LOAD SHOW

A Rooted Soul. Vagabond Eyes.

映画の未来をいち早く
Be the first to witness the future of films

♯32「映画と私」笠島智(女優)

池田千尋 総監督作品『ミスターホーム』でスクリーンデビュー。

笠島智です。俳優をしています。直近の予定としては、2013年の夏に撮影した池田千尋総監督作品『ミスターホーム』が9/20から公開になります。他にも舞台作品に出演したり、ENBUゼミナール「シネマプロジェクト」の企画で制作された、『夜が明けたら(仮)』(川村清人監督)が今秋公開になります。
私が初めて映画館で観た映画は『シンドラーのリスト』(1993/監督:スティーヴン・スピルバーグ)でした。小学校3、4年生くらいだったと思います。長い映画だったので、途中で休憩時間が入るんですけど、私はそのことがよく解っていなくて、途中で急に“休憩”のアナウンスが入ったことで信じられないくらい心もとない気分になったのを覚えています。突然、現実に引き戻されて、少し経ったら、また映画の世界に戻る。それを恐怖と言うと言い過ぎかもしれませんが、とても不安だったんです。もちろん映画の内容も関係しているとは思いますが。
『シンドラーのリスト』はモノクロ映画なんですけど、赤いものにだけは色がついていて(パートカラー)、映画に登場する少女の服がビビッドな赤色だったんです。物語の主要人物ではないんですけど、女の子がどうなっていくのかとても気になって、その女の子を夢中になって観ていました。終盤、遺体が山積みとなったカットがあるんですが、その端に赤い色の服の死体が映っているんです。その時に「死んじゃったんだ」ということを理解しました。この映画体験がなんだったのかということは当時も今もうまく言葉にできなくて、それはすごく不思議な感覚ではあるんですけど……。それ以来現在にいたるまで、フリークというほどではないですけど、映画は好きです。

ジャンルを問わず借りては観ていた中学生の夏休み―

映画をよく観るようになったのは中学生の頃でした。兄がレンタルビデオ店でアルバイトをしていて、ビデオや映画のポスターなんかを持って帰ってきていたんです。兄が観ている映画を横目に観たり、こっそり観たり、映画のポスターを眺めてみたり。実際に自分でレンタルビデオ店に行って、借りて観てもいました。中学校の夏休み、周りの友達がこぞって塾に通う中、私はそうでなく暇を持て余していたんです。だからといって、暑いので外に出て遊ぶこともなく(笑)、5本まとめて借りると安くなるキャンペーンを利用したりして、ジャンルに関係なく映画を観ていました。
その頃借りた映画でよく覚えているのは、『セブン』(1995/監督:デヴィット・フィンチャー)や、『グッドウィルハンティング』(1997/ガス・ヴァン・サント)ですね。気軽に借りたが故に驚きも大きくて。他にも『17歳のカルテ』(1999/ジェームズ・マンゴールド)はセンセーショナルな作品でした。ウィノナ・ライダーがすごく好きになってしまって、憧れてベリーショートにしたりもして。夢中でしたね。
高校生の頃は古本屋によく通ってました。読んだことのない本を読みたかったんです。あとは普通に友人とお喋りしたりです(笑)。特定の人と長く喋る時間が好きだったので。でも、私一体なにしてたんだろ当時……なんだか思い出せませんね(笑)。大学へは進学する気がなかったんですが、進学の勧めに反抗するわけでもなく、芸術学科に入学しました。その時の面接試験で「自分のこの一冊」みたいな課題が出されていたんですけど、何が私の一冊なのか全く思い浮かばなくて、面接前日まで決まらなかった挙げ句、たまたま東急ハンズに売っていた、自分で製本する白紙の本を持っていきました。面接では「この1冊を決められませんでした、白紙です」って(笑)。

仕事を長く続けたある日、自分の周りにあるものの意味がわからなくなった―

大学卒業後はもともとアパレル系の業界に興味があったので、某ブランドショップで働いた後に転職をして、そこで5、6年働きました。俳優を目指したのは、不意に自分の周りにあるものの意味がわからなくなったからです。転職先が理想的な仕事環境で、鬱屈した時間が蓄積されているような自覚があんまりなかったんです。でも、ある日自分を客観的に見られるようになって、自分の居場所に疑問が芽生えたんです。そしたらその考えが止まらなくなってしまって、ここじゃないどこかに行きたいって考えた時に、どうすればいいんだろうって悩んだんです。その時に頭に浮かんだのは「何か残ることをしたい」ということでした。漠然としているんですけど、それで俳優をやりたいと考えるようになったんです。根底にあるキッカケは映画への興味だと思うんですけど。
いわゆる“撮影現場”に初めて立ったのは『ミスターホーム』が初めてでした。それまで映画にも舞台にも出演したことはなかったので。そもそも私が初めて演技に触れたのは、2013年の4月頃で、“シネマ・インパクト”というワークショップで平波亘監督のクラスに入った時が最初でした。平波さんに「続けて頑張って欲しい」と声を掛けていただいて、そのことは私の中で結構大きかったです。かなり思い切って映画の世界に飛び込んだので、この流れを絶対に絶やしてはいけないと考えていたんですが、そうしたタイミングで、ENBUゼミナールが企画する池田千尋監督のワークショップを知って、また飛び込んでいったという感じです。
『ミスターホーム』のクラスは20名くらいの受講生がいて、全員が映画に出演できるかはわからない状況でした。それに、もともと地方で合宿して撮影をするということがわかっていたので、もしも自分が出演できることになったら会社を辞する覚悟でいたんです。運良く出演できることになったので、退職を選びました。その旨を会社に伝えた時は当時の社長に呼び出されて「芝居やりますって言って会社辞めてくのはあなたが初めてよ」って(笑)。「やりたいと思うことをやるのは本人のレベルに関係なく楽しいことね」って応援してくれたのは素直に嬉しかったです。

