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『女の子よ死体と踊れ』朝倉加葉子監督インタビュー

10月31日(土)よりシネマート新宿、11月14日(土)よりシネマート心斎橋、名古屋シネマスコーレ ほか全国順次公開!

『クソすばらしいこの世界』で、容赦のないスプラッター描写とオリジナリティ溢れる物語で注目を集めた朝倉加葉子監督。今作は打って変わって、ホラーでありながらも、「ゆるめるモ!」というアイドルの魅力全開な、ポップでキュートな映画が届けられた!朝倉監督流、新たなホラーが出来上がるまでの道程をお聞きした!

-通り一遍のアイドルではない-

少女たちの自然体な表情や独特の間をそのまま映画に取り入れているような雰囲気がありました。その中で、監督の世界観が次第に増していき、より一層引き込まれていきました。今回「ゆるめるモ!」の方達が出演されるのは、企画段階で決まっていたのでしょうか?
朝倉:そうです。最初の時点から「ゆるめるモ!」でホラーを撮りませんか、という事でした。
朝倉さんといえばホラーという流れではあったのでしょうか?
朝倉:多分映画業界的にホラーというジャンルが最近また盛り上がりを見せてるようなのと、企画元が昔からお付き合いがある「TRASH-UP!!」だったので、それで私を選んでくれたのかと思いますね。なぜ私なのか、詳細には聞いた事はないですけど(笑)。
出演者、ジャンルは決まっていて、物語については朝倉監督にお任せだったのですか?
朝倉:企画書自体は色々出しましたが、基本的には委ねてくれました。最初は「ゆるめるモ!」の事を少しだけ知っているという状態だったので、音源を聴いたり、ライブに行ったりして。それで、彼女たちとやるならどういう映画にしようかなという風に考えていった結論が今作になっています。
本人たちのネーミングがそのまま役名になっていますよね。
朝倉:「ゆるめるモ!」は、通り一遍のアイドルではないと思うんです。なので、彼女たち自身が主演の映画という事が、見所の一つに成り得るかなという気持ちがあって、役名はそのまま使わせてもらいました。人数が多いので、初めて「ゆるめるモ!」を観る人に覚えてもらいやすい名前という意味で、ソースがある方が良いのではないかという理由もありました。
「ガーリー・ホラー」という新たなジャンルで銘打っていますが、ジャンル的な位置づけで狙っていたところはありますか?
朝倉:「ゆるめるモ!」をどんどん知るにつれて、あまり怖くないホラーにしたいというのがありました。彼女たちって、どこか「異種格闘技戦」みたいなところがある気がしていて(笑)。いわゆる女の子女の子している人たちではないと思うんです。例えば、露出するのに抵抗があるようで、ずっと長いパンツを履いている子がいたり。一時期の衣装のつなぎを劇中でも使用しているんですけど、そういうのが公式衣裳なところもちょっと普通のアイドルとは違うんじゃないかなって。でも変わってはいるけど、いわゆる普通の女の子のような側面もあり、そこが彼女たちの魅力だと思っています。
朝倉監督の過去作の『クソすばらしいこの世界』(2013)でも言えることですが、今作もオープニングから惹きつけられました。車の中にいる彼女たちの紹介シーンもかっこよかったです。音楽やテロップのタイミングも高揚感がありました。
朝倉:ローテクをかっこいい風でカバー、みたいなところはありますけど(笑)。オープニングは惹きつけれるように毎作品いろいろ考えます。幾多の傑作が証明してますけど、面白い映画ってファーストカットから面白いじゃないですか。だから映画の一番最初から一分一秒、面白さの連続なんだという意識で作りたいなとは思ってます。

