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舞台『よるべナイター』公演記念対談 糸井幸之介(劇作家・演出家・音楽家)×橋本淳(俳優)

都会に生きる、寄る辺ない大人たちを野球というモチーフで断片的に描いたFUKAIPRODDUCE羽衣製作による舞台『よるべナイター』。2007年サンモールスタジオで初演され、同年サンモールスタジオ最優秀演出賞を受賞するなど、羽衣の代表作品ともいえる当作は10月30日(木)から11月2日(日)まで青山円形劇場にて再演となる。そこで今回LOADSHOWでは、FUKAIPRODUCE羽衣で劇作、演出、音楽を担当する糸井幸之介さんと、「羽衣作品に出演するのは初めて」という俳優の橋本淳さんの対談企画を実施。“羽衣”の成り立ちから、作風である唯一無二の「妙—ジカル」について、『よるべナイター』の魅力などを聞いた。

(写真左から糸井幸之介、橋本淳)

「深井さんとの出会いは高校生の演劇部でした。(糸井)」

本日はよろしくお願いします。ところで2人はまだあまりコミュニケーション取っていないと聞いたのですが?(10月16日時点)
糸井幸之介(以下、糸井):さきほど喫煙所でちょっと…話しましたよね。
橋本淳(以下、橋本):そうですね、気になるシーンの説明をしていただきました(笑)。直接会ったのは今日で2回目です。
今回『よるべナイター』を演出されるのは深井順子さん(FUKAIPRODUCE羽衣主宰/俳優)と聞いたのですが?
糸井:いつも、僕が演出をするのですがスケジュールの都合で、今回は深井が演出することになりました。
なるほど。ちなみに橋本さんは“羽衣”の成り立ちをご存知ですか?
橋本:僕はまだ1回だけしか舞台は観たことなくて、深井さんから劇団の成り立ちをすこし聞いてはいたのですが、是非聞きたいです。立ち上げてから10何年経つんですよね?
糸井:そうです。そもそもは深井さんと高校の演劇部の同期で、それからの付き合いになるので、橋本さん生まれてないかも…。
橋本:そんなことないですよ(笑)。
高校はどちらの学校だったのですか?
糸井:東京都杉並にある日大の付属高校だったので、そのまま深井さんと日大の芸術学部の演劇学科に入学して。そこには演劇をしたい人が周りに多くいて、一緒に「劇団 劇団」を結成したんです。深井さんは高校の終わりくらいに唐十郎さんの演劇に、同じ公演を10回くらい見るくらいはまって。そのまま唐十郎さんの「唐組」に入団しちゃったんですよ。
羽衣の作品は熱量がすごいありますよね。唐組の影響もあったのでしょうか?
糸井:そうですね。当時はアングラ色の強い劇団って主流ではなかったかもしれないですけど、僕自身唐十郎さんの迫力と情熱には圧倒されていて。深井さんは僕以上に感じることは多かったんでしょうね、入団してしまうくらいなんですから。
橋本さんは芝居をはじめたのはいつからですか?
橋本:芝居はじめたのは高校2年からです。
糸井:いまおいくつなんでしたっけ?
橋本:27歳です。
糸井:ああ、そうか。
橋本:舞台をやりはじめたのは20歳になってからで個性派俳優という言い方で呼ばれる俳優さんは昔の方が多かったと聞くので、見れなかったのが悔しいですね。そういう意味では、羽衣は独特な劇団なので今回一緒に作品が作れて楽しいです。
羽衣は制作の体系が変わっていますよね。まず、プロデューサーが劇団の全面にあったり。
糸井:深井さんが団体のリーダーで普段は俳優なのですが、羽衣の作品に関してキャスティングは深井さんがするんです。他の例えば、音楽や劇作、演出面は私が担当しています。今回の『よるべナイター』は深井さんが演出をするので特殊なかたちなんですよ。
橋本:糸井さんのルーツには音楽と芝居のどちらが先にあったのですか?
糸井:中学生の時に音楽に興味を持って、洋楽とかに憧れて、ギターとかも練習してみたんですけど、バンドを組む機会や友達には恵まれず。それだから中学のときは帰宅部だったんですよ。家に帰って音楽を聞くのが毎日の楽しみだったんです。でもそれじゃあ、青春は謳歌できないなって感じて。でも今更、運動部はきつい。学校には軽音部もなかったので、まあ、演劇部かなってそんな理由で選びました。それだから演劇をやりたいというよりは、運動部は無理かなという消極的な理由で選んだんですよ。

