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『ほんとうのうた〜朗読劇「銀河鉄道の夜」を追って』河合宏樹監督インタビュー

小説家・古川日出男とその仲間たちによって誕生した朗読劇「銀河鉄道の夜」を追った河合宏樹初監督作品、ロード・ドキュメンタリー『ほんとうのうた〜朗読劇「銀河鉄道の夜」を追って』が7月19日より渋谷・ユーロスペースにて公開になる。またその公開を記念して河合宏樹監督から今作にかける想いを聞いた。

「古川さんの朗読には意味やディティールを超えて体感する『ことば』がある」

『銀河鉄道の夜』のお話を伺う前に小説家・古川日出男さんとの出会いを教えてください。
河合:古川さんとの出会いは大学生の時です。もともと僕は武蔵野美術大学芸術文化学科の学生だったんですけど学科と関係のない映画制作をしていました。また僕は芸術祭の実行委員をしていたのですが野外イベントにミュージシャンの向井秀徳さん(ZAZEN BOYS)をゲストでお招きした際にブッキングのアドバイスをして頂いた方が、古川さんと向井さんによるセッションの企画者で、その縁で古川さんの撮影の依頼を頂いたんですね。そこでの撮影が古川さんとの初めての出会いになります。

初めて撮影したのは古川さんと虹釜太郎さん、鈴木康文さんの共演による朗読ギグでした。そこで古川さんのパフォーマーとしての表現に衝撃を受けしまい…その後、古川さんと向井さんが広島にある横川シネマという映画館でセッションをやると聞き、いてもたってもいられず古川さん本人に撮影させて頂けないかと連絡して、重いカメラを担いで、東京から鈍行電車で24時間揺られながら撮影しにいったんです。それからは自らお願いして古川さんを撮影するようになり、気がついたら、7年も追いかけています。
古川日出男さんの朗読の魅力はどこにありましたか?
河合:実は古川さんの朗読って内容があんまり頭に入ってこないんです(笑)。でも、言葉の境界を壊す力があって、それは意味やディティールを超えて体感する「表現」になっているんです。それが魅力だと考えます。
河合監督は学生時代、どんな作品を制作していたんですか?
河合:今作のような長編の劇場用映画は初めてで、学生時代はもっと実験性の強い映像作品を作っていました。
河合監督は古川さん以外に撮影しているアーティストはいらっしゃいますか?
河合:基本は、ミュージシャンのライブを撮影することが多いです。自分の撮影スタンスは「記録映像」というより「映像作品」という意識が強いのですが、そういった自分の意識をより実感できるアーティストは古川日出男さんと飴屋法水さんです。
2人を追いかけたいと思った理由は何ですか?
河合:撮影する立場として共通性を言うなら2人のパフォーマンスは撮影しても、“撮れない”という点です。明らかに映像では残せないものがある。だからこそ一回きりではなくて、追いかけてしまうんだろうな、と自分では思っています。

「朗読劇『銀河鉄道の夜』に映像を使って、出演者四人と同じ立場で戦いたかった」

朗読劇「銀河鉄道の夜」を映画化しようと思ったのはどうしてでしょうか?
河合:自分が撮った映像を作品化しようとは、朗読劇『銀河鉄道の夜』が始まった当初は全く考えていませんでした。そもそも撮影するきっかけは、朗読劇が東北ツアーを組むということが決まり、古川さんから「河合くんも東北にきてくれないか」と誘われたことからでした。ただ自分にも仕事があるので実際問題とても難しく悩んでいたら、ツアーが始まるタイミングで部署異動になりまして、営業担当区域が東北になったんです。その時は何か運命的なものを感じましたね。

それで最初は公演だけを撮影するつもりだったんですけど、気がついたら古川さん達を1日中撮影しているということが多くなって。昨年の関西ツアーの後から何かしらにまとめたいという気持ちが強まり、映画という体裁を選んだのは、古川さんの提案の一押しがあったからこそでした。
古川日出男さんは河合監督のことをどう捉えていたのですか?
河合:もともと古川さんも僕が撮影する映像をただの記録だと思っていなかったと思います。朗読劇『銀河鉄道の夜』という作品は宮沢賢治の小説があって、その作品を元に、古川日出男という小説家が戯曲化し、詩人の管啓次郎さんは詩を作り、音楽家の小島ケイタニーラブさんは音楽を作り、翻訳家の柴田元幸さんは翻訳をする。そういったそれぞれのアプローチでリミックスされる朗読劇『銀河鉄道の夜』に僕も映像作品というアプローチで、一人の作家として挑むだろうと思われていただろうし、事実僕もそういった気持ちで映画を作りました。

