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俳優・兵藤公美インタビュー 3/3

LOAD SHOW舞台芸術特集「そことここ」の関連企画としてこれから俳優・兵藤公美さんによる俳優ワークショップ「不動の兵藤教室」のレポートを不定期連載いたします。今回は連載記念として「不動の兵藤教室について」、「兵藤さんと演技のルーツ」などについて聞いたインタビューを3日に分けて掲載します。本日最終日—

「俳優の仕事は役のクリエーションであると実感しました」

それでは話は変わって、兵藤公美さんがワークショップ「不動の兵藤教室」を始めるに至るまでの経緯を教えてください。
兵藤:2006年くらいから洗足学園高校のミュージカルコースの演技の授業を受け持つようになりました。ほぼバイト感覚でやりはじめたので当時は教えるノウハウもあまりなく迷いながら授業をしていたと思います。

授業では演技のエクササイズをやって、だんだんと作品の上演という流れで進行していきました。その稽古場には演出家がいるんですけど、演技については私もコメントするみたいな微妙な立ち場でその点が凄く難しかったです。「演技指導ってなんなんだろう?」って考えさせられて。

それから5年間くらい洗足学園高校で演技の講師をしていました。で、そのまま洗足学園音楽大学でも講師をやることになり、同じように演技の授業を持つようになります。現在は映画美学校のアクターズコースでも演技の講師として参加しています。
演技指導が「演出家」の仕事というイメージもありますが?
兵藤:そうですね。講師を始めた当初は「最終的には演出家に従って」と、ことわりをいちいち入れていました。やはり演出家によって大切にするポイントが違うので、演技を教える側に立ってみて「演技と演出」や「演出家と俳優」の違いを随分考えました。
平田オリザさんの演出は、どのようなスタイルなのですか?
兵藤:私の経験で言えば平田オリザさんは、役の人物の意識や感情の流れを俳優と共有することはなくて、「もう少し間をとって」とか「コンパクトに発して」とか「強く言って」など具体的な演出で、意識の流れは基本的には俳優に任されていて自由でした。

『愛の終わり』という作品でフランス人演出家のパスカル・ランベール氏と制作をした時も平田オリザさんと近い演出方法でした。コミュニケーションは違いますけど演技指導はなくて、俳優に大きなイメージを渡したら基本、「君はどうやりたいんだい?」というスタンス。アスリートとコーチみたいな関係でしたかね。選手の横で車のりながら「スピードを落とせ」とか「水をのめ」、「もっと攻めろ!」みたいな(笑)。それなので、俳優の仕事は役のクリエーションであると実感しました。

「俳優を動かすことができる言葉を自分のなかで繰り返し探していく」

「演技」を教える上で兵藤さんは何を大事にしていましたか?
兵藤:何を言われたら俳優は実感を持ってイメージできるのだろうと、言葉探しを大事にしています。「気持ち」を言われても俳優は動けないものです。「もっと楽しそうにやって」っていわれても「?」みたいになるでしょ。

そうやって俳優を動かすことができる言葉を自分のなかで繰り返し探していくなかで、「演じやすさ」を引き出すことが俳優にとって大事なんじゃないかって考えるようになりました。例えば、明確に行動としてとらざるをえない意図を見つけることで俳優は演じやすくなったりします。
「意図」というのは、どういうことですか?
兵藤:テキストの文脈から読み取れる意図だったり、シーンにおける関係性などです。例えば何かをお願いするシーンが脚本にあった場合、相手が誰かにによってお願いの仕方が変わりますよね?仲の良い友達にお願いをする時、先輩にお願いする時、また、お願いするものの程度によっては関係性がどうあれ低姿勢になることもあります。簡単な例でしたが、脚本を分析していくとこのように「意図」を見つけることが出来ます。

そもそも「お願い」というイメージは演じる俳優それぞれ持っているので、その俳優が考える意図の「お願い」が反映されることで、演技の関係性やシーンの必然性が明確になります。

「台詞をどうやって言う」とか、「身体でどうやって表現する」などではなくて、俳優がイメージをしっかり持てば、その俳優の実感が沸きあがり、行動に繋がります。それが「演技」だと私は考えます。ただ実際に演じるときは準備したイメージに従って感覚的に動くことも必要です。

「「不動の兵藤教室」は自分に最適の漢方を探すのに似ているかもしれません」

それでは少人数制のワークショップをはじめたきっかけを教えてください。
兵藤:大学で演技の授業をしていて、人によって、持ちやすいイメージが違うという感触の積み重ねがきっかけにあったと思います。

