LOAD SHOW

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映画の未来をいち早く
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♯46「映画と私」飯塚俊光(映画監督)

「映画とあなた」のあいだにある物語を知りたい。幼少期の記憶から映画との現在まで。

「面白いから観ようよ」って母親に起こされました

職業は、映画以外に映像を仕事としても制作しています。肩書きは、本当に悩ましいです。現在、『独裁者、古賀。』の公開準備と並行して、短編作品を夏位に撮る予定があるのと、長編映画の企画を進めています。
生まれは、神奈川県相模原市です。小さい頃は、市民会館で映画を観た事はありますけど、映画館も家の近くには無かったので、あまり観に行った記憶はないんですよね。明確に自分の意思で映画館に行ったのは、小学生の頃に友達と町田の映画館で観た『ターミネーター2』(監督:ジェームズ・キャメロン/91)ですね。とは言っても、映画といえばTVの金曜ロードショーで観る事がほとんどでしたね。TVで観た『ターミネーター』(監督:ジェームズ・キャメロン/84)、『スタンド・バイ・ミー』(監督:ロブ・ライナー/86)は印象に残っていますね。母親が映画鑑賞や本を読むのが好きだったので、面白い作品があると一緒に観ようよって勧めてくるんです。母親と一緒に『天空の城ラピュタ』(監督:宮崎駿/86)を観ましたね。夜、寝てる時に母親に起こされたんですよ。「面白いから観ようよ」って。よっぽど観て欲しかったんだと思います。
小学校から高校まで、ずっとバレーボールをやっていました。小学校の時には、県大会2位になったこともあるんですよ。僕もレギュラーだったんです。そのメンバーが、そのまま中学校に行くので当然強くて、市の大会ではずっと優勝していましたね。高校に進学する時には、バレーボールの強豪高校に行きたいって思いはありました。でも、先生によく考えろって言われて強豪高校に行くのはやめました(笑)。

プログラミングと映画制作の共通点

高校生の頃は、アメリカ人の同級生がいて、彼は映画がめちゃくちゃ好きで、それで映画館にもよく行くようになりました。『ミッション:インポッシブル』(監督:ブライアン・デ・パルマ)は、日本でまだビデオレンタル化されてない時に彼が直輸入のDVDを貸してくれて観てましたね。日本語字幕は無いのですが、アクションが凄くて楽しかったんです。その頃は、エンタメ映画ばかり観てましたね。単純に映画を観るのって楽しいなと思っていて、映画を作ろうとは全く思っていなかったです。なかなか僕の話から映画作りの話には行かないんです。
大学はコンピューター系の学校に行くんですよ。じゃあ高校の頃に、コンピューターをよく触っていたかというと、これが全然やってなかったんです(笑)。ただ、これからはパソコンなんだなっていうのが明確にあって、今のうちにやっておけばこの先困らないんじゃないかなと思って行きましたね。
大学では、経営学部情報処理学科でアプリケーション開発の勉強をしていました。それが、今思うと映画に役立っているような気がしますね。プログラムを書くっていう事が、映画のプロットの構成とかに繋がっていてですね。伊坂幸太郎さんもSE(システム・エンジニア)出身なんですよ。伏線をいっぱい張って、うまく回収していくじゃないですか?ああいうのって、多分プログラム的な考え方がある感じがして、アルゴリズムというか。数式を解いていく能力が、映画に活かされてるのかなと思いますね。大学時代は、ずっとプログラミングにのめり込んでいましたね。脚本を書くのと一緒でやり始めると止まらなくなっちゃうんですよね。そういうのが気持ち良かったんです。その頃は、暇な時に単館の映画館にも行くようにはなっていて、SABU監督の映画なんかを観ていましたね。邦画に興味を持つ大きなきっかけになったのが、北野武監督の『キッズ・リターン』(96)でした。ハリウッド映画などのエンタメ作品をずっと観てたんですが、日本映画にもこんなに面白い作品があるんだと思ったんです。
大学出た後にWEB系の会社で働くんです。クリエイター志向の仲間がたくさんいたので、そこの仲間達と映像作品を撮った事がありまして、それが初めての映像制作でしたね。監督は決めずに、その日に来れる人で作っていったんです。完成はしたんですが、結局はお蔵入りで、仲間内で観てお終いでしたけどね。それがきっかけにもなり、一から映像制作を学びたいと思い、働きながら夜間学べるニューシネマワークショップに入ったんです。年を重ねていくと路線を変えてチャレンジするのが難しくなるなと20代半ばの頃に思っていて、この年代で何か一つ違う事をやってみないとっていうのがあったんです。

弱い人間が何かに立ち向かう

入ってみて思った事は、みんな映画監督目指して来てる訳じゃないですか?学校の中だけでも監督として選ばれるのは数人だけで、学校から出たらもっと競争率が高くなるって考えると大変な世界に足を踏み入れたなと感じましたよ。周りを気にするってよりも、どうやったら勝てるんだろうって事をずっと考えていましたね。この前、久しぶりに自分が学校を卒業して初めて撮った『行けよ、千葉。』(10)という中編作品を観たんですよ。やっぱり当時からエンタメ路線だったんだと思いました。なので、始めた当初から作品の方向性っていうのは、あまり変わってない気がします。自分が感情移入出来るのは、弱い人間が何かに立ち向かうみたいな形で、その設定を最も作りやすいのが「学校」という舞台設定だったんですよ。ガラパゴス化した社会の中で、話が進んでいくのが好きなんですね。だから、高校生ものっていうのが、自分の作品では多いんだと思います。
伊参スタジオ映画祭シナリオ大賞で『独裁者、古賀。』が大賞を獲った事は大きなきっかけとなっていて、まさか大賞を獲れるとは思っていなかったですが、脚本が評価されたのは自分としては想定外ではなかった気がします。僕は小説が好きでよく読んでいて、ものを書く上では文章が好きかどうかって大きいじゃないですか?脚本は小説とは違うんですけど、書く事に対しての抵抗感がなかったのがメリットになっていたと思います。もう一つは、プログラムをやって培った構成力もやはり武器になっているんじゃないですかね。学校に行ってみると、意外と映画監督やろうと思っていても脚本をなかなか書けないって人が多いんですね。

