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映画の未来をいち早く
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#05『映画と私』 岩井秀世さん(カプリコンフィルム:映画宣伝)

「まだ世の中に認められていない存在を社会に送り出していく作業です」

映画宣伝の仕事をしています。映画宣伝とは何かについてお話をしますと、まず映画が作られますよね、それは言ってしまえば生まれたての赤ん坊みたいなもので、親や周りの人以外に誰も知られていないわけです。その場合まず名前をつけて、保育園、幼稚園と学校を選んだりしながら、まだ世の中に認められていない存在を社会に送り出していくわけですが、映画宣伝とは平たく言ってそういう作業だと思っています。作品をキチンと社会に認識して貰えるように然るべき場所に置いてあげる作業ですね。やがてその映画が、自分の与り知らぬところで知られてきたり、語られたりするようになってくると映画はもう独り立ちしたというか、そこでもうこの映画は自分の手から離れた、と実感します。
映画に触れた最初の記憶ですか?いつ頃のことかはっきりとは覚えていないですが、母親と市民ホールのような場所で見た『風の谷のナウシカ』ですかね。単純にオームや巨神兵の造形ですとか、そういった部分に圧倒された記憶があります。映画館の記憶で言えば、友人と見に行った『Back to the Future』ですかね。パート2だったと思いますけど。僕は埼玉県入間市の出身なんですが、所沢の映画館まで電車に乗って見に行きました。僕は中学ではバスケットボール部だったんですけど、都心にある高校に進学したら、そこは中高一貫なんですが、部活動にしてもそうした流れの中でやっているわけで、なんというか身の置き場がなかったんです。その頃でしょうかね、漫画だとか小説だとかを摂取するといいますか、そんな時期が訪れたのは。

「映画を選んで見ているという自覚はあまりないんです」

あるとき友人に誘われて園子温監督の『自転車吐息』を見に行ったんです。急激ですよね(笑)。それは本当に衝撃でした。その後だったか、その前だったか、はっきりと覚えてないんですが、池袋のACT SEIGEI THEATERに『道』(1954/監督:フェデリコ・フェリーニ)を見に行って感動した覚えがあります。これも極端ですか?(笑)。当時は園監督が『BAD FILM』を制作した時期で、僕はエキストラで映っているはずなんですが(笑)、その流れなのか、シネマアルゴですとか、中野武蔵野ホールに通って、例えば山本政志監督、矢崎仁司監督、石井聰互(現:石井岳龍)監督の作品など、たくさんの映画を見ました。今もそうなんですが、映画を選んで見ているという自覚はあんまりなかったですけどね。映画に限らず漫画にしても小説にしても同じです。
その後に埼玉の大学に行くことになって、といってもほとんど行ってなかったんですが(笑)、夏休みに映画の特別講座があって中村秀之さんという方が先生だったのですが、それだけ毎日一番前の席に座って受講していました。その授業で知った映画で印象的だったのは(ジョン)カサヴェテスの『アメリカの影』と、(ウィリアム)ワイラーの『デッドエンド』でした。『アメリカの影』は即興の映画といっても誰もが撮れるような生易しい映画じゃないことは分かりましたし、『デッドエンド』はグレッグ・トーランド(『市民ケーン』)がカメラマンなのですが、得意のパンフォーカスで小さな街全体が捉えられているかのようなすごい映画で、映画を撮るならやっぱりちゃんと学ばなきゃ駄目だなと感じて、大学を辞めそのまま映画美学校に入学しました。

「ある人と繋がって、また新たな人と繋がって共鳴をしていく」

映画に関わったと感じた瞬間は、映画美学校で照明部として参加した池田千尋監督の『人コロシの穴』という作品です。2週間くらい静岡で合宿しながらの撮影だったんですが、それ以前に自分でカメラを振り回して撮影していた頃とは全く質の違う、次元の違う経験でしたね。そこにカメラがあって、まさにその場所で起きていることを撮影しているんだと自覚したというか、何か凄いものが映っているんじゃなかというような感覚を覚えました。本当に密な撮影でしたね。ただ、この先自分自身が、例えばカメラマンになりたいとか照明技師になりたいとかって気持ちは起こらなかったんです。実際にプロの現場に参加させてもらったこともあったんですが、やはりそこで仕事をする自分を思い描けなかったんですよね。
卒業後は自主制作で映画を撮影したり、他の人の現場を手伝ったりという時期が続くことになりました。一観客として映画を見続けてもいましたが、まあ暗い二十代を過ごしましたね(笑)。その頃っていうのは、映画の制作はしていたけれど、世の中に対して発表できているわけでもないし、それこそ趣味ですよね。そうやって三十代という時期が見えはじめると、やはりこの先の方向性ってものを考えなければならないし、改めて自分が何をしたいのか実際に考えました。それである映画会社に就職をして、劇場周りの仕事が中心ですが、配給宣伝業務にも触れることになりました。
その後、退社してフリーで宣伝をすることになりますが、作品を自分で選択をしてやれるものでもないわけで、お声がけをいただいてということでしかないと言えばないのですが、漠然と大きなひとつの流れのなかにいるなという気はしています。それはやっぱり人との出会いによる実感ですよね。ある人と繋がって、共鳴する部分があって、また新たな人と繋がって共鳴をしていく、そうやってひとつの道筋ができていくのではないでしょうか。結局のところ続けていくことなんだと思うんです。仕事なのかそうでないのか、はっきりと分からないようなことも含めて繰り返していく中で、出会いが重なっていく。僕の場合、空族(映像制作集団:『サウダーヂ』 (11)など)がそうですし、『Playback』 のチームもそうですし、本当にそこに“人”がいたというか、そのことに感謝をしたいですね。利益を追求しなければならないという感覚を超えた部分、そうしたところで繋がっている人たちが傍らにいてくれるということが、仕事をしていく上で大きな支えになっています。

あのときの一本

『ポーラX』(1999/監督:レオス・カラックス)
リアルタイムで3回くらい見に行きましたね。カラックスを意識していたかは覚えてませんが、予告編だけで圧倒されました。本編を観ても、これこそが自分が信じる映画だという興奮がありました。
聞き手・構成: 岡本英之
    写真: 石川ひろみ
  • 『岩井秀世(いわい・ひでよ)』
    主に映画の配給宣伝、制作など。

    ★今後の公開予定
    伊藤めぐみ監督『ファルージャ イラク戦争 日本人人質事件 …そして』
    12月7日(土)よりバルト9ほか一週間限定公開。以降2月に本公開予定。
    http://www.youtube.com/watch?v=IbunyebOJLE

    大木萠監督『花火思想』
    14年1月25日(土)よりユーロスペースにてレイトショー
    http://www.youtube.com/watch?v=95u0cmhVfvk

    真利子哲也監督ドラマ『あすなろ参上!』
    上映展開を現在、企み中
    http://www.youtube.com/watch?v=mvFUogmtG4g