『ほんとうのうた~朗読劇「銀河鉄道の夜」を追って~』という映画はドキュメンタリーという括りではありますけど、朗読劇『銀河鉄道の夜』の僕なりのリミックスでもあるんです。出演者四人と同じ立場で戦いたかった。
女優の青柳いづみさんが登場するシーンに込められた想いはどのようなものだったのでしょうか?
河合:青柳さんというのは、僕の代弁者的存在でもあるんです。映画の最初、青柳さんは宮沢賢治の本を片手に、銀河鉄道のチームが訪れた東北の地を巡るのですが、いつの間にか朗読劇の世界に入り込んでいきます。それって、僕も含めたスタッフ全員が、この朗読劇を通じて体験した感覚でもあるんです。「銀河鉄道の夜」によってなにか根源的なモノに全員が導かれるという、大げさかもしれませんが。
青柳いづみさんのイメージはもともとあったんですか?
河合:2013年12月に古川さんの母校である福島県立安積高校で公演することがあったんですけど、その撮影中に自分の頭の中にポーンと青柳さんのイメージが降ってきて。映画のなかに朝積高校での公演シーンで青柳さんが「銀河鉄道の夜」の世界に迷い込んで朗読する場面があるんですけど、それは既にあの公演中に浮かんでいたアイデアでした。そのときに、ただのドキュメンタリー映画を作ることはやめようと決意しました。

「この映画は言葉の洪水なんですけど、ある意味、子守歌のようなところもあります」

「ほんとうのうた」というタイトルに込めた想いはなんですか?
河合:この映画は言葉の洪水なんです。でもある種、子守歌のような所もあると思っているんです。これは私事なんですが、赤ちゃんを抱っこした時に急に泣き出してしまったことがあって、当然、一生懸命あやそうとするじゃないですか。でもそういう時って慌てているから、咄嗟に口から歌が出る。無心で出る歌というか。その時に、これこそが本当の歌だと思ったんです。まったく“作り”がない歌。そういう原点に帰るというか、0からスタートさせてくれる、そういう力が銀河鉄道の夜にはあると感じていて、だからこの「ほんとうのうた」というタイトルにしました。

震災直後は色々な情報が入ってきて、僕自身耳をふさぎがちになったんですけど『銀河鉄道の夜』に参加していてもっと違うことに耳を澄ませるべきだと思うようになり、観客の方にも、もっと原点に立ち返るような音だったり声に耳を傾けてほしかったんです。言葉って理解させるためのものだけじゃなくて、体感することで何かもっと大きなものに耳を澄ますことができる。そんな可能性に賭けてみたかったんですね。

気がついたら身体に残ってつい口ずさんでしまう「うた」であることがこの映画の理想です。
劇中には震災後の町並みが映るカットなどもありますが、表現者にとって「震災の表現」は非常にデリケートなものだと思います。何か気をつけたことはありますか?
河合:覚悟がいるとは思っていました。実は古川さんが被災地を巡った映像ってもっと多くあるんですけど、そこを乗り越えたところに何があるのかっていうポジティブな内容にしたかったからあまり使いませんでした。それに、直に見せる震災より古川さんの震災に対する困惑の方が、リアリティーをもってあの時の震災を想起できたんですね。それだからやたらに震災のカットを入れることはしませんでした。

