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♯44 「映画と私」竹内里紗(映画監督)

「映画とあなた」のあいだにある物語を知りたい。幼少期の記憶から映画との現在まで。

口が達者で正義感の強い女の子

映画監督の竹内里紗です。小さなころの映画の思い出は…なんだろう(笑)。アニメ映画をよく見ていた気がします。それと、母が図書館から映画を借りてきてくれて、『ネバーエンディング・ストーリー』(84年/ウォルフガング・ペーターゼン)みたいなファンタジー映画を見ていました。でも、特別映画好きというわけではなかったと思います。ただ、小学校5、6年の時に自分たちで映画を撮りましたね。

私は幼稚園くらいまでとても引っ込み思案で人見知りするタイプだったんですけど、小学校入学してからは徐々に口が達者になっていき正義感の強い、リーダーシップのあるような子に変わっていきました。「ちょっと、男子〜」みたいなことを言う生徒だったと思います(笑)。クラスで塾に通ってる子が少なかったから、塾に通う私はなんとなく優等生ポジションだったと思います。学級委員をやったり、行事をまとめる係をしていたんですよ。

小学校5、6年生の時には放送委員に入っていたんですけど、そこでお昼休みに流すミニ番組を制作していて、その一環で短編ホラーを撮りました。当時は、『リング』とか『呪怨』シリーズのようなJホラーが流行っていたので、その影響だと思います。撮影はハンディーカメラを使って、編集は機材がないからカメラ内編集。それが、考え方によっては初監督映画になります(笑)。

どんな撮影をしたのかは覚えていないんですけど、ドリー撮影の真似事のようなことをしたのは覚えています。遊びの延長でやっていたので、特に今後も続けていきたいみたいには考えませんでしたけど、楽しかったですね。私は放送室にいたので周りからの評判はわからなかったんですけど、「よくやるなあ」みたいなことを言われていた気がします。

突如、内向的になってしまった中学・高校時代

ただ、そんな楽しかった生活も続かず、私立の中間一貫校に入って、なんというか挫折してしまったんですよね。小学校の時はわりと人気がある方だったのですが、受験して入学した私立の学校は、みんな頭良いし、かわいいし、おしゃれだしっていうんでびっくり。「今までみたいには振舞えない!」って(笑)。それでも最初のうちは、今まで通り仕切るタイプの生徒だったんですけど、中学3年生の時に、突如内気になってしまって、あまり人と話さないようになってしまいました。幼稚園のころの人見知りの私に戻ったようなんです。

その時くらいから、日記を書いたり、小さな物語や詩を書いたりすることを始めました。空想癖を持ち始めたんだと思います。多分、私の根っこは文化系なんでしょうね。ちなみに現在公開中の『みちていく』は女子高が舞台なので、女子校出身と思われることがあるのですが、共学でした。陸上部にも入っていません(笑)。

パタンと気持ちが切れてからは、不意に学校を休んだりと、ふらふらしていて。そしたら、みるみる成績も落ちていく。だからそんな状態を克服しようとおもって、思い切って東大進学の目標を立てたんです。でも、受験の半年くらい前にまた突然、スイッチが切れてしまい。「東大に行ったところでこの状況は何も変わらないのに何してんだろう?」って思ってしまったんです。

それで前から心理学に興味があったので、たまたま見つけた立教大学の現代心理学部を志望しました。自分の精神状況はどういうものだったのかって解明したいって思ってたんです。でもまたまた土壇場で心理学科でなく映像身体学科の方を選んだのは…、映像がしたいという訳ではなくて、なんとく今迄のことに縛られなくてよさそうな印象を覚えたからです(笑)。

山中貞雄作品に衝撃を受けた、大学の授業

大学に入学して「シネマトグラフ」という映画サークルに入りました。その時は、脚本を書きたいと思って入ったんです。他にも、できたばかりの友達もみんなシネマトグラフに入っていたので。

