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#18『映画と私』片岡翔(映画監督・脚本家)

思いがけず始まった脚本家としての仕事。

脚本家と映画監督をやっています。2014年4月5日(土)公開の『1/11 じゅういちぶんのいち』(原作:中村尚儁)は監督・脚本で、初めての商業作品になります。ジャンプSQ.連載中の人気マンガの実写化なんです。原作はタイトルでもわかる通りサッカーがテーマなのですが、しっかりとした人間ドラマが魅力的な感動のストーリーです。一話完結で、主人公が毎回違うという面白い構成なので脚本にはとても苦労しましたが、それだけに今までにない青春映画になったと思っています。
映画の仕事をさせていただけるようになったのは、3年前くらいからで、佐藤佐吉監督の『Miss Boys!決戦は甲子園!?編』(2011)、『Miss Boys!友情のゆくえ編』(2012)という作品がきっかけです。もともと僕が佐吉さんのTwitterをフォローしていたんですけど、突然佐吉さんから、僕の『くらげくん』(2009)という短編作品を見たいという連絡がきました。『Miss Boys!』は女装する男の子の話なんですけど、『くらげくん』も小さい男の子が女装する話なんです。『Miss Boys!』の脚本家を探していたらしく、実際『くらげくん』見ていただいて気に入ってくださったので、僕が脚本をやることになりました。そのときの制作会社のプロデューサーにも『くらげくん』を気に入っていただいて、他の仕事もいただけるようになりました。
『きいろいゾウ』(2013/監督:廣木隆一/原作:西加奈子/共同脚本:黒沢久子)の脚本を書くことになったのもこのつながりがきっかけです。それまで自主映画で短編ばかり作っていたので、普通だったら脚本家にはなれなかったと思います。幸運に恵まれました。いただいたお仕事は何でもやってみたいですし、自分の監督する作品はできる限り自分で書きたいと思っています。

人形屋を営む変わり者の父に5人の兄弟、家族の影響—。

子どもの頃1番好きだった映画は『天空の城ラピュタ』(1986/監督:宮崎駿)で、いまだに1番好きな映画です。記憶はおぼろげなのですが、4歳の時に母に映画館に連れていってもらって、その後テレビでも何回も見ていました。大人になって映画を勉強した今でも最高傑作だと思いますね。
僕は基本的にファンタジーが好きなんです。もしかしたら家族の影響があるかもしれません。父が人形屋で、日本人形とか西洋のアンティーク人形とかを販売したり、現代人形作家をプロデュースしたりしているんです。6人兄弟なんですけど、小さいとき兄弟みんな相棒のぬいぐるみを与えられて、僕はクマとトラなんですけど、全員それを命の次に大事にしています。『ぬくぬくの木』(2011)という作品ではぬいぐるみを300体かき集めてきて使ったりしています。いつかぬいぐるみが全面に出てくるファンタジー長編を撮りたいです。
あと、僕の家族をモデルに人形屋敷に住んでいる家族の物語もいつか撮りたいですね。父がかなりの変わり者なので『ザ・ロイヤル・テネンバウムズ』(2001/監督:ウェス・アンダーソン)を見たときは共感しました。家族の物語なのにファンタジックなところもあって、大好きな作品です。他の兄弟5人はみんな違う仕事をしていますが、みんな1度は僕の映画を手伝ってくれています。すごく応援してくれているんですよ。他の家族も変わっているのかはわからないですが、大学に行った1番真面目な弟が急にマジシャンになりました(笑)。今はあるマジックバーで働いています。
父は本当に好きなことを仕事にしている人間なので、自分もそうなりたいなと漠然と思っていました。なので高校で進路を決める時にも、大学に行くという考えは毛頭なくて。やりたいことがたくさんあったんですが、ふと、ミッキーマウスの中の人になりたいと思ったんです。そしたらたまたま、高校の先生の親戚が3匹の子ぶたをやっていたようで、たぶんミッキーは選ばれた者しかなれないよ、困難な道だよ、みたいな話を聞いたんです。それで、まず地元札幌の遊園地に就職したんですよ。その経験を経て、ディズニーに行こうと思って(笑)。そこでの仕事はとても楽しかったんですけど、そのうちミッキーになりたいという目標は薄れてきて。自分が本当にのめり込める仕事はなんだろうと真剣に考えた時に、それは映画じゃないかと思ったんです。

