LOAD SHOW

A Rooted Soul. Vagabond Eyes.

映画の未来をいち早く
Be the first to witness the future of films

♯30「映画と私」派谷恵美(女優)

「物語が大好きで、本さえ与えておけば静かにしていられる子供でした。」

女優の派谷恵美です。最近では8月9日から公開されている宮田宗吉監督『くらげとあの娘』、中島哲也監督『渇き。』に出演しています。それと、公開が準備されている出演作が1本あります。そちらの方はまだ公表できないのですが、楽しみにして頂けたら嬉しいです。

私の記憶に残っている最初の映画は…たしか、3歳か4歳のころ観たサンリオの「ケロケロケロッピ」の映画だったかな(笑)。幼児向けの映画って3作とか複数作品を1回の上映枠にまとめたりするんですけど、その中の1本でした。

私は千葉県千葉市で生まれて、高校卒業するまで千葉で生活していました。当時住んでいた家の近くに大型ショッピングセンターがあって、ちいさな頃はそこの新体操スクールに通っていたんですけど、隣に小さな映画館が入っていてそこでよく映画を観ていましたね。

映画は中学生になって沢山鑑賞するようになりました。ニール・ジョーダン監督作品『インタビュー・ウィズ・ヴァンパイア』(94)は繰り返し観た作品です。クローディア役のキルスティン・ダンストという女優さんが大好きで、彼女が出演しているソフィア・コッポラ監督作品『ヴァージン・スーサイズ』(99)も繰り返し観ました。

でも、もともと私は本が大好きで小さい頃からたくさん読んでいました。多分「物語」が好きなんです。字が読めるようになる前から、絵本を開いて、そこに描かれている絵からオリジナルのストーリーを考えたりしていたらしいので(笑)。字を読めるようになったきっかけも、私が絵本の絵だけをみて勝手なストーリーを言うものだから、幼稚園の年上の女の子が「嘘つき!」って言って…それが悔しくて字を覚えたくらいです。

それからも、本さえ与えとけば静かにしてられる子供でした。中学校くらいになると、先程も言った通り映画も良く観るようになりました。そのくらいの歳になると、1人で映画館に通ったり、レンタルショップで映画を借りたりできるので、物語好きがこうじて自然と映画にも入っていったんだと思います。

私は映画でも文学的な作品が好きで、中学生・高校生の頃からインディペンデント系の映画だったり、ミニシアター系の映画を良く観ていましたね。お気に入りはペドロ・アルモドバル監督の作品です。『オール・アバウト・マイ・マザー』(99年)や『バッド・エデュケーション』(04)は特に好きです。

ペドロ・アルモドバル監督の作品は2011年に公開された『私が、生きる肌』もそうなんですけど、正直意味が分かり辛いところが多いんですよ。でも「意味の分からない描写」にこそ監督の作家性が強く感じられて、なんだか惹かれてしまうんですよね。

ドキュメンタリーだと平野勝之監督作品『監督失格』(11)やジョシュア・オッペンハイマー監督作品『アクト・オブ・キリング』(12)を観て衝撃を受けました。でも、最近はハリウッド大作に足を運ぶことも増えましたね。なんだか無性に感激してしまうんですよ。アイアンマンかっこいい!って(笑)。

—映画デビュー作は、冨樫森監督作品『非・バランス』—

俳優の仕事を始めたのは13歳の頃でした。キッカケはスカウトだったのですが、小学校・中学校の頃は本ばかり読んで、活発でないというかひとりでいるのが好きな子供時代で、本から吸収したことも多く自立心が強かったんです…それだから大人の世界に憧れてこの世界に入っていったのだと思います。初めはCM出演であったり、ティーン雑誌のモデルをやらせて頂いてました。

映画デビュー作は冨樫森監督作品『非・バランス』(1996)でした。今でもあの映画を観て手紙をくださる方がいて、とても嬉しいですけど、驚きも大きいです(笑)。今の人生の半分くらい前の私を観て感動してくださる方がいるんだなんて、その時間差になんだか不思議な気分になります。

ちなみに現在公開中の『くらげとあの娘』を監督した宮田宗吉さんは冨樫監督の助監督をずっとされていたそうです。オーディションの時にそのことを言われてビックリしました。でもそれだからか宮田監督は冨樫監督の意思を継いで私を起用したんじゃないか、という声もあったんですけど、宮田監督いわく、普通に僕は厳正な審査の上で選びましたから、と何度も言っていました。

『くらげとあの娘』は本当にたくさんのくらげが出てきて、くらげについて始めて知ることも多くあったのですが、驚いたのはくらげは「くらげ」を食べているということです。形の悪くなったくらげを食べさせるみたいで、そういった内容のシーンが実際に映画にもあるんですけど、なんだかショックを受けましたね。生き物として何かを食べるのは当然のことなんですけど、でも…。

