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映画の未来をいち早く
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#13『映画と私』 黒澤八大さん(日本クラウン:ディレクター)

「自分がいいなと思えるものを、自分自身で発見したい」

レコード会社の制作ディレクターとして、アーティストと一緒に作品を作り、売り出していく仕事をしています。制作という立ち位置ではあるんですが、実際のプロモーション活動にも関わっていますし、新人アーティストの発掘も仕事のひとつです。映画を好きになった明確な瞬間というのは思い出せないんですが、原初体験としては、幼少期におふくろに連れられて兄貴と3人で見に行った『スター・ウォーズ エピソード5/帝国の逆襲』(1980/監督:アーヴィン・カーシュナー)だったと思います。うちは家庭環境が複雑で両親が別々に暮らしていまして、僕は兄貴とおふくろと一緒に暮らしていたんですが、おふくろは昼も夜も働いていて、普段あまり家にいなかったんです。それで、たまに休みになると映画館に連れていってくれたんですが、当時僕はすごい恐がりで、閉所恐怖症というか、暗闇がとても怖かったんです。けれど一緒に行かないとおふくろと一緒に過ごせないですから、我慢をして通っていました。『スター・ウォーズ エピソード5/帝国の逆襲』を見たときは、僕はもう、うわーって泣いちゃって、おふくろにずっとしがみついてましたね(笑)。なので決して映画が楽しかったという思い出ではないんです。親父とは半年に一回くらいしか会えなかったんですが、親父とも会えば映画館に行くんです。親父と最初に見たのは『死亡遊戯』(1978/監督:ロバート・クローズ)だったと思います。「主人公のブルース・リー死んじゃったけどいいの?大丈夫なのそれ?」みたいな疑問を見ながら抱いたことを覚えています(笑)。住居を転々としていたこともあって、どこで見たのかは覚えていないんですが、その当時住んでいたのが目黒でしたから、もしかしたら目黒シネマだったかも知れません。
積極的に映画を見始めたのは中学生の頃です。ずっとスケボーをやっていたんですが、当時僕は埼玉に住んでいて、都会のスケーターや、東京へのコンプレックスがすごくありました。そんなことも関係してか、ファッションやカルチャーを取り入れるのに、雑誌を眺めるのではなくて、映画を参考にしていたんです。『バック・トゥ・ザ・フューチャー』(1985/監督:ロバート・ゼメキス)にスケーターのトニ・ーホークが出ていたので、それを見たりですとか。(※マイケル・J・フォックスのスケボーシーンの代役として出演)ちょうどその頃の話なんですが、親父が家に戻ってきたんです。当時レンタルビデオ店ができ始めていた時期で、よく一緒に行ってはビデオを借りてもらってました。とは言え、音楽も含め、あらゆることに興味を深めていた時期でしたから、突出して映画が好きでというわけではまだありませんでした。お小遣いもそんなになかったですし、映画館には年間3,4本を見にいける程度でしたが、とにかく人と同じが嫌という気持ちが強かったので、結構変わった作品を見に行っていたように思います。僕はこれまでに洋服のライセンスビジネスですとか、フィギュアメーカーですとか、色々な仕事を転々としてきまして、現在の制作ディレクターの仕事でもそうなんですが、対象への向き合い方が当時の考え方とあまり変わっていないというか、つまり人と同じが嫌で、自分がいいなと思えるものを自分自身で発見して人に紹介したい、プレゼンしたいということをずっとやってきている気がします。
僕は高三の夏まで進路が決まっていなかったんですが、すぐに就職はしたくなかったですし、担任の先生にもお前は社会に出るのはまだ早いと言われまして(笑)、某専門学校のイベントプランニング学科へ進学しました。まあいかにもな名称ですよね(笑)。学校ではイベントのバイトのようなことも経験しまして、よく覚えているのは銀座のみゆき通りに花で絵を描くというイベント。朝6時くらいに集合して延々と花をむしり続けるわけですが、これ本当になんの勉強になるんだと思いましたね(笑)。講師にはこういうのが大事なんだと言われるわけですが、まあそんなこんなで学校には全然行ってなかったです。当時は渋谷系カルチャーの全盛期で、僕もそれまで、やれビンテージのデニムだとかそんな感じだったのが、いきなりアニエスb.を着始めたりしてました(笑)。ミニシアター文化華やかなりし頃でもありますから、渋谷に来て、レコード屋を巡って、映画館に行ってと、そんな生活を送っていましたね。今思えばものすごく嫌なやつですけど、彼女とウォン・カーウァイの映画を見に行って、「これがおしゃれなんだよ」みたいに言ったりして(笑)。自分はこんなにおしゃれなものを知ってるんだみたいな、自分を取り繕うじゃないですけど、映画を見て内容に感化されてといった感じでは全然なかったですよね。

