LOAD SHOW

A Rooted Soul. Vagabond Eyes.

映画の未来をいち早く
Be the first to witness the future of films

♯42「映画と私」柴田啓佑(映画監督)

「映画とあなた」のあいだにある物語を知りたい。幼少期の記憶から映画との現在まで。

海外旅行に憧れる気分と一緒

職業は映画監督と言いたいところですが、食いぶちとしては助監督など映像制作のスタッフになりますね。映画監督と名乗れるように頑張りたいと思っています。最近では、テアトル新宿で6月6日に公開される『ひとまずすすめ』で去年色んな映画祭をまわった後に、今年の2月にWEBで公開された『背比べのあと』というショートムービーも撮らせてもらいました。
僕は生まれが静岡県の静岡市でして、いまは都会感出てるんですが住んでいた当時は田舎でしたね。市の中心部からバスで30分くらいの所に住んでいたんです。小さい頃は、「ゴジラ」や東映映画祭りに行くっていうのはありましたけど、映画館に行くよりビデオレンタル屋を利用する事が多かったですね。『バック・トゥー・ザ・フューチャー』を親が借りて一緒に観てました。ただ、親は映画より音楽好きな人だったので、映画好きに囲まれる事もなく幼少期を過ごしました。
小学生の時はソフトボールをやっていて、県で優勝した事もあったんですよ。中学生になってからは、漫画の「スラムダンク」ブームがあったので、バスケを始めましたね。でも、高校に入ってからまたソフトボール部に入ったんです。高校は桐蔭学園で野球がめっちゃ強い学校だったので、緩くやれるのはソフトボールだなと思ったんですね。放課後の遊び程度でやっている集まりだったので、すぐにレギュラーになれました。部活は一週間に2回くらいしかなかったので、部活ある日以外はほとんど学校に行ってなかったんです。生活も夜型になっていって、音楽とか映画に興味を持ち始めたのはその頃です。
音楽はパンクとかを聴いていて、映画も付随してオシャレな感じのものに惹かれて、『トレインスポッティング』(監督:ダニー・ボイル/1996年)などを観ていました。雰囲気が好きとか、要は海外旅行に憧れる気分と一緒ですよ。僕は洋画の方が好きだったんです。知らない海外が観れて、あの世界に行きたいって思ってましたね。進学校っていうのもあってか、周りの友達とは映画の話はしてなくて、唯一音楽の話は趣味の合う友達としていました。

初映像作品は友達の誕生日ムービー

高校卒業した後は一浪しました。横浜の予備校に通っていた時に仲良くなった女の子が映画を沢山観てる子だったんです。その子と結構映画を観に行ったんですよね。付き合ってはいなかったんですけどね。そんな事にうつつをぬかさないようにと(笑)。でも、映画はよく観に行っていて、横浜駅西口すぐの地下にあったヨコハマ・シネマ・ソサエティがすごい好きで行ってました。そこで、『アバウト・シュミット』(監督:アレクサンダー・ペイン/2003年)を観ていたら、台風で水が入ってきて中止になったんですよ(笑)。場所が狭いので、場内の中に売店があって、ポップコーンも売っていて、匂いがする中で観るんです。独特でしたね。
予備校時代は時間があったので、映画以外にライブにも行くようになりました。高校生くらいの時からGOING STEADYが流行っていたので、それでよく観に行っていて。ライブに行って、映画観てっていう日々でしたね。と言っても、そんなに高尚な映画は観てなかったです。シネコンでやってそうな映画ばかり観てました。
その後、横浜市立大学の理学部に入って、大学って華やかな人達とダメな人達に分かれると思うんですが、僕はダメゾーンにいまして(笑)。地元でカラオケのバイトを始めてから、学校にも行かなくなりましたね。バイトの仲間の中に、写真をやってる人など色んな人達がいて、いまだに仲良いんですよ。その出会いで映画も沢山観るようになって、その頃からようやく単館系の映画も観るようになりました。シネマライズでガス・ヴァン・サントの『エレファント』(2003年)や『ラスト・デイズ』(2005年)を観に行きましたね。あとは、恵比寿ガーデンシネマでダルデンヌ兄弟とウディ・アレンの映画を好んで観に行ったりですね。段々と観る映画の幅が広がっていったんです。
映像を作るようになったのは、バイト先の仲間の誕生日ムービーで、ハンディカムで撮って、プレミアっていう編集ソフトを買ってカット編集だけやれるようになりましたね。バイト先にモニターがあって、DVDを流したんです。そういうイベント事をやるのが楽しかったんですね。だから、映像制作の始まりとしては映画ではないし、すごい映画好きって訳でもなくて、とにかくみんなで何かを作って誰かに喜んでもらえるのが楽しかったっていうのがきっかけなんですよ。

