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#17『映画と私』 永山由里恵さん(俳優)

「小さい頃はディズニー映画を見て一人でよく歌っていました」

普段会社員をしながら俳優をしています。最新作は万田邦敏監督作品『イヌミチ』(2014年3月22日(土)よりユーロスペースにて三週間限定レイトショー!! 以降大阪・第七藝術劇場ほか順次公開)で、主役の響子役で出演しています。本作では宣伝も担当していて今、宣伝まっただ中です。
小さい頃は、ディズニー映画を見て一人で歌っているような子どもでした。両親が共働きだったので、けっこう一人遊びをしていたんですよ。幼少の映画体験でよく覚えているのは『もののけ姫』(1997/監督:宮崎駿)です。公開当時、小学校2年生くらいだったんですけど、たしか5回は行ったと思います(笑)。当時の年齢からすれば大人な内容だったんですけど、やっぱり子どもも楽しめるように作られていて、もう中毒みたいに何度も見たがりましたね。後にも先にもそこまで通った映画はないです。
立教大学の映像身体学科に入るまでは、そんなに映画って見ていなかったんです。シネコンでヒット作を見るくらいでした。映像身体学科に進んだきっかけは、親が小さい頃から劇団四季とかに連れて行ってくれていて、漠然と役者ってすごいなと思っていました。それで大学で好きなことを学ぶとなったとき、演劇とか映画とか芸術系の勉強をしたいと思って、ちょうど私が高校を卒業する年に立教大学の映像身体学科が設立したので、ここだ!と思って決めました。新しい学科って何が起こるんだろうという期待もあって、さあこれから何を勉強しようかという感じでした。

「大学時代は映画を朝から晩まで、文字通り浴びるように見ていました」

そこで万田(邦敏)さんとか篠崎(誠)さんのもとで座学あり制作ありで映画を学んだり、勅使河原三郎さんのダンスの授業や、演劇のレッスンなどなど、いろんなものをつまみ食いしながら勉強しました。やっぱり当時が1番時間があったので、映画を朝から晩まで、文字通り浴びるように見ていましたね。まず万田さんや篠崎さんが面白いと言った映画を見ていきました。本数を重ねていく内に自分の中に映画の好みの基準みたいなものも出来てきて、のめり込むように見ていましたね。
大学では映画サークルに入っていて、役者や監督、ほかのスタッフも一通り経験しました。その中で1番もっと知りたいと思ったのが役者でした。演技って難しくて、カメラの前でどう振る舞えばいいのか全然わからなかったんです。でもそのことは心にとどめて普通に就職をしました。映像系には進まず、プライベートで好きなことをできるように就職を決めたんですが、思ったより全然時間がなくて最初は映画のことなんて考えられませんでした。
それから定時で帰れるような会社に転職して、そんなときにちょうど、映画美学校にアクターズ・コースが開講されるというのを知って、もう1回勉強してみることにしたんです。初等科と高等科に行ったので、2年間通いました。授業は本当に楽しかったです。大学のときは広く浅くで、演技の勉強をちゃんとしたことはなかったので、そこで言われることすべてが新鮮でした。授業でいろいろな講師の方々に教わったことを『イヌミチ』の現場で心の拠り所にしていました(笑)。

「最初『イヌミチ』の脚本を読んだときは本当に響子の気持ちが分からなかったです」

『イヌミチ』は、2012年度の映画美学校のフィクション、アクターズ、脚本の3コースによるコラボレーション作品です。オーディションは、万田さんとフィクション・コースの生徒の方たちの前で、私たちアクターズ・コースの生徒がセリフを読むというものでした。私は大学からの経緯もあって、万田さんの映画が大好きで、どうしても万田さんの映画に出たいと思っていたんです。その想いの分空回ってしまってオーディションは全然だめだったので、自分が響子役に決まったときは正直驚きました。
最初に『イヌミチ』の脚本を読んだときは、本当に響子の気持ちが分からなくて、どうしたもんだろうかというところから始まりました。見ず知らずの男の家で犬になって4日間過ごすっていう。字面では理解できますけど、自分が演じるとなるとイメージしずらくて(笑)。万田監督の作品に出られることは光栄で嬉しかったんですけど、自分がこの作品を全部だめにしてしまうかもしれないという恐怖感と不安がありました。まず一人で犬の格好、四つん這いになって動いてみたりして必死に響子というキャラクターを掴もうとして焦っていました。撮影前にリハーサルがあったんですけど、万田さんから演出指示がきても全然対応できなくてボロボロでした。当然ダメだしも出ましたね。「永山さん今、混乱してるでしょ?」「はい。混乱してます」みたいな会話をしたのを今でも覚えてます。万田さんは普段は本当に優しい方なんですけど、映画に対しては、とても厳しい方なので。
そんなときに、どちらともなく言い出して、西森役の矢野君と2人で稽古を始めたんです。矢野君も西森役を演じるにあたって同じような気持ちだったんだと思います。映画って、はじめましてで会って、次の瞬間もう恋人にならなきゃいけなのが普通だと思うんですけど、今回はアクターズ・コースという2年間一緒にやってきた人と芝居ができたので、その関係性で何かうまく表現できないだろうかと思いました。2人で一緒に演技をしている時間を増やすことで、2人だけの空気感を出せるかもしれないと、思いながらやっていました。それがうまく転んだかはわからないですけど、その稽古で犬のシーンを繰り返していく内に、ちょっと犬が楽しくなってきた自分がいて(笑)。短絡的ですけど、犬楽しいじゃん!という実感は私にとって大きくて、響子を作っていけるかもと思ったきっかけでした。だから矢野君との稽古の時間は本当にあってよかったです。