そしたらすぐにサークルの合宿があって、私の脚本で10分くらいの映画を撮ることになったんですが、その時、直感的にですけど「このサークルを辞めることはないな」と思ったんです。ということは、これからも映画を撮っていくことになる。それならば、「合同制作」という一年生が夏に映画を撮るコンペ形式の企画に通りたい。そのためには、映画の勉強をしなくてはいけない。映像身体学科は「ダンス」や「広告」「演劇」など色々学べるのですが、そういった理由で映画の授業ばかり取ったんです。

そしたら、大学の講義で教わる映画の授業が難しいこと。まず、カタカナを書き取るのが大変で(笑)。ブレッソンについても「ロメール?ロベール?どっち?」って。だから最初はあまり授業にのれなかったんですよ。しかも周りは映画に詳しい人ばかりで温度差を感じる一方。そんな時に、万田邦敏教授の演出の授業があったんです。理論ではなく、実際に身体を動かす授業なので、面白くて、すごい助けられました。

他にも、社会学者の中村秀之教授の授業が好きでしたね。色々な映画を見られる授業なんですが『丹下左膳餘話 百萬兩の壺』(35年/監督:山中貞雄)を見させてもらった時は「うわあなんだこれ!」って衝撃が走りました。すごいシンプルな話なのに刺さるものがあって。中村教授の解説もすごく面白いんですよ。

それで、その授業の学期最後に『キッズ・リターン』(96年/監督:北野たけし)のレポート課題が出て。そこで初めて、一本の映画を何回も見るという経験をしたんです。すると、色々な演出のポイントがわかってきて。カタカナばかりの授業は苦手でしたけど、映画って面白いってことに段々と気がついていきました。

映画は真剣にやっている人には答えてくれる

若干の勉強の甲斐あってか、映画サークルの夏のコンペは無事通り、撮影に入りました。その時経験した「みんなで撮る」という体験がすごく楽しかったです。それが…、上映の不安と色々なことが重なって、学校を休学してしまったんです(笑)。このことを親に聞かれたら怒られてしまいますけど。上映が怖くなって、学校に行くのが嫌になっちゃったんですよ。

編集は途中でしたけど、みんなが完成させてくれて。上映の時には先輩から「来たら気持ちが変わるから」と連絡をいただいたんですけど…、無視してしまって結局行きませんでした。

ただ、上映自体はすごく評判が良かったみたいで、まだほとんど面識がなかった万田先生からメールが届いたんです。そこには、演出についての感想が色々書かれていたのですが、末尾に「映画は本当に真剣にやってる人には答えてくれるんですね」と書いてあって。その言葉で「最後になって逃げるのは絶対に良くない」と気づくことができました。

またある時、先輩が万田先生と一緒に私が作った映画を見ながら話をする機会を作ってくれたんです。そこで、「映画をみんなで作る」「その映画についてみんなで話す」そうやって映画と関わることで、不安定にならず生きられるって思えたんです。そこから心が切れてしまうことはありませんでした。私にとって18〜19歳というのは「映画を見るという体験」と「作るという体験」、「心の浮き沈み」を一気に経験した年になりました。

最初か最後の映画『みちていく』

現在、渋谷ユーロスペースで公開中の『みちていく』は、私の映画制作にとって最初か最後の映画になるだろうと思って作った映画でした。というのも、学内では面白いと言ってもらっているけど、外ではどのくらい通用するのか分かっていなかったので、もし映画祭などのコンペで評価されなかったら、私は映画をただ楽しく作っていたかっただけから、映画制作を志すのは辞めようと考えていたんです。

そして、「もしコンペに出すなら最善を尽くさないと」とも考えてもいました。そうでないと一緒に作ってくれているみんなにも失礼だし、映画にも失礼なので「よい映画を撮る」という選択肢以外なかったんです。

現場に関しては、小さな扇風機で風を吹かしたり、雨のシーンを作ったりして画面が止まらないように心がけました。映画って内容じゃないところでも感動したりするじゃないですか。気まぐれに動くもの、風や水ですね。そういうものを現場で取り入れ、常に画面が運動しているようにしたいと思っていました。