それに、僕は工作とか絵をかくのも好きなのですが、たまたま演劇部を見学に言ったら、丁度舞台装置を作ってる最中で、トンカチで美術セットを作りながらジョン・レノンの音楽をラジカセでガンガン流してる人がいたんです。しかも、その人が役の免除ということで、男子は禁止されていた長髪で金髪だったんです。工作をしながらロックを聞いて、自由な髪型。その光景にうたれて演劇部に入ったんです。その先輩(加藤靖久さん)は、その後も僕の作品に何作品か出ていただいていて、それこそ今回配信していただく『サロメvsヨカナーン』にも、出演頂いてるんですよ。
橋本:えー!
糸井:そうなんですよ。もしも、加藤さんがモーニング娘。とかを聞いてたら演劇部に入っていかなかったかもしれない(笑)。


最近は「妙」じゃない!?羽衣の“妙—ジカル”とは?

当時から音楽劇というのを意識されていたんですか?
糸井:高校時代は顧問の先生が鬼のように怖くて、まるでロボットのように演劇を作っていました(笑)。もちろん演劇の楽しさもそこで知ったのですが。大学になって自分が自由にできるってときに、バンドが組めなかった悔しさを晴らそうと、演劇に音楽を取り入れていったという感じです。
橋本さんはミュージカルに出演された経験はあるんですか?
橋本:あるにはあるんですけど、僕、歌には苦手意識が強くて…。それだから深井さんから羽衣の芝居にでませんかとオファーを頂いた時、歌は全然下手ですよ、と言ったんです。そしたら「大丈夫、大丈夫!」って。それで稽古初日にもう一度念を押したら「そうなの!?」って。
糸井:(笑)
橋本:歌をうたうのは好きなんですけど、舞台で歌うとなると不安で。そしたら、深井さんに「でも、妙—ジカルだから大丈夫!」って諭されました。
羽衣の特色のひとつでもある“妙ージカル”というのは一体どういうものなんでしょうか?
糸井:歌と踊りがミュージカルみたいに多いんだけど…そこまで本格的ではない、みたいな…?(笑)というのは言い過ぎにしても、そもそも、音楽を取り入れた理由は組みたかったバンドの鬱憤を晴らすためだったんですけど、団体が成長するにつれて、作風を対外的に説明する必要がでてきたので苦し紛れにつけたのが「妙ージカル」で。でも最近は観に来てくださるかたも増えて、劇場のサイズによっては、「妙」という言い方だけでは許されないことも増えてきてわりと本格的に作るようにはなってきました。「妙じゃないじゃん、ミュージカルじゃん」みたいに言われることも増えてきました。
本格派ではないということは“技巧”ではないということですか?
糸井:そうですね。技巧を駆使するのとは違う魅力を大事にしている部分はあると思います。
橋本さんは実際に稽古に入られて羽衣という劇団をどのように感じました?
橋本:歌を使って、人間の普遍性を表現する劇団だと感じました。人間の汚い部分、生ゴミの袋の底に溜まった汁みたいな一番汚くて、目を背けたくなるようなものをキレイに歌い上げるのではない、そうじゃないところで魅せるパワーが凄く良いです。それになにか親しみやすくて…。稽古場には親戚の家にお邪魔しているような雰囲気があります。
糸井:そう思っていただけると…とても助かります。
橋本:(笑)
糸井:でも、その稽古場の雰囲気は深井さんの人柄が大きいと思います。
作品制作において、糸井さんは音楽と劇作ではどちらから考えるのですか?
糸井:制作は色々併行しているので、音楽が先とか脚本が先というのはないですね。今回に関しては再演ということもあって、内容を再構成していたんですけど、音楽に関してはほとんど変更しませんでした。もしかしたら曲を作る方が性に合ってるかもしれません。
橋本:そんなことないですよ(笑)。
今の時代は静かな演劇が多いと思うんですけど、音楽とダンスを取り入れることに批評性は加味されているのでしょうか?
糸井:おっしゃる通り、今の主流を考えるとすこしずれてはいるのかもしれません。でも、だからといって作品に批評性を持っているという考えはあんまりないです。“静かな演劇”が嫌いということは全然ないですし。やはり音楽が好きというのがはじめにあると思います。ただ、歌と踊りというのを臆面も無くやってしまうと、「歌って踊る劇団」と認識されてしまいがちなんですけど…。表面的な趣味が音楽だったというだけで、作品は他の作家さんと同じく現代のものに反応しながら作っています。


10月30日から青山円形劇場で上演の『よるべナイター』では、古田敦也さんが野球指導に!?

