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#06『映画と私』 工藤渉さん(映画監督:ENBUゼミナール職員)

「ENBUでは年間6~7本の映画が制作されますが、その現場にも入っています」

自分自身監督として映画の制作もおこなっていますが、ENBUゼミナールという演劇・俳優・映画監督を目指す方のための専門学校で職員をしています。もう5年になりますかね。仕事の内容としましては、大きくいいますと講師陣の決定ですとか、生徒にとって如何に学習効果のあるカリキュラムを組めるかを考えたりすることです。普段の業務としましては、そういったことに伴う具体的なスケジュール管理、また、ENBUでは年間6~7本の映画が制作されるんですが、実際にその現場にも入っています。僕自身は事務局の人間ですので講義をおこなうことはないんですが、学生募集のための1日体験講座を受け持つこともあります。
最初の映画体験はですね、小学校低学年の頃なんですが、兄が映画好きでビデオが毎週5本くらい居間に転がってるような感じだったので、それを見るようになったんです。『霊幻道士』シリーズなんかを見ていた記憶がありますね。他には「ジャッキー・チェン」の作品群ですとか、『男たちの挽歌』シリーズなんかも。香港寄りですね(笑)。けれど、ハリウッド映画なんかも普通に見ていましたよ。兄は『ロードショー』という雑誌を毎月購読していたので、勝手に部屋に入ってそれを読んだりもしていました(笑)。中高の頃は映画はほとんど見ていませんでしたね。また見るようになったのは東京に上京して以降です。とある専門学校に入学したんですが途中で退学をしまして、しばらくフリーター生活を送っていた時期があるんです。その時期はあまりお金もないし、娯楽と言えば近所のレンタルビデオ屋でDVDを5本で1,000円みたいにまとめて借りるくらいでした。

「世界のどこかでこんなにも自由な映画が作られている」

映画の見方が変わってきたのは、個人的に決して面白かったわけではないんですが、『ミスター・ロンリー』(2008/監督:ハーモニー・コリン)という映画に出会ってからですかね。なんというか、世界のどこかでこんなにも自由な映画が作られていて、それを今こうして自分が見ているって凄いことだなと。映画って凄いなって気持ちになったんです。その頃からですかね、映画を作りたいと思うようになったのは。とは言え、映画監督って物凄く教養がある人間でなければなれない……という思いがありまして、俳優だったらどうかと考えたんです。完全に舐めてますよね(笑)。まあそんな流れで、演技を学ぶためにENBUゼミナールに通うことになるわけですが、ENBUでは結構ストイックに勉強していました。それこそ恋愛なんてとんでもないくらいの態度で取り組んでいましたね。なんですけど……自意識の壁を越えられないとでもいうのでしょうか、自分という人間を完全に変えてしまえなければこれはとてもやれないなと感じるようにもなったんです。
そんなこんなで撮影現場に通っているうちに、やはり監督のほうがやれるんじゃないかと(笑)。そんな時期にENBUのサマースクールで、4日間で短編を撮影してくるという企画があったんです。参加者は25人くらいでしたかね、その中から4人4作品が選ばれて、劇場で上映をして貰えるという内容でした。僕も参加をしたんですが、最終的に作品を選んで貰い、自分の作品が劇場のスクリーンで上映されるという体験をしたんです。『ミスター・ロンリー』に出会ったときのお話をしましたが、このときも同じような気持ちになったんですよね。良い悪いは別として、自分の作品もこうして見て貰えることがあるんだなと。それで「よし、やっぱり監督だ!」と(笑)。

「映画制作に関わることで、ずっと人生を学んでいるような感覚でいるんです」

それ以降はプロの現場の美術の下っ端で使って貰ったりですとか、まずは勉強しなければという感じでしたね。そんな時期が1年くらい続いた後、ENBUゼミナールの職員として仕事をしながら、映画の制作も続けているという現在に至るわけです。「映画を作り続けるのはどうしてだろう?」と考えたとき、真剣さがないように聞こえるかも知れませんが、これは一生遊べるなという思いがあるんです。苦しさも含めて遊べるなと。それに、作り続けていればいつか僕にも誰も見たことのないような映画を完成させることが出来るかも知れない。僕はもともと敬語もまともに使えず、人と話すことすら苦手な性格だったんですが、映画制作に関わることで社会と交われたというか、今もずっと人生を学んでいるような感覚でいるんです。ENBUでの仕事は、そんな映画に対しての恩返しをしていきたいという気持ちが大きなモチベーションとなっていますね。自分は大監督になれるかどうか分かりませんし、返せるうちに返していかなければと思っているんです。次回作はですね、映画監督5名(池田千尋『東南角部屋二階の女』、ハセガワアユム「劇団MU」主宰、根本宗子「月刊根本宗子」主宰、長友孝和、工藤渉)による共作、『Mr. HOME』が2014年の公開を予定しているのと、もう1本、俳優とのワークショップで制作した作品、『だからくーちゃんは駄目なんだよ』も2014年に上映を予定しています。『くーちゃん』に関しては実は自伝をベースにしているんです。そこにはあんまり手を出したくはなかったんですけどね(笑)。

あのときの一本

『ミスター・ロンリー』(2008/監督:ハーモニー・コリン)
世界のどこかでこんなにも自由な映画が作られていて、それを今こうして自分が見ているって凄いことだなと。映画って凄いなって気持ちになりました。
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https://enbuzemi.co.jp/
  • 『工藤渉(くどう・わたる)』
    1983年、青森県生まれ。映画学校ENBUゼミナールに職員として在籍中。野球少年の恋を題材にした『Little/Boy』が各地方の様々な映画祭で入選後、イタリア・カフォスカリシネマ映画祭で上映される。翌年『君といると、僕はかなしい』が2011年、TAMA NEW WAVEある視点部門にて上映。最新作『Electric Kiss』はドイツ・ハンブルク日本映画祭にて上映された。話題のインディーズムービーを上映する映画祭「映画太郎」の首謀者。