「音楽を仕事にしているからこそ、映画を見る」

どっぷりと映画を見始めるようになったのは、現在の仕事に就いてからかも知れません。今の会社に入って4年目になるんですけど、制作ディレクターという仕事柄、当然アーティストの楽曲制作にも関わることになるんですが、音楽の言葉だけで相手と会話していくことに限界を感じていたんです。それで自分のイメージを言葉にして伝えていくために、映画や本を引き合いに出すようになったんですが、そうするとコミュニケーションの幅がどんどん拡がっていったんです。それまでも年間40~50本の映画を見ていたと思うんですけど、今年(2013年)で言えば180本くらい見ていますし、段々と増えてきた感じです。音楽を仕事にしているからこそ映画を見るというか、普通の見方とは少し違うかも知れません。僕自身が曲を書くわけではないですし、ミュージシャンに対して音楽の言葉だけで語っても、引き出しきれないというか、拡がりが出てこないんですよね。歌詞について話をするときは特に映画の話をするかも知れません。ちなみに僕は以前に秋元 康プロデュースのSKE48を担当していまして、当時は僕自身から発信できる部分って少なかったんですが、一度ジャケットのデザインを秋元さんにプレゼンした際に、「お前の今回のテーマはなんだ?」と問われたんです。僕はそのとき、「飛び切りポップにいこうと思います!」みたいな、ものすごく頭の悪い発言をしてしまって(笑)、本当に怒られたんですが、それで秋元さんが、「お前、『マグノリア』は見たことあるか?」と。秋元さんは本当に映画が好きなんですが、「はい」と答えると、「カエルが降ってくるだろう?あれがポップなんだよ」と、こうくるわけです。僕はわかったようなわからないようなで、「カエルを降らせればいいんですかね……」とか言って、また怒られて(笑)。秋元さんもそうやって映画を引き合いに出して話すことが多いように思いますね。
現在僕は 河西智美 というアーティストを担当しているんですが、セカンドシングルのMusic Videoの撮影を映画監督の真利子哲也さんにお願いしたんです。セカンドシングルのリリースは河西が既にAKB48からの卒業を発表していたタイミングでしたから、これまでに全く経験していなかったことをやらせてあげたいという気持ちを持っていましたし、同時にそうした新しいチャレンジこそが必要だと感じていたんです。真利子監督には、河西という素材を使って真利子監督の作品を作って欲しいという気持ちでオファーをしました。実際仕上がった作品は、リップシンクを使用しない、アイドルのPVとしてはかなり異質な、冒険した内容になったと思っています。作品には河西本人から出てきた、もしAKBに入っていなかったらこんな青春時代を送りたかったという、そんな想いも込められていて、真利子監督も僕もそうした想いをPVの中だけでも叶えてあげたいという気持ちで制作に臨みました。彼女は14歳からAKB48で活動をしていますから、例えば友達とカラオケに行ったりだとか、同世代の女の子が当たり前のようにやっていることが全然できなかったわけです。最初の打ち合わせは真利子監督、河西、制作会社の担当者、僕の4人でおこなったんですが、僕と真利子監督のテーマは『500日のサマー』(2009/監督:マーク・ウェブ)だったんです。そんな話をしていると、河西本人も自分の希望を映画で出してきて、クリスティーナ・アギレラ主演の『バーレスク』だったんですが、僕はそれを見ていなかったので、「え~それ知らないの?」ってバカにされて、お前に映画のことで言われたくないよって思いました(笑)。河西のパブリックイメージとしては、気難しいとか、気分屋だとか思われている部分もあるんですが、実際は全然そんなことはなくて、モノづくりがすごく好きな子で、その日は1〜2時間くらいしか寝ていなかったはずなんですが、結局4時間を超える打ち合わせになって、最後には僕も真利子監督もぐったりでした。そのすぐ後、真利子監督から電話がかかってきて、渋谷の路上で更に一時間(笑)。打ち合わせの内容を消化して改めて連絡をくれたので、とことん付き合うぞと(笑)。
実際の撮影はかなりタイトなスケジュールで、僕からも色々と要求をさせていただく部分もありましたし、現場が殺伐とした雰囲気にもなってしまって、真利子監督にも、河西にも、申し訳なかったなと思っています。真利子監督を知ったきっかけですか?作品で言えば『NINIFUNI』(2011/出演:宮崎将、山中崇、ももいろクローバー)ですね。オファーの直接のきっかけは、ちょうど僕が新しいチャレンジに向けて誰にオファーをしようか考えていた時期に上司と話をしていたら、「真利子哲也監督は知ってる?」と。過去に真利子監督と仕事をしたことがあるみたいで、当然僕は真利子監督の作品が好きでしたから、是非紹介して欲しいということでお会いすることになったんです。以前Twitterでも呟いたことがあるんですが、もし僕が石油王だったとしたら(笑)、真利子監督、三宅唱監督、濱口竜介監督の作品を製作したいという思いをずっと持っていまして、ですからこうした流れで真利子監督と一緒にお仕事ができたことは本当に運命的とも言えることでした。

