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2045 Carnival Folklore in SIFF 2015

シアトル国際映画祭レポートVol.2 ディヴィッド・ノヴァク インタビュー

“JAPANOISE”著者による加藤直輝インタビュー

今年のシアトル国際映画祭正式出品作となった『2045 Carnival Folklore』。リポート第二弾はディヴィッド・ノヴァク氏による加藤直輝監督へのインタビュー。カリフォルニアのサンタバーバラ大学音楽学部で准教授として教鞭を取るノヴァク氏は2013年に日本のノイズシーンを取材したJapanoiseを上梓。ノイズを直接知る彼の眼にこの映画はどう映ったのか?
Interviewer David Novak
【イントロダクション】
『2045 Carnival Folklore』はおそらく世界初の純粋なノイズ映画だろう。映画の全体はナラティブを破裂させるノイズによって駆動しており、作品の世界と登場人物たちはミステリアスな音響世界に結びつけられている。幾つかある扇動的なノイズ・パフォーマンスのシーン(あの極悪な非常階段、インキャパシタンツのT.MIKAWAが「大佐」役として出演している)があり、映画の終わりでは強烈なノイズ・ミュージックの爆風が「党」を打ち倒し、世界が救われる。人はこう言うかもしれない。「この映画の主役とヒーローは、実際ノイズなのだ」と。
1. あなたは最初どのようにしてノイズ・ミュージックを発見し、それはあなたの制作活動にどのような影響を与えましたか?
加藤 大学で自主映画の制作を始めた頃はギターロックのバンドが好きでした。Godspeed you! Black emperorやenvyは今でもフェイヴァリットです。MogwaiやExplosions in the skyなどディストーションギターがバーストするものが好きで、My Bloody Valentine の"You made me realize"はハマりました。ライブの海賊版の後半のぐちゃぐちゃにノイズに塗れるパートが本当にかっこよかった。それから大友良英、山本精一、JoJo広重など日本人のノイズギターが好きになり、同時に日本のノイズも聴いていました。ライブでアンプを壁のように並べる灰野敬二やBORIS、Sunn O)))らはある種の夢を体現していたように思います。
 またそのころ増田圭祐と出会いました。本作の共同脚本、音楽担当です。彼は劇団の作演や裏道というサイケデリックなロックバンドをやっていました。彼が裸のラリーズのCDを貸してくれたのを今でも覚えています。思えば当時の自主制作映画の頃から今でもやっていることは変わりません。FRAGMENTS Tokyo murder case (2005)という短編で池袋西口公園で通り魔が市民を撲殺するというシーンがあるんですが、そこで増田君に爆音でノイズギターを弾いてもらいました。上映会もたくさんのスピーカーを持ち込んで僕だけ大音量で上映してました。なので映画を作り始めたときからノイズや爆音というオブセッションがありました。
2. 音楽と音響はあなたの作品全体を通して中心的な力になっています。『アブラクサスの祭』(2010)では実際にミュージシャンであるスネオヘアーさんが主演し、かつてパンク・ロッカーだった彼は、禅僧となった今でも生きる上で音楽が必要となる事態に直面しています。サウンドトラックは前衛的なギタリストとしてよく知られる音楽家、大友良英によるシカゴ・ポスト・ロックスタイルの音楽です。音響の提示に対するあなたの注意-音楽、ノイズまたは偶発的なエフェクト-は、あなたの作品全体における明らかな特徴です。映画における映像的側面と音楽、音響との関係についてどのように考えていますか?
加藤 その通りです。僕は映画を構想するとき映像より音響の方がイメージしやすいんです。映画全体の構成を考える際、物語の展開や登場人物の感情の起伏をリズムやグルーブ、音色や音量の大小といった要素でイメージします。もちろん場面やカット構成など視覚的なイメージもありますが、全体を把握するときは音響的に捉えます。