—宮田宗吉監督はとにかく「粘る」監督—

宮田監督はとにかく「粘る」監督です。そこは冨樫監督のスタイルと同じでした(笑)。撮影期間は短かったのですが、それでもスケジュール一杯まで粘っていました。テストも本番も重ねますし、画作りもじっくり考えていたようです。東京に帰る日の朝まで撮影していたので、クランクアップの打ち上げもキャンセルになってしまうほどでした。でも、それだから時間の関係で妥協するようなことはなかったように思います。

スケジュール的にも結構過酷な現場であったはずなのに、雰囲気はすごいよかったです。主演の宮平安春くんが沖縄の出身で穏やかな人だから、そういう空気が現場にも伝染していたのだと思います。『くらげとあの娘』は年上のお姉さんに恋をするというお話だからか、私より年上の宮平くんまで私を年上扱いしていたのには笑いましたね(笑)。

「助演の役割をしっかり全うできるような俳優になりたい」

宮平安春くんは今回が初主演で気合い入れて頑張っていて、私は役回りとしても現場の立ち位置としても自分がメインに出る必要はなかったので、彼の存在や演技が活きるように立ち回ることに集中しました。それだから、私も主演という立場ではありましたが、特別にそのことを意識することはありませんでした。

これは今になってみて感じたことなんですけど、主演俳優やヒロインというのは助演と比べて比較的に楽なことも多いと思うんですね。カメラは絶対に追ってくれるし、良いカットや演技はだいたいおさえてくれる。それだから、ある意味で「楽」なんです。

なので、これからは助演としての役割もしっかり全うできるような俳優になりたいと考えています。これまでは主演やヒロインと、恵まれた環境においてもらえることも多かったので、じっくり撮影もしていただけたと思うんですが、でもこれからは、若い俳優さんを活かせるような、しっかりとした演技ができる俳優になりたいです。若かった頃のようにみんなの手を借りて、ひとつの演技をするのではなく、自立した俳優を目指しています。
聞き手・写真:岡本 英之
採録・構成:島村和秀
『くらげとあの娘』

8月9日(土)より新宿K's cinemaほか全国順次公開

8月23日(土)~ 仙台・桜井薬局セントラルホール

8月30日(土)~ 新潟シネウインド

9月6日(土)~ 名古屋シネマテーク

第七藝術劇場(大阪)、元町映画館(神戸)、桜坂劇場(沖縄)は公開待機中

監督・脚本:宮田宗吉

製作:三谷一夫、小林好雄、宇生雅明/プロデューサー:丸山典由喜、岩田良章 /撮影:馬場元/照明:大坂章夫/録音:小川 武/編集:佐藤崇 /カラリスト:稲川実希/衣裳:江頭三絵/ヘアメイク:細倉明日歌/音楽:ゴンチチ/ /助監督:石井晋一/制作:安達祥子/宣伝美術:千葉健太郎

協力:東北芸術工科大学 映像学科/特別協力:鶴岡市立加茂水族館 鶴岡市 /製作:映画24区 まちづくり鶴岡 庄内映画村/製作・配給:映画24区 /特別協賛:荘内銀行/協賛:山形新聞 山形放送 テレビユー山形 荘内三菱電機商品販売 月見 遠藤会計 エル・サン 尾形サービス商会

出演

宮平安春、派谷恵美、杉山彦々

朝倉亮子、齋藤裕樹、中澤莉胡、佐久間としひこ、橋本せつ

吉田俊大、齋藤絵美、菅原さくら

あがた森魚、山口美也子

【Story】

山形県にある鶴岡市立加茂水族館。くらげの飼育員である浩平は「くらげになりたい」とぼやきながら、どこか無気力な毎日を送っている。そんなある日、港で、花束を海に投げ入れ手を合わせる謎の女性、有希をみかける。彼女との出会いや水族館の同僚たちとのふれあいを通して、浩平の気持ちにも、少しずつ変化が…。くらげのようにフワフワと何もしないで生きていたいと願う浩平に訪れる運命とは———水族館のある小さなまちで巻き起こるおかしくて、愛しい男女の物語。

■公式サイト

http://www.kurage-anoko.com/
  • 『派谷恵美(はたちや・めぐみ)』
    千葉県出身。女優。1999年に芸能界デビュー。映画やCM、ドラマ、モデルと多方面で活躍中。スクリーンデビューとなった冨樫森監督作品『非・バランス』で第23回ヨコハマ映画祭最優秀新人賞を受賞。最近の出演作に中島哲也監督作品『渇き。』がある。また、現在公開中の宮田宗吉監督作品『くらげとあの娘』ではヒロインの森下有希役として大人の女性を熱演。