「三宅唱監督の『Playback』は、映画館で何度も見るくらい大好きな作品」

1/15発売の河西智美3rdシングル『キエタイクライ』のMusic Video、特典映像のショートフィルム(『Me Ke Aloha~Letter From Tomomi~』)は三宅唱監督に依頼をさせていただくことになったんですが、僕はSNS上でファンの方とコミュニケーションを取らせていただいたりもしてまして、こうやって映画監督にオファーをしてMusic Videoを撮影することに興味を抱いてくれている空気も少なからず感じていましたし、今回も絶対にいいものが作れると確信をしていました。三宅監督の 『Playback』 (2012/出演:村上淳 渋川清彦 三浦誠己)は、映画館で何度も見るくらい大好きな作品なんですけど、男性はもちろんですが、女性もとっても美しく撮られていて、一番初めに見たときは、三宅監督が河西を撮ったらどんなふうに画面におさまるのか、そのことばかり考えていました。真利子監督にお願いした際には僕自身の希望もお伝えしてという部分が多かったのですが、今回はハワイで撮影をすること以外はほとんどルールを設けず、三宅監督には好きなように撮って下さいという感じでした。ショートフィルムに関しては、三宅監督が大橋トリオさんのアルバム特典として撮影された『TREE HOUSE』(2013/出演:NOA、大橋トリオ、村上淳、沢尻エリカ)を見ていたこともあるんですが、Music Video以外にもなにかやりたいという気持ちがありまして、じゃあということで三宅監督と話をして企画が膨らんでいったんです。今回は全体として、極端なわかりやすさを回避したいという気持ちがありました。いわゆる起承転結がはっきりし過ぎたものにしたくないということですね。最低限ここはわかりやすくしたいという部分に関してはお伝えもさせてもらいましたが、仕上がってきた作品は、これ以上わかりやすくてもわかりにくくても駄目だという、まさにイメージした通りのものでした。
僕は石油王じゃないので映画製作は実現できていませんが(笑)、こうやって真利子哲也監督、三宅唱監督と仕事をさせていただいたので、公開オファーしちゃいますけど(笑)、次は濱口竜介監督と仕事をさせていただきたいです。濱口監督の撮影するMusic Videoって実はあまり想像できないんですが、河西智美であればって気持ちを持っていますし、是非実現させたいですね。自分の仕事を通して、河西のファンの皆さんに映画に興味をもってもらえたら、それはすごく嬉しいことですし、肩肘張ってでなく、自然にこうした仕事を続けていければと思っています。実は先日ある映画監督から河西を撮りたいというお申し出を受けたことがあったんですが、これって河西智美というアーティストを手掛ける僕にとってひとつのゴールなんです。いつか超大物監督からのオファーをお断りして、自分の大好きな監督との仕事を選択できるような機会が訪れたら最高ですよね(笑)。