橋本さんにお聞きしたいのですが、10月30日(木)より青山円形劇場で上演される『よるべナイター』はどんな内容だと解釈されていますか?
橋本:基本的に人は孤独で、そういう寄る辺無い人たちの話を野球という題材で包んで、それでもだれかと寄り添いながら生きていく話なのかなとおもいました。そして糸井さんはとてもシャイな方なのかなと稽古をしながら感じました。ストレートに書かず、音楽や野球で包んで表現する。ストレートは恥ずかしいから、それだから“羽衣”というのかとも考えたり。本人を前に恥ずかしい…、あってるのかな?(笑)
糸井:いや、すごい…!あってますよ!
ちなみに橋本さんはどんな役なんですか?
橋本:通しで一つの役という感じではないのですが、役名も実名ですし・・・時にはピンサロの店長だったり。
『よるべナイター』は野球の話ですよね?
橋本:そうですけど、違います(笑)。
今回、古田敦也さん(ヤクルトスワローズ/元捕手・選手兼任監督)が野球の演技指導で入っていたと聞いたので、本格的な野球の話だと思っていました。ちなみにどうして古田さんに野球指導していただくことになったのですか?
糸井:ご縁があって、羽衣の作品を観ていただくようになった中で、一瞬雪合戦のシーンがあって。それを観た古田さんが「投げ方が変すぎる」と今回、直接指導という形になりました(笑)。羽衣は野球にうとい人が多く、野球で絶対やってはいけないことをやりかねないメンバーなので、そういうところから古田さんに教わりました。
橋本:すごいベーシックなことを教わりました。あれは豪華なワークショップでした。
それでは今回は野球が好きで来られる方の期待も十分応えられる身体になっているんですね?
糸井:いや、そこまで成長しているかな…?
橋本:お手柔らかに観ていただいた方がいいかもしれません(笑)。
野球のドラマ性が作品に反映されているということでしょうか?
糸井:そうですね!

音楽が持つ高揚感と俳優の意識

舞台で歌をうたうと俳優の気分は否応にも高揚してくると思うんですけど、それは羽衣ではよしとされるのでしょうか?
糸井:舞台で溺れすぎるのは良くないと思っています。でもあれだけ叫ぶとある種の陶酔感は出てきてしまうものなので、気をつけるようにはしています。しかし、良い俳優というのは、役への客観性をセットで持ち合わせてありますし、作品のなかには俳優にとって枷になるものも用意しています。しかしそれでも溢れてしまう感情みたいなものは、こういう作品柄良しとしています。
橋本:やはり音楽がかかってしまうと、なにかスイッチが入りそうになる瞬間もあるんですよね。でも、それはまだ役が自分のなかに入っていないからそうなってしまうと思うんですよ。だからこれからもっと役を理解して、振り回されない状況を作っていこうと思っています。
ちなみに橋本さんは映像作品にも多く出演されていますが、映画と演劇の芝居に違いはありますか?
橋本:演劇と映画の芝居の違いはよく聞かれるんですけど、演技とは根本的に関係を見せるものだと思うので、あんまり変わりはないと思います。ただ、映画にはカメラがあって、演劇にはお客さんがいる。そういう違いで演技の露出のボリュームが変わってくることはあると思うんですけどね。
なるほど。それでは最後になってしまったのですが先程少し話しにも出た「羽衣」の由来を教えていただいてよろしいですか?
糸井:「劇団 劇団」が立ち行かなくなって、はじまった劇団なので、名前とかも深井さんが好きに決めればという感じでスタートしたんですよ。だから気がついたらそうなってたって…。
色々な解釈を持っていいということですね?
糸井:そうですね。あっ、衣装とかも毎回こりますしね!
(制作註:深井は、最初は女性だけのカンパニーにしようとしていたらしく、“たおやか”なイメージで「羽衣」と、あと、彼女の好きな本のタイトルから引いた、と言っています。)
糸井:なるほど。
一同:(笑)

FUKAIPRODUCE羽衣製作 舞台『よるべナイター』10月30日(木)~11月2日(日)まで青山円形劇場にて堂々再演!

