LOAD SHOW

A Rooted Soul. Vagabond Eyes.

映画の未来をいち早く
Be the first to witness the future of films

♯41「映画と私」角川裕明(映画監督/ミュージカル俳優)

「映画とあなた」のあいだにある物語を知りたい。幼少期の記憶から映画との現在まで。

日本で唯一!? ミュージカル映画監督 角川裕明

僕は色々な活動をしていて、一言には言い切れないのですが、主にはミュージカルや舞台を中心とした俳優をしています。あとはボーカリストとして歌を唄ったり、年に数回「豆柴Collie」というボーカルユニットでライブすることもあります。ただ、最近は専らミュージカル映画監督と名乗ってミュージカル映画を作ることに力を入れています。

映画制作に関してはまだまだ未熟なので自主制作が多いのですが、初監督した『ユメのおと』(12年)という作品がSKIPシティ国際Dシネマ映画祭の短編部門でグランプリを受賞してから、監督業も少しずつ回り始めているように感じます。今年は過去に作った作品も含めて3作程発表ができるかもしれません。また、発表の準備と並行して、現在「モーションギャラリー」で応援を募っている映画『蝶 〜ラスト・レッスン〜』の撮影をしています。

「ミュージカル映画」というのは認識が難しいところがあって『ジャージーボーイズ』(監督:クリント・イーストウッド/14年)のような音楽映画とも混同して考えられることが多いのですが、僕は音楽映画とミュージカル映画は別物だと考えています。殊に邦画は音楽映画とミュージカル映画の線引きが曖昧で、「ミュージカル映画」とあらためて問われるとあまりパッと作品を思いつきませんよね。近作だと周防正行監督の『舞子はレディー』(14年)などが邦画のミュージカル映画に当たると思います。

ただ、やはり日本ではミュージカル映画の数は少いです。そんな邦画の状況も踏まえて、僕が作るミュージカル映画は日本人でも馴染みが持てるものを作るように心がけています。というのも、日本映画というものは基本的に静かなものが多いと思うんですけど、ミュージカルのような「唄って・踊って」と激しい動的なものは日本では受け入れ難いと思うんですよね。なので日本的な価値観のミュージカル、つまり静的なミュージカルを作ることで、日本でも少しは受け入れられていくのではないかと考えているんです。目標は、タモリさんに「このミュージカル映画、良いんじゃないか」って言っていただける、そんな映画をつくることです(笑)。日本の映画界にミュージカルを浸透させるという意味でも、日本人にとって馴染み深いというか、すんなり受け入れられるものを作るというのにこだわりがあります。

ジュリーの演劇的世界観に魅せられた幼少時代

僕が初めてエンターテイメントに触れたのはミュージシャンの沢田研二さんです。「さむらい」は何度も聴いて、真似して歌ったりしていました。

何故、当時の僕に沢田研二さんがヒットしたのかはわかりませんが、今になって思うのはライブなどでの沢田研二さんの演劇的世界観に吸い寄せられていたのかなって感じます。

ただ沢田研二さんが好きだったからといって、別に音楽の道を目指すということは全くなくて、中学・高校は…野球をしていました。ただ中学時代からの付き合いで「THE ALFEE」好きの親友がおりまして、彼から色々なミュージシャンを教えてもらっては音楽を聴いていましたね。まあ趣味レベルですけど。音楽はずっと好きでしたね。

大学になっても野球は続けていました。ただ、一度だけ大学の卒業間際に“卒業ライブ”としてライブをしたことがあります。ただ…、まあそれもかじる程度ですよね(笑)。だから、今考えると大学卒業までは今の業界に片足も突っ込んでいないんです(笑)。僕の岐路は就職してからです。

ボーカルから俳優、そしてミュージカルへ

大学卒業後、広告代理店に就職しました。そこで結果、人生を変える出会いがありました。同期からバンドの誘いを受けたんです。そういえば、その同期も「THE ALFEE」のファンでしたね(笑)。まあ、それでバンドを何気なく始めてみたら、面白くなっちゃって(笑)。なぜか僕だけボーカリストで食っていきたいと思うようになり、何を血迷ったか就職3年目で会社を辞めたんですよ。

退職してからは1年くらいボーカルレッスンなどに通いつつ、ライブ活動を続けました。でも、お客さんが全然つかなくて…。それでこのままじゃいけないと思い、じゃあメディア露出を増やして人がつくようになってから音楽をやればいいじゃないかって単純なアイデアを思いつきまして、自分に投資する気持ちで俳優養成所に申し込んだんです。

その養成所に在籍中、舞台出演の話がありとりあえずなんでもやってみようと座内オーディションを受けたら、なんと受かったんです。その演目はミュージカルだったんですけど、自分の歌の経験を買われて出演の機会をいただけたんだと思います。それが僕の初めてのミュージカルになりました。

