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『RIGHT HERE RIGHT NOW』一見正隆監督インタビュー

出口なき社会からの逃亡、刹那的ヴァイブスを鳴らす青春活劇

本作の主人公は、生まれ育った京都という街への憧憬を抱いており、さらには現在住む横浜という街へも、今にも憧憬に変わらんとするセンチメンタルな眼差しを向けているように思います。監督の眼差しと重なる部分が多いと思うのですが、なぜこのように街を扱った映画を撮ることにしたのですか?
一見:物語に京都の映像が導入される口実として主人公が故郷へ向けるある種の憧憬を利用してはいますが、映画全体の狙いとしては、かつて居たところと、今居る所やあるいはこれから行く所と、一体どのくらい違うというのだろうということを問題にしたいと思っていました。劇中で主人公は今居る街を出たいという思いと、やっぱり自分はここに居るしかないのではないかという思いの間で揺れ動くわけですが、結局最後にはその両方の思いの底が抜けてしまう。その時にある具体的な場所から出られないという意味ではない「どこにも行けない」ということが描けるのではないかという狙いがありました。もちろん、それらは僕自身の経験や思いに基づく部分が多少なりともあったかと思います。
音楽についてですが、本作では独特な曲が多数使用され、一見監督の音楽へのこだわりの強さがわかります。それでいて、これだけ多くの登場人物の中にミュージシャンがいないのは面白いなと思いました。
一見:実は撮影の段階では音楽のことはほとんど考えていないのですが、自分の映画はオーソドックスな画が多いと思っているので、そのぶん音楽があって初めて映画全体のトーンが決定されるようにしたいという狙いはいつも持っています。ですから撮り終えて編集してからどういう音楽を乗せたら面白いか、という風に考えるんです。今回の楽曲は京都で活躍するミュージシャンgenseiichiさんの曲を主軸に、他にも数名が楽曲を制作しています。自分もこっそり参加していますが、劇中にたくさんの人間が登場するように音楽も複数の人間がやっている感じを出せればいいなと思いました。ミュージシャンを映画の中に出したいという欲望は以前からあります。実は初期の脚本にはミュージシャンは登場していて、劇中で主人公が知り合った人間がどんどんバンドメンバーになっていくというアイディアがあったのですがあえなくボツになりました……。いつかミュージシャンの映画を撮ってみたいですね。
『RIGHT HERE RIGHT NOW』は、本当にたくさんの人々が登場してくるという点が、一見監督の新たな挑戦であるように見受けられたのですが、監督自身としてはこの作品をつくるにあたって、どのような点が一番の挑戦であったか教えて下さい。
一見:今回たくさんの方にご出演頂いたということはまず挑戦であったと思います。毎日次々と新しい役者さんが現場にいらっしゃって眼が回りそうでした(笑)。
僕自身の課題としては、藝大に入る前の映画の撮り方・方法論をいかにしてアップグレードするかということがありました。3人くらいのスタッフと少ない機材でやっていた頃とは違い、藝大では大勢のスタッフと機材に恵まれました。しかし、それで単純に映画が面白くなるかというとそうもいかない。むしろ制作体勢がある種充実していくなかで機動性など明らかに失われる部分もあるわけです。ただそこで、自主映画的な撮影とそうでない撮影のあり方を区別してしまうことは簡単なのですが、僕はあまりそうしたくありませんでした。自主映画なら出来たなどと考えずに、どんな制作体勢にも自分の映画撮影の方法論を適応させること。それができるかどうかが一番の挑戦ではありました。
聞き手:江本優作
■「東京藝術大学大学院映像研究科映画専攻第8期生修了作品展」公式サイト
http://film.fm.geidai.ac.jp/2014/
■会期
2014年3月8日(土)〜14日(金)
■上映スケジュール
3月8日(土)19:00『息を殺して』/21:00『霧の中の分娩室』
3月9日(日)19:00『あの電燈』、『ユラメク』/21:15『RIGHT HERE RIGHT NOW』
3月10日(月)19:00『RIGHT HERE RIGHT NOW』/21:15『息を殺して』
3月11日(火)19:00『ユラメク』/21:15『あの電燈』
3月12日(水)19:00『霧の中の分娩室』/21:15『RIGHT HERE RIGHT NOW』
3月13日(木)19:00『息を殺して』/21:15『ユラメク』
■劇場
渋谷・ユーロスペース
■料金
前売り1回券=¥800/前売り1日通し券=¥1,500
当日1回券=¥900
『RIGHT HERE RIGHT NOW』
【Story】大学を中退した工藤は鈴木に芸術祭スタッフとして海外の島へ行く誘いを受ける。工藤は旧友の矢野と再会するが様子がおかしい。「まずい!一緒に来い!」 そこにヤクザが押し寄せてきて追われることになる工藤。二人は無事にこの街を出ることが来るのだろうか?
監督:一見正隆/脚本:一見正隆、堀江貴大/助監督:堀江貴大、今野恭成、村山宗一郎/撮影・照明:佐藤雅人/録音・整音:安田拓朗/美術:吉田尚加/編集:小林靖子/製作:秋山剛志/メイク:宮村勇気/出演:栁俊太郎、奥野瑛太、亀山陽、山科圭太、渡辺拓真、鈴木愛、藤原大志、永冶美優紀、宮本りえ、上原剛史、池上幸平、米重晃希、徳角浩太郎、榊英雄、佐藤憲太郎、木口健太、曽根浩貴、植勝正、ほか/2014年/88分/アメリカンビスタ/HD/5.1ch
  • 『一見正隆(いちみ・まさたか)』
    1987年生まれ。三重県出身。京都造形芸術大学映像舞台芸術学科に入学し映画制作を始める。在学中に「遠い部屋」(09)や「いきてるうちに」(10)を監督。2013年東京藝術大学大学院映画専攻に入学。監督した短編「無知と魚」(13)が札幌国際短編映画祭に入選。他の監督作品として2014年公開のオムニバス映画『恋につきもの』の一編『恋につきもの』がある。