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#01『映画と私』 吉田良子さん(映画監督・脚本家)

「デパート近くの映画館で、夢中になって映画を見ていました」

映画の監督をしています(姫野カオルコ原作、岩佐真悠子主演『受難』が、2013年12月7日より全国ロードショー)。監督だけでなく、他の監督作品の脚本家として執筆することもあります。普段は監督・脚本で、自分がどう撮りたいかを人に伝えるために書いているところがありますから、脚本だけを担当するのは難しい部分もありますね。自分の書きたいことがはっきりしてないと書けないというのは当然として、様々な立場の方からの意見を自分なりにシナリオに落とし込んでいく必要がありますから。その場合、自分の意見は入り込む余地がないんですけど、かと言って、それが全くないと筆が進まないわけですし、その辺りのバランス感覚ですよね。
最初の映画体験は、小学校低学年の頃なんですが、デパート近くの映画館でよく映画を見ていたんです。母が買い物や用事で出かけるときに、映画館で帰りを待っていたんですね。とは言え、待っていたという感覚は全くなくて、母も「遊んでおいで」という感じで、私は夢中になって映画を見ていました。最初に何を見たかは、はっきりと覚えてないんですけど、『蜘蛛女のキス』を見た記憶はありますね(笑)。他に断片的に覚えているのは、戦争映画とか、吉川晃司主演の何か、あとはガンダムなんかのアニメーション。選ぶというよりは、そのときに上映している作品を見ていました。映画館の暗闇にわくわくするというか、とても楽しかったですね。知らないお姉さんが一緒に見てくれたこともありました。
自分で見たいと思って、ひとりで映画館に見に行った最初の作品は、『プロジェクトA』(1983/監督:ジャッキー・チェン)ですね。私はジャッキー・チェンが本当に大好きなんですけど(笑)、当時自転車で通える距離に、二番館というか市民会館のような場所があって、公開から少し遅れで新作映画を上映していたんです。最初は母と見に行ったんですけど、あまりに面白くて、「もう一回見たい!」みたいな感じで、ひとりで更に2回見に行きました(笑)。小学校3,4年の頃のことです。ジャッキー・チェンとの出会いは、「ゴールデン洋画劇場」ですね。『蛇拳』や『酔拳』が凄く面白くて好きになったんですけど、あのカンフーのお兄さんが出てる映画が上映されるらしいと聞いて見に行ったのが、『プロジェクトA』というわけです。私は一度好きになると熱烈に好きになるタイプなんですけど、当時他に好きだったのは『ネバーエンディング・ストーリー』(1984/監督:ウォルフガング・ペーターゼン)で、それも3回見に行きました。
ずっと王道というか、ジャッキーはもちろん、例えば『バック・トゥ・ザ・フューチャー』(1985/監督:ロバート・ゼメキス)みたいなハリウッド映画が好きだったりしたんですけど、色々と見るようになったのは10代後半になってからです。レンタルビデオ屋さんで映画を借りるようになって、あるとき、「1本しか置いてないような映画って、どんな映画なんだろう?」って、ふと思ったんです。新作や人気作は何本も置いてありますよね。それで、1本しか置いてないような、いわゆる大作でない、日常に寄り添ったような映画を見始めたんです。この1本に出会ってみたいなのはないんですけど、ただ、その頃のことで覚えているのは、そうした作品を見ながら、「さみしいと思っていいんだ」という感情を抱いたことですね。当時は90年代まっただ中、ミニシアター文化の華やかなりし時期で、ある種のカルチャーとして映画が存在している感じでした。カフェでお茶をしていても、おしゃれなチラシが並んでいたり。友達とも情報交換をしたりしながら、映画を見ていましたね。

