LOAD SHOW

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俳優・兵藤公美インタビュー 2/3

LOAD SHOW舞台芸術特集「そことここ」の関連企画としてこれから俳優・兵藤公美さんによる俳優ワークショップ「不動の兵藤教室」のレポートを不定期連載いたします。今回は連載記念として「不動の兵藤教室について」、「兵藤さんと演技のルーツ」などについて聞いたインタビューを3日に分けて掲載します。本日2日目—

「ガッツガツで挑むことになってしまった…」

それから青年団に興味がむかっていくのですか?
兵藤:そうですね、それから青年団を観に行くようになります。だけど、4年生になって先の進路を考えだす時期になって、青年団に所属する俳優になるのは違うかもって考えるようになって…。青年団は「80年代バブル」の中で生まれた演劇シーンのアンチのような劇団で、当時の私の目にはなんだか不気味に見えていました。「友達ができなそう」って感じですかね。それで深く考えず『俳優座』を受けようと考えていました。

そんな時、三浦くんと卒業後の話をしていて「私は俳優座に行くつもりだよ。平田オリザさんの作品にはプロデュース公演で出演できたらいいな」って言ったら、三浦くんが「平田オリザ作品に出演したいんだったら、青年団入っちゃった方が手っ取り早いよ」って言われて、ああそうかぁなんて思ってたら、「わりと、誰でも入れるらしいよ」って(笑)。「いついつに入団説明会あるから行くといいよ」とまで言われて、私は影響されやすいから「じゃあ私も青年団受けるわ!」って流れるまま入団説明会に参加しました。
当時の青年団は入団希望者が少なかったのですか?
兵藤:それが全然!平田オリザさんが前の年に『東京ノート』で岸田國士戯曲賞を受賞したばっかりだったので、入団説明会には用意されていた椅子より人が来ていて。50人くらいいたかな?そしたら平田オリザさんが説明会で「5人とりますね」って。

説明会は他に2回あったんですけど、何人くらい来てたのか計算したら怖くなって、三浦くんに「ちょっと50人くらい説明会にいたんだけど」って言ったら「あー別日の説明会でも50人くらい来てたよ」とかって言う。「ちょっと誰でも受かるっていったよね!5人しか取らないって言ってたけど」って怒ったら三浦くんが「ごめーん。ほんきで受けてー」って(笑)。すでに俳優座は受けませんと伝えてあったし、もし青年団に落ちてしまったら「何でもない人」になってしまう。だから桐朋学園を受けた時のようにまた、またガッツガツで挑むことになってしまいました…
青年団のオーディションはどういったものなんですか?
兵藤:審査は 3 次まであって、1次審査は会話。そこでは「意識の分散」を見られていたと思います。「意識の分散」とは、例えば会話をしながら時計を気にする。通りすがりに「おはよう」と言われる。そうやって会話中に色々な負荷をかけながら、感覚を現実のように生理的にさせながら劇を進行させることです。そういう審査を100人ちかく一日でやって、その日の最後に合格発表がありました。

発表は合格者だけが呼び出される形式で、リアルコーラスラインのようでした。「残ったー!!!」って。それで周りを見たら同期の三浦くんも受かっていました。他の受験者には青年団俳優の川隅奈保子さんや、劇団「サンプル」の主宰者・松井周くんがいました。なかでも松井くんは群を抜いて面白かったです。

2次審査は、「創作」でした。演劇の作り方を平田オリザさんがレクチャーして、それからグループに分かれて、2時間くらいで15分の劇を作りました。これは今で言う平田オリザさんのワークショップのようなものです。でも今だったら長時間かけてやる行程なので、当時はすごいスパルタな審査だったと思います。

二次審査の難しいところは、オーディションなのにライバルと協力し合わなくてはいけないところでした。1つの作品を作るのだからチームでコミュニケーションをとって、作品の為には誰かを目立たせて、引くところ引かなくてはいけない。オーディションって自分をアピールするものだと思っていたので不条理な気分になりましたね。釈然としないオーディションですよね(笑)。それで2次もなんとか通りました。
それは創作のグループメンバー全員が受かるんですか?
兵藤:いや、グループの内の何人かでした。今考えれば、平田オリザさんはそこで演技力というよりは創作の過程を見ていたのだと思います。話し合いの態度や、協調性など、その人となりを見ていた。もちろん出来上がった作品がおもしろければ合格率は上がるけれども、質の良し悪しはあまり関係なかったんじゃないかな。

最終審査の3次はまた創作でした。確かベケットの『ゴドーを待ちながら』と、シェイクスピアの『ロミオとジュリエット』をモチーフに1時間くらいの間で、ペアで話し合いをしながら、例えば「ここの会話、今なら電話で話せるよね」みたいに現代の発想に置き換える創作をしました。それで最終的に15人くらいが入団に決定しました。

「首の皮一枚でここまでやってきました」

それから青年団員としての生活が始まるのですね?
兵藤:そうですけど、ここで安心はできませんでした。青年団は毎年入団者と、前の年に入団した人とを入れ替える流れがあって次の年も100人くらい入団希望者が来て結局 15 人くらい選ばれる。それだから同期の合格者15人が次の年で6人になって、その次の年に1人辞めて、結局今でも残っているのは5人です。

