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『思春期ごっこ』倉本雷大監督インタビュー

まもなく公開される本作で、少女達の繊細な感情を丁寧に、そして美しく描いた倉本雷大監督に劇場長編デビューに至るまでの経緯や映画に対する強い思いをお聞きする事が出来た。

「劇中劇と実際のドラマが自然と重なり合っていく」

今作が作られた経緯について教えて頂けますか?
倉本:大学で4年間、映画を学んで、卒業してからプロの現場で何本か助監督として働いていました。その合間にも自主映画を撮り続けていて、それで今回の脚本家さんと次長編を何かやりたいですね、って話をしていたんです。それと同時に別の所で助監督として働いていた時に知り合ったプロデューサーさんに「企画あれば持って来なよ」と言って貰えたのが始まりでした。それで、企画書を書いて持って行ったら、プロデューサーの方に気に入って頂けたんですね。
でも、僕は大学を卒業して2年位で、まだ実績が何も無い中での事だったので、予算集め等には難航したみたいで、実際に動き出すまでに企画始めてから一年半位はかかりました。その中でも脚本作業やキャスティングだったりは同時進行で行なっていたんですけど。撮影自体は去年(2013年)の八月末位から始まりましたね。脚本でも、もともと夏の青春映画として考えていました。
映画内で、奈美江が書かれた小説「思春期ごっこ」の物語と中学三年生の少女達の物語とが交差していく事で引き込まれていきますが、そういった構造自体は最初からお考えだったのでしょうか?
倉本:最初はそういった構造はまったく無くて、割と平坦なストーリーだったんですけど、何かインパクトが欲しいよねって脚本家と話していて、ある時思い付いた感じですね。もともと台詞とかで分からせる程度だったんですけど、劇中劇と実際のドラマが自然と重なり合っていくのを映像で見せたら面白いと思って途中から入れました。今の形が出来上がったのは、何回か稿を重ねてからですね。

「女優を撮りたい」

オープニングの屋上での少女達の踊るシーンがとても印象的ですが、どういったイメージで撮られましたか?
倉本:実際に撮影日が決まった後に、最初のシーンには引きつける画が欲しいと思い、脚本に加えました。でも、まだ脚本には踊っている位しか書いてなく、どう撮るのかも一切分かってない時に、カメラマンからアイディアが出てきました。赤外線カメラっていう映画とかでは使わない特殊なカメラを使っているんですが、その映像を初めて見せてもらった時に具体的な映像が浮かんできたんですね。
赤外線カメラっていうのは、木とか植物など赤外線を含んだものを白く映す特殊なカメラで、見た事無いような映像になるんです。カメラテストでどの生地がどう映るのかなど科学の実験みたいな事をやってました。女の子の肌が真っ白に映る事や映像的にもインパクトがあったので、劇中劇としてのギャップを作れるかもねという事で使用しました。
未来穂香さん、青山美郷さん、川村ゆきえさんと役者さんが皆さん魅力的で、配役も絶妙だと思ったのですが、キャスティングはどの様に行ったんでしょうか?
倉本:もともと僕が映画を作りたい理由として、女優を撮りたいっていうのが一番強くて。何かテーマを伝えたいとか、撮られる際にやりたい事がそれぞれあると思うんですけど、僕の場合は役者さんを撮りたいっていうのが一番強くて、本を書くのと同時進行でまず一緒にやりたい役者さんたちに声を掛けさせてもらったんですね。
で、彼女たちが出演してくれるってなった段階で、ある程度イメージに合わせてキャラクターも書き直したりしていました。だから、お話はもともとありながらも、割と役者さんありきみたいな所でやってきました。全員僕がやってほしいと思った役者さんにやってもらえる事になったので、ありがたかったなと思っています。

