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『青春群青色の夏』田中佑和監督+睡蓮みどり(女優)インタビュー

テアトル新宿にて 2015年9月5日(土)から9月11日(金) まで一週間限定レイトショー!!

園子温監督を師事し、数多くの映画の現場を経て、満を持して今作を生み出した田中佑和監督。仲間とともに作り上げた今作は、エネルギッシュでピュアな精神が純度100パーセントで表現されている。高校時代に書かれた台本を時を経ながら磨き上げてきた紛れもないオリジナル作品だ。高校生たちの無軌道な青春を見守るお姉さん役で出演した、女優の睡蓮みどりさんもお招きして、作品の原点、魅力について迫る!

高校時代に書いた台本を基に

初期衝動のエネルギッシュさが前面に出ていて、清々しさを感じました。また、技術的にも洗練されているイメージを持ちました。監督の今までの経歴含めて、今作に至るまでの経緯をお伺いしたいです。
田中:日本映画学校を卒業してから10年間、映画業界で仕事はしていたんですけど、自分の作品は作れず何の代表作も無いままダラダラと過ぎていて。で、今作の撮影監督をしてくれた福田陽平は映画学校の同期でして、彼は卒業と同時に監督、カメラマンとして活躍していたんです。彼とはしょっちゅう会っていて、「いい加減撮ろうよ」、「いつ撮るの?撮るなら手伝うから」と言われ続けていたのと、30歳という節目に何かアクションを起こさないとなというのがあったんです。
というのも、昔リリー・フランキーさんにお会いした時に「30歳になるまではお金にならない事だけやりなさい」って言われたのもあって、お金にならないけど面白いと思える仕事をひたすらやってきていたんです。それで節目を迎えた時に、僕の周りに俳優の卵達が何人かいたので、じゃあ彼らと何か撮ろうかと思ったのが始まりですね。今作の物語は、僕が高校時代に書いた台本を基にしているんです。若い彼らに合う群像劇としてふさわしいなと思って、それを選んだんですね。
高校時代に書いた台本というのは、細部まで書かれていたのですか?
田中:一応結末までは書いていたんですけれども、色々と設定は変えていきました。本編の舞台は世田谷区になっているんですけど、もともとは高校時代の友達が初台に住んでいて、そこが溜まり場みたくなっていたんですね。それが、青春の空間だったんです。台本書く時はそこを舞台として書いていました。実は、高校3年生の時に一度撮影もしたんですけど、完成は出来なかったんです。
その後、映画学校の3年生の時に卒業制作があって、皆がシナリオを提出して選ばれた人だけが撮れるんですけど、そこでリライトしたものを提出したんですが選ばれなかったんです。そこからは10年近く眠ったままでいました。だから、久しぶりに読んだ時にすごく恥ずかしかったんですよ(笑)。
そういった経緯があるんですね。観ていて、どこか懐かしさと若者たちのユートピアを感じたのもそういった流れがあるからなのかもしれませんね。劇中で語られるエピソードも監督の体験が盛り込まれているのでしょうか?
田中:具体的なエピソードと言われると、そこまで実体験に基づいている訳ではないですけど、恥ずかしい話、高校時代に好きだった女の子は一つのモデルになっているんですね。夏休みに入ると、好きな女の子に会えないもどかしさというのがあって、その辺の感情を膨らませて書いていました。友達同士で溜まってワイワイしていたのも反映していますね。
独特だなと思ったのが、男の子達の個性がバラバラじゃないですか?一見いじめっ子、いじめられっ子に分かれていてもおかしくないキャラクター達がすごく皆仲が良いというのがあって、そこがユートピアを感じた理由だったんですね。
田中:高校時代は誰も嫌なやつがいなくて、もしかしたら影では何かあった子もいるのか分からないですけど、いわゆるいじめに繋がるような事はなかったんですね。その期間に関して言うと、嫌な大人もいなくて、高校時代に台本を完成させた時に下北沢のBARのマスターに読んでもらった時には、「誰か敵が出てこないと、映画としては成り立たないんじゃない?」って言われました。でも、僕の中では説得力のある設定だったんですね。リア充だとか言われたら、それまでなんですけど。

