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『サッドティー』今泉力哉監督インタビュー

第26回東京国際映画祭での『サッドティー』ワールド・プレミア上映後、今泉力哉監督のインタビューを収録。

「“ちゃんと好き”ってどういうことなんでしょうね」

『サッドティー』はENBUゼミナールのシネマプロジェクト第2弾(※)で製作された映画ですね。群像劇で撮ろうというのはいつ決めたんですか?
今泉:このプロジェクトはワークショップ形式だったので、10人出演者がいることが決まっていたんです。それで群像劇にしようかなと。
あと、もともと主人公がいて脇役がいるというような映画を自分があまり好きではないということもあります。子供のときからサブエピソードに惹かれていて、例えば『ホームアローン』が僕の映画の原体験なんですけど、おじいちゃんとか、鳩おばさん(『ホームアローン2』)とかのサブエピソードで号泣していました(笑)。恋愛にするかどうかは、色々あったんですけど、結局それしかできないとうことで落ち着きました。
『サッドティー』ではどんな恋愛を描こうと思いましたか?
今泉:今まで浮気ネタだったらそれがバレてもめる、というようなことを散々やっていたのですが、今回はもっと冷めている人たちを描こうと思っていたので、最初から浮気がバレているのに怒っていないような関係という設定で書きました。自分では意識していなかったんですが、今回よく言われるのは、キスもないくらい、直接的な性の描写がないと。それで大根さんの『恋の渦』(2013)や、自分の前作『こっぴどい猫』(2012)と比較した感想をいくつかいただいています。
最近拝見しました平波亘監督の『東京戯曲』(2013)と共通点があると思いました。『東京戯曲』も男女の群像劇で、男が主役で脚本を書いているんですよ。ご覧になりましたか。
今泉:まだ、見られてないんです。だからどんな内容かも知らないんですよ。順番としては『こっぴどい猫』を平波さんに助監督で手伝ってもらって、その後に平波さんが『東京戯曲』を撮って、その後に『東京戯曲』を知らずに、僕が『サッドティー』を書きました。
そうだったんですね。ただ、主人公の性格が大きく違いました。『サッドティー』の柏木はとても受け身ですよね。
今泉:僕は二股とかしたことはないですけど、あれは自分の投影でもあって、付き合った後に人をちゃんと好きという感覚がわからないというのが自分の中にあるんですよ。
それと、映画の主人公って行動して引っ張っていく部分があると思うんですけど、僕が本当に行動しない人間でして。僕、基本、何もやりたくないんです(笑)。かわいい若い子と酒飲みたいとか、裸が見たいとかキスがしたいとかはあってもセックスはしたくないとか、面倒くさそうなこと全部避けたいスタンスなんですよ。欲求がないんでしょうね。食べ物とかもそうなんですけど、行列に並んでまで食べたいとかも絶対考えられないですもん。今何欲しいって言われても、ないですし。だから柏木も人任せなんでしょうね。
ストーリーやキャラクターに今泉監督自身が投影されているんですね。
今泉:映画のジャンルがいろいろある中で、自分のことをさらけ出してつくるみたいな映画って一歩間違えると狭い世界といわれて批判されたりもしますが、そこでもまだまだ面白いものがつくれると思ってずっとやってきています。もちろん、狭さに対する葛藤はいつも持っているので、映画的な飛躍は意識しています。今回だったら、ロケーションに海を入れたりだとか、また非日常的なことを画で表現したりとか。現実世界に興味があるので自分がリアルに思っていることが反映されているんだと思います。