「カメラを覗いたとき、すごく楽しかった。「わあっ!これだ!」って感じで」

私は中学校時代から、特に理由もないんですけど、ずっと美容師になりたかったんです。それで美容学校を出て、美容師の道を歩むんですけど、実際に働いてみたら、それまで抱いていたイメージと全く違ったんですね。全然向いてないなと。ずっと美容師になることしか考えていなかったので、「もう私にはなんにもないぞ」という状態になりました。けれど、21歳と若かったですし、「もう1回失敗できるな」って思えたんです。じゃあ何をしようかって考えたときに、「映画が好きだな」って。それで映画美学校へ入学をしたんです。映画監督になりたいとか、そういうことではなくて、自分が楽しいと思える場所で働くために、少しその世界に近づいてみようという気持ちでした。
美学校に入学してからなんですが、正直に言うと、これも向いてないかもって思ったんです(笑)。周りはしっかりした映画の知識を持った人達ばかりで、「私なんかがくるところじゃないな」って。実際、辞めようかどうしようか迷ったりもしました。そんなとき、30秒課題という、16mmカメラで好きなように撮っていいよ、という課題があったんですけど、それでカメラを実際に覗いたときに、すごく楽しかったんですね。「わあっ!これだ!」って感じでテンションが上がって。具体的にカメラをやりたくなったとか、そういうことではないんですけど、「楽しいからちょっと頑張ってみようかな!」って。それで、「勘違いのままどこまでいけるかな」って気持ちで続けたことが、今につながっている感じです。
その後、美学校を出て、『ともしび』(2004/主演:河井青葉)という作品を撮ることになるわけですが、きっかけは美学校の講師だった瀬々敬久さんが、私が美学校高等科のときに書いたシナリオを覚えていてくれたことです。それで、あのシナリオで撮ってみないかって、声をかけて貰って。今回劇場公開される『受難』の企画が持ち上がったのは、2005年のことなんですけど、それはプロデューサーが『ともしび』を見て声をかけてくれたんです。私の前に、別の監督で進んでいた時期も合わせると、10年越しの企画ですね。当時シナリオを書き上げるところまではいったんですけど、主演をしてくれる女優さんが見つからなかったこともありますし、なにしろ私はど新人でしたから。それで一度企画が頓挫して、「わぁ!ショックだ!」ってなるわけですけど、じゃあ自分の一番やりたいことはなんだ?って考えたときに、カンフー映画を撮ろうと。「桃まつり」という企画で上映されたんですが、『功夫哀歌 カンフーエレジー』(2008)という作品です。とにかく楽しくやれたらいいなという気持ちで撮影しましたね。その後、「ポルノチック」シリーズの1作、『惑星のかけら』(2011/主演:柳英里紗、渋川清彦、河井青葉)を監督するんですが、そのこともきっかけになって、もう一度『受難』の企画が動き始めることになります。