意識の流れで組み立てた方がイメージしやすい人と「リズム」とか「呼吸」の視点で組み立てた方がイメージがしやすい人、脚本を抽象的に捉えた遠いイメージの方が実感できる人、なかにはイメージなど関係なく本能的に動ける人など、色々なタイプの俳優がいると思います。

私にとって決定的だったのは友達の俳優・坊薗初菜さんが演技のことで悩んでいて個人的にワークショップした時でした。坊薗さんの悩みは基本的な演技術の「ことば」にまったくヒットしなかった。それで、ことばを変えて対話を繰り返したら、坊薗さんに適応することばが見えてきた。その時、演技はみんなそれぞれの「演じ方」や「ことば」を持ってやっていることなんだとわかりました。

「感じ方」というのは人それぞれ違うものです。それだからこそ俳優の個性が演技によって引き出されるのだと思います。坊薗さんもそうですが、人それぞれに適した「演技術のことば」があって、それは対話を繰り返してみつかるものです。だから少人数性の「教室」のようなイメージでワークショップをやりたいと考えるようになりました。
「不動の兵藤」って一言でいうとどんなイメージですか?
兵藤:う〜ん、お茶会…?いや、薬局ですね。
あの、変な例えなんですけど…漢方薬ってすごい色々な種類があって、効き目も効果も厳密には人によって違うらしいんですね。それだから、飲みながら、反応を試していくしか自分に合う漢方って見つけられないらしいんです。お腹痛い人はこの系列の漢方だよ、みたいな傾向はあるとおもうけど… 俳優それぞれ抱えてる問題が違うので「不動の兵藤教室」は自分に最適の漢方を探すのに似ているかもしれません(笑)。
最後にワークショップの意義を教えてください。
兵藤:自分をベースで考えられるようになることがこのワークショップの意義です。演出家の言葉をどう捉えるか、理解するかも技術じゃないかと思います。俳優は演出家の希望をかなえるものっていう「立場」とか「思考」にはまりやすい。

言われたことを守らなくてはとか、失敗しないようにやらなきゃとか。その意識を自分がどうやりたいかという発想に変換することで俳優が本来の仕事ができるようになると思います。それは単純に愉しいと思うんですよね。まあ私自身、焦らず気張らずに続けていこうと思います!
俳優ワークショップ「不動の兵藤教室」のレポート連載楽しみにしています。ありがとうございました。
俳優・兵藤公美インタビュー 3/3
LOAD SHOW舞台芸術特集「そことここ」企画『不動の兵藤教室』レポート連載決定!
LOAD SHOW舞台芸術特集「そことここ」
http://loadshow.jp/feature/sokotokoko
■過去記事
「俳優・兵藤公美インタビュー」1/3           http://culture.loadshow.jp/interview/hyoudoukumi-interview/
「俳優・兵藤公美インタビュー」2/3           http://culture.loadshow.jp/interview/hyoudoukumi-interview-2/  
聞き手:島村和秀・坊薗初菜
写真・構成:島村和秀
『不動の兵藤教室』
俳優・兵藤公美(青年団)が主催する少人数制の俳優ワークショップ。それぞれ参加した俳優の形に合わせた「演技術」の養成を行う。演技上の悩み解決から、台本を使った演技指導、新たな演技方法の模索など、様々なアプローチで俳優の自立をサポートする。『不動の兵藤教室』の内容は「そことここ」の特別企画として、不定期に連載。
講師:兵藤公美
サポート・解説:坊薗初菜
問い合わせ先:hudou.hyoudou@gmail.com
  • 『兵藤公美(ひょうどう・くみ)』
    俳優。桐朋学園大学短期大学部専攻科演劇専攻卒業。1996年平田オリザ主宰の劇団青年団に入団。主な青年団の出演作品に『ソウル市民』ソウル市民恋愛二重奏』『東京ノート』『カガクするココロ』がある。客演としては「五反田団」、「サンプル」などに出演。近年では青年団国際交流プロジェクトでフランス劇文学賞大賞を受賞したパスカル・ランベール脚本・演出「愛のおわり」に出演。映画では深田晃司監督作品『歓待』、篠崎誠監督作品『SHARING』に出演。洗足学園音楽大学ミュージカルコース講師、映画美学校アクターズコース講師など演技講師としても活動している。