「一人の中に矛盾があって、そのときの気持ちで言葉が変わったりした方が人間味が出ると思うんですよね」

柏木の演出についてのこだわった部分はありますか?
今泉:ワークショップからつくっていったというのがあったので、演技を見ながら配役を決めました。イライラしたり八つ当たりするときにどんなふうな風に表現するのかは重視していましたね。相手を怒らせるきっかけって意識していないところで出るものだと思うんですよ。僕なんかは、嫁に言わせるとけっこう嫌みなことを言うらしくて、例えば、食事を作ってもらっておいしくなかったとき、「まずい!」って言ったらまだマシで、「どうやったらこういう味になんの?」みたいな、遠回し風なのに1番傷つけるような言い方をするときがあるらしいです(笑)。なので、そういう態度やセリフはこだわって書きました。でも柏木って変な軸はあるのかな。やりたいこととか欲求は少なくても嫌なことはあって、それはしないっていう筋は通っている気がします。
柏木は優しいところもあるんですけど、最後の方に夕子に対してはひどいですよね。天然なのか計算なのかどっちなんだろうと思ってしまったのですが、演じる方も難しかったのではないかという気がします。
今泉:あれはひどいですよね。やっぱり役者さんにはどういう感情なのかと聞かれるんですけど、僕の中にも答えはないんです。僕、山下敦弘監督のワークショップを手伝ったり、いろいろとお世話になっているんですが、前に「脚本を書いたり、人物を作る中で、一人の人物に基本2つの感情がないと面白くない」ということについて話したことがあります。感情も1つではないし、芝居の正解も1つじゃないと思っているので、やってもらって面白ければ受け入れます。一人の中に矛盾があって、そのときの気持ちで言葉が変わったりした方が人間味が出ると思うんですよね。
スタッフや役者さんに委ねる部分も大きいんですね。
今泉:監督って大雑把に分けると2つのタイプがいて、頭の中に全部画があって、それを具現化していくタイプと、役者やスタッフのアイディアをばんばん取り入れていくタイプがあると思います。僕は後者で、一人が考えられることなんて大したことじゃないと思っているので役者さんのアイディアとかハプニングとか全部取り込んだ方が面白くなると思っています。そのために脚本をしっかり上げて、それ以上は現場や編集で上げて行こうという意識でやっています。
今回だと公園のシーンで人がふらふら映ったりしていますが、その中のワンカットでトイレに行って用を足して去って行く人が映っていて、あのシーンがすごく好きなんですよね。自分の映画でその一連が映り込むなんて考えてはできないことですから。本編の内容に一切関係ないですが(笑)。