今はもう青年団は入団オーディションをしませんけど、多い時で毎年入団希望者が100人くらい来て17人くらい入団という流れを繰り返していました。それだから入れ替えも激しく、来年度の演目にキャスティングされてないとそれの対象になる。もう私はそんなのばっかりで。
毎日がサバイバルだったんですね。
兵藤:そうなんです、首の皮一枚でここまでやってきましたよ。劇団入ってすこし経ったら本公演に出られない時期が続くようになって…ぼんやりしていました。というのも、青年団は団員だからといって、毎回出演できるわけではありません。でもそのかわり、俳優が参加するかしないか意思を聞くアンケートをとったりと、演出家と俳優ができるだけ対等な立場になれる組織の仕組みがありました。外部への出演も自由でしたし。それなので青年団に所属していますが、自営業の俳優のようなイメージはあります。自立した俳優の精神というのは青年団で学びましたね。

また、青年団でキャスティングされずぼんやりしていた頃、俳優の山内健司さんに、「青年団員だから、「俳優」だというわけじゃないよ。俳優として仕事をしなきゃだめだよ」とアドバイスを頂き、それがきっかけで私は他劇団に出演するなどして能動的に活動するようになりました。

23、4 才のころから「タテヨコ企画」や「ポかリン記憶舎」、「五反田団」、「地点」に客演するようになります。なかでも三浦くんとの『地点』の作業はおもしろかったです。

こうやって「青年団」と「客演」の二本柱の出演スタイルはしばらく続いたのですが、32 歳の時に「地点」が京都に拠点を移すことになって、私は、東京、つまり「青年団」に残るという選択をして今に至ります。三浦くんとは学生時代からずっと一緒で仕事仲間って気がしていたので…人生っておもしろいですよね。

「演技も具体的な環境に特化した演技が必要になる」

基本的に演劇一本でここまできたんですね。
兵藤:映画にも時々出演します。最近ですと深田晃司監督作品『歓待』や篠崎誠監督作品『SHARING』に出演しました。
「映画」と「演劇」ではどのような違いを感じましたか?
兵藤:呼吸ですかね。作品の中で、映像の演技は間合いやテンポはカメラが担うこともできると思うんですが、演劇は、呼吸やテンポ全般を俳優が担うことが多いですよね。

それから集中力の使い方が違いますね。映像の演技はカットで細かくきっていきますから、その都度演技のスタートを切りますが、演劇は始まれば一貫した意識の流れがとぎれることなく持続します。

どちらが良いという訳ではなく、映画にも出演させて頂いて感じたことは、演劇の演技の方が幅広いかもしれません。表現の特性というのでしょうか。極端な例えですけど映画は宇宙のセットを組むことで「宇宙」に見せられるけれど、演劇は俳優の演技でも宇宙に見せられると思います。映画はほとんどのものが空間のリアリティに基づいて構成されているので演技も具体的な環境に特化した演技が必要になるような気がします。

でも演劇の場合は現代口語を用いたナチュラルな芝居もあるし、私が5才の時に観た人形浄瑠璃のような人形の向こうで台詞を言うような演劇もあるし、観客と対話するような演劇など様々な演技表現があるように感じます。もちろん、映画でしかできないことも多くあると思うので最終的には好みの問題だと思いますが、私の場合は、究極的には何もない空間でも世界を構築できる演劇の方が好きかもしれません。
「映画」ではどのような「演技」をイメージしていますか?
兵藤:映画の場合は、ニュアンス的な言い方ですけど「今の今を演じる」というイメージです。演劇は稽古場の時間がそのまま作品に集約されていき最終形態を共有した状態で演技をする訳ですが、映画の場合は俳優が作品の世界を完璧にイメージすることはできません。完成形は監督の頭の中にしかないものだと私は思っています。

そういう意味で、映画には俳優が共有できないことがとても多いので準備をした上で「とにかくこの手触りを大事にする」とか「言われた空間の中で演技を完結させる」、「演技が段取りに見えないようにする」など『今』感じられることに集中して演じます。それが私にとって「今の今を演じる」ということかな。
俳優・兵藤公美インタビュー
7月初旬より俳優ワークショップ「不動の兵藤教室」レポート掲載予定!!!
LOAD SHOW舞台芸術特集「そことここ」
http://loadshow.jp/feature/sokotokoko
「俳優・兵藤公美インタビュー」1/3            http://culture.loadshow.jp/interview/hyoudoukumi-interview/
「俳優・兵藤公美インタビュー」3/3         http://culture.loadshow.jp/interview/hyoudoukumi-interview-3/
聞き手:島村和秀・坊薗初菜
写真・構成:島村和秀
『不動の兵藤教室』
俳優・兵藤公美(青年団)が主催する少人数制の俳優ワークショップ。それぞれ参加した俳優の形に合わせた「演技術」の養成を行う。演技上の悩み解決から、台本を使った演技指導、新たな演技方法の模索など、様々なアプローチで俳優の自立をサポートする。『不動の兵藤教室』の内容は「そことここ」の特別企画として、不定期に連載。
講師:兵藤公美
サポート・解説:坊薗初菜
問い合わせ先:hudou.hyoudou@gmail.com
  • 『兵藤公美(ひょうどう・くみ)』
    俳優。桐朋学園大学短期大学部専攻科演劇専攻卒業。1996年平田オリザ主宰の劇団青年団に入団。主な青年団の出演作品に『ソウル市民』ソウル市民恋愛二重奏』『東京ノート』『カガクするココロ』がある。客演としては「五反田団」、「サンプル」などに出演。近年では青年団国際交流プロジェクトでフランス劇文学賞大賞を受賞したパスカル・ランベール脚本・演出「愛のおわり」に出演。映画では深田晃司監督作品『歓待』、篠崎誠監督作品『SHARING』に出演。洗足学園音楽大学ミュージカルコース講師、映画美学校アクターズコース講師など演技講師としても活動している。