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映画『木屋町DARUMA』公開記念 榊英雄(本作監督)インタビュー

渋谷シネパレスほか全国順次ロードショー中

現在大ヒット上映中の映画『木屋町DARUMA』。京都、木屋町の取り立て屋で四肢を無くした元ヤクザの勝浦茂雄(遠藤憲一)を中心に、裏社会に生きる人々に迫った傑作群像劇だ。監督は俳優でもあり映画、音楽の企画プロデュース制作会社「ファミリーツリー」の代表でもある榊英雄監督。前作、『捨てがたき人々』に続いて今作でも、人の汚さを包み隠さない“人間”に迫る演出で一瞬たりとも見逃せない人間ドラマを作りあげた。そこで、今回LOADSHOWでは榊英雄監督の単独インタビューを企画。榊監督の堂々とした制作理念や俳優との生の関わり方など、榊監督のほとばしる熱量と共にお楽しみください。

「せっかく生まれ落ちたダイヤのような脚本なのだから堂々とやろうと決めていた」(榊)

タブーと言える対象や出来事を堂々と描ききった『木屋町DARUMA』ですが、本作の制作の経緯を教えてください。
榊英雄(以下、榊):原作者で脚本、プロデューサーの丸野裕行さんとの出会いが今回の映画の始まりでした。当時丸野さんは、自身で書き上げた同名の短編小説がその過激さ故に出版してもらえない状況だったんです。それで、本を読んでみたら、とても面白い。主人公・勝浦の人間模様にビビッとくるものがあり、勝浦が颯爽と歩いている姿をどうしても撮りたくなったんです。それで、「この小説が出版出来ないなら映画にしちゃいましょう」って丸野さんを焚きつけまして、映画にすることに決まっていきました。
使用される言葉や内容の過激さは従来の映画の作り方では実現不可能だと思います。製作面ではどのような動きがあったのでしょうか?
榊:とりあえず映画にすることの恐れはまったくありませんでした。とはいえ、大手の制作会社に入ってもらうのは難しいと分かっていたので、僕の会社で手をかけて作るというのが前提ではありました。そのため色々厳しいこともありましたが、何の制約も受けず原作や脚本に向き合うことができました。ただ、やはり題名をテレビで宣伝することはできませんでしたね(笑)。
監督自身の規制はなかったのでしょうか?
榊:それは一切ありませんでした。映画こそ表現に対して自由なものだと僕は信じていますから。それに、せっかく生まれ落ちたダイヤのような脚本なのだから堂々とやろうと決めていました。キャスティングだって堂々と良い俳優さんを呼んで、堂々たる娯楽の映画にしようって。僕の中でこの映画は、あくまで“男たちの哀しいハードボイルド”なんです。
たしかに、途中から内容の過激さ以上に男たちの哀しいドラマに引き込まれました。原作者の丸野さんは本作で脚本も書かれていますが監督とはどんなやり取りがあったのでしょうか?
榊:丸野さんはこれまで映画の脚本を書いたことがなかったのですが、フォーマットだけ送って、見よう見まねで書いてもらったんです。それを僕やスタッフでいろいろやり取りしながらまとめていきました。丸野さんの書いた脚本は原作者だけあってとても面白かったです。ただ映画には尺があったり、予算に限界があるので、映画的な判断をお互い納得しながら作りこんでいきましたね。
監督は“木屋町に流れる高瀬川があることでこの映画が物語になった”という旨の発言をしていますが、それについてもう少し具体的に教えてください。
榊:川をこの映画の象徴として考えた時、そこには色々なものを流せると思ったんです。人間の欲望や性、肢体、ションベン。そう思うと、ああいう淫靡な町に流れる高瀬川にはいろんなものが流れてきたのだろうなって色々な想像できるんです。反面、海や川には浄化作用だってある。そういった僕の「川」に対するイメージと丸野さんが書いた物語が合致したんです。だから、オープニングは高瀬川で立ちションをするところから始めたかったんですよね。

「俳優は偉大なもの。僕たちはカメラの後ろで天啓のような演技を待っているだけ」(榊)

映画を見ていて、裏社会独特のリアリティーが鮮明に映し出されているように感じました。
榊:取り立てについてなどはリアリティーがあると思いますよ。原作を作る上で丸野さんがそういった裏社会の取材を徹底していたので。僕自身は、深作欣二監督の『県警対組織暴力』(75年)や川島透監督の『チ・ン・ピ・ラ』(85年)、そして何故か『スケアクロウ』(73年/ジェリー・シャッツバーグ)やゴダール作品などを見て自分を高めていました(笑)。
途中からは物語であることも忘れて、描き出される人間に見入ってしまいました。監督は人を描く上で何を大事にされているのでしょうか?
榊:結局、脚本というのは文字で書かれた未来予想図なので現場ではそれを疑うようにしています。脚本には疑うべき余白が必ずあるんです。例えば、ト書きに「驚く」や「泣く」と書いてあったとしても遠藤憲一さんの肉体と精神によって予想もしていなかった表現が生まれたりする。そういった、脚本を超える表現をいつも待っていますし、期待しています。
そういう意味で、脚本のイメージを遥かに超えたシーンはありましたか?
榊:遠藤憲一さん演じる勝浦が、初めて寺島進さん演じる新井英一の家に乗り込むシーンですかね。
たしかに、序盤の勝浦と新井家のシーンで完全に引き込まれてしまいました。
榊:そのシーンで、遠藤さんは新井の娘役である武田梨奈さんのスカートのなかに頭を突っ込むのですが、それは本番一回だけのアドリブだったんです。だから武田さんの怯える迫真の表情が生まれたんですよね。

