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『あの電燈』鶴岡慧子監督インタビュー

世界の終焉と青春の軌跡を同時に捉えきる現代のファンタジー

本作は街のほとんどの住人が避難してしまった後の話であり、いわゆるディザスター映画のような渦中のパニックは描かれません。これから「台風」が来るとはいえ、取り残されてしまった少女と同級生の少年の彷徨が描かれています。それはどこか事後的で、震災以後の現在の物語でもあるといえるのではないでしょうか。そのような静かな破滅的世界観の下で、若い男女を主人公に据えた理由をお聞かせください。
鶴岡:今、日本の片隅に誰もいなくなった街が出現して、人の目が届かなくなった場所がある。そのことをかなり意識して舞台設定をしました。一方で、ある2人の人間の、<ささやかだけども彼らにとってはどこか特別な1日>の物語というものを描きたいと思っていて、高校生の男女を主人公にしました。舞台設定と主人公たちの人物設定の発想に、直接的な連関はありませんが、セーラー服の女の子と学ランの男の子を出したかったということはありますね(笑)。
台風の避難勧告により誰もいなくなったはずの街で、主人公たちはそれでも人を探し始めます。しかし、そこでは移動がほとんど描かれず、ある場所に到着しそこから去って行く事に主眼が置かれています。この映画での「場所」ということに関してお聞かせください。またそれはこの作品のロケ地が監督自身の出身地だということも関係しているのでしょうか?
鶴岡:そもそも「こんな場所で撮影してみたいな」ということから考え始めて脚本を書いたので、ポイントとなる場所が中心にある構造になっているのだと思います。場所が先行していて、「探す」という行為は、この物語においては実はあまり重要ではない。「探す」というよりは、「訪れる」ということを描きたかったのです。出身地でロケをしたのは、制作面で非常に撮影しやすかったというのも大きな理由ですが、結果的には、私自身がこの作品で、かつていた場所(=今はもう戻ることができない場所、という意味です)へ、一度帰ることが出来たような気もします。
藤井は運悪く(?)街に取り残されてしまったようですが、主人公のマドは自らの意思でそこに残ったかのように見えます。しかし、後に登場するストリッパーとは異なり、マドがそのようにした理由は明確には語られません。マドを演じる小林万里子さんにはどのようにイメージを伝え、撮影に臨んだのでしょうか?
鶴岡:小林さんが、あまり疑問を持たずに演じて下さったので、とても有り難かったですね。もしかすると疑問に思っていたのかもしれませんが、その疑問を明らかにする必要はないと感じ取ってくれたのかもしれません。私からはおそらく、「朝起きたら、自分だけ取り残されていたけど、彼女はそうなると前々から知っていたし、覚悟をしていた」というような抽象的な指示しかしていないと思いますが、「分かりました」と言葉少なに受け入れてくれました。藤井に関しても、一見運悪く取り残されたように見えますが、最後はマドと共に1日過ごすために残ったのだ、というように見せたいと思い、中盤から藤井がマドを引っ張って行く構図にしたい、と清水尚弥くんには伝えました。「藤井はある意味で天使のようなイメージです」と伝えると、「僕もそう思っていました」と同感してくれて嬉しかったです。最も変な(?)役である少女役を演じた涼凪さんはまだ小学生でしたが、打ち合わせ中に一生懸命ノートを書いて、脚本もじっくり読んで来てくれました。若くて非常に面白い俳優さんたちと作品づくりが出来て幸せでした。
聞き手:江本優作
■「東京藝術大学大学院映像研究科映画専攻第8期生修了作品展」公式サイト
http://film.fm.geidai.ac.jp/2014/
■会期
2014年3月8日(土)〜14日(金)
■上映スケジュール
3月8日(土)19:00『息を殺して』/21:00『霧の中の分娩室』
3月9日(日)19:00『あの電燈』、『ユラメク』/21:15『RIGHT HERE RIGHT NOW』
3月10日(月)19:00『RIGHT HERE RIGHT NOW』/21:15『息を殺して』
3月11日(火)19:00『ユラメク』/21:15『あの電燈』
3月12日(水)19:00『霧の中の分娩室』/21:15『RIGHT HERE RIGHT NOW』
3月13日(木)19:00『息を殺して』/21:15『ユラメク』
3月14日(金)19:00『あの電燈』/21:00『霧の中の分娩室』
■劇場
渋谷・ユーロスペース
■料金
前売り1回券=¥800/前売り1日通し券=¥1,500
当日1回券=¥900
『あの電燈』
【Story】ある朝マドが覚めると、辺りから人々が消えていた。大きな台風が来るらしく、皆避難したらしい。同級生の藤井に会い、彼を避難させようとするマド。様々な場所を訪れた後、二人は閉鎖された工場へとたどり着く。そこは、マドの父親が死んだ所でもあった。
監督・脚本:鶴岡慧子/製作:金毓嘉/助監督:栗本慎介/川喜田茉莉/撮影監督:小川努/照明:源元/録音・整音:中野弘基/美術監督:岡田匡未/編集:近藤薫子/鶴岡慧子/ヘアメイク:中麻衣子atelier ism®/音楽:中野 弘基 挿入歌「あの電燈」:榊原光芳/出演:小林万里子、清水尚弥、竹下かおり、涼凪、柳谷一成、吉田 圭佑、麿 赤兒
  • 『鶴岡慧子(つるおか・けいこ)』
    1988年生まれ、長野県出身。立教大学在学中から映画を撮り始め、卒業制作としてつくった初長編監督作品『くじらのまち』(2012)が、自主映画コンテストPFFアワード2012においてグランプリを受賞、その後釜山国際映画祭やベルリン国際映画祭など各国の映画祭にて上映される。東京芸大在学中に長編2作目となる『はつ恋』(2013)を監督、同作品はバンクーバー国際映画祭ドラゴン&タイガーアワードにて上映された。