そしたら、その舞台のプロデューサーから目をつけていただき、次第に古谷一行さんや麻実れいさん、近藤正臣さんなどが出られる古典系の演劇に出演させていただくようになったんです。またそういった流れのなかでそのプロデューサーから「音楽やってたなら『レ・ミゼラブル』受けてみなさいよ」と言われ、よくわからないままオーディションを受けて…『レ・ミゼラブル』にも出演することになったんです。

その時からミュージカル俳優としての人生が始まったと思います。というのも『レ・ミゼラブル』というのはアンサンブルでもコアなファンがつくくらい人気のある演目なんです。なので僕にそのつもりがなくても、『レ・ミゼラブル』に一回出演すると、自動的にミュージカル俳優と認識されてしまうところがあるんです。そのため、2003年から3年間『レ・ミゼラブル』を上演するカンパニーに所属しながら、その合間に別のミュージカル作品に出演するような生活をしていました。

ただ、当時の僕はミュージカルに出演しておきながら「自分はミュージカル俳優ではない」と考えていて。ミュージカルには出演するけど自分はボーカリストなんだっていう風に当時はこだわっていました。でも続けていると段々とお芝居も面白くなってくるんですよね。それである時からなんでもいいじゃないかって、吹っ切れるようになって。それからは俳優もやるし、ボーカルもやるし、MCもやる。とにかく人前に出て表現できれば良いと考えるようになったんです。

“ミュージカル映画”というのを思いついたのは、ミュージカルというものが僕の中で「ネガティブ」なものから「ポジティブ」なものになってからです。「日本の映画ではあんまりミュージカルって無いな」とふと思い、作ってみたいなって頭の片隅で考えるようになったんです。

断片的だった経験がひとつの形に繋がった、ミュージカル映画

初めてのミュージカル映画は途中で僕が抜けてしまい、企画倒れとなってしまいました。丁度、少人数で舞台のミュージカルを作っていた時に、あんまりミュージカル映画ってないよね、という話をしたら「そうだねってじゃあ作っちゃおう」ということになってなんとなく企画が動き出したんですけど、シリアスなものを作りたいという僕の意思とメンバーの作りたいものが合わず、企画途中で僕は抜ける形になり、映画自体も無くなってしまいました。多分、その時の僕は今ほどの覚悟でミュージカル映画を作りたかったわけじゃないのかもしれません。

本格的にミュージカル映画を制作するようになったのは、それから2年後です。『ユメのおと』でも音楽を作ってくれた北森正樹さんが当時あるバンドのプロデュースをしていて、MV(ミュージックビデオ)を自分で撮って編集したりしていたんですよ。それを見ていて、ふとミュージカル映画の話をしたら、面白がってくれて、そこであらためて企画が立ち上がったんです。それで完成したのが僕の初めてのミュージカル映画『ユメのおと』です。

その作品でSKIPシティ国際Dシネマ映画祭の賞をいただいたのですが、その時に過去の自分を省みて、《広告代理店をやったり歌をやったり、芝居をやったりミュージカルやったり》という今まで学んできたことを全部いかせるのがミュージカル映画なんだろうなって思ったんです。一見、断片的だった僕の人生に道が開ける時があって、それがミュージカル映画だったんですよ。

日本で“ミュージカル文化”を作るには?

僕の目標は日本で「ミュージカル文化」を作ることです。もちろんミュージカル映画を発展させたいということもそうなんですけど、最終的にはミュージカルというものがもっと日本で根付いて、携わっている人が評価されるような文化を日本で作っていきたいんです。日本のメインストリームですと「劇団四季」がありますが、それだけでは少し偏ってしまうので、もう少し広い形で、ミュージカルをプロデュースしていきたいんです。

そこでひとつのアイデアとして日本のミュージカルをまとめるようなWebサイトを作りたいなと考えています。探してみるとミュージカルという文化をサイトとしてまとめているものってないんですよ、日本には。だからミュージカルを包括するようなWebサイトで所謂ブロードウェイの中心にあるチケット売り場に当たるサービスができればいいかなって。現代ならチケット売り場を作ることもないですし、そもそも日本には「ミュージカルの街」というのもないので、Webとは相性がいいと思うんです。それを考え始めたのはここ最近なんですけど、もう少ししたらSNSで一緒にやっていける人を探してみようかなって考えています。

さらにその先の目標にミュージカルに関わる学校を作ることがあります。元々、“学校”というものに興味があったんですけど、ミュージカルの土壌を耕すためには学校の存在は大きいと思っていて。それに、ミュージカルというのは総合芸術なので、ミュージカルができれば他のことにたくさん派生できるんですよ。ブロードウェイで活躍しているミュージカル俳優というのは、ハリウッドで活躍する俳優と同じように技術と評価がともなっているんです。でも、殊に日本だと、メディアに出なくなった落ち目感のある人が出演しているようなイメージがありますよね。そういうネガティブなイメージをなくしていき、ミュージカルに精通しながらも普通の俳優や監督業にもつなげられるようなミュージカルの学校ができたらいいなと考えています。

