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『ショート・ターム』デスティン・クレットン監督インタビュー

11月15日(土) 新宿シネマカリテ、ヒューマントラストシネマ渋谷、TOHOシネマズ梅田、TOHOシネマズなんば、TOHOシネマズ二条ほか全国順次ロードショー!

ロカルノ国際映画祭など世界中の映画祭で絶賛されてきた『ショート・ターム』が日本でいよいよ公開となる。来日されたデスティン・クレットン監督が、気さくにインタビューにお答えしてくれた。繊細に、日常の細部まで描かれた本作の魅力について、監督の実体験が含まれている事など、より深く知ることが出来た。

-二年間似たような施設で働いていました-

とても見応えのある映画でした。見落としがちな日常の些細な瞬間について考えさせられる映画でして、監督の視点がとても登場人物に近い位置にあり、観ている側はリアルのものを感じれる作品だと思いました。家庭などに問題を抱えた子供達を保護する施設を舞台にする事は監督自身相当な覚悟が必要だったのじゃないでしょうか?
デスティン:確かに多くの挑戦が必要でした。重いテーマではありますので、今までも「きつかったんじゃないですか?」と聞かれる事はありましたが、幸いスタッフや出演者、制作関係者のお陰で精神的に辛いシーンであっても、実際の現場は笑いに溢れたとてもやり易い環境でした。
製作期間はどの位だったのでしょうか?
デスティン:まず以前、同様のテーマで短編を撮ったことがありまして、その作品は自分が以前養護施設で働いていた経験だけを描いたものでした。今回の長編は自分の経験に加えて、施設で働いている人にインタビューをしたり、本を読んだりと、リサーチで得た情報を加えて脚本を書き進めたものです。脚本を書き始めたのが2009年で書き終わったのが2010年なので、大体一年位の期間をかけています。それから実際に撮影が始まったのが2012年になってからでしたね。
監督自身、実際に養護施設で働いていらっしゃったんですか?
デスティン:はい。二年間似たような施設で働いていました。それは、自分が大学を出て初めてやった仕事になります。確か2002年から2004年だったと思います。
ケアマネージャーであるグレイスとメイソンの関係がとても愛情深く、また二人も不完全で人間味を感じれた事により、この映画がより一層身近なものになりました。二人の関係を描く上で特に気を付けた点などはありますか?
デスティン:二人の関係で一番大きな問題となっているのが、グレイスが自分の抱えている苦しさについて話さないことなんです。頭の中が不安とか辛い事でいっぱいなのに彼女は決して、そういう様子をメイソンに見せたりしない。彼女と一緒にいるメイソンは、もの凄く我慢強くあらなければいけない訳です。
ただ、大きな心を持っているからといって、何でもわがままを受け容れる駄目男でもいけないし、そこのバランスを捉えるのがとても難しかったです。うまくいったと思う所は、メイソンが少しずつゆっくりとグレイスが話せるような環境を作っていこうと努力する姿が良く撮れていると思います。この映画が終わった後、いつかグレイスが彼に心を開いてくれるんじゃないかと願っているんです。

-アートの表現自体が内面をうつし出していくもの-

子供達の演技が、皆さん素晴らしく、それぞれの個性がありつつも大袈裟なものが無く自然でした。監督自身、子供達とはどういった形で役を共有していったのでしょうか?
デスティン:今回のティーンネイジャーの役者達との出会いは、僕にとってすごくラッキーなものでした。実際に撮影するのは驚くほど楽でした。なぜかというと、普通若い役者というのは、怒るシーンでは激怒して見せたりとか、悲しいシーンでは当然のように泣いて見せたりと、やる事がちょっと大袈裟でいかにも演技してますって感じになってしまう事が多いんです。
でも、今回の出演してくれたみんなは、監督にいい所を見せようという気持ちでやっている訳ではなく、自分が演じる人物の心をちゃんと理解していて、僕が何もしなくても演技が出来ている様な状態でした。僕自身、大人と接するかのように子供達とシーンについて「どんな感情が表れているのか」を話し合ってから実際に演技をしてみるという方法でやりました。
カメラワークも含めてなんですが、一瞬の表情とか一瞬の仕草がとてもうまく捉えられていると思いました。グレイスの親指を爪で押しつけてしまう様子などの本当に細かな仕草は、どういった所から着想を得ているのでしょうか?
デスティン:そういう一瞬の仕草とかは、例えばグレイスだと言葉で自分の事を表現しない人なので、何とか彼女の感情を表現するためには、そういうシーンが必要だったんです。子供達もそうですけど、それぞれ自分の心の中の感情というものを表すために絵を書いたり歌ったりする事で、そのアートの表現自体が内面をうつし出していくものになればと思ったんです。
グレイスとジェイデンが合わせ鏡のような存在だと思いました。二人で絵を描くシーンや、グレイス自身が殻を破っていくような車のウィンドウガラスを割るシーンが強い印象を受けました。二人の距離感を生み出すために現場で新たに作られたお芝居や台詞はありましたか?
デスティン:基本的には台本に沿って撮りました。撮影現場が、とてもリラックスした雰囲気だったので、台本に書かれている台詞をちょっと言い換えたりとか、そういう事は多々ありました。
グレイスとジェイデンの関係は、実際のブリー(ブリー・ラーソン)とケイトリン(ケイトリン・デヴァー)の関係と同じだったんです。ブリーはケイトリンと同じくらいの歳から演技を始めたので、彼女の気持ちが良く分かるみたいで、二人は撮影中にどんどん仲良くなっていきました。ブリーが先輩として色々教えてあげたりなどしてましたね。
リハーサルは長い期間を設けたのですか?
デスティン:リハーサルとして設けたのは1日でした。ただ、シーンを確認するとか、そういう意味ではなく、出演者とスタッフがみんな集まってお互い顔を合わせるための1日であって、ジョン・ギャラガー・Jr.が子供達を集めて一緒にゲームをしたりと、そういう時間として使いました。
そうなんですね。ちなみにケアマネージャーの新人として入ってきたネイトって役は、監督ご自身を投影してる所はあるのでしょうか?
デスティン:もちろん(笑)。初めて自分が施設で働いた二ヶ月間くらいの様子がネイトに表れていると思います。当時はネイトと同じように自分もナイーブだったし、やる気満々だけど空回りしてしまうような感じでした。