足掛け二年の撮影

今作で睡蓮さんは、バイタリティ溢れるお姉さん役を演じられていました。とてもインパクトが強かったです。
睡蓮:そうですね(笑)。結構自分にも近くて、お酒が好きな所とか。凄くやり易い役でした。
登場人物が皆魅力的な作品なのですが、監督は演出上で気を付けていた事はありましたか?
田中:気を付けていた事か分からないですけど、基本的に若い俳優陣は初演技に近かったので、とにかくリハーサルはすごいやりましたね。特に慎太郎という役は難しい役だったので、色々と演技の指摘はしましたね。
最初は自分のプランだったり、自分の間というのを彼らにぶつけてリハーサルをやったんですが、やっぱりなかなか思い通りにはならない事が分かり、それよりも彼らにキャラクターを寄せていく感じで途中からは進めていきました。
今作の「完全無冠、全員無名」というキャッチコピーがすごく大胆だと思ったのですが、監督の中ではまっさらな状態で作品を観てほしいといった理由での俳優起用だったりするのでしょうか?
田中:狙いとかは本当無くて、僕の周りにいる人達で撮ろうと思っただけでした。お姉さん役の睡蓮さんなどは追加キャストとして起用しましたけども。映画を売り出す事を考えた時に、一人だけでも名のあるキャストをつけようかというのは、撮る前にスタッフの中で少し話は出たんですけど、そうじゃなく彼らだけでやろうと決めた時には、これは商業的には難しいだろうなというのは物凄く感じていました。だから、その時はテアトル新宿で上映されるとかは思ってもいませんでした。とにかく、何か一つ映画を完成させるという事だけが目標ではありましたね。
劇中が夏設定ですけど、撮影期間は実際に夏の間だったのですか?
田中:撮影開始したのが2012年の夏で、一回中断して翌年の春以降に再開しました。結構飛び飛びのスケジュールで撮っていたので、そうすると夏も終わってきて息も白くなりだしてきたんです(笑)。実働日数がどの位だったかは全然覚えていないですけど、足掛け二年くらいで撮りましたね。
空いた期間で編集を進ませて、次のプランを考えていたのですか?
田中:色々とトラブルがあったので、落ち込んだりもしていて、すぐにポジティブに素材を繋いで来年に向けようという気持ちにはなれませんでしたね。

