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ドキュメンタリー映画『パパ、遺伝子組み換えってなぁに?』ジェレミー・セイファート監督インタビュー

2015年4月25日(土)より、渋谷アップリンク、名古屋名演小劇場ほか全国順次公開中!

ジェレミー・セイファート監督作品『パパ、遺伝子組み換えってなぁに?』が4月25日より渋谷アップリンク他、全国順次公開となる。本作は3人の子どもを持つセイファート監督がひとりの父親として「どんな食べものを、家族で選択していくのか」という答えを見つけるために遺伝子組み換え食品(GM食品)の真実を追うドキュメンタリー。今回LOADSHOWでは映画の公開を記念してセイファート監督にインタビューを実施。日本食品の安全性や食品問題との向き合い方、ドキュメンタリー制作における方法論などを聞いた。

日本における食品安全

映画を拝見させていただき、アメリカ食品に関する深刻な状況を知ることができました。その点日本食は安全かと思いましたが、セイファート監督は来日してみて日本食をどのように感じましたか?
ジェレミー・セイファート(以下、セイファート):確かにヘルシーな食べ物も多いですし、アメリカよりは健康的な気がします。しかし、日本はとうもろこしの約89パーセントをアメリカから輸入しています。それらは飼料用に使用されたり、コーンスターチというお菓子などで使われている糖分になっています。日本の一見安全そうに見える食品も形を変えてGMの脅威にさわされているのです。なので、とりわけ食の安全が確保されているという印象はありませんでした。
食の安全を確保するために私たちが取るべき行動とはなんでしょうか?
セイファート:やはり、GM食品のような、食生活を脅かす食品を購入しないことだと思います。不買によって消費者のメッセージを現実問題として伝えていくことが大切だと思います。
しかしその場合、農家の経営を脅かしてしまうのではないかと、ジレンマを抱えてしまいます。
セイファート:もちろん、大変考慮すべき問題です。しかし、やはり消費者のニーズを訴え続けることで生産者の思考は確実に変化していきます。重要なのは、消費者の需要を強く訴え、生産者はそこにいち早く気づいて、変化していくことなのだと考えます。
アメリカではないのですが、先日オーストラリアに行く機会がありました。そこでは健康食(オーガニック食品)ほど価格が高く、ジャンクフードはとても安く購入できました。経済格差が世界的に広がりつつありますが、このような状況下で貧困にあえぐ人々はどのようにして食品の安全を確保すればよいとお考えですか?
セイファート:それは大きな問題です。皮肉なことにアメリカでは税金がGM食品に流れ、低価格が確保されています。そのことを私は「嘘の安さ」と言っているのですが、私たちの税金がGM食品を補助してしまい、安くなっているわけです。そうしてGM食品が蔓延して、オーガニックがニッチになってしまっている。これは本来、構造的に逆になっていないといけません。本当に私たちが望むのは健康的なオーガニック食材なのにもかかわらず、企業側の圧力によって逆転現象が生まれてしまっているのです。

よって、収入が少ない人ほど健康的な食生活を送れないという仕組みが生まれているのです。我が家でも、身体によいものを取り入れるために、肉料理を食べないようにするなど、できるだけ努力するようにしています。ただ、やはり健康的な食べ物を安価に手に入れるのはとても難しい状況ではあると思います。

アメリカとヨーロッパの違い

映画の中では、監督がモンサントなど大きな組織と立ち向かう姿が度々映し出されていましたが、疲弊してしまうことはありましたか?
セイファート:はい…(笑)。もう、本当に疲れます。でも、身体に良いものを手に入れるためにここまでしなくてはいけないのはおかしなこと、異常なことですよね。科学薬品を作る会社が市場を支配しているようなこの異常な現状には、やはりひとりでも多くの人が戦うしかないと思っています。
ヨーロッパは食品安全の考え方が進んでいるように思いました。アメリカとヨーロッパの違いはなんだと思いますか?
セイファート:ひとつにはヨーロッパの国々の方が歴史が長く、アメリカにはない知恵の蓄積があるということです。そもそも、ヨーロッパは食に対する興味が高い。それだから、どこで作られているかという食の起源についても関心が高い。

あと、ヨーロッパは不確かなものにはじっくり実験や審査を行う傾向にあるんです。その点アメリカは審査を軽視していて、十分な試験が行われていなくても市場に出ていってしまうところがあります。これは、食べ物だけではなく、薬品などにもそのような傾向がありますが。

ドキュメンタリーを選ぶ理由とその方法論

数ある映像表現の中で、セイファート監督がドキュメンタリーを選ぶ理由を教えてください。
セイファート:2つ理由が挙げられます。ひとつには、ドキュメンタリーの自由度の高さです。ドラマ系の映像作品ですと俳優の方々であったりと人が多く必要になります。その点、ドキュメンタリーはひとりでも制作可能なので、そのような自由度の高さからドキュメンタリーを選んでいます。

もうひとつは自分にとっての関心の高いものに対して純度をもって対峙していたいと考えているからです。

過去に『DIVE!』というゴミ箱のなかに飛び込んでいくというドキュメンタリー作品を制作したのですが、それは実際に自分にとって関心があったからしたわけで、そのような作品は瞬発力と機動力が必要です。そういった純度が作品の強度になるのはやはりドキュメンタリーなので。しかし、将来的にはドラマ作品も作ってみたいと考えています。
創作方法によっては、ドキュメンタリーは過剰に扇動的内容になってしまう可能性もあると思うのですが、セイファート監督がドキュメンタリーを撮る上でルールーなどはありますか?
セイファート:調査的な映画、つまり事実を並べていくような内容にはしないようにしています。もちろん、ある問題について取り上げてはいるのですが、あくまで僕のドキュメンタリーはその問題の根底にあるものまで掘り下げるための媒体でしかないと考えています。普段見ることができない、奥底にあるものへ向けて観客とともに掘り進めて発掘していくことが私のルールだと言えます。
今作は、監督のお子さんの関心からスタートしたドキュメンタリーでしたが、そういった普遍的な切り口が大変移入しやすかったです。
セイファート:素朴な疑問からはじまるテーマの方が力強いものを持っていると思うんです。「人間関係ってどういうこと?」とか、「家族ってなに?」など私たちが本当に気にかけていること。そういった普遍性のある事項からまた別の問題を掘り下げていくことで本当に大切なことに気がつくことができる。それが、私がドキュメンタリーを作る上で最も大切にしていることです。
ありがとうございました。公開楽しみにしています。

2015年4月25日(土)より、渋谷アップリンク、名古屋名演小劇場ほか全国順次公開中!

取材・文:島村和秀
『パパ、遺伝子組み換えってなぁに?』

(2013 年/英語、スペイン語、ノルウェー語、フランス語/87 分/カラー/アメリカ、ハイチ、ノルェー)

監督:ジェレミー・セイファート

出演:ジェレミー監督のファミリー、ジルエリック・セラリーニ、ヴァンダナ・シヴァ

配給・宣伝:アップリンク

協力:大地を守る会、生活クラブ生協、パルシステム生活協同組合連合、字幕協力:国際有機農業映画祭

  • 『ジェレミー・セイファート』
    1976年、アメリカ生まれ。2010年、食料問題や飢餓、環境問題を扱った初監督作品『DIVE!』が、世界中の22の映画祭でさまざまな賞を受賞。その後、制作会社コンペラー・ピクチャーズを創設。妻と3人の子どもと、ノースカロライナ州で生活しながら、映画監督として、環境活動家として、アメリカ中を旅して、人道主義と環境問題について講義を行なっている。本作が監督2作目となる。