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映画『故郷の詩』公開記念特別対談 森岡龍(映画監督/俳優)× 三宅唱(映画監督)

熊本出身の学生のための男子寮『有斐学舎』を舞台に、世界一のスタントマンを目指す主人公の“大吉”や映画監督を目指す“天志”など、まだ何者でもない若者たちの愛しき日々を描いた嶺豪一 監督/主演作品『故郷の詩』がポレポレ東中野にて劇場公開となった。そこで今回は本作の公開を記念して映画『ニュータウンの青春』の監督でもあり俳優の森岡龍と映画『Playback』監督の三宅唱による特別対談が実現。深夜、都内某所。日本映画の若き旗頭である2人は何を語りあうのか?写真のチャラさとは裏腹にこれからの映画の作り方に迫る!?

ナンパのように映画をつくる?

三宅唱(以下、三宅):『故郷の詩』はナンパから始まる映画だからさ、まずは龍くんにナンパにまつわる話でもしてもらおうかな。
森岡龍(以下、森岡):ナンパは映画的だし、映画はナンパ的だよ。
三宅:なに言ってんだよ。龍くんは最近ナンパしてる?
森岡:してないってことにしておく。
三宅:じゃ聞くけどさ、ナンパのなにが楽しいの? 
森岡:おしゃべりだね。ナンパは世界を教えてくれるからね。
三宅:世界? 
森岡:世界への窓なんだよ、ナンパは。
三宅:バカだねえほんと……。じゃあ、おしゃべりってなに? 
森岡:それは千差万別なんだよね。その日は寒いのか暑いのか、雨が降っているのか、彼女の髪は濡れているのか、メイクや着てる服がどういう風なのか。
三宅:まず観察だ、と。
森岡:そうそう。で、例えばクラブでナンパするとして、女の子の飲み物が空だったら「何か飲む?」って声の掛け方があり得るし、グラスに飲み物がたっぷりあったら「一口ちょうだい」っていう声の掛け方もあり得るよね? ナンパにはそれぐらい可能性が無限にあるんだよね。
三宅:なるほどね。
森岡:で、芝居もそうなんだよ。ナンパと一緒で、芝居って可能性が無限にあるものじゃん。
三宅:お、繋がったね。 
森岡:『故郷の詩』で言うと、豪一(嶺豪一/本作監督・主演)がローションまみれで廊下を滑るシーン。ト書き上では「楽しそうに廊下を滑る大吉」なんだよ。 
三宅:ほう。
森岡:でも、滑ってる顔がいわゆる「楽しそうな顔」ではないんだよ。
三宅:あれはほんとにいい顔だった。
森岡:なんとも言えない顔をしてるんだよね。でも、それだ!って感じ。
三宅:豪一はなにをやっても正解にみえるんだよな
森岡:とにかく『故郷の詩』では、そこにいるすべての人たちが、そうじゃない可能性もたくさんある中で、それでしかないという佇まいで存在してる。
三宅:ちなみに豪一自身はナンパもうまいの?
森岡:コンビニでナンパする男だからね。ドリンクコーナーにいる女の子にビール買ってあげたり。
三宅:…いや、それってさ、電車の中で話しかけて来るおじいちゃんとかおばあちゃんみたいなノリなのかね?
森岡:ああ、そうかも。
三宅:あとは、犬とか匂い嗅ぎあうじゃん。アニマル的な習性でさ。
森岡:それだ。無邪気なんだよ。
三宅:まあいいや。でね、おれは『故郷の詩』をみて、フツーにナンパしてることがまずイイ感じだな、と思ったんだよね。それが映画の終わりでもちゃんとケジメがつくのもイイ。アメリカの青春映画ならナンパのシーンがないなんて考えられないけど、日本映画だと、フツーにナンパする場面ってあんまりないじゃん。実生活ではしてるはずなのにさ。
森岡:でもナンパは苦手意識あったよ。「チャラさ」ってものを肯定的に考えられるようになったのも最近だな。結局さ、なんで「表現」に向かうのかってところにも繋がって来ると思うんだけどさ。
三宅:ん?
森岡:例えば、男3人組。Aくん、Bくんが通用するのにCくんだけが通用しない。まあたいていは見た目のせいでね。そうすると、女を振り向かせるために工夫が必要になるじゃん?
三宅:ユーモアとか、まあ金とか。
森岡:そう、喋り方とか服とか。あるいはそいつらを無視する。それが表現。
三宅:うーん。…ん?
森岡:世界が揺らぐ瞬間っていうか。Cくんは自分が通用しないんだっていう世界に直面する訳じゃん。そのときに自分がどう対応するか、っていうのが表現。なのかな?
三宅:もう少し言うと?
森岡:「不良」っていうものがあるじゃん。あるルールの中で良しとされていないから「不良」な訳じゃん?ある枠の中で排他されるなら自分の枠を作ろうって作業になる訳じゃん。カウンターというか、「良い」とか「美しい」の定義や価値観に揺さぶりをかけなきゃ。それが表現のモチベーションにはなり得るかな。