「美しい子達だけで満たしたい」

川村ゆきえさんは今まで出られてた映画のイメージとはまた違った役で、新たな魅力を発見出来ました。川村ゆきえさんをキャスティングされたきっかけは何だったんでしょうか?
倉本:『気球クラブ、その後』(園子温監督作品)を観た時に自然体でお芝居出来る方だと思ったのと、『ロストクライム -閃光-』(伊藤俊也監督作品)では負を感じたっていうのがあるんですね。それと、主演の女の子達とは対照的に見た目で分かる女の色気を持っている人で、彼女達がまだ持ち得てないものを持っている人がいいなと思ったんですね。
奈美江の部屋のシーンに切り替わった時、ドキッとしました。
倉本:あの色っぽさはやっぱり川村さんじゃなきゃ出せなかっただろうとは思うんです。それと、もともと脚本家さんが書いてて面白いなと思ったのは、煙草吸うんですか?って純粋に聞かれて、私は吸わないかな。って言っておいて吸ってるみたいな、小さい事で見栄を張って嘘をつくようなキャラクターっていう感じがあったんですよ。それで、部屋では煙草を吸ってやさぐれてる雰囲気を出したかったんですよね。
学内もそうなんですが、喫茶店の店員さんや予備校の子など、とにかくもの凄い美少女揃いでしたね。それは監督のどういった意図があったんでしょうか?
倉本:そうですね(笑)。今回に関しては、エキストラで参加してくれた生徒の子とかまで全員僕が人選させてもらったんですけど、思いとして画面の中に美しい子達だけで満たしたいっていうのがありました。それと、僕の中では、どうしても映画の主演の子とかって綺麗な子達になるじゃないですか?それが、映画の中ではもてはやされてる美人とかじゃなく扱われるじゃないですか?今作もそうですけど。
だから、主演の子達がその位置にいるんだったら周りを底上げしたら、この映画の世界観としてのある種のリアリティを築けるんじゃないかと思ったんです。そういうのを試したかったっていうのはあって。なので、今回は徹底してやってみました。

「自由に演じている彼女達の魅力を捉える」

音楽の使い方が今作の儚さをより一層浮き立たせていたと思ったんですが、音楽に対してこだわった部分を教えて下さい。
倉本:音楽は一番難しかったんです。自分で今まで撮ってて、あまり音楽をがっつり使った事が無かったんで。編集がある程度出来上がった状態から音楽を作り始めたんですけど、ここに入れたいってピンポイントでお願いして、イメージを伝えて作ってくれたのものを細かく修正してもらいました。そのおかげで映像にはまった音楽になったかなと思っています。ただ、音楽の力ってもの凄く強いと思ってるんで、そのバランスは難しかったです。
一歩間違えれば説明にしかならないので。とにかくこだわれる所までこだわろうと思い、音楽に関しては長い時間かけて詰めさせてもらいました。それと同時に音楽を流すべきじゃないシーンというのがあるんですね。感情を奮い立たせてほしい所とストレートに観たい所ってあると思うんですよ。割と音楽を多めに使っている作品なので逆に音楽を無くす所が重要だなと。芝居として重要な所ではあえて流さないっていう選択をしました。
寄り画の美しさと、引き画での鷹音と三佳の距離感の表現など、観ててとても没入出来る映像でした。現場でカメラワークなどで気を付けていた点はありますか?
倉本:基本的に現場では自分は芝居を見るのが最重要だと思ってたんで、カメラワークに関してはほとんどカメラマンに任せたっていうのはありますね。どうしてもイメージとして撮りたい画がある時だけは相談して、でも基本的にはお任せましました。
三佳の奈美江と話している時の憧れの目や、鷹音が奈美江に向けた嫉妬の目がとても印象的でした。目に対する演出はどの様に行っていたんでしょうか?
倉本:それは単純に彼女達が持っているものだったんですよね。別に脚本に何が書いてるって訳でも無いですし。青山さん自身は人を見る時の目や、ぼーっとしてる時の顔とかがすごく面白かったので、それは存分に活かしていきたいなと思っていたんです。なので、今回細かい演出はほとんどしてないんですね。
キャラクターとしてのブレが無かければ、脚本に書いてない事をやってもいい位の体制でやりましたね。自由に演じている彼女達の魅力を捉えるのが、こっちの役目だなと感じていました。

