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『息を殺して』五十嵐耕平監督インタビュー

生と死の巡り逢いをひそやかに見守るマジックリアリズム

本作では、「年の瀬」のゴミ処理工場で夜勤をする人々の物語が展開されます。しかし、劇中には時計やカレンダーなど客観的に時間を証明するものはほとんど登場しません。そのせいか『息を殺して』には通常の映画とは違った独自の時間性を感じたのですが、どうお考えだったのでしょう?
五十嵐:具体的には約2日間の出来事を描いていますが、考えていたのは過去と現在と未来が同時に存在してしまう空間です。ですからセリフでは何回か明日が大晦日であるとか聞こえてきますが、証明するものは特にいらないのではと思っていました。むしろひっそりと、意味のよくわからない時計が置かれていたりします。現場に最初からあって、なんでこんなものがこんな所にあるんだろうと思いましたがそのまま使っています。
舞台となる工場の不気味さと発生する奇怪な現象に対して、登場人物たちの態度にギャップがあり終始どこかユーモラスです。やはり五十嵐監督の既存の「ホラー」に対する批評が込められているのでしょうか?
五十嵐:正直に言うとあまりホラー映画に詳しくないですし意識した事はなかったです。登場人物たちが現象に対してギャップがあるのは、彼らが普段の僕らのようにいくつもの感情や出来事のレイヤーの層によって成り立っている事を前提にしていたからです。一人の人間の矛盾や突拍子の無さは常に真剣で複雑であると同時にユーモラスなものだと思います。
2年間の集大成として『息を殺して』を撮られていましたが、藝大に在籍してみて映画づくりにおいて五十嵐監督の中で変わった部分はありますか?また、本作でのカメラワークや演出から、監督の作風には孤高さを感じます。今後全く別の作風にチャレンジしたいという欲求はありますか? 
五十嵐:そんなに変わっていないと思います。芸大に入ると、様々な理由から日本っぽい、割とクラシックな方法論で映画を撮る事になります。僕はほぼ真逆のような、専門性を無くして自分達の生活や人との関係の中で映画を撮る事を考えてやっていました。今回僕の昔からの友達や友人に出演してもらっているのにはそういった理由も含まれていますし、芸大に入ってからもあまり変わらず映画を撮りたいと思っていました。ですから、僕は監督らしい監督では全くなかったかもしれませんし、俳優やスタッフの負担も大きかったと思います。  
今後については、例えばハリウッド映画とか大好きですし憧れもありますが、映画にはもっと別の可能性もあるんじゃないのかという期待も含めて、観ることや作ること、その両方でいろんな映画のあり方があっていいと思っています。僕自身は小さくても、何かに囚われてしまう事なく、その時自分に出来る事を精一杯出来ればいいなと考えています。
聞き手:江本優作
■「東京藝術大学大学院映像研究科映画専攻第8期生修了作品展」公式サイト
http://film.fm.geidai.ac.jp/2014/
■会期
2014年3月8日(土)〜14日(金)
■上映スケジュール
3月8日(土)19:00『息を殺して』/21:00『霧の中の分娩室』
3月9日(日)19:00『あの電燈』、『ユラメク』/21:15『RIGHT HERE RIGHT NOW』
3月10日(月)19:00『RIGHT HERE RIGHT NOW』/21:15『息を殺して』
3月11日(火)19:00『ユラメク』/21:15『あの電燈』
3月12日(水)19:00『霧の中の分娩室』/21:15『RIGHT HERE RIGHT NOW』
3月13日(木)19:00『息を殺して』/21:15『ユラメク』
3月14日(金)19:00『あの電燈』/21:00『霧の中の分娩室』
■劇場
渋谷・ユーロスペース
■料金
前売り1回券=¥800/前売り1日通し券=¥1,500
当日1回券=¥900
『息を殺して』
【Story】東京オリンピックを約二年後に控えた2017年、12月30日。ゴミ処理工場で夜勤を終えた人々は帰らず遊んでいる。上司の足立さんとの不倫関係に思い悩むタニちゃんは、いつしか既に死んだはずの元工場長の父親が、ここにはい るのではないかと感じ始める。
監督・脚本:五十嵐耕平/製作:大木真琴、加藤圭祐/助監督:廣原暁/撮影・照明:髙橋航/録音・整音:稲村健太郎/美術:河股藍/衣装:谷本佳菜子/ヘアメイク:光岡真理奈atelier ism®/編集:姜銀花/音楽:Sleepy Lemon/出演:谷口蘭、稲葉雄介、嶺豪一、足立智充、原田浩二、田中里奈、稲垣雄基、のぼ(Nobody)、あらい汎
  • 『五十嵐耕平(いがらし・こうへい)』
    1983年静岡県生まれ。東京造形大学映画専攻に進学し、 同大学の教授、映画監督の諏訪敦彦氏のもとで映画を学ぶ。在学二年時に制作した初長編映画『夜来風雨の声』が、 Cinema Digital Seoul 2008 Film Festival に出品され、韓国批評家賞を受賞。2014年4月公開予定のふみふみこ原作オムニバス映画『恋につきもの』の一篇「豆腐の家」を監督。