ラッシュの感動

『独裁者、古賀。』を撮った後に(『独裁者、古賀。』に関しては別記事にて以前掲載 http://culture.loadshow.jp/interview/movies-high14-interview/)、文化庁より委託を受けVIPO(NPO法人 映像産業振興機構)が実施・運営している「ndjc:若手映画作家育成プロジェクト」に参加しました。まず、書類選考で通過した15名が5分の短編を作るワークショップがあるんですよ。応募時に提出する書類(プロット・脚本、過去に作った作品DVD等)と、5分の短編を総合的に見て最終的に5人選ばれるんです。その5人に選んで頂き35mmフィルムで『チキンズダイナマイト』(14)という30分の作品を撮りました。35mmフィルムで撮るのは初めてだったので、ラッシュの感動というのはありましたね。
撮影時にプレビューが出来ないので、フィルムの質感含めて、どういう映像になっているか分からないんです。IMAGICAのスクリーンでラッシュ(撮影したフィルムを映写用フィルムにしたもの)を観た時に、「おお、これか」って感動しましたね。現場での演出に関しては、デジタルだろうがフィルムだろうが大きな違いは無いと思いました。違う所と言えば、テイクを重ねるとフィルム代が掛かるから、ワンカットに対しての集中力っていうのはフィルムの方が強いと思いましたね。とにかく毎日、勉強と反省の繰り返しでした。

次の新しいフォーマットを見つけたい

今後についてですか?『独裁者、古賀。』のフォーマットってあると思っていて、弱者が修行して立ち向かっていくという。『チキンズダイナマイト』も、そういう作品なんですね。その自分の中のフォーマットは、もういいかなと思っていて。次の新しいフォーマットを見つけたいなという思いがあるんです。それと、女の子を主役にしたいっていうのもあります。ヘタレな男を主人公にすると、どうしても自分と同化させてしまうんですよ。自分が見た事あるような女性で、この人だったらこういう風に考えるかなっていうのを作品に入れていきたいんです。もうちょっと俯瞰で登場人物を描いてみたいなと思っているんです。エンタメだと必ずしも自分を投影する必要は無いかなとは思いますね。90分くらいでズバって終わる映画が好きなので、自分も次はそれ位の尺のものに挑戦してみたいです。僕はエンタメ志向なので、青春エンターテイメントはこいつに任せようと、僕の名前が出てくるようになってくれたら嬉しいですよね。

飯塚俊光監督作品『独裁者、古賀。』

7月18日(土)~31日(金) 10時50分より新宿K’s cinemaにてモーニングショー

【Story】
高校生の古賀祐介(清水尚弥)と副島裕子(村上穂乃佳)は冴えない高校生活を送っていたが、みんなから押し付けられるように面倒な学級委員に選ばれてしまう。ある日、同じクラスの青木(臼井千晶)と本田(輿祐樹)にいじめられている古賀を副島がかばった事から、いじめの標的が副島に移り、ついに不登校になってしまう。数日後、担任の岡本先生(松木大輔)から授業のプリントを届けに行くよう頼まれた古賀は、何度か副島の家を訪れる。次第に彼女に思いをよせる様になった古賀だったが、副島から受け取った大切な手紙を青木に奪われてしまう。古賀の何かが変わろうとしていた。その時、彼の前に現れたのが幼い時にいじめから助けてくれた黒柳(芹澤興人)だった・・・。
取材・構成・写真: 川邊崇広
『独裁者、古賀。』
キャスト:清水尚弥、村上穂乃佳、芹澤興人、臼井千晶、輿祐樹、松木大輔、大出勉、杉崎佳穂、坂場元、竹本実加、細川岳、菅井知美、町田佳代、福井成明、関根航、ほりかわひろき、山口遥、須田浩章、長岡明美

監督・脚本:飯塚俊光

撮影:幡川和雅/ 録音:堂坂武史/ 編集:飯塚俊光/ 音楽:小島一郎/ 美術:佐藤美百季

プロデューサー:露木栄司/製作・配給:「独裁者、古賀。」製作委員会/企画製作:伊参スタジオ映画祭実行委員会/制作協力・配給協力:ニューシネマワークショップ

  • 『飯塚俊光(いいづか・としみつ)』
    1981年生まれ。神奈川県出身。2007 年よりニューシネマワークショップ(NCW)に通い映画制作を学ぶ。2008 年、NCW 在学中に制作した作品「SEMICONDUCTOR」が西東京市民映画祭で入選。次いで制作した作品「行けよ、千葉。」はTAMA NEW WAVE、成城大学映画祭など様々な映画祭で入選また上映される。今作で伊参スタジオ映画祭シナリオ大賞2012中編の部大賞受賞、高崎映画祭2014 招待、福岡インディペンデント映画祭2014 準グランプリ、PFF(ぴあフィルムフェスティバル)エンタテインメント賞受賞を果たしている。文化庁委託事業・ndjc若手映画作家育成プロジェクト2014の監督に選出され、制作した短編映画『チキンズダイナマイト』(15)は角川シネマ新宿などでの上映で好評を博す。