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『殺人ワークショップ』白石晃士監督、宇野祥平(俳優)インタビュー

(写真左、白石晃士【監督】 写真右、宇野祥平【主演】)
『オカルト』、『超・悪人』、『超・暴力人間』など稀に見る奇妙な傑作たちを生み出してきた白石晃士(監督)×宇野祥平(主演)による最新作『殺人ワークショップ』にまつわるエピソードについてお伺いした。

「これ別に長編にしてもいいんですか?」(白石)

現在、白石監督作品は『殺人ワークショップ』と『ある優しき殺人者の記録』2作品が劇場公開中でして、白石作品好きにはたまらない期間となっております。今回は『殺人ワークショップ』についてお聞きしたいと思います。『殺人ワークショップ』が作られた経緯について教えて頂けますか?
白石:ENBUゼミナールという役者や監督の養成を行っている専門学校がありまして、そちらの講師を昨年の1月、2月だったと思うんですけど、やらせて頂きました。担当したのが映像俳優コースというクラスで、そちらで7人生徒がいたんですけども、カリキュラムの中で彼ら彼女らと一緒に最終的に実習作品を作るというものがありまして、本当は30分位の短編でよかったんですけど私の方から「これ別に長編にしてもいいんですか?」って聞いたら、「予算は変わらないですけど、それはご自由に」みたいに言われたので、じゃあ長編にしますという事で作ったのが今回の作品ですね。
宇野祥平さんは白石監督作品の常連で、『オカルト』、『超・悪人』、『超・暴力人間』など狂気じみた役柄で毎回楽しませてもらっています。とうとう今回殺人の仕方を教える講師になりましたが、最初にこの役のオファーが来た時はどのように感じましたか?
宇野:久しぶりに白石監督の映画への参加だったので、まず凄く嬉しかったです。台本をもらったのは直前でしたね。
白石:脚本をなかなか書く時間が無くて、最後まで書いたのが多分直前だったんじゃないですかね。その前にプロットみたいなものはお渡ししてるんですけど。ちょこちょこ変えたりもしつつで、直前に脚本を渡したら台詞が変わってるって言われました(笑)。
宇野:(笑)。微妙にプロットに書いてあった台詞と違うんですよ。それは完璧に覚えていたので。
白石:プロットは割と台詞も詳しめに書いていて。
宇野:内容はあんまり変わってないんですけどね。ほとんど脚本に近いプロットだったんです。最初にお会いして内容については何となく聞いていて、その話を聞いてから撮影までがものすごい短かったので、スリリングでしたね。
白石:内容は最初、もうちょっとオカルト的な出来事が起こって、クライマックスにも霊的な対決があるような話を考えていたんですよ。基本の枠はああいう話なんですけど。それが色々現実の面で厳しいってなってきて、いくつかの要素や人物をカットして凄くシンプルにして、更に現場でも時間が無かったので色々削ぎ落としていって最終的にああいう形になったって感じなんですけどね。

「全然アドリブをしたという意識はないんですよね」(宇野)