 『アブラクサスの祭』は僕にとって大切な作品です。デビュー作だからということもありますが、これまで断片的なアイデアにとどまっていた音楽やノイズに関するテーマを一つの物語として形にすることができました。これは原作となった玄侑宗久さんの小説がまさに僕が求めていたものだったこと、実際のミュージシャンであるスネオヘアーさんが主演してくれたこと、そして大友良英さんが音楽を担当してくれたことが大きいです。大友さんでなかったらまったく違う映画になっていたと思います。ラッシュが終わったあとの打ち合わせで大友さんが「シカゴ系で行こうと思うんだけど」と言ったとき思わずニヤっとしたのを覚えてます。またシーン毎にどんなノイズが必要かという打ち合わせにギター持参で応じてくれる映画音楽家は他にいないでしょう。
3. あなたは映画監督の活動の他に音楽家である増田圭祐とのSierror!〽という「ノイズ・デスマッチ・ユニット」の一員でもあるそうですね。結成の経緯と、どのような種類のノイズなのか、また映画制作においてどのようにそれが統合されたかを聞かせてください。
加藤 Sierror!〽は特にジャンルやフォーマットがありません。使う機材もよく変わります。唯一の条件は「ラウドにやる」ことで、大抵各々2~3台ずつアンプを使います。ひどいときは5台ずつ使うのでまさにデスマッチの様相になります。
 2011年に仙台短篇映画祭から「短編を作って欲しい」というオファーがありました。311の被害を受けてとても例年通りに開催出来る状況ではなかったのですが、どうしても今年もやりたいと。結果、映画祭にゆかりのある監督たちが3分11秒の短編を作り42本の作品が集まりました。僕はそのときEcho Never Goes out(2011)という作品を作りました。福島を3日間かけて1000km以上ドライブして撮影したものです。これに音楽をつけたのも増田ですが、そのとき僕も一緒にスタジオに入って生まれて初めてアンプから音を出しました。僕がFender The TwinにSM58を突っ込んでハウリングを出し、増田君がFender Twin ReverbからMoogerfoogerで変調させたサンプリング音を出したのがSierror!〽のスタートです。その1年後に2人で2045 Carnival Folkloreの準備に取りかかることになります。
4. 『2045 Carnival Folklore』はこれまで何度か映画の上映と同時にノイズ・パフォーマンスを行う「ライブ上映」をされたようですね。今回シアトルではSierror!〽とT.MIKAWAによって行われます。劇場という空間で上映と同時にノイズのライブパフォーマンスをすることをどうやって思いつきましたか?またこの種の体験を提供することは観客にとってどのような効果を与えるのでしょう?
加藤 最初は横浜でやりました。このときはやむにやまれぬ事情があって、上映日までに整音作業が追いつかなかったんです。音楽やSEなどが全然つけられず、苦肉の策として「だったらライブでやるか」ということでSierror!〽でライブ上映をしました。実はこのときもう一つのヴァージョンも上映しました。それはDr.Acid役で出演している長嶌寛幸さんが音楽をつけてミックスしたヴァージョンです。Dowserの曲をふんだんに散りばめたDowser Ver.と、Sierror!〽のライブ上映Ver.を同日に上映したら、当然全く違うものになりました。これは僕自身とても面白かった。
しばらく後で渋谷でもプレビューをやる機会があり、このときはマンドラゴラ役で出演している岡本英之さんにゲスト出演してもらいました。映画の後半にカオティックなシーンがありますが、ここで登場して歌ってもらいました。これがまた面白かった。映画の出演者が突然スクリーンの前に現れるパフォーマンスは映画から突き抜けて来たようなインパクトを観客に与えたようです。
 何回かやってみて確信したのはこの映画は未完成でよいのだ、ライブ上映こそがフルセットなのだということです。機材を持ち込むことで劇場のキャパシティ以上の音量を出すことが出来る。ライブ上映をすることで、劇場で初めて完成するのです。しかも毎回違った内容になる。
今回SIFFではT.MIKAWAもゲスト出演します。美川さんとやるのは初めてなのでとても興奮してます。映画祭ですからこれまでノイズを体験したことの無い人たちも大勢来るはずです。これまでで一番ラウドでピュアな上映に彼らがどう反応するのかとても楽しみです。