自分の無力さを痛感

大学4年の時に研究室に入るんです。そこで、一年くらい苔の研究をしていました。苔をもとにして、生物の体内時計のメカニズムを探るっていう。単細胞の生物で研究する事で、要因をシンプルに出来るんですよ。大体研究が失敗する時って、喋っていて唾が入ったりとかで、培養に一週間かかるのに実験に至る前にそんなんで失敗ばかりしてました(笑)。どうしようもない学生だったんですが、その時に教えてくれていた准教授の方とはいまだに繋がりがあって、僕の映画も観に来てくれましたね。理学部って卒業後は大学院に入って研究職を目指すのが既定路線でして、大学院に入るのは全然難しくなくて、何も考えずに自分も既定路線に乗っかって入ったんです。それと並行して、ブライダルの映像の仕事もしていたんですよ。結婚式の二次会の映像を担当していて、その仕事ばかりしていたので、結局大学院は半年で辞めました。親に「本当にやりたい事を選びなさい」って言われて、それで、映像の方に進もうと決めました。
ブライダルの映像は二年間ほど続けていて、その間すごい忙しかったんですよね。会社が外苑前にあったので、映画を観る環境としては良かったから、忙しくても映画は観ていました。その頃付き合っていた子が韓国映画を好きだったので、『猟奇的な彼女』(監督:クァク・ジェヨン/2003年)も記憶によく残っています。実は現在、あの映画を地で行くような生活を送ってます(笑)。奥さんが猟奇的なので…。割と起伏の激しい女の人とお付き合いする事が多くて、それこそ一度結婚して失敗してるんですよ。短い結婚生活でした。自分の無力さを痛感した出来事でした。その時に、もうやりたい事をやろうと思って、ひたすら一年間仕事してお金を貯めて、日本映画学校(現:日本映画大学)に行ったんです。

映画に殺される

ひたすら働いて思った事は、これだけ働いても大して稼げない、お金を稼ぐ事を目標にする事は自分には出来ないなって。でも、その辛かった経験が映画の現場で役に立っている気がします。理不尽な忙しさに耐えれるのもその体験からですね。三年間学校で映画制作を学んでいたんですが、ずっとプロデューサーやチーフ助監督ばかりやっていました。入ったのが25歳だったので、年上っていうのもあって、まとめ役に自然となっちゃうんですよね。脚本が通らなかったので、学生の間、僕はまともに監督はしてないんです。
学生の頃に関われた最初の商業映画監督が井土紀州さんでした。で、井土さんの紹介で、山本政志監督の映画の現場に行ったんですね。映画の作り方は学校でやっていた程度だったので、全然分からない状態だったんですが、山本さんの現場で制作部に入って、これがめちゃくちゃしんどい体験だったんです。『スリー☆ポイント』(2011年)って映画で、現場で僕死にかけましたからね(笑)。
でも、その映画で知り合った人達とは、今も仲良くしてもらってますし、一本目の映画を撮るきっかけにもなりました。村上淳さんとも出会って、そこからプロダクションのディケイドと繋がって、初監督作『ヤギ、おまえのせいだ』(2012年)では渋川清彦さんに出演して頂く事も出来たんです。とにかく山本政志監督の映画の作り方はアウトローで、「映画に作り方なんか無いんだよ」みたいな山本イズムがあって、その影響はいまの自分にもあるんです。その現場にいた、いまはご自分で監督されている平波亘さんや伊月肇さんもそうだと思います。今だから笑い話になりますけど、当時は本気で「映画に殺される」と思いましたからね(笑)。
その後、山本監督の現場で知り合った伊月肇さんの短編映画『トビラを開くのは誰?』(2011年)で助監督として関わらせてもらって、毎日監督と映画の準備の話をしてましたね。その現場で、映画と向き合って作品を作る楽しさを知りました。それから、学校の卒業制作に選ばれなかったので、何とか自分で作ろうと思って『ヤギ、おまえのせいだ』の準備に取り掛かったんです。映画は届けるまでが仕事だと思っていて、先に公開日を決めてしまおうと思い、オーディトリウム渋谷で上映する日を撮る前に決めました。上映日まで逆算して準備して、静岡オールロケで撮りました。地元だったので、全部知ってる場所で、自分が通っていた中学校でも撮影しました。現場はめちゃくちゃでしたけどね。スタッフも少なかったし、ヤギもいたんで(笑)。ヤギは大変でしたよ。千葉から借りて、静岡へ連れて行ってたんで。
僕の映画は大体、動物が出るんです。ほっこりする映画が好きっていうのもあると思うんですが、「男はつらいよ」シリーズとか「学校」シリーズが好きなんです。そういう好きな映画を、いまの形に変えて出来ないかなって事で企画を書くんです。あと、この作品では「Motion Gallery」(一般の方にWEB上で寄付して頂くシステム)で制作費を集っていて、いまでは流行であちこちで行われていますが、当時はまだ普及してなかったので、一つの挑戦でもあったんです。映画祭では、田辺弁慶映画祭で初めて選ばれて行ったんですが、数ある映画祭の中で田辺弁慶映画祭って特別なんですね。ひたすら映画の話をする二泊三日でした。最新作の『ひとまずすすめ』でも選んで頂き、グランプリ、観客賞、女優賞、男優賞を頂きました。