最初に撮られたシーンはどこだったんでしょうか?
白石:一番最初は渋谷のスクランブル交差点のシーンです。
あのファーストカットを観て『オカルト』を彷彿させられたんですけど。空に大量の鳥が飛んでいるんじゃないかみたいなイメージが浮かびました。今回の渋谷でのシーンや、部屋でアキコが見ている空ってどういうイメージで撮られたのでしょうか?
白石:空っていうイメージは特に無いんですけども、空というよりはエノ(宇野祥平)がアキコの存在を感じ取ってそこに向かおうとしているっていうのと、最終的にアキコの結末を感じ取って去って行くみたいな意味合いですね。
なるほど、そういう事なんですね。今回で白石監督と宇野さんのタッグは何回目になるのでしょうか?
宇野:えー、確か8本目ですかね。
白石:細かいの入れると意外と多いですね(笑)。
最初の出会いはどういった形だったんでしょうか?
白石:『オカルト』の時に、前田弘二監督の作品で『鵜野』っていう短編がありまして、それをたまたま拝見する機会があって、それを観てこの人しかいないなと思い、オファーしたっていうのが最初ですね。絶対に断られないように名前も1文字だけ変えるみたいな感じで「江野祥平」という事にして、オファーをしましたね。
『オカルト』の脚本を読まれて、どう感じましたか?
宇野:脚本は面白くて、完成されてましたね。もちろん状況によって監督が変える部分はありますけど、僕の役についてはほぼ撮影でも同じ感じでした。実際派遣労働に行って、人がいると思ったらいなかったとかで変えていた所はありますけど、基本脚本通りでしたね。
白石監督はフェイク・ドキュメンタリーという形でいくつも撮られているので、アドリブもかなり効かせているんじゃないかなって観てる側は思ったりするんですけど。
白石:基本の台詞は、フェイクの時も書いてあるんですけど、その台詞をそのまま言わずに自分なりの言い方、特に語尾とかをご自分で噛み砕いて話して下さいねっていう事は多いですね。ある程度のアドリブはやってもらっていいですからとは言っているので、『オカルト』も割と長くまわしていてプラスαの部分はたくさんやってもらっていますね。
今作に関しては、形としてはフェイク・ドキュメンタリーではありませんね。画面サイズもシネスコだったりとフェイク・ドキュメンタリーとの違いを意識された所はありますか?
白石:劇映画の画作りっていうのは多少意識しましたけども、基本芝居に関してはフェイク・ドキュメンタリー的なつもりでやってもらっていましたね。だから、アドリブもある程度は許容しているんで、特に宇野くんの役は割と自分から生徒達を押して行く役なので、合間合間の言葉とかは宇野くんの方でキャラクターとして台詞と行動がスムーズにいくように入れてもらったりはしています。
あの役って、絶対的にブレない所がありますよね。どこか一本筋が通っている所があって。
宇野:僕としては、『オカルト』もそうですけど、全然アドリブをしたという意識はないんですよね。
白石:確かに1ブロックを自分でアドリブで作ってもらうとか、そういうのは無いですけどね。例えば、生徒達を叩いてまわるとか、何回叩くとかそんなに細かく書いてなかったと思うので、その辺は気になった奴を叩いてもらってますね(笑)。
宇野:状況は作ってもらってるんでって事ですよね。
白石:割と長回しでやっているんで、その中で自由に動けるっていうのはあるんですよね。

「キチガイになったフリじゃなくて、キチガイになれ」(白石)

あいつは多分殺されるよなっていう死亡フラグがほとんど無いので、観ていて驚くんですよね。宇野さんのお芝居も変な誇張が無いので、観ながら少しずつ彼のルールが分かってくるんです。人を殺す事の正当性を見出している講師っていう、リアルなワークショップの講師っぽい要素もちゃんと持っているんですが、あのキャラクターっていうのはどういう経緯で作られたんですか?
白石:母体として自分がワークショップで生徒達と交流したのが基となっているので、言ってみれば私の役者にやってほしい芝居のアプローチの仕方っていうのをデフォルメして「殺人」っていう風に変えているんですよね。そういう意味では私の気持ちというか、考え方みたいなのが反映されているかなと思います。
宇野:白石さんはすごい優しいですよね。なかなかあそこまで教えてくれないじゃないですか?身をもってやってくれるっていうのは、生徒にとってすごい幸せな事なんだなと思います。
実際のワークショップでも丁寧に教えようという気持ちは常にあったりするんですか?
白石:いえ、あんまり細かい事は考えずにですね、みんな芝居に関しては素人なので、本当は発声とかあるじゃないですか?そういうのは別に私がやってもしょうがないし、自分でやってもらえばいい話なので。技術的な細かい所は置いておくとして、一番大切な気持ちの部分というか一番芝居に重要な部分として私が考えているのがカメラの前で、あるいは舞台の上で本当の気持ちを人に見せると。
ものすごく喜ぶ姿とか、ものすごく悲しむ姿、ものすごく怒る姿、ものすごく憎む姿みたいなもの、普段人前で見せないようにしているものを、映像や舞台では見せるから観ている側は「本当はこういう気持ちが自分の中にもあるんだよな」って思って、何か解放される気持ちになると思うんです。あるいは、覗き見趣味的に「そうそう、人間ってこういうもんだよな」っていう風に見て客観的に楽しむっていうのもあると思うんですけど。いずれにしても、芝居の上で作り物の感情ではなくて、本当に悲しんで、本当に怒って、負の感情として人を殺すんだっていう芝居になったら本当に人を殺す気持ちにならなきゃ駄目なんですよ。
そういうのが役者にとって一番大事なものだと思っているので、それをとにかくやってもらうっていうのを毎回やっていた感じですかね。一番特徴的だったのが、「今日はみんなにキチガイをやってもらいます」っていうのをやった事があります(笑)。「キチガイ」っていうのは、外側に普段持っている倫理観とか常識とか全部はずしてやれば、誰でもキチガイになれるんですよ。だから、キチガイになったフリじゃなくて、キチガイになれっていう事を言ってました。
宇野さんとはそういった事を話された事はあるんですか?
白石:話した事も何かあったかもしれないですけど、宇野くんはキャラクターの中で必要なものっていうのを既に理解してくれているんだと思いますね。
宇野:本当台本が面白くて、過激な話が今までも多いですけど、過激なのが主軸な訳じゃなくて、ちゃんと台本に白石さんの純粋な部分とかが描かれているので、僕はそこがすごく好きなんですね。決して外から見えるものじゃないっていう。だから、台本に書かれているっていつも思っていますね。