年に2、3本ペースで撮り続けてきた短編映画を経ての商業デビュー。

映画監督になりたいと思って上京したときは、右も左もわからなかったので、半年間だけニューシネマワークショップという映画学校に通い、映画制作の基礎を学びました。学校を出て2、3年経ってから作った作品が映画祭に入選して、もっと頑張ろうとやる気が出て、そこからは立て続けに年に2、3本ぐらいのペースで短編を作り続けています。父の人形屋に勤務して、そこで映画につながる刺激をもらいながら映画を撮っていました。
短編が多いのは、自分自身の嗜好も個性も何もわからなかったので、いろんなジャンルのものに挑戦したかったんです。それと、お金をかけたくないというのもありました。じっくり長編を練り上げていくというより、書いているうちにいろんなアイディアがどんどん浮かんでくるので、その中でどれを撮ろうかと悩みながらやってきたら短編ばかりになっていました。
他の監督と違うことがあるとすれば、僕は普通の友達と映画を撮ってきたことですかね。映画学校であまり友達ができなくて、カメラマンはたまたま札幌時代からの友達で、その道でやっている人ですけど、彼以外は警察官とか神主とか映画と全然関係ない仕事をしている友達を巻き込んで手伝ってもらっています。もちろん映画関係者の意見も大事なんですけど、僕にとって映画をやってない人の意見は大きく響いてきますね。あと、撮影現場って辛いので嫌いなんですけど、それを気心が知れた友達とやることによって、なんとかテンションを保てているっていうのはありますね。
今回『1/11 じゅういちぶんのいち』は初の商業映画だったので緊張していたんですけど、プロデューサーの方が理解ある方なので、まず「カメラマン優しい方でお願いします」とか頼んだり(笑)、スタッフのみなさんが本当にいい方ばかりですごく楽しいです。ボリュームのある原作を、一本の映画に短くまとめるっていうのは短編作品を作り続けてきたことが役に立っていると思います。僕が今までやってきたことを全部生かして長編に挑んだので、ぜひ多くの方に観ていただきたいと思います。

あのときの1本

『ザ・ロイヤル・テネンバウムズ』(2001/監督:ウェス・アンダーソン)
1番好きな実写映画です。ちょうど20歳くらいのときに観て、すごい不思議な感覚に包まれて、なんだこれは!と思いながらのめり込んでいきました。
聞き手・構成・写真:石川ひろみ
片岡翔監督作品『1/11 じゅういちぶんのいち』
2014年4月5日(土)よりシネ・リーブル池袋、TOHOシネマズ川崎ほか全国ロードショー
■公式サイト
http://1-11movie.com/
■劇場情報
http://www.eigakan.org/theaterpage/schedule.php?t=209
『1/11 じゅういちぶんのいち』
© 2014 中村尚儁/集英社・「1/11 じゅういちぶんのいち」サポーターズ
【Story】中学最後の大会で挫折を味わい、サッカーを辞めることを決意した安藤ソラ。だが、若宮四季との出会いを機に、高校でも再びピッチに立つことを決意する。そんなソラの姿を暑苦しそうに眺める学校一のイケメン凛哉。サッカー部への勧誘を受ける演劇部の瞬。まっすぐな気持ちでサッカーに取り組む、ソラに惹かれる、サッカー部マネージャーの仁菜。それぞれが抱える過去や想いとは――。
脚本・監督:片岡翔/原作:中村尚儁『1/11じゅういちぶんのいち』(集英社「ジャンプSQ.」連載)/出演:池岡亮介、竹富聖花、工藤阿須加、阿久津愼太郎、上野優華、他/配給:東京テアトル
http://1-11movie.com
  • 『片岡 翔(かたおか・しょう)』
    1982年北海道札幌市出身。ショートフィルムを中心に多様なジャンルを制作。主な受賞歴として、ショートショートフィルムフェスティバルにて2009年から三年連続で観客賞を受賞し、2011年には『SiRoKuMa』がSTOP!温暖化部門で3冠を受賞。『くらげくん』は第32回ぴあフィルムフェスティバルで準グランプリを受賞したほか、全国各地の映画祭で7つグランプリを含む13冠を達成。また、劇場用長編映画『Miss Boys!決戦は甲子園!?編』『Miss Boys!友情のゆくえ編』(監督:佐藤佐吉)、『きいろいゾウ』(監督:廣木隆一/原作:西加奈子)の脚本を担当。初の商業映画となる『1/11 じゅういちぶんのいち』(原作:中村尚儁)が2014年4月5日(土)よりシネ・リーブル池袋、TOHOシネマズ川崎ほか全国ロードショー!