-自分の頭で思ったからこそ出てくる言い回し-

アイドルを起用してというのは今作が初めてですか?
朝倉:ドラマでは何本かありますね。でも、演技の経験は多少あったり、もしくは既にきちんとしたレッスンを受けているような方達でした。「ゆるめるモ!」の彼女たちっていわゆるお芝居向けの特訓をしていない状況で今回やっているんです。それこそ撮影の段取りとかも全然知らなかったりして、その人たちとどういう風にやっていこうかというのは考えました。
アイドルを起用されたホラー映画は、今までも数多くありますが、そういった作品と差別化しようと思ってやられた事ってありますか?
朝倉:「ゆるめるモ!」という存在自体が、アイドルの枠組みを超えていると思っていたので、その分こちらはなるべくオーソドックスに話の根幹を作ろうとは思いました。それぞれタイプも違う彼女たちをどういう風に魅力的に撮るのか、どういう風に動いてもらうのかみたいな事を考えて、あまり無理をさせずに、本人たちがやり易い形にどのようにお芝居を持っていくかについては、多少計画を練ったように思います。
制限を受けている感じは確かにしなかったです。でも、普通なら作品として緩くなってしまう中、今作にはそう感じる事なくどこか俯瞰でしっかりコントロールされているのかと思いました。
朝倉:そうですね、緩くなるのは織り込み済みでやるという感じですかね(笑)。
お芝居のリハーサルは事前にやられてはいたのですか?
朝倉:撮影期間が短かったので、撮影をスムーズにするためにリハーサルは3回程やらせてもらいました。最初はお芝居のストレッチ的な感じの事をやって。普段の現場でもよくやるんですが、例えば何もないところに想像でバレーボールを作って、それをみんなで打ち合ってもらうとかですね。声を出すとか、相手に反応して自分が動くということ自体に慣れてもらいたいので、そういう事から始めてます。あとは、台詞は覚えてもらいたいけど、自分の頭で思ったからこそ出てくる言い回しというのを重要視しながら本読みはしました。
レッスンみたいですね(笑)。
朝倉:でも、普段ライブで一緒にパフォーマンスしている人たちなので、お芝居に関しても、すぐコツを掴むんですよ。

-死体ではなくて、マネキン-

個性がそれぞれはっきりしているのが、最初から面白く観れた要素でもあると思いました。あっけらかんとした様子で「待って待って」と言いながら、遅れてくるシーンは笑ってしまいました。
朝倉:嬉しいです。ありがとうございます。
今作もスプラッター要素というのは健在ですね。ただ、グロテスクというよりもゲーム的な見え方をしました。過去作とは、VFXや造形も含めてどのように描写の仕方を変えていきましたか?
朝倉:今回は全然今までの映画とは死体のあり方が違って、「死体ではなくて、マネキン」という定義のもとVFXをお願いしていました。リアリティがある残酷描写は、この映画にはふさわしくないとは思っていました。こういうタッチの映画で、目を覆いたくなる描写なんて見たくないですからね(笑)。
求めていないサプライズみたいになってしまうんですかね(笑)。
朝倉:ね(笑)。ノイズになってしまうから排除したいという気持ちがありました。
炊飯器から緑の液体が出てきたりと、小道具にもユーモアを感じました。
朝倉:あれは、最初は演出部の人たちが茶色くてリアルに腐っている感じの物を用意しようと考えてくれたんですけど、「や、蛍光のグリーンでいいです」って。そういった漫画っぽい要素は、あえて幾つか用意しました。人物描写も、漫画くらい強調したり。彼女たちをチャーミングに見せるために色々と考えました。
あのが何体も現れるのを目撃する女社長のリアクションもコメディタッチで面白かったです。あのシーンは、もしかしてカメラの後ろに回って再度通るみたいな撮り方だったんですか?
朝倉:そうです(笑)。カメラの後ろをあのちゃんが走っています。
VFXの要素を盛り込みつつも、アナログな手法も取り入れていて、そのバランスが絶妙でした。
朝倉:ありがとうございます。VFXとガンエフェクトは遊佐和寿さんという方で、こういう作品に理解があるし、とてもセンスのある方で、アイディアもいっぱい出して頂き、すごく助かりました。
ちなみに、劇中に出てくるパソコンの壁紙が『クソすばらしいこの世界』のメインビジュアルでしたね。
朝倉:あれは、許可を取るのが楽だからです(笑)。それと、あのノートパソコンは私の私物で、前から使っている壁紙をそのまま使用しています。これ位、ちょっと入れておいても良いかなと思いまして。