5. 『2045 Carnival Folklore』を見ながら突き刺さったことは、たとえば東京キッドブラザーズのある実験的な作品など、1960s-1970sの日本の政治的なアンダーグラウンド演劇の伝統との共振に気づいたことです。日常的な、口語的な演劇スタイル、ブレヒトの即時的な芝居などです。しかしまた現代的で商業的なポップカルチャーやマスメディアによるイメージの外表も認められます。ここから演技のアヴァンギャルドと大衆文化的素材による引用、演劇と映画制作とのミックスによる諸効果について語ることが出来ますか?
加藤 60-70年代の特にアヴァンギャルドと呼ばれる作品との共通点として思い当たるのは「自主制作」であり「低予算」であるということです。限られた条件でやるしかないので必然的にソリッドなもの、その場で出来ることに集中するという方法になります。当時との一番の違いは撮影機材です。僕らには廉価なデジタルビデオカメラとデジタルレコーダー、Macがありました。そして一本の映画を作るにはそれで充分でした。また低予算でSF作品を作るという無茶苦茶な条件下では、映画の世界観を構成する上で風景を効果的に使うことが必要でした。ロケ地である横浜は古くから港街として栄え、旧いレンガ造りの建造物やモダンでシンセティックなデザインが融合したランドスケープを持っています。このように実際の風景を活用し、異化する手法もアヴァンギャルドと共通するものです。
 東京キッドブラザーズやブレヒトとの連想を聞いたのは初めてです。役者と演技に関して言えるのは出演者のほとんどが素人だということです。プロの役者はヨシザワ博士役の奥瀬繁さんだけです。主演の石井順也は舞台役者ではありますがどちらかというと身体パフォーマーです。ちぇるしぃ役の岡美咲は撮影当時“夢見るアドレセンス”というアイドルグループの一員でした。精神病院のナースや看守、患者たち、金太郎やYSG、タートルズらは俳優を目指す学校の学生たちでした。その他は皆ミュージシャンです。僕は場面の状況を伝えるだけで実際の演技は彼らに任せました。
 映像は撮影の定者如文に依るところが大きいです。助手はおろか照明や特機も用意出来ない状況でクオリティコントロールをしたのは彼の成果です。またBカメラを担当した飯岡幸子の力も大きく、冒頭のノイズのライブシーンをあのようにパノマティックに撮影したのは彼女のアイデアです。
6. 映画の概念的な背景はグローバルな核災害から目覚めたポスト-アポカリプティックなテクノスケープを有するYKHM Cityにおけるサイキックな人口支配との闘争に関するものです。独裁的な「党」にとっては、Cityに荒れ狂う混沌と破壊にも関わらず、すべては正常へと戻されなければなりません。精神病院に収監された患者達を除いて、実際ほとんどの住民が既に悲劇を忘れています。ある患者が原発のミニチュアを作り、それは小さなメルトダウンを引き起こし、その他の患者達は原子力復帰の安全性について議論します。進行中の311の悲劇、その影響は明らかにあなたの精神にありますし、映画に埋め込まれています。現時点の日本における核政策と福島第一原発のメルトダウンの影響に関して、政治的、芸術的に何を感じますか?
加藤 311の約1月後に友人と3人で福島に行きました。ABRAXASの撮影でお世話になった人やロケ地を訪れ、その後立ち入りが規制される前だったので福島第一原発がある太平洋に向かいました。地震や津波による破壊の爪痕は凄まじくやはりショックでしたが、原発に近づくにつれ人気が無くなった町の光景はさらに異様でした。放射能という眼に見えないものが撒き散らされてそれを感知することができないという状況にかつてない恐怖を覚えました。そして、当然カメラを回しても写すことはできません。眼に見えないもの、今感じている恐怖は映像には写りません。その単純な事実は僕を打ちのめしました。僕はそのとき自分にはもう映画は作れないだろうと思いました。