スラングのように映画をつくる!

三宅:『故郷の詩』がそういう精神でつくられるというのはよくわかる。スタントマンを目指す物語だしさ。でも、どこからスタントマンが出てきたのかなと思って。
森岡:豪一にまず予算もスターもない映画をどう面白くするの? って聞いたら、「高い所から飛びます」って言ったんだよ。
三宅:ジャッカスだ。
森岡:そう。いろんなところで無茶をしたいっていう衝動がまずある。じゃあその映像の連続だけで良いじゃんっていうと、劇映画にしたいっていう欲求がまた別にある。で、シナリオとか物語ってものを用意してみようってなる。で、「夢を追って田舎から上京する男」の豪一自身の物語になったんだよね。
三宅:たいていはその逆だよな? そんなこともない?
森岡:「夢を追って田舎から上京する男」の話をやろうとしたら、その職業を安易にバンドマンや映画監督や作家や俳優にしちゃいがちだよね。だから、スタントマンであることがとても面白いと思った。
三宅:スタントすることが出発点なわけね。
森岡:ただ、それをシナリオで読むと、こんな人いる? っていう、浮世離れしたフィクションにも感じちゃったのよ。で、完成したら、スッゲー!ってなった。
三宅:龍も1シーン出てくるけど、あれは誰イメージなんだっけ。
森岡:『パンチドランクラブ』(監督:ポール・トーマス・アンダーソン/03年)のフィリップ・シーモア・ホフマンを演ってくれ、と。
三宅:それ言えちゃうのはいいよね。
森岡:普段のギャグなのよ、面白い映画を観て誰かをマネするっていうのが。それを現場でやってくれっていう、それだけのことなんだよ。
三宅:普段どおりに映画をつくるっていうのは、いいよなあ。
森岡:自分たちの言語で映画をつくってるってことだよね。
三宅:でもさ、仲間と一緒に面白い映画つくってた人が、規模が大きくなっていくにつれて、周囲も変わるから、前と全然ちがう映画をつくるっていうことがあるじゃん。ほかの国は知らないけど、日本だと自主映画の映画祭とかは、基本的になぜか「切れ目」として機能するシステムになってる。
森岡:より大きく、っていうのがあたかも正解のようにね。
三宅:やっぱり言葉とか生活が変わっちゃうと、そうなるのかね。でもそうなると、なんで映画つくるのか混乱しないのかな、とおれは思う。
森岡:自分が持ってない言語で映画を撮る必要があるのか?
三宅:だから豪一にはね、あのまんまでっかくなってほしい。セス・ローゲンみたいになってほしいんだよ。
森岡:なれるでしょ。
三宅:ジョナ・ヒルみたくなれるかな?
森岡:なれるなれる。
三宅:『故郷の詩』はほんとにいい例だと思うんだけど、日常の共有とか、普段どおりの言葉がベースにあるじゃんか。方言ってこともあるけど、それ以上のもっと大きなものとしてさ。それって、やっぱり大きい映画にはなかなかマネできない。
森岡:まず、共通言語を覚えたり、見つけなきゃいけないよね。
三宅:要するに、大事なのはスラングじゃん。
森岡:そう、SNS的に言うとオリジナルのスタンプで撮られてるスタンプ映画。
三宅:ん?
森岡:スタンプ。
三宅:スラング。
森岡:そうだね。スラングって超重要だよね
三宅:標準語みたいな映画よりも、スラングみたいな映画のほうがずっと面白いってことは、ここ数年の映画だけみても証明できると思うんだよね。でも、スラング=内輪って思われたらイヤなんだよな……。スラングはかっこいいって感覚はみんなわかると思うんだけど、もしあえて言葉にするなら、スラングってなんでかっこ良いのかね?
森岡:生活に根付いてるからね。
三宅:生活とか、方言とかカルチャーとかね。そういうことじゃなくて、なんかない?
森岡:ニュアンスというか適確さじゃない?
三宅:そうか、標準語なんかよりむしろスラングのほうがずっと厳密なんだってのは強調したいところだな。
森岡:楽しいも悲しいも一つじゃないからね。
三宅:そういう感情なんかを厳密に表現しようとすればするほど、自ずとスラングになる、と。
森岡:『故郷の詩』にはそれがあるんだよ。
三宅:みればわかるってやつだよね。…よし、もうこれで終わりでいいかな。
森岡:だな。あ!あの子可愛い。ちょっと声掛けてくるわ。
三宅:いってらっしゃーい。

