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五反田団 主宰・前田司郎さんインタビュー(後編)

劇作家、演出家、小説家、脚本家、映画監督、俳優と多方面で活躍する『五反田団』主宰・前田司郎(まえだ・しろう)さんに演劇や映画の制作方法から集団制作におけるコミュニケーションについてなど様々な話を聞いた。五反田団代表作品『びんぼう君』販売記念 特集インタビュー ----

「本当に本気でやってるのに全然ダメっていうのがやっぱり最高だと思う」

前田さんは2013年公開「ジ・エクストリーム・スキヤキ」で映画監督デビューしましたが、監督をするうえで挑戦されたことはありましたか?
前田:全然上手くいかなかったんだけど、映画ってかっこよくなっちゃうから、かっこよくならないように努力しました。例えばここにあるグラスをちょっとアップで撮ってもかっこよくなっちゃうことがあるでしょ。だから主演の人たちがカッコいい人たちとなると、なんかちょっとしたこと言っただけですごいかっこ良く聞こえちゃう。

でも日常ってそんなかっこ良くないから、できるだけかっこよくならないようにって(笑)。でも、かっこよくならないように照れてるっていうのがばれちゃうから、結局かっこよくなっちゃうんだけど、かっこよくしたくなかったな。
小説もそういう、かっこよくなってしまうことはありますか?
前田:小説もかっこよくなっちゃうと思います。文体とか選べば野暮ったくもできるけど。小説はかっこいいっていうより、ナルシシスティックになりやすいからどうやって他者の目を入れるかが大事になるのかなあ。

演劇の場合は俳優の身体を通してるから、そういう点では大丈夫なんです。すっごいかっこいい台詞とかがあったとしても、良い俳優ならちゃんとそこに羞恥心をもってくれるから、そうすれば俳優のフィルターを通ってお客さんの目の前で行われるでしょ?

「映画を全く知らない人間だから撮れる映画作りたいとおもってたんだけど・・・」

これからも映画を監督してみたいという気持ちはありますか?
前田:終わった時はもう撤退しようと思ってた。朝早いし(笑)。本当やたら朝早いから嫌でした。新宿に5時半とか。

映画って完成してから時間があいて劇場公開になって、インタビューを受けたりすることになりますよね? で、そういうインタビューに答えているうちに色んな反省点が見えてきたり、楽しかったなあと思えて、またやりたくなってしまった。
「ジ・エクストリーム・スキヤキ」の反省点はどこだったんですか?
前田:普通の映画監督の人ってすごいたくさん映画を観て、映画を崇拝して、映画を作りますよね。でも、僕は映画をほとんど観たことないし、映画もそんなに好きじゃないし、っていう人間が撮る映画なんだから、映画を尊敬している人だったら恥ずかしくて撮れないとか、恐れ多くてそんなことできない、みたいなことがあると思うんですが、それを平気でやれるはず。そういうことができなければ僕がやる意味がないって、映画を全く知らない人間だから撮れる映画を作りたいと思ってたんだけど・・・

実際やってみたら意外とそつなくこなせてしまった。まあ、映画っぽいものが出来ちゃったのが、残念だった。それが反省です。だから次はもっと無茶苦茶やらなくちゃいけないなって。
映画に演劇っぽい要素を入れることは?
前田:それもダサいよね。僕は演劇人だから演劇っぽい映画を撮るぜ(笑)っていうのはダサいよね。僕は悪ふざけみたいなことをやりたかったんだけど、やっぱり映画のフォーマットがあって、スタッフの人たちがすごいちゃんとした人たちだから、その人たちにまかせておけば普通に「映画」が撮れちゃうんです。で、結局そのフォーマットにのっちゃって、良い映画を作ってしまった。もしかするとプロにプロの仕事をさせない監督が僕の思う良い監督なのかも知れない。
無茶苦茶やるのを目指すのは難しいですね。ビジョンを持ってなくちゃいけないんですかね?
前田:いやぁビジョンをもってやってもダメだと思います、やっぱり。結局、そういうダメな感じを演出した感が出ちゃう。本当に本気でやってるのに全然ダメっていうのがやっぱり最高だと思う。だから素人だけでやるのが良いかも。人はそれを自主映画と呼ぶのだけど・・・(笑)
素人っていっても「お母さん」とかそういうことですよね?
前田:そうそうそのレベル。(笑)
沖田さんと前田さんで、2004年に「La・fuosaje 愛をつく女」という映画を撮ってらっしゃいましたよね?そういう感じの映画ですか?
前田:そうですね、ああいうのやりたい! スタッフみんな素人で。あ、でもあの時は沖田の友達の日芸の人とかいたし。ちょっと違うか。でも現場は学園祭の出し物みたいなノリですごい良かった。とはいえ、あの映画は沖田の事務所のフィルモグラフィーからカットされてるんだけど(笑)。あと、作るのは楽しいけど、お客さんが喜ぶかと言えば怪しいですし。

