画館に持っていたイメージからすると邪道だし、考えられないわけだけど、これは結構面白いんです。中身に関しての好みはありますけど、例えば僕は現場の人間ですから、違う業界のスタッフさんの動きを見ているだけで、刺激、モチベーションになるというかね。だから劇場に対して面白い使い方をしてくれるのであれば僕はウェルカムなんです。2011年に映画館が立ち上がるってなったときに、これまでと同じことを続けていてもしょうがないという気持ちが当初からありましたしね。ちなみに僕は映画館で働きたいと思ったことは一度もないです(笑)。好きとか嫌いとかのレベルではやれないですよね、ただ嫌いではないですよ。仕事上の達成感というか、自分が知らない世界を知ることができた瞬間には価値があるわけですから。僕は自己実現のために映画のプログラムをしているわけではないんです。もし僕にお金があって劇場をひとつ買えてしまったら、また違うだろうとは思うけれど、それはそれできっと大変なんじゃないかと思います。

「誰にも見られなければ映画が完成しないという気持ちがありました」

映画との出会いですか?小さい頃はあんまり映画館に映画は見に行かなかったですね。家庭でもレンタルビデオなんかも駄目って言われていたから、映画的な環境には全くいなかった。高校生くらいになると、友達なんかと見にいったりするようにはなりましたね。福井のメトロ劇場って映画館。よく覚えてるのは『ベルベット・ゴールドマイン』(1998/監督:トッド・ヘインズ)、『エネミー・オブ・アメリカ』(1998/監督:トニー・スコット) 、あとは『御法度』(1999)かな。『御法度』はなんで見にいったんだろう。大島渚監督がボキャブラ天国に出演していて、監督って呼ばれていたのは知っていたけど、特になにも意識してなかったかな。あとはWOWOWの無料放送で、たまたまなのか何なのか分からないけど、『CURE』(1997/監督:黒沢清)を見たのを覚えてます。僕は高校生の頃は油絵をやっていたので、絵を描きたいとは思っていたけれど、とにかくその頃に職業的な意味で、映画を意識してるってことはなかったですよね。
その後、僕は東京藝術大学の美術学部に入学することになるわけですけど、入学して2年経ったくらいかな、やっぱり無理だなと思ったんです。それじゃ生活できないとかでなく、自分ひとりで作り続けるってできないなと、続けてられないなと。それよりも共同作業に興味があったんです。映画の授業を受けていたこともあって、制作とか少しずつ映画の中身にも触れていた時期で、その後卒業するタイミングで藝大大学院の映像研究科ができるって話を聞いて受験をしたんです。自分で撮りたいとは思わなかったですし、専攻はプロデュース領域です。修了制作では、加藤直輝の『A Bao A Qu』 (2007)という作品のプロデューサーを務めて、釜山国際映画祭で上映されたりもしたんですが、その頃からですかね、映画をちゃんと見せなきゃなと思いはじめました。結局2年間作りっぱなしだったんです。誰にも見られてないってことに疑問を持つ人もあんまりいなくて、それでは映画が完成していないって気持ちがあった。誰にも届かないものを作り続けてもしょうがないと。だから博士課程に残ることにして、見せるってことに関してもっと考えようと。その頃に映画館大賞(独立系映画館スタッフの投票による映画賞)という企画を通して、全国のミニシアターの方々と関わりを持たせて貰ったりもして、そうした中でなにかしら見えてきた部分もありました。時間を持て余していた部分もあったので、海外の現代アート領域のアーティストが日本で撮影する際のコーディネートなんかもやっていたかな。映画以外のアウトプットも常に並行していたし、そういった部分は現在にも繋がっています。

「100年後に残すために、いま公開しなきゃならないと思ったんです」

オーディトリウムでは2013年11月9日~11月22日の期間、酒井耕・濱口竜介監督の 「東北記録映画三部作」を上映しました。これはね、今まで扱ってきた作品の中で一番重いです。飽くまで映画というフォーマットを使って、残さなきゃいけないものとしてね。3.11以降、震災映画は山ほど扱ってきて、勿論それぞれに見る価値がある作品だと思います。ただ、この三部作に関して言うと重みが違う。映画って残るものは残るわけだけど、その中で100年残るものって限られるわけです。これまでの震災映画に関しては、そのタイミングで公開する必要があって、そのために動いていたわけだけど、三部作に関しては100年後に残すためにいま公開しなきゃいけないというかね、そういうことをやらなきゃいけないなって思ったんです。ある意味、最後の仕事なんじゃないかって気持ちですよね。公開することの全ての責任って負えないんだなと改めて思います。公開することで誰かを傷つけるかも知れないとかね、考えだすときりがないけど、選ぶのは自分。無限の責任がそこにあるってことが可視化されるととっても重くなる。作品をぽんと放り込んで議論を巻き起こすってやり方もあると思うんですけど、やっぱりね、三部作に関しては100年残すべき石碑にしなきゃならない。忘れられることのない石碑となるような見せ方、残し方をしていかなきゃならないですね。

あのときの一本

『ミッション・インポッシブル』(1996/監督:ブライアン・デ・パルマ)
うちでは何故か『スパイ大作戦』を見ていて(笑)、その流れで家族で見に行って、その後何故かひとりで2回見た(笑)。明らかにTVじゃない何かを感じた。
聞き手・構成・写真 :岡本英之
『AUDITORIUM shibuya』
About Us
KINOHAUS2階の「オーディトリウム渋谷」(客席数136席)は、様々なジャンルの表現者と観客が交流する多目的ホール(興行場)です。映画上映、トークショー、各種イベントなどによって、渋谷を、そしてジャンル問わずカルチャー全体を元気にします!
独自企画/共同企画
◇シネマテーク(古典映画から現代映画まで世界の映画を特集上映します)
◇映画祭(ユーロスペースやシネマヴェーラ渋谷との連携も可能です)
◇一般興行(ロードショー、モーニング、レイトショー)
◇特別上映会(コンピュータによる日本語字幕投影など多様なニーズに対応します)
トークプログラム
◇公開講座(世界のドキュメンタリー、ノンフィクション講座等)
◇特別講義(海外ゲスト講師特別講義、映画表現論等)
◇講演会・シンポジウム・ティーチ・インなど
ライヴプログラム
◇音楽コンサート・演劇公演・落語会など
(ホール・レンタル)
完成披露試写会(1Fカフェ+小舞台付教室でのレセプション・パーティーも可能)/読者招待試写会/新製品発表会など、特に映像設備の必要な催しにご利用ください。
http://a-shibuya.jp/
  • 『杉原永純(すぎはら・えいじゅん)』
    オーディトリウム渋谷ディレクター、主な仕事は雑務と番組編成。

    特殊映像制作コーディネートを経て現職。
    勅使川原三郎監督作品『少年の中の少年』(2011年/イタリア=日本)、Arnoud Noordegraaf監督『A.M.』(2010年/オランダ)、Chris Chon Chan Fui監督『HEAVENHELL』 (2009年)など。

    特技はゲリラ撮影とけん玉。