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♯48「映画と私」英勉(映画監督)

「映画とあなた」のあいだにある物語を知りたい。幼少期の記憶から映画との現在まで。

「僕にとって『映画』は隣のクラスのかわいい娘。すこし距離がある」(英勉)

英勉(以下、英):一番最初に見た映画はマイク・ニコルズ監督『イルカの日』(73年)という洋画でした。たしか小学校 低学年くらいの頃で、字幕についていけず内容が全くわからなかったんですよ。一方その時弟はお母さんとデパートでおもちゃを買っていて、僕は親父の趣味でまだ意味のわからない映画を見ている……。うん、それが一番最初の映画の記憶ですね(笑)。僕も映画じゃなくてオモチャ買いたかったって(笑)。この映画はイルカと人間が言葉を交わすというお話で、「この水槽にサメがいるぞ」って言われてピャッとイルカが逃げ出すというシーンがあるのですが、それがなぜだか脳裏に焼き付いています。

あの…、僕は映画が好きなんですけど、若干距離があるんですよ。なんていうんですかね。僕にとって映画は、隣のクラスのかわいい娘くらいの関係というか。とても好きなんですよ。映画はよく見るし、学生時代は自分で作ったりもしたんですけど、何故かすこし距離があるというか。

働き出しても基本は広告系の映像を制作していて…。だから僕にとって映画は、「かわいいし、もてるし、気になる娘ではあるんだけど、便乗して僕も好きっていうのはちょっとカッコ悪いな」という感じがするんです(笑)。

この例えで言うなら、自分のクラスのかわいい娘というのはテレビコマーシャルです。中学生の頃からテレビコマーシャルは好きでした。僕が学生時代だった時って、バブルだったので広告にものすごいお金がかかってたんですよ。それだから、日本で最先端の映像を作ろうとするなら広告だったんですよね。

特に好きだったコマーシャル監督は、僕の師匠筋に当たるのですが中島信也さんです。日清食品カップヌードルの「hungry ? シリーズ」とか、中島監督が作る映像には常に驚きがあるんですよ。

自分の言いたいことを映画で言わない

英:学生時代は映画サークルに入っていたので8ミリカメラで自主映画を作っていました。当時からラブコメを撮っていましたね(笑)。当時の学生映画ってすこし暗くて、観念的な要素も強いので、上映会をしてもあんまりお客さんが入らなかったんですよ。それが、僕は嫌で。だから、英語サークルとかに入っているかわいい娘を呼んできて、集客力を意識した映画を作ったりしていました。その頃から、僕は集客をどうしても意識してしまうところがあったんです。

作品の内容は「星の王子さま」をベースにしたかわいい内容だったと思います。他にも、ひとりの男の子がいろんな女の子と出会う映画であったりと……、つまり、浮かれた内容でしたね(笑)。基本的に僕は浮かれてるんですよ、出自が。

僕が映画を見ていたのは80年代から90年代後半で、スピルバーグ作品だったり、ブルース・リーからジャッキー・チェンに移行したりとダイナミックなエンターテイメント作品が多かったんですよ。

当時の映画作りで意識していたことは、まずキレイな女性に出演してもらうこと。分からないことをやらないこと。自分の言いたいことを言わないこと。みんなが見たいもの、楽しんでもらえるものを作ることが僕の映画作りにおけるコンセプトだったんです。

だから、当時の自主映画監督と比べると浮いてたと思いますよ。そのかわり、技術はしっかり持とうと思っていました。被写体をキレイに映したいというこだわりはあったんです。ただ、お金がなかったのでお年玉で露出計を買ったりしていましたけどね。大学を卒業してからは、東北新社に入社して、コマーシャル映像を作るようになりました。

『ヒロイン失格』はしっかり筋の通った企画だった

英:僕にとって最初の商業作品は『ハンサム★スーツ』(08年)です。映画とコマーシャルで違う点は、やはり監督の決定権の違いです。映画ですとOKを出すのは僕に任せてもらえるのですが、コマーシャルだとやはり監督だけの意思で決められないところがありますからね。考え方がそれぞれ違うのでどっちも面白いですけど。