「演出家は「信じること」が仕事だと思ってる」

話を演劇に戻して、「そことここ」は地方にいる演劇部員など、なかなか作品が観づらい人へ向けても発信していきたいのですが、前田さんが演劇を作るうえでこれを大切にした方が良いというアドバイスがあれば教えてください。
前田:なんだろうな。あっ、高校演劇の審査とかさせてもらってて思うんだけど、途中まですごい面白い芝居だったのに、最後になんでか、みんなちょっといい話にしちゃうというのがあって、イジメはいけないよみたいなのが入ってきて、で、それは大人の芝居でもそういう感じがあって、ただ無茶苦茶な人たちが無茶苦茶なことしてればいいのに、なんかまとめみたいな。最後ちょっといい話にするっていう、あれがいらないんじゃないかなって。

で、なんでそういうことが起きるのかなって考えたんだけど、高校演劇って一応学校でやってるからそういうのを入れなくちゃいけないんじゃないかって思っちゃってるのかな。
あと、音楽にしろ絵にしろ学校で習いますよね。そうするとなんかマニュアルとかやり方とかあって、演劇とかもね、起承転結がないといけないみたいなそういうのを勘違いしちゃって、ルールがないと演劇と呼べないって思っているのかもしれない。でも本当は全然そんなのなくて、好きにやってそれで自分たちとお客さんが楽しめればいいんだと思うんです。
演劇や映画はグループワークじゃないですか。色々人となコミュニケーションをしながら制作をすると思うのですが、前田さんは何かコミュニケーションをする上で意識していることはありますか?
前田:わかんないんだけど僕は演出家は「信じること」が仕事だと思ってるから、俳優にこういうことやってって演出したときに、俳優がやらなかったら、「こいつなんか反抗してんのか」って思っちゃいがちだけど、「俳優は頑張ったんだけど、たまたまできなかっただけなんだ」って思うようにしてます。そういうふうに思わないと、イライラするし、空気が悪くなるから。とにかく信じて、この人はこの人なりに一生懸命やってるんだけどできないんだなーって思うようにしてます。

こいつ言ってることやろーとしてねーなって思っちゃうとそこで稽古は止まっちゃうんだけど、演出したことを、「やれなかったんだな」って思えばなぜ出来ないのか、それを探るのが稽古になっていくと思うんです。ただ俳優がやらないだけだと思ってると、ヤレヤレとしか言えなくなってくるから。演出家の仕事が、自分が思ったことをただやれって俳優に言い続ける仕事だったら、それはつまんないよね。
本日はありがとうございました。
前田司郎さんインタビュー前編はこちら
  http://culture.loadshow.jp/interview/maedashirou-interview/
舞台芸術特集「そことここ」にて『びんぼう君』ストリーミング配信中
  http://loadshow.jp/feature/sokotokoko
聞き手:島村和秀
構成:島村和秀
  • 『前田司郎(五反田団主宰)』
    1977年生まれ。作家、劇作家、演出家、映画監督。五反田団主宰。2004年「家が遠い」で京都芸術センター舞台芸術賞を受賞。「生きてるものはいないのか」で第52回岸田國士戯曲賞を受賞。2009年には「すてるたび」でベルギーのKUNSTENFESTIVALDESARTS に招聘。2011年、フランス人演出家 Jean de Pange との共同作品「Understandable?」がフランスで上演される。
    また、小説家としては2007年に「グレート生活アドベンチャー」で第137回芥川賞候補。2009年「夏の水の半魚人」で第22回三島由紀夫賞を受賞。シナリオライターとしてはNHKドラマ「お買い物」の脚本で、第46回ギャラクシー賞優秀賞を始め、数々の賞を受賞した。著書に「愛でもない青春でもない旅立たない」「誰かが手を、握っている気がしてならない」(講談社)「グレート生活アドベンチャー」「逆に14歳」(新潮社)などがある。
    自作の小説「大木家の楽しい旅行 新婚地獄篇」(幻冬舎)が11年に、『生きてるものはいないのか』(石井岳龍監督、原作・脚本/前田司郎)が12年に映画化。シナリオライターとしては、『横道世之介』(沖田修一監督、脚本:沖田修一・前田司郎)、NHKドラマ「お買い物」を担当。2013年には井浦新、窪塚洋介と強力なキャストを迎えて「ジ、エキストリーム、スキヤキ」で初監督デビュー。
    五反田団立ち上げ以来、これまで40作品以上を発表しているほか、高校生から他劇団まで作品の提供や演出を務め、海外での公演も積極的に行う。