どんどん先に進んで行く

『ひとまずすすめ』では、三原光尋監督作品の『乙女のレシピ』(2013年)の現場でチーフ助監督をやった時に知り合った脚本家の小森まきさんに脚本を書いて頂いたり、三原監督の紹介で女優の斉藤夏美さんに主演してもらう事が出来たんです。『乙女のレシピ』は、個人的にも好きな作品で、『ひとまずすすめ』に大きなきっかけを与えてくれた作品なんですね。
撮影期間は五日間で、『ヤギ、おまえのせいだ』の時とは違って、ちゃんとスタッフもいて役者さんも理想的な形で決まったので、監督する時も専念出来たっていうのは大きかったです。今作ではシネマスコープで撮っていまして、大した理由ではないんですが、一度はシネスコで撮ってみたいっていうのと、風景がしっかり切り取れると思ったからです。完成した後、多くの映画祭で上映してもらった訳ですけど、まさかこんなに進展するとは思っていなかったです。映画祭をまわっている時に、自分の力量と作品の評価との距離感がある気がしていて、いまだに公開が決まっていても怖い部分があったりして、嬉しい反面、作品がどんどん先に進んで行く事への焦りがありますね。
僕は悲喜劇が好きでして、人生そんなに簡単にはいかないじゃないですか?『ひとまずすすめ』でも彼女が幸せになる事を描くんじゃなくて、彼女が成長する姿がしっかり描かれていれば全てを見せる必要は無くて、「え、次どうなるの?」って思える所までが今作にとっては良いと思ったんです。
いまは、予想していた外側の所まで来ているので全部手探りですよね。ただ、自分にとって今作はまだ二作目ですし、失うものも無いので自分のやりたいように挑戦してみようと。テアトル新宿での併映用に『ひとまずすすめ』のスピンオフも作っています。今後の展望は、商業ベースで毎年作品を作れるような監督でありたいですね。必要とされる映画を作っていきたいなと思っています。
【Story】
人生の区切りの書類が提出される市民課戸籍係のカウンター。慌ただしい中、マイペースに働く花村美幸。三十路も目前、彼氏無し。父・一雄との二人暮らし。美幸は淡々とした生活が続いていくと思っていた。しかし、美幸は、突然直面する問題に翻弄され、「いまのままじゃいけない。でもどうしたらいいかもわからない」と悩むのであった…。
柴田啓佑監督作品『ひとまずすすめ』
6月6日(土)より、テアトル新宿にて1週間レイトショー上映 http://www.ttcg.jp/theatre_shinjuku/
6月20日(土)より、シネマスコーレにて1週間レイトショー上映 http://www.cinemaskhole.co.jp/cinema/
映画を通じた出会いや友達を作る為のイベント『ひとまず出逢え場』を開催決定!
【日時・内容】6/9(火)21:00の回  MC:斉藤夏美さん
【会場】テアトル新宿 http://www.ttcg.jp/theatre_shinjuku/
【料金】特別料金:男性3,000円 女性2,000円 (オリジナルドリンク他フリードリンク付き)
【募集人数】男性100名 女性100名
【参加資格】20歳から39歳までの男女 ※今回は未婚の方のみ、参加可能。
漫画版「ひとまずすすめ」配信中!
映画公開に先駆けて オリジナル漫画「ひとまずすすめ—こじらせ女子のイマドキ物語—」が、 5月29日(金)から、コミックシーモア限定にて無料配信中!
http://www.cmoa.jp/special/?page_id=hitomazususume
■公式サイト
http://www.hitomazususume.com
■公式Facebook
https://www.facebook.com/hitomazususume
■公式Twitter
https://twitter.com/hitomazususume
取材・構成・写真: 川邊崇広
  • 『柴田啓佑(しばた・けいすけ)』
    1984年2月生まれ、静岡県出身。
    日本映画学校(現:日本映画大学)2012 年卒業。在学中から映画、TV、MV、CM など現場に参加している。冨樫森監督作品『夏がはじまる』(2013年7月公開)に制作担当として、三原光尋監督作品『乙女のレシピ』(2014年初春公開予定)に助監督として参加。伊月肇監督作品『トビラを開くのは誰?』(2011年11月『NO NAME FILMS』公開 制作:UNIJAPAN)にプロデューサー、助監督として参加する。前作『ヤギ、おまえのせいだ』(2012年)は日本映画学校在学中に完成した初監督作品。
    近年では、WEBドラマ『背比べのあと』(2015年)、最新作『ひとまずすすめ』を監督。『ひとまずすすめ』では数多くの映画祭で受賞を果たしている。