妄想は広がるんですけどね…(角川)

ミュージカルを文化として根付かせていくためいのひとつの方法として、クラウドファウンディングがあると考えています。現在すでに新作の応援をクラウドファウンディングプラットフォーム「MotionGallery」で募っています。クラウドファンディングというのは、いわゆる個人支援を募るWebサイトなんですけど、やっぱり慣れていない人にとってはお金が絡んでくると少し怖いところもあると思うんです。

そのため、ファンディングの立ち上げをした際、出演者の方に立ち上げたことはアナウンスをしたのですが、特にアクションは求めませんでした。俳優に応援を呼びかけていただくと、ファンからお金を吸い上げて映画を撮っているようにみえているところもあるようなので。お金をいただくというのは、非常にデリケートなことで難しいですよね。

ただ僕の場合はすでに『蝶 〜ラスト・レッスン〜』の撮影に入っているので映画は作るんです。ただ、自主制作なので毎回自腹を切って制作していると次が作れなくなる。だから皆さんの応援という形で資金をいただき、次を作る体力を持続するためにファンディングを使っているんです。

自主映画の場合は自分でスポンサーを募っていかなければいけないわけなんです。そういう意味でクラウドファンディングというのは面白い発想ですよね。様々な理解をいただきながら未熟な自分を応援していただき、一緒に作っていく。ただ映画を投下するのではなく、対話と理解の中で作品が生まれていくのは文化を形成していくうえでも大いに意味があることだと思うんです。

まだまだ日本では浸透していないサービスだと思うので、次回作もまた違った形でMotionGalleryさんと一緒に協力していきたいと思っています。資金作りにおいてもこれからの時代に繋がる新しいシステムを浸透していけたらと考えています。

LOADSHOWでの作品配信も僕のなかでは楽しみな試みです。自主の映画監督って配給先を探すということにとても労力がかかるじゃないですか。せっかく、カメラが安く手に入るなど映画が作りやすくなっているご時世なんだから、ちゃんと作品として対価をとりつつ配給するということはこれからとても必要なことだと思うんですよね。それだからLOADSHOWのようなサイトがしっかり確立していくと、映画の見方も変わってきますよね。

僕は、ミュージカル映画は映画館で、というこだわりはさほどないので、ネット上で見ていただきながら様々なコンテンツに繋がるようになっていけばいいと思います。例えばWeb上で見たミュージカルの音楽をリンク先で買うみたいな。って、妄想は広がるんですけどね、実行するのは大変なんですよね(笑)。まあ、ひとつずつじっくりこなしていこうと思います。
角川裕明監督作品 ミュージカル『ユメのおと』 LOADSHOWにてダウンロード配信中!
http://loadshow.jp/film/61
角川裕明監督作品 和製ミュージカル映画『蝶 〜ラスト・レッスン〜』MotionGalleryにて制作支援募集中!
https://motion-gallery.net/projects/chou
聞き手:岡本英之
構成:島村和秀
『ユメのおと』
(2012年/25分/カラー)

【Story】

聴力を失い、歌手になる夢をあきらめてしまった雪華。自分のやりたいことが見つからずに日々を過ごす海斗。しかし、会話をするために二人で交わしたノートの中の言葉達が、やがて二人に変化をもたらす。夢に彷徨う二人の出会いとその繊細な心情の動きを、魅力溢れる俳優陣の演技や多彩な歌で紡ぐ日本では珍しい和製ミュージカル作品。ラップやフリースタイルダンス、そして綺麗なコーラス等も巧みに盛り込まれ、それでいてシリアスなストーリーとも見事に絡み合い、全く新しい形のミュージカル作品となっている。

監督:角川裕明/脚本:中井由梨子/音楽:角川裕明、北森正樹/撮影:北森正樹、常信敦嗣/照明:尾崎龍士郎/録音:常信敦嗣、松本真/編集:北森正樹/ヘアメイク:中島みどり/制作協力:中島恵/音楽協力:シゲ山本/助監督:常信敦嗣

出演:Ray、麻生優作、NOUS-RION、LOOTH、小林風花、武藤淳子、五十嵐山人、尾崎龍士郎
  • 『角川裕明(かくかわ・ひろあき)』
    1974年生まれ、埼玉県さいたま市出身。早稲田大学法学部卒業。広告代理店勤務を経て俳優に転身。2012年、SKIPシティ国際Dシネマ映画祭での監督作『ユメのおと』の短編部門グランプリ受賞に伴い、「日本におけるミュージカル映画のスタンダードを創る」ことを目的とした『Japanese Musical Cinema』を立ち上げる。俳優としては『レ・ミゼラブル』などのミュージカルや、本格的なストレート芝居等、数々の舞台や映像作品に出演。また、ミュージシャンとしても幅広く活動を展開。デザインブランド『wayomix』のプロデュース等も行っている。