あのときの一本

『ドラッグストア・カウボーイ』(1989/監督:ガス・ヴァン・サント)
当時マット・ディロンに憧れていて、ストーリーどうこうではなく、彼の仕草を研究するために何度も見た記憶があります。若気の至りってやつですね(笑)。
聞き手・構成:岡本英之

アーティスト 河西智美"、2014年始動!!

『秋元 康(プロデュース)×キマグレン(作詞/作曲)×河西智美』

海岸線を吹き抜ける潮風のようなメロディと、夕暮れ時を思わせるセツナさに充ちた歌詞が印象的な3rdシングル!! 前作「Mine」のMusic Videoを、「イエローキッド」「NINIFUNI」の真利子哲也が担当したことでも話題に。 今作「キエタイクライ」のMusic Videoは、「やくたたず」「Playback」の三宅唱が担当。 また、同じく三宅唱が手がけたMusic Videoのスピンオフ的短編「Me Ke Aloha~Letter From Tomomi~」が、DVDに特典映像として収録。

河西智美オフィシャルサイト

http://kasaitomomi.jp/
『2014/1/15発売 「キエタイクライ」』
■Type-A <CD+DVD> CRCP-10306 1,600円(税込) 1. キエタイクライ  2. Touch Me! 3. Lovely days 4. キエタイクライ off vocal 5. Touch Me! off vocal 6. Lovely days off vocal ●キエタイクライ Music Video ●特典映像:Making of 「キエタイクライ」 ●特典映像:SUNNY DAYS -Tomomi in Hawaii-
<CD+DVD> CRCP-10306 1,600円(税込)
1. キエタイクライ
2. Touch Me!
3. Lovely days
4. キエタイクライ off vocal
5. Touch Me! off vocal
6. Lovely days off vocal
●キエタイクライ Music Video
●特典映像:Making of 「キエタイクライ」
●特典映像:SUNNY DAYS -Tomomi in Hawaii-
『2014/1/15発売 「キエタイクライ」』
■Type-B
<CD+DVD> CRCP-10307 1,600円(税込)
1. キエタイクライ
2. Touch Me!
3. Blue...
4. キエタイクライ off vocal
5. Touch Me! off vocal
6. Blue… off vocal
●キエタイクライ Music Video
●特典映像:Me Ke Aloha~Letter From Tomomi~
●特典映像:Documentary of Solo Debut Special Live(2013/2/16 @yokohama BLITZ)
『2014/1/15発売 「キエタイクライ」』
■Type-C
<CD> CRCP-10308 1,000円(税込)
1. キエタイクライ
2. Touch Me!
3. Lovely days
4. Blue…
5. キエタイクライ off vocal
6. Touch Me! off vocal
7. Lovely days off vocal
8. Blue… off vocal
  • 『黒澤八大(くろさわ・はちだい)』
    1974年東京生。専門学校卒業後、アパレル、フィギュアメーカー勤務を経て、2003年より音楽業界に。
    現在は、日本クラウンのディレクターとして、
    ソロシンガー「河西智美」、ロックバンド「In 197666」、ダンス&ヴォーカルグループ「Vimclip」を担当。
    2014年春には、自ら発掘した新人アーティストのメジャーデビューが予定されている。