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『ママはレスリング・クイーン』ジャン=マルク・ルドニツキ監督インタビュー

それぞれ悩みを抱えながらも、プロレスを通して本当の自分を取り戻していく女たちの姿を描いたフランス映画『ママはレスリング・クイーン』。今作で初長編監督デビューとなるジャン=マルク・ルドニツキ監督から、これまでの映画との関わりから、『ママはレスリング・クイーン』の魅力を聞いた。

—日本の自主映画監督と共通する悩みだと思いますが、学生時代は予算集めにとても苦労しました—

『ママはレスリング・クイーン』のお話を聞く前に、子供時代から映画監督デビューするまでの道のりを教えてください。
ルドニツキ:僕の映画体験の根本にあるのは、10才の頃観たスティーブン・スピルバーグ監督作品「レイダース/失われたアーク」です。僕が生まれて初めて映画館で観た映画でとてもすばらしかったのを覚えています!この時、映画監督は私の一生の職業だと感じました。
「映画」を撮り始めたのはいつごろからですか?
ルドニツキ:大学生の時にドキュメンタリー映画を自主監督して、それから、日本円にして14万円くらいの予算で短篇映画を自主で制作しました。どちらの映画も16mmフィルムで撮影したのですが、やはりフィルムは高価なものなので日本の自主映画監督と共通する悩みだと思いますが、予算集めにはとても苦労しました。ただ「映画」という訳ではないですけど、8mmフィルムカメラ「スーパー8」を使って12才のころから日常的に撮影はしていましたね。

それから私はあるNPO団体(日本で言うセゾン文化財団のような団体)で映画のマネージメントについて学びました。そこで学んだのは映画資金の運用方法がメインでしたね。そのあとにテレビ局で情報番組の仕事を見つけて、編成チーフのアシスタントをしていました。

情報番組での仕事は「映画」とは一見関係ないように思えますけど、私の映画作りにとても役にたっていると思います。それで、ある時子供向けアニメ映画のシナリオ制作に関わることがあり、それから段々とテレビドラマの脚本のオファーがくるようになりました。今までで30本くらいシナリオを作成したと思います。
「プロレスショー」はパフォーマンス作品に通じた興奮があると思うのですが、演劇制作などをしていた経験はあるのですか?
ルドニツキ:大学生の時は演劇も少しやっていました。ただ、私はプロレスを「スポーツ」のショーだと結構割り切って考えていますね。

—テレビドラマと違って「映画」は自分の意思をちゃんと注げます—

『ママはレスリング・クイーン』はルドニツキ監督の初長編作品になりますが、「テレビドラマ」と「映画」の違いはありますか?
ルドニツキ:テレビというのは自分の意思を抑えてテレビ用のフォーマットに落とし込まないといけないんですね。特にシリーズ化された連載もののテレビドラマは既に決められているコードがあり、それがバイブルのように存在しています。

また、厳しいテレビドラマですと要約のようなものが1ページ書かれた文章があり、そこに書かれた内容からは絶対に脱線してはいけないというルールがあります。それだから自分の「意思」をテレビドラマに注ぐのはとても難しい。しかし「映画」の場合は監督の意思を尊重してくれるので、自分の意思を思う存分発揮できました。そこが一番の違いですね。
『ママはレスリングクイーン』で監督は特に何に意思を注いだのですか?
ルドニツキ:やはり最後の「プロレスショー」のシーンです。当初はあそこまで大きなショーをする予算はなかったのですが、トナーラングマンという若手実力派プロデューサーが共同製作で僕たちのチームに入ってくれたため、かなりハイスペクタクルな演出をすることが可能になりました。

—女性の自立を描いている—

登場する女性4人はそれぞれ強烈な個性を持っていますが、それは「北フランス」という土地柄も関係しているのですか?
ルドニツキ:一般的に「南フランス」は開放的な人が多く「北フランス」は内向的な人が多いという地域性はありますが、決して北フランスの女性が映画のように「強くて」「怖い」わけではありません(笑)。

しかし、もちろん彼女達の生活はフランスの時代性を反映していますし、北部の女性という地域性も反映されています。フランス北部は庶民的な人が多く、1人で働いて自分の生計を立てる人など、割と自立した精神を持つ人が多い地域です。それだから映画に登場する彼女達もスーパーで働きながらもプロレスを通して自立することができたのでしょう。