「僕からの朗読劇『銀河鉄道の夜』に対するラブレターです」

今後『ほんとうのうた〜朗読劇「銀河鉄道の夜」を追って』をどのように展開させようと考えていますか?
河合:朗読劇『銀河鉄道の夜』を色んな人に観てもらいたいです。また、お世話になった土地に恩返しの意味も含めて上映をしたいですし、言葉の壁を超えて海外でも上映したいです。ちなみに実は1回アメリカで字幕なしで上映しているんですけど、予想以上に反響があって、海外に向けてもっと展開していきたいと考えています。7月19日から始まる渋谷・ユーロスペースでの上映でも字幕付きで上映する回を作りました。
最後に観客のみなさまへ向けて一言いただけますか?
河合:『ほんとうのうた』という映画は朗読劇『銀河鉄道の夜』をフォローする映画ではなくて、むしろ朗読劇「銀河鉄道の夜」というプロジェクトに対する僕なりの呼応でありちょっと恥ずかしい言い方をすればラブレターです。複雑な構成で言葉を多く浴びることになり疲れる映画かもしれませんが、言葉の、意味じゃない「何か」を感じていただけたら嬉しいです。
公開楽しみにしています。お話ありがとうございました。
河合宏樹監督作品『ほんとうのうた〜朗読劇「銀河鉄道の夜」を追って』

7/19(土)より、ユーロスペースにてレイトショー公開!

連日21:00~ 2週間限定上映 他全国順次上映予定
■上映イベント
出演者舞台挨拶

日時:7/21(月祝)21:00~

場所:渋谷・ユーロスペース

登壇:古川日出男、管啓次郎、小島ケイタニーラブ、柴田元幸、青柳いづみ、河合宏樹(監督)

小島ケイタニーラブによるスペシャルライブ

日時:7/23(水)21:00~上映後

場所:渋谷・ユーロスペース

出演:小島ケイタニ―ラブ、石川ユウイチ(ANIMA)

柴田元幸×七里圭(映画監督)トークショー

日時:7/29(火)21:00~上映後、クロストーク

場所:渋谷・ユーロスペース

登壇:柴田元幸、七里圭

・他上映後トークショー付回あり。
・英語字幕付き上映回&スペシャル映像上映付回あり。
※上記詳細は随時HPにて発表いたします。
■公式サイト
http://milkyway-railway.com/movie/
■特別鑑賞券

特別鑑賞券 1,500円(税込・当日一般 1,500円)

ユーロスペース、下北沢B&B、学芸大学SUNNY BOY BOOKSにて、 青柳いづみによる、宮澤賢治”永訣の朝”朗読CD付き特別前売り鑑賞券販売中。

聞き手・構成:島村和秀
『ほんとうのうた〜朗読劇「銀河鉄道の夜」を追って』
【概要】2011年12月24日、小説家・古川日出男が宮沢賢治のヴィジョンを震災後の視点から戯曲化した朗読劇「銀河鉄道の夜」が誕生した。詩人・管啓次郎、音楽家・小島ケイタニ―ラブ、翻訳家・柴田元幸と共に作り上げた声の舞台は、2年間を通し、東北はじめ全国各地をめぐり、土地ごとに変容をとげた。監督・河合宏樹は、2年間にわたって彼らの旅に同行し、独自の視点でドキュメントを続けた。さらに、朗読劇の観客である女優・青柳いづみが、彼らの訪れた東北に再訪するという新たな視点を加え、本作は構成されている。失われた人々への鎮魂と未来への希望。どこまでも続く線路の旅に伴走するロード・ドキュメンタリー。
監督:河合宏樹/撮影:森重太陽、新見知哉、渡邉有成、近江浩之、瀬川功仁/美術:サカタアキコ(Diet Chicken)/音楽:小島ケイタニーラブ/主題歌:ANIMA「サマーライト」from 『月も見えない五つの窓で』(WEATHER/HEADZ)/製作・宣伝:浦谷晃代(Diet Chicken)/宣伝美術:牧寿次郎/WEB:仮屋千映美/協力:朗読劇「銀河鉄道の夜」実行委員会
出演:古川日出男、管啓次郎、小島ケイタニ-ラブ、柴田元幸 、青柳いづみ
  • 『河合宏樹(かわい・ひろき)』
    映像制作を主軸に、イベントの企画制作を行う自由展開型プロジェクト「Pool Side Nagaya」主宰。学生時代より自主映画を制作、様々なミュージシャン、パフォーマーなどの撮影を続け、記録映像だけではない「映像作品」を制作。 2007年より古川日出男を追い続ける。近年は飴屋法水の活動も追っている。
    http://poolsidenagaya.com/