-ふとした瞬間に、死がグッと身近になる-

今作の音楽は、黒沢清監督作品も多く手掛けるゲイリー芦屋さんですね。思い切りホラーテイストな音楽も多く、テンションが上がりました。
朝倉:要素の多い映画なので、音楽はちゃんと方向性が定まったものにしたいと思って、駄目もとでゲイリーさんにお願いしました。ゲイリーさんの音楽は昔から聞いていたので、予算も少ない作品でしたが、やって頂けることになって嬉しかったです。この箇所はこういう感じで、あの箇所はいわゆるJホラー的な怖い音楽にしたい、というような話は私からもしましたが、ゲイリーさんの方からもたくさんのアイディアを頂きました。曲数もすごいですけど、ジャンルも豊かで、どれもとても美しいんです。最後の曲は、10分以上あるんですけど、「こんな長い曲を作ったのは、初めてかもしれない」とおっしゃっていました(笑)。
終盤、あのに皆が最後の言葉をかけていくシーンに入ると、今までの緩さとは違った、等身大の彼女たちが映っているように感じました。それぞれが、今までの自分に別れを告げるようなシーンにも見えました。朝倉監督が、撮影現場で彼女たちに直接伝えたような事は何かありましたか?
朝倉:撮影期間がかなり短いながらも、チーフ助監督の三村さんが非常に優秀だったお陰で、幸運な事にほぼ順撮りで出来たんです。なので、終盤を撮っている時は、彼女たちも大体何をすべきか理解していました。お芝居に関しては、大した説明はしていなかったと思います。
シナリオの段階で、彼女たちの成長物語として考えられていましたか?
朝倉:そういう風に考えて作りましたね。今回は、怖さを表現するホラーではなくて、あくまでエッセンスの一つとして入れようというのは早い段階から決めていました。彼女たちの年代で、私が見たいのはやっぱり成長していく姿なんです。とんでもない設定がいくつも重なっていきながらも、ちゃんと成長譚としても育てていける映画にしたいと思っていました。
どこか仮想現実から抜け出したように見えました。
朝倉:そうかもしれないです。文化祭が終わった後のような感覚というか。ふとした瞬間に、死がグッと身近になる事って女の子ってあるんじゃないかなと思っていて。さっきの場所から一歩踏み出したら、もうそういう気分になってしまうみたいな事は、ある種のリアリティでもあると思えるんです。
今作で、朝倉監督の作品の振り幅の広さをより実感しました。次回作として準備されている作品は、また毛色の違ったものになりそうでしょうか?
朝倉:すでに一本完成している作品があって、それは今作とは全く違ったタイプのホラー映画です。今年は、結構恵まれている年で、それ以外にも配信中のスピンオフドラマ『リアル鬼ごっこ ライジング』も撮らせて頂きました。これも面白いと思うのでぜひ観てみてください。一年で三本も撮れたのは初めてで、とてもありがたい事だったんですが、三本重なっている時は本当に死ぬかと思いました(笑)。
今後のご活躍楽しみにしております。本日は、ありがとうございました!
朝倉加葉子監督作品『女の子よ死体と踊れ』
10月31日(土)よりシネマート新宿、11月14日(土)よりシネマート心斎橋、名古屋シネマスコーレ、12月5日(土)より仙台・桜井薬局セントラルホール、12月12日(土)より広島・横川シネマ、12月19日(土)より福岡・中洲大洋映画劇場ほか全国順次公開!
■『女の子よ死体と踊れ』公式サイト
http://ymm-film.com
■ゆるめるモ!公式Facebook
https://www.facebook.com/ylmlm.net
■ゆるめるモ!公式Twitter
https://twitter.com/ylmlm_staff
取材・構成・写真: 川邊崇広
『女の子よ死体と踊れ』
出演:ゆるめるモ!〈もね、けちょん、しふぉん、ようなぴ、あの、ちーぼう〉、

松田優、原扶貴子、尾本卓也、国分崇、川連廣明、信國輝彦、古内啓子

監督・脚本:朝倉加葉子

音楽:ゲイリー芦屋

2015年/日本/カラー/2ch/ビスタ/70分

配給:日本出版販売 ©2015 YOU’LL MELT MORE!Film Partners

ストーリー:清掃会社YMMクリーニングでバイトをする、“もね”、“けちょん”、“しふぉん”、“ようなぴ”、“ちーぼう”の何処にでもいる5人の女の子たち。鬼の様なブラック女社長に恫喝されながら、嫌々だけど他にやりたいこともないから何となくつまらない毎日を過ごす日々…。そんなある日、森の中の清掃現場で彼女たちが発見したのは透き通るように美しい少女の“死体”。ノルウェーのブラックメタルバンドの儀式を使って“死体”を蘇らせることに成功した5人だったが、その死体“あの”には知ってはならないヤバすぎる秘密が隠されていた。
  • 『朝倉加葉子(あさくら・かよこ)』
    東京造形大学卒業後、TV制作会社勤務を経て映画美学校8期フィクションコースに入学。2010年、TVドラマ『怪談新耳袋 百物語』の一篇『空き家』で商業デビュー。2013年に初長編となる全編アメリカ撮影のスラッシャーホラー『クソすばらしいこの世界』が全国各地で公開された。また同年の短編『HIDE and SEEK』は、各国の映画祭で上映された。ほかの作品に、高橋洋監督作品『恐怖』バイラルムービーとしてネット配信された(のちに『恐怖』DVDに特典として収録)短編『風呂上がりの女』(2010年)や、TV番組『スマホラー劇場』内の東京女子流主演ドラマ『悪魔召喚』(2014年)、スピンオフドラマ『リアル鬼ごっこ ライジング』(三編中の一編「佐藤さんの正体!」)がある。