「どうにかしてわかりたくて、知りたくて、やってみる、その繰り返しです」

今回の『受難』で、3本目の商業映画を監督したことになるんですけど、3本とも主演の女優さんに脱いで貰ってるんですよね。毎回強く思うことなんですけど、女優さんにとって、ファンが増えたり、次の仕事につながったりはもちろん、脱いだ意味のある作品にしなければと思っているんです。『受難』は内容的にも、公開規模的にも、そのプレッシャーは強かったですね。そうした責任感は当然ありつつも、撮影現場は楽しかったですよ! 私だけが楽しかったんじゃないかと思うくらい(笑)。私特有のリズムですか? 確かに映画のリズムは気持ち悪いってよく言われますね(笑)。影響されてるんだろうなと思うのは、ツァイ・ミンリャンだったりします。一見どうでもいいような画面が延々と続いたりしたときに、最初は退屈なんですけど、それが段々と面白くなってくるんですよね。「わっ!まだ回す!?」みたいな感じで(笑)。あとは(アンドレイ)タルコフスキーの『ストーカー』が大好きで、これも最初は退屈だったんですけど、理由はわからないんですが、何かの瞬間にすごく面白くなっちゃったんです。
最近よく、「女性が撮るエロってなんですか?」ってインタビューで聞かれるんですけど、毎回わからないとしか返せないんです。これは映画全般に対して思うことなんですけど、わからないことの連続なんですよね。どうにかしてわかりたくて、知りたくて、やってみるんですけど、それで答えが得られたってこともなくて、また新しくわからなくなって、それでまたやりたくなって。その繰り返しですよね。リズムのことですけど、『惑星』のときに、プロデューサーから「お前は自分のリズムで刻んでる、理屈で刻まなきゃ駄目だ」って言われたことがあるんです。構成とか編集点を自分のリズムでしか考えてないってことなんですけど、どうしても修正できなかったりして。この先も自分のリズムが具体的にどういうものなのかはわかりそうにないですね(笑)。
『受難』は老若男女問わず、たくさんの人に見にきて欲しいと思っています。例えば「こじらせ女子」みたいに、人って往々にしてカテゴライズされることがあると思うんですけど、勝手にカテゴライズされることが嫌だって人もいると思うし、逆に、なるほど自分はそうなのかって安心する人もいると思うんです。けれど、そのどちらにも該当しないというか、自分がどこにはまるのかも分からないし、カテゴライズされることが嫌なのかどうかもわからないという、もはや迷い子って人もいると思うんですね。私には『受難』主人公のフランチェス子って、何女子なのかはっきりとわからないんですけど、変わり者だし、突き抜けたキャラクターの彼女を見て、周りと自分が違うってことなんか、ことさら深く考えずにやっていくのもありなんじゃないかって思ってもらえたら嬉しいですね。世の中には自分の常識の範疇を超えた人間もいるんだなって!

あのときの一本

『イン・ザ・スープ』(1992/監督:アレクサンダー・ロックウェル)
シーモア・カッセル演じる「ジョー」の台詞、「解り易い、ラブストーリーを作れ!」の台詞が聞きたくて何度も繰り返し見ます。そしてチャチャチャのダンスも。劇中に『ストーカー』のポスターも貼ってあったり。
聞き手・構成: 岡本英之
    写真: 石川ひろみ
『受難』
(c)2013姫野カオルコ・文藝春秋/「受難」製作委員会
2013年/日本/カラー/95分/R15
出演:岩佐真悠子/淵上泰史 伊藤久美子/古舘寛治
原作 姫野カオルコ「受難」(文春文庫刊) 監督・脚本/吉田良子/音楽/大友良英(「あまちゃん」)
製作:重村博文、小西啓介、宮路敬久/プロデューサー:山口幸彦、小林智浩、宮崎 大/撮影:芦澤明子/製作:キングレコード、ファントム・フィルム、日本出版販売/製作プロダクション:アグン・インク/企画協力:文藝春秋/配給:ファントム・フィルム
天涯孤独でずっと修道院生活育ちの汚れなき乙女、フランチェス子(岩佐真悠子)。 社会に出てもどうして男女は付き合うのか?なぜセックスをするのか?という疑問に真剣にぶつかり悶々とする毎日。そんなある日、彼女のオ××コに突然、人面瘡ができる。しかもその人面瘡は、「お前はダメな女だ!」と主人である彼女を日々罵倒する相当にひねくれた人格の持ち主。ところが彼女は人面瘡を“古賀さん”と名付け、罵詈雑言を浴びながらもけなげに共同生活を送るのだが・・・。
12月7日より、全国ロードショー
公式サイト : http://junan-movie.com/
  • 『吉田良子(よしだ・りょうこ)』
    1976年 神奈川生まれ

    1999年 映画美学校 第3期フィクションコース 入学
    2004年 長編映画「ともしび」 渋谷ユーロスペースにて公開
    2006年 短編 「Toi et moi」 X-TVにてWEB公開
    2008年 短編 「功夫哀歌/カンフーエレジー」
    「桃まつり」内の1作品として渋谷ユーロスペースにて公開
    2011年 長編映画「惑星のかけら」 銀座シネパトスにて公開
    「ポルノチック」内の1作品として銀座シネパトスにて公開
    2013年 長編映画「受難」 シネマート新宿、他にて公開予定