「白石さんのあの優しさって何なのかな?」(宇野)

今回、ワークショップの生徒さん達を実際殴ったりするじゃないですか?一緒に演じていて大変だった所とかはありましたか?
宇野:役は違えど、僕もENBUの生徒さん達と同じように白石さんに問われてる感じがすごくしてたので、「お前の覚悟見せてみろ」みたいな。あと、やっぱさっきも言ったように、役者に対してあそこまでの優しさってなかなか出来ない事だと思うので、白石さんのあの優しさって何なのかな?って思いながらやっていました。
そうなんですね。今作の部屋のシーンでのDVはかなり痛々しいじゃないですか?役者さんにはどのような要望をしたんですか?
白石:やられる側は受け身なので男に任せればいいじゃないですか?やる側の方にはあり得ないっていう位しつこくやってねっていう事はお願いしました。本番は2回は撮ったと思うんです。テストは軽くやる位で、本番の時に思いっきりやってもらったっていう感じですね。細川くんは前も一緒にやった事あったので、その辺はやってくれるだろうなという期待をもっていましたね。あと、あのシーンはお二人にも理解してもらえてたんじゃないですかね。観ている側にいたたまれなくなる位のものを体験させるためにも、本当の暴力を見せないといけないっていうのを。
廃墟のシーンで、宇野さんがスコップ投げられるカットはかなり唐突でびっくりしました。落ちる時の挿入カットもそうですけど、妙な味わいがあって面白いんですよね。
白石:自分としては何の不思議もなく、映画の流れに任せて撮っているだけですけどね。
実際に投げつけられてるんですか?
白石:あれは合成ですね。フィックス(固定カメラ)で撮っておいて、宇野くんはリアクションだけやってもらって、その後自分がスコップを持って、「投げられました、当たって跳ね上がりました、落ちました」っていうのをやって、マスクで私の手を切って動きを早めて合成してもらいました。
ああ、なるほど。何か笑えてしまうんですよね(笑)。雨は実際に降っていたんですよね?宇野さんは、きっと大変でしたよね?
宇野:あの日すごい雨だったんですよね。
白石:宇野くんがどれ位大変だったかちょっと分からないんですけど(笑)。あの時は、ほんと日がなくて、光量ぎりぎりだったんです。それで焦っていて、それが大変でしたね。ちなみに本当はあのシーンは秩父の方の山で撮る予定だったんですね。ロケハンもして、決めてたんですけど、その日に雨が降るっていうのが何日か前に分かっちゃって、屋外じゃ絶対撮れないっていう話になって、急遽見つけてロケハンしに行って翌日に撮影に臨んだんです。動きも全部当初の予定とは変わって、そういう意味での大変さもありましたけどね。
画的にはすごい良い場所ですよね?
白石:結果的に、神様が味方したんじゃないかっていう位良かったですね。あの建物は撮影の直後に取り壊されたんですよ。多分あそこで撮影された最後の映画なんじゃないかと思います。映像の中にあの場所を残せたっていう意味でもすごく良かったと思っています。

「『暴力人間』を超えたい」(白石・宇野)

今後も白石監督と宇野さんのタッグって観れたりするんでしょうか?
白石:それはもちろん。延々と(笑)。宇野くんともうやる事ないなって思う時まではやるつもりなんで。
宇野:すごい嬉しいです。僕も同じ気持ちです。本当にやりたいなと思っています。
それはとても楽しみです。あと、『オカルト』が出来た事によって『ある優しき殺人者の記録』が生まれたっていう気も勝手にしてまして、『殺人ワークショップ』が出来た事によって、新たな何かが生まれるんじゃないかっていう予感もあるんですよね。
白石:確かに、今までとちょっと違うんですよね。多分、それは私がワークショップの講師を一定期間やったっていう経験が大きいとは思うんですけど、今までと少し趣向の違う作品を撮れたなと思っていて、それが後々違う形になる事はあるかなと思いますね。
宇野:僕も今回ってちょっと違うって思っていて、すごく好きなんですけど、何か不思議な映画で、今までの白石さんの作品とも違う傑作なんですよ。あと、監督もよく言ってますけど『暴力人間』を超えたいっていうね。
白石:うん。私の97年の自主映画で、未だに自分がそれを超えられていないとずっと思ってるんですよね。あの作品で到達した場所まで、どの映画もまだいけていないと。確実にこれは『暴力人間』を超えたっていう風に思える作品を作りたいなと思いますけどね。それを作れたら、さらに一歩前に自分がいけるような気がしてるんです。
宇野:作品はそれぞれ違うんですけど、『暴力人間』にはもう一回撮ろうとしても出来ない部分が映っているんで、それにやっぱり僕も挑戦してみたいなとすごく思います。
お二人の作品、これからも観続けていきたいと思います。本日はお忙しいなか、ありがとうございました。
【Story】