◆『よるべナイター』上演場所
青山円形劇場(住所:〒150-0001 東京都渋谷区神宮前5-53-1)
http://www.aoyama.org/
◆『よるベナイター』上演スケジュール
10月30日(木)19:00【スタメン】
10月31日(金)14:00【代打】/19:00【代打】
11月1日 (土)14:00【スタメン】/19:00【スタメン】
11月2日 (日)14:00【代打】
※【代打】の公演日には古田敦也さんが出る!?
◆チケット窓口
◯チケットぴあ
【電話番号】 0570-02-9999(Pコード438-156)
【URL】http://pia.jp/t/fukaiproduce/ (PC・MB共通)
◯当日券
各回開演の45分前から当日券を必ず販売
◆チケット代金
前売り 3,500 円
当日 3,900 円
◆FUKAIPRODUCE羽衣 公式サイト
http://www.fukaiproduce-hagoromo.net/
◆FUKAIPRODUCE羽衣 公式Twitterページ
https://twitter.com/fukaihagoromo
LOADSHOW舞台芸術特集「そことここ」にてFUKAIPRODUCE羽衣製作『サロメvsヨカナーン』絶賛配信中!
http://loadshow.jp/feature/sokotokoko
取材・文:島村和秀
『よるべナイター』

出演

深井順子 日髙啓介 鯉和鮎美 高橋義和 澤田慎司 新部聖子 岡本陽介 (以上、FUKAIPRODUCE羽衣)

伊藤昌子 西田夏奈子 キムユス(散歩道楽) 中林舞 福原冠(範宙遊泳) 橋本淳 髙山のえみ 森下亮(クロムモリブデン)

スタッフ

演出:深井順子、糸井幸之介/作・音楽・美術:糸井幸之介/野球指導:古田敦也/振付:木皮成

舞台監督:谷澤拓巳/照明:松本永(eimatsumoto Co.Ltd.)/音響:佐藤こうじ(SugarSound)/衣裳協力:谷田浩(STOF)/宣伝美術:林弥生/宣伝写真・記録撮影:杉田協士/制作:坂田厚子、林弥生、大石丈太郎

協賛:ぴあ(株)、POLESTAR(株)、ATOM

提携:こどもの城 青山円形劇場

企画・製作:FUKAIPRODUCE 羽衣

【内容】

河川敷で草野球を眺める男、ファミリーレストランでビールを飲み続ける女、風俗街に勤める女たち、一人きりの 部屋でフィギュアスケートをみる女、恋人を両親に紹介するカップル、など都会の片隅に生きるよるべのない大 人たちを、野球をモチーフに、断片的に描く。
  • 『糸井幸之介(いとい・ゆきのすけ)』
    劇作家・演出家・音楽家。日本大学芸術学部在学時に劇団劇団を旗揚げ。解散後は女優・深井順子によって創立されFUKAIPRODUCE羽衣の全作品の作・演出・音楽・美術を担当。FUKAIPRODUCE羽衣では、演者が歌い踊る、短いシーンの連続で構成される独特の作風を「妙ージカル」と称し、特に劇中で多用されるオリジナルの楽曲は、韻を踏んだ歌詩と耳に残るメロディーで高い評価を得ている。07年FUKAIPRODUCE羽衣製作『よるべナイター』にてサンモールスタジオ最優秀演出賞を受賞。 11年にはホリプロ/東京芸術劇場主催『100万回生きたねこ』の脚本を一部提供。 12年FUKAIPRODUCE羽衣製作『耳のトンネル』にてCoRich演劇まつり2012春!でグランプリ受賞。
  • 『橋本淳(はしもと・あつし)』
    1987年生まれ、東京都出身。2004年に『WATERBOYS2』でデビュー。『連続テレビ小説ちりとてちん』(07-08)でヒロインの弟・正平を好演。以降、TV、映画、舞台と幅広く活躍。舞台では宮田慶子、宮本亜門、深津篤史、河原雅彦、小川絵梨子、福原充則、G2、中屋敷法仁など、様々なジャンルの演出家の作品に出演。最近の出演作に、柿喰う客『世迷言』(14)、新国立劇場『ピグマリオン』(13)、ゴーチ・ブラザーズ『飛龍伝』(13)、ベッド&メイキングス『未遂の犯罪王』など。映像作品では大河ドラマ『軍師官兵衛』(14)『風が強く吹いている』(09/監督:大森寿美男)、『携帯彼氏』(09/監督:船曳真珠)、『阿波DANCE』(07/監督:長江俊和)などがある。
  • 『定者如文(じょうしゃ・ゆきぶみ)』
    兵庫県神戸市出身。映画少年だった幼少期、バイクに溺れた10代、旅行に彷徨った20代前半を経て26歳で大阪芸術大学映像学科に入学、30歳で卒業・上京し東京藝術大学映像研究科第一期生として過ごし31歳で映像業界へと進む。その後映像業界で数々の現場をこなし東京で過ごした10年のキャリアの集大成として本年度の文化庁新進芸術家海外研修制度を利用してアメリカへと渡る予定。