ちにみに、この映画に登場する女性達が日本でどのように受け取られるのか私はとても興味があります。私は『天空の城ラピュタ』『トトロ』『崖の上のポニョ』など日本映画では宮崎駿監督作品がとても好きなのですが、それだからか日本映画の女性は純朴に描かれていることが多いような気がしています。でもこの映画で描かれている女性はその逆のタイプ(笑)。日本の方の感じ方がとても気になりますね。
なぜ、「女子」のプロレスを選んだのでしょうか?
ルドニツキ:マッチョな男子がプロレスをするというより、女性がプロレスをする方が意外性があって面白いと考えたからです。現にアメリカなどでは女子プロレスラーは大変人気があり、また、実際に女性のプロレスだからといって「ショー」としてはなんら遜色がありません。

—映画のテーマに関わらずコメディーのアングルは取り込んでいきたい—

今作を作る上で影響を受けた映画などはありますか?
ルドニツキ:ロバート・アルドリッチ監督作品『カリフォルニア・ドールズ』は参考にしました。私の大好きな作品ですね。また、私は社会的でシビアなテーマだとしてもイギリス映画のようにコミカルな要素を入れたいといつも考えていて、それはケン・ローチ監督作品『レイニング・ストーンズ』などの影響なのだと思いますね。
今後はどうような映画を作っていく予定ですか?
ルドニツキ:これからもコメディーの要素がある映画を作っていきたいですね。ちなみに次回作では家政婦や使用人を虐待する内容の社会派コメディーを考えています。
コメディーの要素をとても大事にされているんですね?
ルドニツキ:私は「泣かせる」より「笑わせる」ことのほうが好きなので、今後「感動的なテーマ」や「バイオレンスなテーマ」を扱う映画を作ることにしても必ずコメディーのアングルは取り込みます。
それでは最後に『ママはレスリングクイーン』の見所を教えてください
ルドニツキ:この映画は自分たちの第二の人生を見つけて、今ある人生から抜け出そうと奮闘する自立の映画です。非常に個性の強い女性たちがそれぞれの課題に「プロレス」を通して乗り越えていきます。どうぞ彼女たちの最大のショーを楽しんでください。
公開をとても楽しみにしています。ありがとうございました。
ジャン=マルク・ルドニツキ監督作品『ママはレスリング・クイーン』
7月19日(土) ヒューマントラストシネマ有楽町ほか、全国ロードショー
■公式サイト
http://wrestlingqueen.com/
■公式Facebook
https://www.facebook.com/wrestlingqueen.movie
■公式Twitter
https://twitter.com/wrestlingqueen4
聞き手・写真・構成:島村和秀
『ママはレスリング・クイーン』
監督:ジャン=マルク・ルドニツキ/製作総指揮:マイケル・ルイージ(WWEスタジオ 代表取締役)/製作:トマ・ラングマン、ファブリス・ゴルドスタイン、アントワーヌ・ルアン/撮影:アントワーヌ・モノ―/編集:アントワーヌ・ヴァレイユ/美術:ジャン=マルク・トランタンバ/音楽:フレッド・アヴリル
出演:マリルー・ベリ/ナタリー・バイ/オドレイ・フルーロ/コリンヌ・マシエロ/アンドレ・デュソリエ/イザベル・ナンティ
(フランス/2013/97分/カラー/ヴィスタ/ドルビーデジタル)配給:コムストック・グループ/配給協力:クロックワークス
【Story】舞台は北フランスの田舎町。シングルマザーのローズは、ある事情で離れて暮らす最愛の息子ミカエルと5年ぶりに再会を果たすが、彼は心を開いてくれない。そんなローズはミカエルがWWEの大ファンだと知り、息子の心を取り戻すためにプロレスに入門を決意する。主任のコレット、男好きのジェシカ、肉売り場の“怪人”ヴィヴィアンとローズはスーパーマーケットの同僚3人を巻き込んでプロレスチームを結成、百戦錬磨のメキシコ女子プロレスラー軍団との対戦も決定し、猛特訓を始めるのだったが・・・・。プロレスを通して本当の自分を取り戻していく女たちの姿を描いた、汗と涙に溢れた奮闘ドラマ。
  • 『ジャン=マルク・ルドニツキ(Jean-Marc Rudnicki)』
    フランス生まれ。2000年代初頭からテレビドラマの脚本を手掛け、サスペンスや刑事ドラマで高く評価され、2009年にディレクターデビュー。本作が映画監督デビュー作となっている。主なテレビドラマ監督作は「ジェフとレオ、警官と双子」(06) 「セルアイデンティティ」(07) 「私の娘のために」(09) 「ライフストーリー」(09) 「復讐コレクション」(09) 「RIS警察科学研究」(10) 「後悔している」(10)。