あの…、遠藤さんの芝居って常にアメージングなんですよ。我々の想像をはるかに超えてくる。もちろん最低限の段取りはあるんですけど、遠藤さんはそのなかで何を出すかというのにすごく貪欲な方なんですよね。
他の俳優の方々も生々しい演技をされていますよね
榊:皆さんはじめから演技を作られるのを嫌がるんですよね。だから本番でのスタートからカットまでは俳優たちのライブ状態でした。

撮影終盤になると俳優たちは僕以上にその役のことを理解していたので、ほとんど演出することもありませんでした。段取りは決めますが、俳優たちはもうぼくの人物に対するイメージを超えていたので。
演技をしやすい現場を俳優に提供できたのは、榊監督に俳優としての目線もあったからなのでしょうか?
榊:俳優だからこそ、ということはほとんどないと思います。ただ、俳優さんが何を考えているかは、敏感に感じられる監督だと自負しています。

今回の現場で改めて実感したのですが、やはり俳優って偉大なんです。僕たちスタッフは俳優の天啓のような演技を、カメラの後ろで待っていればいいわけですから。だからこそ絶対に俳優の演技を見逃してはいけない。常に俳優の気配を感じながら、現場をまわすことに集中していました。もう撮影期間は本当に日々ライブでした。
どの役者さんも、とてもはまっているようにも感じました。
榊:木下ほうかさんが今回、キャスティングプロデューサーを兼ねてくださったので、それはほうかさんが良い役者をキャスティングしてくださったおかげですね。
『捨てがたき人々』など、榊監督の映画では翳りのある人々が多く描かれているように感じるのですが、今後はどんな映画を撮っていきたいと考えていますか?
榊:大作系の映画にお呼ばれしたいという気持ちもありますが、まずは自分のアンテナにひっかかるものを企画して自分の会社でしっかり作っていきたいです。作品に関してはバイオレンスや、ピンク映画、人間ドラマと作りたい作品はバラバラですが、“映画である”ということだけは変わりません。

そしていつかは『ミッション:インポッシブル』のような超大作を監督したいです(笑)。それだから、これからも手を上げてチャンスを待ちながら、自分でも仕掛けていくというスタンスでいたいと思っています。
ありがとうございました。
榊英雄監督作品『木屋町DARUMA』
渋谷シネパレスほか全国順次ロードショー中
◼︎公式サイト
http://kiyamachi-daruma.com/
◼︎公式Twitter
https://twitter.com/kiyamachidaruma
◼︎公式Facebook
https://www.facebook.com/kiyamachi.daruma
取材・構成・写真:島村和秀
『木屋町DARUMA』

監督:榊英雄/脚本:丸野裕行/原作:丸野裕行『木屋町DARUMA』(マルノシンヂケイト電子書籍出版)/音楽:榊いずみ

出演:遠藤憲一、三浦誠己、武田梨奈、木下ほうか、尾高杏奈、趙珉和、烏丸せつこ、寺島進、木村祐一

配給:ファミリーツリー、アークエンタテインメント

©2014「木屋町DARUMA」製作委員会
ストーリー:かつて京都木屋町を牛耳る組織を束ねていた勝浦茂雄(遠藤憲一)は、5年前のある事件で四肢を失った。今ではハンデのある躰で債務者の家に乗り込み、嫌がらせをして回収する捨て身の取立て稼業で生計を立てる。仲間の古澤(木村祐一)から世話を命ぜられた坂本(三浦誠己)の助けを借り、次々仕事をこなす勝浦。そこに真崎という家族への追い込みの仕事が入る。その家族は、勝浦を裏切り、金と麻薬を持ち逃げした元部下・サトシの知人だった。勝浦は責任を取り、今の躰になったのだが、事件に疑問を感じた坂本が過去を嗅ぎまわりはじめる。人生が毀れゆく債務者を見つめながら薄汚い闇社会でもがく勝浦と坂本は、5年前のある真実を知ってしまう…。
  • 『榊 英雄(さかき・ひでお)』
    1970年長崎県五島市出身。95年に『この窓は君のもの』(古厩智之監督)主演で俳優デビュー。その後も『VERSUS ヴァーサス』(00/北村龍平監督)、『ALIVE』(02/北村龍平監督)、『楽園~流されて~』(06/亀井亨監督)に主演。『突入せよ!「あさま山荘」事件』(02/原田眞人監督)、『あずみ』(03/北村龍平監督)、『北の零年』(04/行定勲監督)などに出演し、俳優としてのキャリアを重ねる。07年、『GROW-愚郎』で商業監督デビュー。以降、様々な視点で人間ドラマを描き続けて14年公開の『捨てがたき人々』は、第26回東京国際映画祭コンペティション部門正式出品、第9回KINOTAYO映画祭批評家賞受賞。