精一杯時間を大切にしたいという実感を持てた『ミスターホーム』

『ミスターホーム』は初めての現場でしたから、緊張していて撮影中の記憶が全くないんです。でも、撮影最終日のある瞬間のことだけは思い出せます。映画の終盤で、大家さん役の廣末哲万さんと私が対峙するシーンの撮影でのことなんですが、動きや台詞が飛んで頭が真っ白になったんです。廣末さんの力が多大に影響していると思うんですけど、その時、精一杯時間を大切にしたい、という実感を持てたんです。
生まれて初めての現場でそういった体験が出来たことは、とても貴重なことだと思っています。それに今まで自分は何者かになれると考えていたのに、演技を通してカメラで映された自分は何者でもなかった。その事を知れたこと、そして自分を切りとってくれたこの作品に、今は感謝の気持ちで一杯です。これからは「何ができて、何ができないのか」ということを経験を積みながら知っていきたいですし、池田千尋総監督や廣末哲万さん、様々な人と出会い、“映画の世界”というものを感じることができたわけですが、こうした映画の世界にある縁を大切にしていきたい考えています。
◆笠島智出演『ミスターホーム』(総監督・プロデュース 池田千尋)
9月20日(土)〜26日(金) K’s cinema にてモーニング&レイトショー公開!
◆劇場
K’s cinema (ケイズ・シネマ)
http://www.ks-cinema.com/
◆上映スケジュール
9月20日(土)〜26日(金)
【上映時間】11:00/21:20
◆チケット
特別鑑賞券
¥1000
アプリ特別鑑賞券
¥1000
当日券
一般:¥1500/大・高:¥1300/中小シニア:¥1000
■スグチケ(アプリ特別鑑賞券)
カンタン便利な特典付き映画チケット購入アプリ(App Store限定)
¥1000
購入特典
映画配信サイトLOAD SHOWより、 池田千尋監督が大学入学後、初めての8mmフィルムを回して自ら撮影・構成した初期作品『記憶されるからだ』のストリーミング視聴が可能となるURLを配布!
※特典はチケット購入後に劇場に行くと、自動的に受信することができます。
http://sugu-ticket.neopa.jp/
◆『ミスターホーム』公式ウェブサイト
http://mr-ho.me/
聞き手・写真・構成 :岡本英之
    採録・構成 :島村和秀
『ミスターホーム』
2013年/70分/HD/カラー
出演:廣末哲万、笠島智、田坂秀樹、小川ゲン、杉岡詩織
監督・総監督:池田千尋 /第一章監督:長友孝和 /第二章監督:ハセガワアユム /第三章監督:工藤渉/第四章監督:根本宗子/第五章監督:池田千尋/製作:ENBUゼミナール、池田千尋/撮影:杉田協士/音響:黄永昌/編集:田巻源太/助監督・照明:平波亘/音楽:SKANK/スカンク(Nibroll)/脚本:池田千尋、長友孝和、ハセガワアユム、工藤渉、根本宗子
ストーリー:海沿いの田舎町に建つ一軒家。そこには行き場を失い、漂着したかのような住人たちと、大家さんと呼ばれ親しまれているひとりの男が住んでいた。妻に黙って家を出てきた夫、若くして世間で評判となった詩人と担当編集者、サークルレベルの新興宗教に集まった信者たちと教祖。それぞれに事情を抱える住人たちと大家さんとのシェアハウス生活は、ある日帰ってきた大家さんの妹・裕子の登場によって崩れ始める。大家さんはそこに、新たな家族を作ろうとしていた。
  • 『笠島智(かさじま・とも)』
    東京都生まれ。大学卒業後、アパレル業界勤務を経て、俳優の道を志す。
    2014年、『ミスターホーム』(監督:池田千尋)に主演し、スクリーンデビュー。独特な佇まいと透明感で注目を集めている。公開待機作品に、今秋公開予定の『夜が明けたら(仮)』(監督:川村清人)ほか。舞台作品へも参加するなど、精力的に活動中。