「秘密基地」

監督は園子温監督の作品で多岐に渡って関わられているそうですが、園監督から影響を受けているなとご自分で実感されたような事ってありますか?
田中:どんな悪条件の中でも、ちゃんと映画として成立させますし、弱音も吐かないですし、とにかくエネルギッシュに撮っていく姿だったり、あとは脚本を仕上げるスピードが物凄く早いんです。園さんが手書きで書いたものを、僕はそばでパソコンで打ち直す作業をしていたんですね。結構タイピング早い方なんですけど、園さんが手書きで書くスピードの方が早いんですよね(笑)。とにかくエネルギーをもらい続けていた感じはありますね。手伝いながらも、そのテンションで自分の作品も書き上げたいと思うくらいでしたね。
なるほど。今作は、とてもエネルギッシュな作品だと思っているのですが、美術や音楽にも抜かりがなく、作品のファンタジー性を高めていますね。小道具では、プラレールやお面だったり個性的な物が多いですよね。スタッフ間で、小道具や美術の話し合いというのはかなり突き詰めていったのでしょうか?
田中:美術を担当したのは、僕の妹(田中佑佳)なんですね。僕らがテーマにしていたのは「秘密基地」だったんです。実写よりもアニメに近いのかもしれませんね。美術費って、後でしわ寄せがくる所があるんです。撮影場所が僕の実家だったので、とにかく家にある物をかき集めて飾っていましたね。
撮影が終わるまで、劇中の部屋の中で暮らしていたのですか?
田中:そうです(笑)。もともと部屋ごとの境に襖があったんですが、それを全部ぶち抜いていて、3部屋を1部屋にしていたんです。3部屋中の1部屋が妹の部屋で、もう1部屋が母の部屋だったので、撮影期間中は妹と母は部屋が無かったです(笑)。
撮影、照明では、色合いや柔らかさに凄く気を使われているように感じました。
田中:僕が18歳の頃に書いていた台本という事もあったので、その当時僕が好きだった岩井俊二やウォン・カーワイの映画の雰囲気を出したいなというのがありましたね。
夜の短冊のシーンは、目を見張る綺麗さでした。
田中:短冊のシーンに関しては、仲間が自腹で用意してくれたんです。現場に行ったら、物凄い量の電飾が準備されていて驚きました。ちょっとしたサプライズプレゼントの様な現場でしたね。
そういった作り込まれた撮影場所に入ると役者さんも盛り上がるんじゃないですか?
睡蓮:すごい盛り上がりましたね。画面の中だけじゃなくて、現場も色鮮やかで本当に綺麗でした。現場はスタッフ、役者みんなで作っている感じで楽しかったんですよ。
今作では、白石晃士さん、鈴木太一さん、寺内康太郎さんといった映画監督の方々も出演されていますね。もともとお知り合いで、起用されたのですか?
田中:そうですね、可愛がって頂いている先輩達ですね。鈴木太一さんに関しては、この映画をやろうと決めた時期にちょうど『クソガキの告白』(監督:鈴木太一/2012)がゆうばり国際ファンタスティック映画祭で4冠をとっていまして、カメラマンの福田陽平が『クソガキの告白』の撮影をしていたので、彼を介して鈴木太一さんを紹介してもらって、そこから仲良くして頂いているんです。
劇中の部屋に『クソガキの告白』のポスターが貼られていますね。また、鈴木太一さんは非常に茶目っ気のあるマスター役を見事に演じていますね。
田中:そうですね(笑)。
睡蓮:太一さんの役って後で増えたんですよね?完成したものを観てびっくりしました。
田中:もともと予定はしてなかったんですけど、何か出した方が面白いだろうなと思って(笑)。
撮りながら膨らましていったシーンは多いんでしょうか?
田中:現場で膨らました事はそこまで無いんですけど、脚本を書いている段階で膨らんでいっちゃったっていうのはあります。それぞれに見せ場を作ってあげようと思ったら、とんでもなく長くなってしまったんです。それでも撮ったれと思ってやっていたんですが、一回全体を繋いでみたら3時間半くらいあって、これはマズいなと思いましたね(笑)。

いつか「男のバイブル」になるような作品を

青春映画で一本挙げるとしたら、どんな作品でしょうか?
田中:うーん、難しいですね。海外の作品で言ったら、『アメリカン・グラフィティ』(監督:ジョージ・ルーカス/1973)ですかね。ああいうのが好きなんですね。でも、今回目指すピュアな要素の強い作品で考えると、『打ち上げ花火、下から見るか? 横から見るか?』(監督: 岩井俊二/1995)ですね。とにかく、僕は群像劇が好きなんですね。
睡蓮:私は、『渚のシンドバッド』(監督:橋口亮輔/1995)と『HOUSE ハウス』(監督:大林宣彦/1977)です。
『HOUSE ハウス』ですか!?
田中:あれを青春映画として挙げる人はなかなかいないよ。それだったら『青春デンデケデケデケ』とか尾道三部作とかじゃない?
睡蓮:女子校出身なので、女の子達で夏休みワイワイしてる感じなんかが…。青春映画のジャンルに入るのかは分からないですけど(笑)。
今後突き詰めていきたいテーマやジャンルがあれば教えて下さい。
田中:今の所ストックとして青春映画で何本かありまして、一つは小学生をメインにした話だったり、いまは等身大以下の物語を消化していきたいなと思っています。あと、その内にやってみたいのは探偵物ですね。最近の映画で、キャラ立ちしたカッコイイ主人公の物語があまり無いなと思っていまして、何か「男のバイブル」になるような作品で、シリーズになっていくものに憧れますね。
最後に今作を観られるお客さんに向けて、メッセージをお願いします。
田中:夏を感じてほしいですね。この映画を観て、それぞれのノスタルジアな思いだったり、あの頃の自分はこうだったなとか思い出してくれたら嬉しいです。
睡蓮:現場にもあった、ビュアな部分が全部ちゃんと映っているので、それを体感してもらえたらなと思います。
本日は、ありがとうございました。