 2045は2012年にスタートしました。春からアウトラインやストーリーを考え始め、秋に脚本を作り、その年の冬と翌年2013年初頭にほとんどのシーンを撮影しました。よってこの映画には311からの1年間に感じたり思ったことが反映されています。先ほどの「もう撮れないだろう」から「撮ってみよう」になるまでかなり無理がありました。きっかけとしてEcho Never Goes outを作れたことが大きかったですが、その時思ったのは「好きなものを撮る」ということでした。そして、ここでもまず浮かんだのはノイズだったのです。ノイズだったらまた映画を撮れるだろうと思いました。
 災害の直接的な被災者は目の前の現実を乗り越えようとし、それを助ける人もいます。今でもそれは現在進行形で続いています。直接的に被災していない人は時間の経過とともに当時のインパクトが薄れ、忘れていきます。僕もそうです。一方事故を「なかったこと」にしようとする人たちもいます。地震や津波という自然災害はなくなりません。当然放射能による汚染とこれから日本各地で似たような災害が起こる潜在性は無くなりませんが、それを「ない」と言う人たちです。しかし、さきほどEcho Never Goes outという短編を撮ったと言いましたが、それは決して消えないのです。終わらないのです。最悪なのは現政府が率先して「粛々と」「なかったこと」を進めていることで、その政策結果が招いたのは東京オリンピックの前に戦争やテロが起きてもおかしくないような状況です。
7. 『2045 Carnival Folklore』は元々『Sonic Road Movie Yokohama!』として2013年に日本でリリースされたようです。映画の二つの反復においてどこが変わりましたか?重要な変更はありましたか?日本と世界におけるリリースプラン等はありますか?
加藤 企画した当初は横浜を舞台にした様々な音響的特徴がある場所を巡るロードムービーというものだったのでした。それが増田と打ち合わせをするうちにそれぞれのやりたいことやアイデアがどんどん膨らみ気づいたらSFムービーになっていました。ANIKIやマンドラゴラ、ガンジャ・タートルズなんかを思いついたのがいけなかったですね。最初のプレビューでは『Sonic Road Movie Yokohama!』でしたがその後再編集等重ねるうちに違和感が大きくなりタイトルを代えました。原爆投下から100年後の話です。
 今後のスケジュールは特に決まっていません。僕らは個人でやっているので一般的な配給方法では難しいところがあります。ただSIFFをきっかけに、色々な国の映画祭やフェスでライブ上映をしたいと思っています。そのためにもSIFFでの上映は大きなチャンスです。
また時期は未定ですが最終的にLoadsowで配信する予定です。僕のこれまでの作品FRAGMENTS Tokyo murder case, Echo Never Goes out, Roadside Picnicが既に配信されています。
8. H.D.R.(Heavy Doom Ramen)とは正確には何のことですか?どんなレシピですか?
加藤 ははは(笑)。Cityが配給するドラッグE.H.P(Extra Human powder)は個人の好みに合わせてトッピングができるんだ。ハーブとかDMT とかを好きなだけね。日本のラーメンは卵やチャーシュー、海苔やほうれん草とか色々トッピングできるだろ?あれと同じだよ。そして日本のリアルH.D.Rはやっぱりラーメン二郎だ。食べたことあるかい?

2045 Carnival Folklore

Japan | 2015 | 105 minutes | DCP | 16:9 | Stereo | Director: Naoki Kato

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Trailer

Live movie screening at auditorium Shibuya

Seattle International Film Festival
  • 『ディヴィッド・ノヴァク』
    カリフォルニア大学音楽学部で准教授として教鞭を取る。東アジア圏を中心に文化人類学、映画学、メディア学を専攻。2013年に日本のノイズシーンをテーマにした”JAPANOISE”を出版する。
    Japanpise: http://www.japanoise.com/news/