「恋愛にこだわってるわけではなくて、人間を描ければいいんです」

今泉監督はなぜこういった恋愛映画を撮るようになったんですか?
今泉:今、存在しているラブコメみたいなジャンルの映画を面白いと思えなくて。嘘っぽいというか芝居の仕方とかも、恋愛に関しても本当にある恋愛というよりはちょっとドラマチックだったりすることが多いですよね。誰かと誰かが出会って結ばれるかどうかみたいな話ではなく、もう付き合っているところから始まっている日常の恋愛みたいなやつがあまりないなと思ってつくったのがきっかけです。もうそれしか書けなくなっているし、興味がそこにしかないのかな、っていうのがあります。なぜこういう映画をやろうとしたかというと、つきあっているカップルとか結婚してる2人の間でお互いが5対5で同じ想いで好きっていうことってなくて、想いの差があると思うんです。それを表現するために、最初は想われてる側の人が、浮気していたり、他の人に気があったり、っていうのをやってて、そこから今も想いの差を描くということをいろんな形でやっているんだなという意識はありますね。
では今後も同じテーマで形を変えて撮っていくのでしょうか?
今泉:いつか長編で第3者を使わずに2人だけで想いの差を描きたいとは思っています。まだその技量が自分にないので。映画の要素って色々ありますが、結局人間で何かやりたいっていう意識はずっとあります。それは最初からではなく作品を作り続けているうちに気づきました。
昔からの友達に、もうそろそろ「ダメ恋愛」という言葉で推すのはやめた方がいいと真摯に言われたことがあって(笑)。とういうのも、「今泉の映画って恋愛映画じゃなくて人間関係についての映画だから、恋愛だけじゃないよ」と言ってくれたんです。“ダメ恋愛”ってキャッチーだったりするので宣伝のときにつくったコピーですけど、恋愛にこだわってるわけではなくて、人間を描ければいいんです。
今って技術面でいうと、機材とかかなり安くなって誰でも映画をつくれるようになった時代じゃないですか。自分より若い監督や、学生によってつくられた多くの映画を見た時、自分がどういう映画を面白がれて、面白がれないのかというと、技術面だけがすごい映画には全く興味が持てないんです。若い監督で人物をちゃんと描けている人が本当に少ないと思います。機材の発達でそれ以外の部分で見れちゃうものになっているので。だからこそ自分の作品は技術じゃない部分で負けたくないし、そこにこだわり続けたいという意識が強くあります。
本日はありがとうございました。
■ 上映スケジュール
2013年12月12日(木)21:00〜
* 本編上映終了後出演者/監督による舞台挨拶
登壇:岡部成司、永井ちひろ、國武綾、富士たくや、佐藤由美、武田知久、今泉力哉監督
■ 料金
当日券のみ(当日18:00からの受付となりますのでご注意下さい)
一般=1500円/学生・シニア=1200円
*当日18:00より劇場窓口にてチケット販売/整理番号配布開始
*新宿K’sシネマでの未使用前売券はご使用いただけます
整理番号制/自由席(136席)
■場所
オーディトリウム渋谷
聞き手・構成・写真: 石川ひろみ
『サッドティー』
監督・脚本・編集:今泉力哉/撮影監督:岩永 洋/録音・整音:根本飛鳥/音楽:トリプルファイヤー/プロデューサー:市橋浩治/キャスト: 岡部成司、青柳文子、内田 慈、永井ちひろ、阿部隼也、國武 綾、富士たくや、佐藤由美、武田知久、星野かよ/120分/2013
前作『こっぴどい猫』が国内外の映画祭で高い評価を得た21世紀型ダメ恋愛映画監督・今泉力哉最新作。二股を解消したい映画監督とふたりの彼女。映画監督行きつけの喫茶店にいるアルバイトの女の子とマスター。彼女へのプレゼントを買いに行ったお店で店員に一目惚れする男。元アイドルを10年間想い続けるファンと、その存在を知って彼に会いに行こうとする結婚間近の元アイドル。さまざまな恋愛を通して描く、「ちゃんと好き」ということについての考察。
  • 『ENBUゼミナール・CINEMA PROJECT』
    劇場公開映画製作・俳優ワークショップ。 毎回応募者の中から監督による面接オーディションにて参加者を選抜した上で、監督によるワークショップをまずは全員が受講。その後、各監督の選抜により参加者を分け、それぞれワークショップを行い、監督がオリジナル脚本を書き上げ新作映画を製作する。
    第1弾の市井昌秀監督『あの女はやめとけ』と吉田浩太監督『オチキ』、 第2弾の今泉力哉監督『サッドティー』と金井純一監督『モーメント』。次々に話題作を産み出す本ワークショップの 第3弾(2014年1月開講)は、新進気鋭の若手監督3名体制による企画へと拡大、さらにゲスト俳優として渋川清彦(ディケイド)、武田梨奈(ソニー・ミュージックアーティスツ)、小松彩夏(アミューズ)と注目の俳優3名が参加する。
    ただいま参加者募集中!詳しくはこちら→ https://enbuzemi.co.jp/cinemaproject/
  • 『今泉力哉(いまいずみ・りきや)』
    1981年福島県生まれ。2008年『微温』で第12回水戸短編映像祭グランプリ、09年『最低』で第10回TAMA NEW WAVEグランプリを受賞。10年『たまの映画』で商業監督デビュー。その後も『終わってる』『TUESDAYGIRL』『nico』など自主商業問わず話題作を次々と発表。2012年に全国公開したモト冬樹主演の恋愛群像劇『こっぴどい猫』は、トランシルヴァニア国際映画祭最優秀監督賞を受賞。精力的に独自の恋愛映画をつくり続けている。