「万田さんは役を掴む的確な言葉をさりげなくおっしゃるんです」

万田さんは人物が動くことによって感情が生まれると、よくおっしゃっていて、まず動き、とにかく動かされました。私は万田さんの演出にちゃんと応えようということに必死で、なかなか自分から動きの提案が出来なかったんですね。いまだに本編を見ると、ああ動けば良かったとか、今の私だったらこう動くのにな、なんて思っちゃうので悔しさはあります。あと、万田さんとのやりとりでいえば、私がラストシーンに対して「このラスト悲しいですね」と言ったら「孤独に強く生きていくんです、響子は」っておっしゃって、響子ってそういう女なんだなって、ストンと腑に落ちました。その言葉を撮影中ずっと頭の片隅に入れて響子を演じてました。役を掴む的確な言葉をさりげなく、おっしゃるんですよ(笑)。
印象に残っているシーンは犬になる催眠術にかかるシーンですね。そのシーンの撮影が初日の夜で、撮影っていう非日常的な空間も含めて、これから何かが始まるんだっていう抑えきれない興奮がありました。実際本編を見ても顔のアップの切り返しとか、コインを回すときの緊張感にドキっとさせられる、映画的瞬間を感じるシーンになっていると思います。
『イヌミチ』は大変さを大変と思わないくらい贅沢で楽しい現場でした。この映画に役者として参加して、今は宣伝というところまで、1本の映画の始まりから観客に届けるまで関わっていて、この作品に沢山の景色を見せてもらった気がします。自分が出演しているので思い入れのある作品というのはもちろんですが、何より万田邦敏監督の待望の長編最新作です。ぜひ多くの方に観ていただきたいと思っております。『イヌミチ』をどうぞ、よろしくお願いします!

あのときの1本

『接吻』(2008/監督:万田邦敏)
大学の時、東京フィルメックスで万田さんの新作がかかるということで同級生みんなで観に行きました。全編に行き渡る緊張感と衝撃のラストに会場全体が息をのんでいる感じが伝わってきて、まさに映画が人の心を動かす瞬間を体験しました。観終わった後「私達すごい映画を見てしまったぞ。」っていう感じで、みんな顔を見合わせて圧倒されてましたね。あの瞬間はいまだに忘れられないです。
聞き手・構成・写真:石川ひろみ
万田邦敏監督作品『イヌミチ』
2014年3月22日(土)よりユーロスペースにて三週間限定レイトショー!!以降大阪・第七藝術劇場ほか順次公開
■公式サイト
http://inu-michi.com/
■劇場情報
http://inu-michi.blogspot.jp/search/label/theater
■3/21(金)『イヌミチ』公開前夜祭オールナイトイベント@オーディトリウム渋谷
「万田邦敏のエイガミチ 〜8ミリからイヌミチへ」
詳細はこちら http://a-shibuya.jp/archives/9437
『イヌミチ』
©2013 THE FILM SCHOOL OF TOKYO
【Story】仕事や恋人との生活において選択する事に疲れている編集者の響子はある日、クレーマーや上司に簡単に土下座をする男・西森と出会う。プライドもやる気もない西森の、無欲な「イヌ」の目に興味を持つ響子。出来心から訪れた西森の家で、二人はおかしな「イヌ」と「飼い主」という遊びを始める。「イヌ」としての盲目的な生活に浸る響子と、その姿に安らぎ「飼い主」になる西森。ほの暗い家の中で、決して交わることのない身勝手な愛を垂れ流す二人の遊びはどこへ向かうのだろうか。恋愛でも友情でもなく成立する異 常な関係が、二人を「自由」に、そして孤独にしていく......。
監督・編集:万田邦敏/脚本:伊藤理絵/撮影:山田達也/照明:玉川直人/録音・整音・効果:臼井勝/音楽:齋藤浩太、下社敦郎/音楽監修:長嶌寛幸/美術:萩原周平、赤松直明、鈴木知史、/衣装:松岡智子/助監督:菊地健雄/制作:大野敦子/出演:永山由里恵、矢野昌幸、小田篤、小田原直也、古屋利雄、茶円茜、古内啓子、中川ゆかり、古川博巳、柏原隆介、兵藤公美/2013/HD/72分/製作・配給・宣伝:映画美学校/映画美学校 2012年度高等科コラボレーション作品
http://inu-michi.com/
  • 『永山由里恵(ながやま・ゆりえ)』
    1988年生まれ。立教大学現代心理学部映像身体学科卒業後、映画美学校アクターズ・コース第1期高等科修了。映画出演作にオムニバス映画『葉子の結婚 火曜日』(09/粟津慶子監督)、『ジョギング渡り鳥』(14/鈴木卓爾監督)がある。舞台出演作に『カガクするココロ』(作:平田オリザ 演出:松井周)などがある。