※この対談には一部、フィクションが含まれております。

嶺豪一監督作品『故郷の詩』
ポレポレ東中野にて、絶賛公開中!!
※大盛況につき11月7日まで公開の延長が決定!
◆上映場所
ポレポレ東中野(住所:東京都 中野区 東中野4-4-1/ポレポレ坐ビル地下)
http://www.mmjp.or.jp/pole2/
◆公式Facebookページ
https://www.facebook.com/kokyonouta
◆公式Twitter
https://mobile.twitter.com/kokyo_no_uta
◆上映イベント
□10月24日(金)21:00の回上映後
ゲスト:三宅唱(映画監督) × 松井宏(映画批評、翻訳) × 嶺豪一監督
□10月25日(土)21:00の回上映後
ゲスト:瀬々敬久(映画監督) × 嶺豪一監督
□10月26日(日)21:00の回上映後
ゲスト:前野朋哉(映画監督・俳優)× 嶺豪一監督
写真:森岡龍、三宅唱
構成:森岡龍、三宅唱、島村和秀
『故郷の詩』
(2012/16:9/カラー/HD/71分)

監督/脚本/主演:嶺豪一

出演:飯田芳、林陽里、岡部桃佳、後藤ひかり、山本圭介、佐藤悠玄、中村裕太郎、広木健太、森岡龍、伊能賢一郎、斎藤芳廣、菱田明裕、酒川雄樹、前田祐樹

撮影:楠雄貴/録音:根本飛鳥、磯龍介、佐藤考太郎/照明:北原督乙/制作:甫木元空、廣田智大、西世哲平/美術:須藤彰/編集:小野寺拓也/CG:田村元幸/音楽:今村左悶/大道具:中村猛、上村昂平/車両:坂口天志/楽曲:SPANGLE/協力:映画蛮族/宣伝協力:ポレポレ東中野

(C)「故郷の詩」上映委員会

【Story】

故郷の熊本に可愛い彼女を残して上京した大吉は、熊本出身の学生のための男子寮『有斐学舎』で映画を撮りながら、心と体を鍛え、スタントマンへの道を歩み始める!はずだった…。だが、東京での学生生活は、酒やナンパに明け暮れ、同じ寮生で映画監督志望の天志にも見放され、気がつけば卒業目前。何ひとつ上手くいかない日々から大きな一歩を踏み出すために、ある日、大吉は一世一代のスタントに打って出る――。まだ何者でもない若者たちの、ほろ苦くて切ない、だけど爆笑してしまう、愛しき日々!
  • 『森岡龍(もりおか・りゅう)』
    1988年東京都出身。俳優、映画監督。監督作は『硬い恋人』(09)、『ニュータウンの青春』(11)など。出演公開待機作に『超能力研究部の3人』(山下敦弘監督)、『ピースオブケイク』(田口トモロヲ監督)がある。
  • 『三宅唱(みやけ・しょう)』
    1984年札幌生まれ。映画監督。『Playback』(12)、『やくたたず』(10)など。現在boidマガジンにてビデオダイアリー『無言日記』を毎月配信。また最新作として長編ドキュメンタリー映画を仕上げ中。