田中佑和監督作品『青春群青色の夏』

テアトル新宿にて 2015年9月5日(土)から9月11日(金) まで一週間限定レイトショー

【Story】
夏休み、家出をした小学校時代の同級生 夏木真太郎は耕介の親が田舎に帰省しているのをいいことに耕介の部屋に転がり込んでくる。性格も正反対で、大して仲が良かったわけでもない二人。やがて部屋には真太郎の高校仲間のゴロー、ヒロト、ゴローの彼女なども住みつくようになり、穏やかなはずの耕介の高校生活最後の夏休みはかき乱されていくのだった。
■イベント情報
9/ 5(土)出演者・監督舞台挨拶
9/ 7(月)ゲスト:関和亮(映像ディレクター)
9/ 8(火)ゲスト:園子温(映画監督)
9/ 9(水)ゲスト:白石晃士(映画監督)
9/10(木)ゲスト:今野杏南(グラビアアイドル/女優)
9/11(金)ゲスト:森下くるみ(文筆家/女優)
※登壇ゲストは当日のご都合により変更となる場合あり。
■公式サイト
http://www.seishungunjyou.com
■公式Facebook
https://www.facebook.com/seishungunjyou
■公式Twitter 
https://twitter.com/seishungunjyou
取材・構成・写真: 川邊崇広
『青春群青色の夏』
出演:金田侑生、遠藤耕介、生沼勇、上川雄介、中村唯、山田篤史、湯原彩香、睡蓮みどり、高崎二郎、 屋根三郎、川連廣明、鈴木太一(『くそガキの告白』監督)、寺内康太郎(『デメキング』監督)、白石晃士(『ある優しき殺人者の記録』監督)

監督・脚本 : 田中佑和

撮影監督:福田陽平|音楽:34423|プロデューサー:村上忍|ラインプロデューサー:中川究矢

照明:上村奈帆|録音:録音:宋晋瑞/ 田辺正晴|整音:國分玲|編集:宮崎歩|美術:田中佑佳

スタイリスト:鈴木里菜|ヘアメイク:杉山瀬梨|劇中歌:木村昇祐/ 濱端誠/Sure A

制作:青春群青色の委員会 /(株)small river

特別協力:エビス大黒舎/ 配給・宣伝:(株)small river

2015 年/ 日本/ カラー/ DCP/16:9/115 分

@2015 SMALL RIVER
  • 『田中佑和(たなか・ゆうわ)』
    1982年、東京出身。日本映画学校(現・日本映画大学)卒業。
    園子温監督に師事し、脚本の補助をはじめ、予告編編集・メイキング・演出助手などを担当。
    現在、主に映画監督・脚本家として活動。鈴木光司原作、乃木坂46・伊藤万理華主演映画「アイズ」の脚本を手がける。
    今作「青春群青色の夏」が、監督として初の長編映画である。
  • 『睡蓮みどり(すいれん・みどり)』
    1987年、神奈川出身。
    女優、映画コラムニスト。早稲田大学第二文学部在学中より活動を始める。オーディトリウム渋谷での長谷川和彦監督、大林宣彦監督の上映イベントをはじめ、トークショーも積極的に行う。『月刊デジタルファクトリー キネマトグラマー』『図書新聞』にて連載中。