同棲する恋人から日常的に暴力を振るわれているアキコの元へ、奇妙なメールが届く。それは「殺したい人はいませんか?人の殺し方を教えます」と書かれた、闇の殺人ワークショップへと誘うメールだった。アキコはそのメールに返信し、ワークショップへと応募するのだが…。

白石晃士監督作品、主演・宇野祥平『殺人ワークショップ』
2014年9月13日(土)〜9月26日(金)渋谷アップリンクにてレイトショー絶賛上映中
2014年11月8日 (土)〜11月14日(金)名古屋シネマスコーレにて上映
■公式Facebook
https://www.facebook.com/mdr.workshop
■関連記事(作品紹介)
http://culture.loadshow.jp/topics/satsujin-workshop/
聞き手、構成、写真: 川邊崇広
『殺人ワークショップ』
監督・脚本:白石晃士

出演:宇野祥平、木内彬子、西村美恵、徳留秀利、伊藤麻美、井ノ川岬、杉木悠真、重田裕友樹、川連廣明、須田浩章、細川佳央

撮影監督:岩永洋/録音:小牧将人

特殊メイク:相蘇敬介(LINK FACTORY)/編集:宮崎歩(STUDIO VIEW)

製作:ENBUゼミナール/宣伝・配給:ENBUゼミナール

©ENBUゼミナール

(HD/シネマスコープ/2014/75分)
  • 『白石晃士(しらいし・こうじ)』
    1973年、福岡県生まれ。九州産業大学時代に自主映画を制作。97年の自主映画『暴力人間』(共同監督・笠井暁大)が、ひろしま映像展98で企画脚本賞・撮影賞を受賞。 翌年製作した『風は吹くだろう』(共同監督・近藤太)が、ぴあフィルムフェスティバル99で準グランプリを受賞。2004年に若槻千夏主演映画『呪霊 THE MOVIE 黒呪霊』で長編初監督を務める。その後、数多くのビデオ作品でフェイク・ドキュメンタリーを扱ったホラーを手掛け、2005年に公開された映画『ノロイ』は一部で日本版『ブレア・ウィッチ・プロジェクト』と呼ばれ、その作風は2008年のビデオ作品『裏ホラー』や2009年公開の映画『オカルト』にも引き継がれている。近年の劇場公開作品は、『カルト』(13)、『讐 ~ADA~』(13)‎、オリジナルビデオ『戦慄怪奇ファイル コワすぎ!』シリーズから派生した『戦慄怪奇ファイル コワすぎ!史上最恐の劇場版』(13)、『ある優しき殺人者の記録』(14)、『殺人ワークショップ』(14)など。
  • 『宇野祥平(うの・しょうへい)』
    1978年、大阪府生まれ。主演した短篇映画『女』『鵜野』(両作とも監督・前田弘二/05)がひろしま映像展2005でグランプリと演技賞を受賞し注目を浴びた。以降『オカルト』(監督・白石晃士/09)『超・悪人』(監督・白石晃士/11)『殺人ワークショップ』(監督・白石晃士/14)等の映画に主演。
    その他に『婚前特急』(監督・前田弘二/11)『キツツキと雨』(監督・沖田修一/12)『苦役列車』(監督・山下敦弘/11)『舟を編む』(監督・石井裕也/13)、『ぼっちゃん』(監督・大森立嗣/13)『わたしのハワイの歩き方』(監督・前田弘二/14)など数多くの映画に出演。テレビドラマには『深夜食堂』(09、11/TBS)に準レギュラーとして、『D×TOWN~太陽は待ってくれない~』(12/TX)では準主役として出演。

    公開待機映画に、『まほろ駅前狂騒曲』(監督・大森立嗣/14年10月18日公開)『バンクーバーの朝日』(監督・石井裕也/14年12月20日公開)『百円の恋』(監督・武正晴/14年12月公開)『深夜食堂』(監督・松岡錠司/15年1月31日公開)などがある。

    また、準レギュラーとして出演するドラマ『深夜食堂 3』がTBS,MBS他にて14年10月より放送。