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『霧の中の分娩室』桝井大地監督インタビュー

深い霧、失踪事件、家族の崩壊…この世の曖昧さを糧にした異形サスペンス

本当に霧の中で何かが為されてしまうように、本作における、子供を奪い去った犯人が一体誰なのか?という事について、もちろん犯人はいるようなのですが、観ている感覚としては不明でもなければ固有でもない。それがとても恐ろしく感じました。この犯人像についてお聞かせください。
桝井:意図的に犯人の設定を不明瞭なままにしたので自分でもわかっていない部分はありますが、強いて言えば「過去」であると考えています。出産を控え一見幸せに見える夫婦がいる。でもどこか虚ろ気で、深い傷を抱えているようにも見える。そんな中、子供が誘拐され、二人の関係は簡単に破綻する。それまで何の前触れも無かったにもかかわらず、です。つまり、自分が犯してきた過ち(=「過去」)に復讐されたのかもしれない、ということです。なにか悪いことが起きたとき天罰だと人が感じるのと近いかもしれません。
この作品では俳優陣の切迫した演技が堪能できます。特に管勇毅さん演じる主人公は様々なテンションを見せてくれます。例えば、まるで死後の世界のような湖畔での場違いなリアクションなど…こうした人物像はどのようにして生まれたのでしょうか?
桝井:映画のなかで主人公はひたすら打ちのめされます。子供を誘拐され、妻には引導を渡され、霧に圧倒され、最後には…主人公なのに本当に台詞が少ない。とにかく受けの立場なので、現場中リアクションにバリエーションをつけようと管勇毅さんとはお話ししていましたが、あれほどに多様な側面が生まれたのは管さんの演技力によるものだとしか言いようがありません。
『霧の中の分娩室』はさらわれた我が子を取り戻す捜索の過程と、その一方で、主人公の、父親になることへの漠然とした不安と葛藤が語られます。この矛盾した二重構造が面白いと思ったのですがどのように着想したのですか?
桝井:人がある事を決断した瞬間、それとはまったく逆の選択肢が脳裏をよぎることは日常の実感としてあると思います。主人公は父親となることに葛藤していますが、突如降りかかった「我が子の誘拐」という出来事をきっかけに、彼が精神的にも父親になることを決断する動機にしようとしました。自分の決断に対する迷いは誰しもあるでしょうが、自分は間違っていないと信じようとする人間の在り方に、強く惹かれるのです。
聞き手・江本優作
■「東京藝術大学大学院映像研究科映画専攻第8期生修了作品展」公式サイト
http://film.fm.geidai.ac.jp/2014/
■会期
2014年3月8日(土)〜14日(金)
■上映スケジュール
3月8日(土)19:00『息を殺して』/21:00『霧の中の分娩室』
3月9日(日)19:00『あの電燈』、『ユラメク』/21:15『RIGHT HERE RIGHT NOW』
3月10日(月)19:00『RIGHT HERE RIGHT NOW』/21:15『息を殺して』
3月11日(火)19:00『ユラメク』/21:15『あの電燈』
3月12日(水)19:00『霧の中の分娩室』/21:15『RIGHT HERE RIGHT NOW』
3月13日(木)19:00『息を殺して』/21:15『ユラメク』
3月14日(金)19:00『あの電燈』/21:00『霧の中の分娩室』
■劇場
渋谷・ユーロスペース
■料金
前売り1回券=¥800/前売り1日通し券=¥1,500
当日1回券=¥900
『霧の中の分娩室』
【Story】連続する失踪事件の捜査にあたる刑事の松永秀幸は、妻の恵里が産した子を誘拐されてしまう。一向に手がかりはつかめない。神隠しに遭ったのでは……。言い知れぬ恐怖が頭をよぎる中、ふと空を上げるとそこにはオーロラが不気味に揺らめくのであった。
監督・脚本:桝井大地/製作:宮城孝太朗/助監督:七字幸久/撮影:Juret Ghyret 照明:武田明/録音:塚本泰章/整音:佐々木淳一/美術:吴思齐/衣装:高嶋悠 編集:周暁倩/ヘアメイク:戸田 翔一郎atelier ism®/音楽:AAANNNOOO/出演:管勇毅、竹厚綾、篠原ゆき子、龍坐、山下真実子、津田寛治
  • 『桝井大地(ますい・だいち)』
    1987年生まれ、北海道出身。慶應義塾大学在学中より自主映画製作を始める。主な監督作に『少女諸事情』(11)、『空洞』(12)、2014年4月公開予定のふみふみこ原作オムニバス映画『恋につきもの』の一編『いばらのばら』がある。