映画作りにおいてはその後『貞子3D』(12年)などホラー映画も制作するので、振り幅があるように思われがちなんですけど、僕は企画ありきで映画を考えているので考え方はシンプルなんです。むしろ、作りたいものを作るのは苦手です。「誰にみせたい」とか、「こんな新しいことができる」みたいな分かりやすさがある企画がいいですね。それこそ、「3Dで貞子をみせる」と企画を聞かされればピーンときますよね。

画面から貞子が飛び出す、そういうシンプルな意図がわかりやすくあると燃えるんです。今回の『ヒロイン失格』も同じです。まず「桐谷美玲でラブコメを撮ります」という話を聞いて、原作を読んだら「この役を桐谷さんがやるのか!」って企画の筋が通ったわけです。

ヒロインの内側に宿る矛盾が、魅力

英:桐谷さんが演じる「松崎はとり」というヒロインはただ自分の気持ちをモノローグで語るいわゆるな「ヒロイン」ではなく、自分の役割を客観的に見つめるメタ的要素があって、でも無意識的にヒロインのド真ん中をストレートに走ってしまっている。『ヒロイン失格』は主人公の内側に宿る矛盾がコメディーに繋がっているし共感できる部分でもあるんです。そんな役を桐谷美玲さんが普段のイメージを捨てて、全力投球してくれている。桐谷さん本人のイメージやビジュアルと、役として出てくる発言のギャップが今回の映画の魅力のひとつですね。

音楽も桐谷さん演じる松崎はとりに合わせてつけてもらいました。この映画は彼女のリズムやスピード感が全てなので、それに合わせて音楽をつけることで、『ヒロイン失格』という映画を「体感」できると考えました。

現場では俳優の皆さん、随分楽しんでいただけたようでした。CGパートやカメラ目線で語るシーンなど、脚本からはイメージがつかないところも多く不安も多かったと思いますが、桐谷さんの「何でもかかってこい!」という覚悟が良い意味で他の俳優さんに影響しているようでした。竹内力さんや中尾彬さんも桐谷さんの迫力に触発されているようでした(笑)。

英監督の次回作は『ヒロイン失格』の続編!?

英:今度は『マッドマックス 怒りのデス・ロード』(監督:ジョージ・ミラー/15)のような企画が来たらいいなと思っています(笑)。それか、クリストファー・ノーラン監督作品のような多重構造なお話の企画。…というのは冗談で、『ヒロイン失格』の次回作を作りたいですね。そしたら、オープニングのワーナーのロゴをハートマークにしたいです(笑)。無理かもしれませんけど、自分のしたいことはドンドン言っていこうと思ってるんです。じゃないと、なかなか実現はしないので。

英勉監督作品『ヒロイン失格』
9月19日(土) 新宿ピカデリー他全国ロードショー

取材・写真・構成:島村和秀
『ヒロイン失格』

出演:桐谷美玲、山﨑賢人、坂口健太郎

福田彩乃、我妻三輪子、高橋メアリージュン/中尾彬(特別出演)/柳沢慎吾(特別出演)/六角精児(特別出演)/濱田マリ、竹内力

原作:幸田もも子『ヒロイン失格』(集英社マーガレットコミックス刊)

監督:英勉 /脚本:吉田恵里香/音楽:横山克

主題歌:西野カナ「トリセツ」(ソニー・ミュージックレーベルズ/SMEレコーズ)

制作プロダクション:ダブ

配給:ワーナー・ブラザース映画

ストーリー:幼なじみの利太のことが大好きな女子高生、はとり。自分こそが利太と結ばれるヒロインと信じて疑わなかったのに、彼はイケてない地味な“六角精児似”の女の子と交際スタート。ラブストーリーのヒロインらしからぬ奪還作戦を企てながら悶々とするはとりの前に、学校イチの超絶イケメンの弘光がアプローチしてきて、まさかの三角関係に!クールな幼なじみか、学校一のモテ男か、はとりの本当のヒーローは、一体どっち!?
  • 『英勉(はなぶさ・つとむ)』
    1968年京都府出身。高校時代から、8ミリカメラで作品を撮り始める。高校卒業後、京都産業大学へ入学。映画研究部へ入部する。大学卒業後、東北新社に入社。テレビドラマやCM演出を経て、2008年11月1日公開の『ハンサム★スーツ』で監督デビュー。その他監督作に、『高校デビュー』(11年)『 行け!男子高校演劇部』(11年)『貞子3D』(12年) 『貞子3D2』 (13年)などがある。