-「自分は一人じゃない」と感じてほしい-

色んな国や地域で上映されてきた中で、映画に対する反応の違いというのはありましたか?
デスティン:国によっての違いではなくて、人の気持ちというのはどこの国もどこの地域も同じなんだなっていう事に気付かされました。それは実際驚きでもあったし、自分にとってはすごく明るい気持ちにしてくれましたね。笑えるシーンや、感動するシーンで自分の意図とかけ離れるような事はありませんでした。
マーカスのラップのシーンとエンディングの音楽が素晴らしく、希望を与えてくれました。ああいった境遇の子供達に監督が強く願っている事を教えてください。
デスティン:問題を抱えた子供達だけじゃなくて、この作品を観るすべての人たちが、この映画を観た後に「自分は一人じゃない」ということを、ちょっとだけでも感じてくれたらいいなと思います。過去につらい経験がある人っていうのは、他にもたくさんいるし、その中でも立ち直った人がいるっていう事を知ってもらいたいです。
あと、言葉というのはもの凄い力を持っているので、たった一言がある人の人生を一生傷つけてしまう事もあるっていう事を知ってほしい。それから、人間関係はとても重要で、誰かと出会って関係を築くことで、人生が一転してまったく違うものになるっていう事は可能だから、そういう事を感じ取ってほしいと思います。
今後、描いていきたいテーマはどういったものでしょうか?
デスティン:常に新しいことを学びたいと考えているし、その時の自分を表現したいと思っているから、将来何をするかはまだ分からないけれども、次に考えている映画は今回の映画と似た雰囲気になるかもしれません。内容としては、家族や人間関係を扱っていて、自分が両親から受け継ぐもの、その血筋っていうものによって本当に両親のような人間になるのか、それとも血は変わって、まったく違う生き方になるのか。自分自身、常にそういう事も考えていて、それが反映されるような映画になるかと思います。
お忙しい中、ありがとうございました!
デスティン・クレットン監督作品『ショート・ターム』
11月15日(土) 新宿シネマカリテ、ヒューマントラストシネマ渋谷、TOHOシネマズ梅田、TOHOシネマズなんば、TOHOシネマズ二条ほか全国順次ロードショー
《Story》
ティーンエイジャーをケアする短期保護施設で働くグレイス(ブリー・ラーソン)と、同僚でボーイフレンドのメイソン(ジョン・ギャラガー・Jr)。子供が出来たことをきっかけに、二人の将来はささやかならがも幸せなものになるかと思われたのだが…。誰にも打ち明けられない深い心の闇を抱えるグレイスと傷ついた子供たち。ひとりぼっちで生きるのではなく、誰もが大切な人と一緒に明日を生きる喜びに気づかせてくれる、温かな愛に包まれた新たな傑作の誕生。
■公式サイト
http://shortterm12.jp
聞き手・構成・写真: 川邊崇広
『ショート・ターム』
監督:デスティン・クレットン

出演:ブリー・ラーソン、ジョン・ギャラガーJr、ラミ・マレック、フランツ・ターナーほか

2013/アメリカ/カラー/97分/1.1.85 アメリカンビスタ/ドルビーデジタル/英語/日本語字幕

配給:ピクチャーズデプト (www.picturesdept.com) 提供:鈍牛倶楽部

© 2013 Short Term Holdings, LLC. All rights reserved.
  • 『デスティン・クレットン』
    1978年生まれ、ハワイのマウイ島出身。
    ポイント・ロマ・ナザレ派大学でコミュニケーション学を専攻したのち、サンディエゴ州立大学で映画分野の修士号を取得。
    これまでに『Longbranch: A Suburban Parable』(2002年トライベッカ映画祭でプレミア上映)、『Bartholomew’s Song』(2006年学生アカデミー賞最終候補作)、『Deacon’s Mondays』(2007年学生アカデミー賞最終候補作、アンジェラス映画祭グランプリ、HBOフィルムズ最優秀映画賞)、そして『Short Term 12』という4つの短編映画(監督/脚本)で受賞経験がある。彼の長編デビュー作『I AM NOT A HIPSTER』は2012年サンダンス映画祭でプレミア上映され、批評家たちに絶賛された。
    また、フィクションと平行して『DRAKMAR: A VASSAL’S JOURNEY』(2007年HBO Familyでプレミア放映、2006年コミコンで最優秀ドキュメンタリーを受賞)や『BORN WITHOUT ARMS』(2009年TLC/Discoveryでプレミア放映)という2本の長編ドキュメンタリーも監督している。
    『ショート・ターム』(同名短編映画に基づく)はデスティンの長編2作目で、その脚本は映画芸術科学アカデミーが主催する、2010年度ニコル映画脚本フェローシップ5作品のうちの1つにも選ばれている。映画は2013年SXSW映画祭でプレミア上映され、観客賞、最優秀審査員賞のW受賞を果たして以来、世界中の50もの映画賞にノミネートされ、35もの映画賞を受賞している。