「思春期っていうものを映画の中に閉じ込めたい」

携帯電話がガラケーだったり、ナレーションを聞いてく感じだと本編自体が過去の物語のように感じたんですが、そこはどうなんでしょうか?
倉本:そうなんですよ。すでに過ぎてしまっているものみたいな所から始めたくて。思春期っていうものを映画の中に閉じ込めたいって最初思ったんですね。物語として思春期が続いていったまま終わるよりも90分の中にパッと閉じ込めたかったんです。それで、脚本家さんと話して、思春期がもう過ぎてしまったものとして描くのはどうかという事になったんです。
それを完全に観客に分かってもらいたいとかでは無く、要はこの映画の語り手をどこにしようかと。思春期ごっこっていう位ですから、やっぱり思春期を過ぎた鷹音なんじゃないかという思いでやりましたね。現在の鷹音が出てきてみたいな露骨にはやりたくはなかったんですけど、お客さんが何かこの映画の語りってちょっと過去っぽいなって気付いてくれた時にハッとなってほしいと思ったんです。
今作の特にどういった所をお客さんに感じてもらいたいですか?
倉本:一番気を付けたのが、彼女達の繊細に変わっていく感情だったので、そこを見てもらいたいっていうのはあります。あとは、誰の目線で観るかですごく見え方が変わる話なので、誰か一人共感出来る人を見つけて、その人物の視点で観てもらいたいですね。
今後どういった作品を作り続けていきたいですか?
倉本:女性を主人公にした映画は撮り続けていきたいですね。『BU・SU』(市川準監督作品)や『台風クラブ』(相米慎二監督作品)のように、その映画に出る前はアイドルみたいな扱いをされていた子が、映画女優として活躍していくターニングポイントになった作品が好きで、そういった青春映画を自分も撮っていきたいなと思っています。
今後のご活躍楽しみにしています。本日はお忙しい中、ありがとうございました。
倉本雷大監督作品『思春期ごっこ』
8月23日より新宿武蔵野館他、全国順次ロードショー
【Story】
女子校、中学三年生。鷹音と三佳、高校進学で離ればなれになる前のきらめいた青春時代。

美術学校に進学したい鷹音は、お気に入りの小説「思春期ごっこ」を読みふける三佳をモデルに絵を描いていた。唯一無二の親友の二人。静かで濃密な夕暮れの時間。きっとこの関係性は永遠に変わらない、そう思っていた。

ある時三佳は、通い詰めていた図書館で、司書となっていた「思春期ごっこ」の作者・奈美江と出会う。同じ中学の出身で、在学中に小説を出版した奈美江に強い憧れを抱いていた三佳は、次第に彼女との時間を優先するようになる。置き去りになった鷹音の心は嫉妬に満ちていく。しかし三佳が初めて書いた小説を奈美江に渡したことから、二人の関係性は大きく変わっていく・・・。
■公式サイト
http://www.sishunki-g.com
■関連記事
http://culture.loadshow.jp/topics/shishyunkigokko/p
聞き手、構成、写真: 川邊崇広
『思春期ごっこ』
未来穂香 青山美郷

逢沢りな(特別出演) 伊藤梨沙子 荻野可鈴 井之上史織

本宮初芽 浅見姫香 タカオユキ 真山明大 / 川村ゆきえ

監督:倉本雷大  写真:青山裕企  脚本:マキタカズオミ 倉本雷大

製作:嶋田豪 岡本東郎 プロデューサー:関顕嗣 吉尾宗太 

アソシエイトプロデューサー:行実良 船田恵 小松崎隆 上本聡 栗原裕也 林修平 福田健二 ラインプロデューサー:宮下昇

撮影監督:中澤正行(J.S.C.) 監督補:佐々木利男 照明:野村久数 録音:伊藤裕規

編集:藤田真一 スタイリスト:緋咲レイラ ヘアメイク:madoka 制作担当:絹張寛征

音楽プロデューサー:中川岳 「思春期ごっこ」パートナーズ(ワニブックス/スパーク/エイジアピクチャーズ/ウィンクツー)

制作プロダクション・配給・宣伝:アイエス・フィールド 配給協力:アルゴ・ピクチャーズ 

製作:「思春期ごっこ」製作委員会(アイエス・フィールド/バップ)

2014年/日本/90分/5.1ch/シネマスコープ/カラー/デジタル 

(C) 2014「思春期ごっこ」製作委員会
  • 『倉本雷大(くらもと・らいた)』
    1988年生まれ、神奈川県大磯町出身。大学の卒業制作作品として、韓英恵、渋川清彦などが出演した長編映画『UNBRIGHT—アンブライト—』を監督。その後、短編映画『少女たちよ』(出演:東亜優/新木優子)、『ガールフッド・エバーラスティング』(出演:我妻三輪子)などを監督。一貫して思春期の少女や若い女子を主人公にしたガールズムービーを制作している。2014年、オムニバス映画『放課後たち』の一編『ロリータなんて』(主演:広瀬すず/落合モトキ)を監督。東京と大阪で公開された。本作が劇場長編デビュー作となる。