俳優に関しては、山田由梨さんとはこれまでに私の作品で3作出演してもらっていて、毎回、力を入れるときは必ず出演してもらっていました。飛田桃子さんは入学当初から仲が良く、可愛いので俳優としても目をつけていたんですが、『くじらのまち』(12年/監督:鶴岡慧子)という映画に出演している彼女を見たときに、私も彼女で撮りたいと思いオファーしました。

今は、上映されることについては、《みんなが思ったこと》と《自分が思ったこと》の間に線引きができたので、恐怖はありません。コンペに応募してみて、どんな評価や感想を頂いても私にとっての『みちていく』の価値は変わらない、ということがわかったんです。演出についての指摘などはよく聞いて、次に活かそうとは思っていますが。

まとめると、『みちていく』という映画は私が21才なりに世界について背伸びしないでわかることと、映画について背伸びしないでわかることをぎゅっと凝縮して固めたって映画なんです。それだから、私はこれからも変わっていくけれど、この映画は私の一番の原点になるのかなって思います。

今は東京藝術大学大学院映像研究科に通っています。新たな学校でいろいろな刺激を受けていますが、基本的には人間の心情やドラマを題材にすることからは離れないだろうなと思っています。やっぱり私はそれを描きたくて映画を作っているので。

『みちていく』は立教での4年間で学んだことの総まとめという気持ちのほうが強かったので、これからは自分ができるかもしれないけどできないかもしれないと思うようなことに積極的に挑戦して行きたいです。

竹内里紗監督作品『みちていく』2015年6月27日〜7/17(金)まで、渋谷ユーロスペースにてレイトショー!他、全国順次公開予定

■上映館
渋谷ユーロスペース(住所:東京都渋谷区円山町1−5)
http://www.eurospace.co.jp/
■上映イベント
7月6日(月)21:10の回 上映後
ゲスト:福原充則さん(劇作家)
■公式サイト
http://www.michiteiku.com/
■公式Twitter
https://twitter.com/michiteiku
■公式Facebook
https://www.facebook.com/michiteiku?fref=nf
取材・文:島村和秀
『みちていく』

【Story】

「新月の日にお願いごとすると満月の日に叶うんだよ――」 歳の離れた恋人に身体を噛んでもらうことでしか自分を実感できない陸上部のエースみちる(飛田桃子)。生真面目で部員たちに疎まれる部長の新田(山田由梨)。夏も近づくある日、みちるは新田の大切な日誌を黙って持ち帰ってしまう。日誌には毎日の練習がびっしりと、そして部員たちの悪口とともに「梅本みちる―なにも考えてなさそう」と書かれていた。みちるは新田の家を訪ね、自分の秘密を打ち明ける。満たされない2人は正反対の性格に惹かれ合い友情を深めていくが、夏休みを目前に新田が部活をやめてしまう…。

(2014年/HD/カラー/1時間29分)

監督・脚本・編集:竹内里紗

出演:飛田桃子(『くじらのまち』主演) 、山田由梨( 劇団「贅沢貧乏」主宰)、鶴田理紗、西平せれな、崎田莉永、山口佐紀子、篠原友紀、宮内勇輝、泉水美和子、小野孝弘

撮影:松島翔平/照明:山田陽一朗/録音:鈴木冴・岩崎紀子/助監督:武隈風人、鈴木冴/音楽:金光佑実/宣伝美術:石塚俊/協力:立教大学、万田邦敏/宣伝協力:髭野純 /制作・配給:シネマトグラフ/配給協力・宣伝:トラヴィス細谷
  • 『竹内里紗監督(たけうち・りさ)』
    立教大学 現代心理学部 映像身体学科卒業。同大学の映画サークル「シネマトグラフ」に所属、映画制作に励む。また、万田邦敏監督に師事し、演出の基礎を学ぶ。卒業制作作品『みちていく』で第15回 TAMA NEW WAVE コンペティションでグランプリ、ベスト女優賞(山田由梨)を受賞。また、第12回うえだ城下町映画祭 大賞を受賞。2015年6月27日より、渋谷ユーロスペースにてレイトショー公開。9月には名古屋シネマテーク、大阪シアターセブンでも公開予定。現在は東京藝術大学 大学院 映像研究科学生。