LOAD SHOW

A Rooted Soul. Vagabond Eyes.

映画の未来をいち早く
Be the first to witness the future of films

『シミラー バット ディファレント』主演・平野鈴インタビュー

2013年12月20日(金)オーディトリウム渋谷にて1夜限りの上映が予定されている、染谷将太監督のショートフィルム。俳優として活躍する染谷将太の監督作品とは?ミステリアスな空気をまとった「女」を演じた、若手俳優・平野鈴から見た『シミラー バット ディファレント』。

「染谷さんは実はチャーミングな人なのかなと思いました」

出演のきっかけはなんだったんでしょうか?もともと染谷さんと面識はあったんですか?
平野:いえ、もちろん染谷さんが出演している作品は見ていましたが、直接の面識はなかったです。『親密さ』(2012/監督:濱口竜介)を見て声をかけてくれたんだと思います。『親密さ』がポレポレ東中野で上映されたときに見に来てくれていたので。
お二人とも濱口竜介監督の作品に出演されているという共通点があったわけですね。染谷さんの第一印象はどうでしたか?
平野:私はいつも、第一印象を強く受けないようにしているので、そういうところはあまり覚えていないのですが……(笑)。あらゆる意味で不器用な人なのかなと思った気がします。初対面の人にあんまり自分から積極的に話しかけるタイプではないように感じたんですが、監督ということもあってか、話を拡げようとしてくれてたことは覚えています。自分で発言したことに自分で照れたりして、実はチャーミングな人なんだなと思いました。

「プロフェッショナルな方々の仕事に巻き込まれていった感じです」

次に撮影についてお伺いしたいのですが、『シミラー バット ディファレント』は全編16mmフィルムでの撮影ということと、ハイスピード撮影を使ったカットがあると聞いています。その辺りはどうでしたか?
平野:両方初めてでした。事前に染谷さんから、フィルムはやってるそばでカタカタ音がするよっていうのと、デジタルと違って何度も撮り直しはできないから現場がピリピリするかもしれないけど緊張しないで、と言われていました。それで本当にカタカタ音がするんですよね。でも私はもともと映画制作の場数をそんなに踏んでいないので、それに関して違和感やとまどいを覚えることはあまりなかったです。ハイスピードも初めてだったんですが、あれは面白いですね。撮り方は一緒なんですけど、チェックで見るとあらゆることが浮き彫りになって見えて、あんまり出してるつもりがなかったことも、ものすごく強い印象で残ったり、動きも、ちょっと目線を動かしただけでも芝居が大きく見えました。
現場の雰囲気はどうでしたか?今までと違うなと思ったことはありましたか?
平野:とにかくすごく楽しかったです。スタッフさんたちは染谷さんとずっと繋がりのある人たちで、プロフェッショナルな人たちだったんですけど、私自身はそういう現場に入ったことも初めてでした。みんな本当にやりたくて楽しんでやっているんだなと思いました。よく愛のある現場という言い方を聞きますけど、まさにそうだなと。その場で映画を作っていく感じをひしひしと肌で感じました。
そしてプロフェッショナルなスタッフさんと映画を作って行く中で、“役割”ということを考えさせられました。みなさん自分の持ち場に集中していたので、それと同じように私は芝居をすること、自分のことに集中していいんだなと思いました。自分が手を出さなくていいところは出さずに、それぞれのスタッフさんに任せる。かといって単独の作業になるわけではなく、この映画をより面白いものにするために、何ができるかを当たり前に誰もが考えているというような現場でした。みなさんプロなのでそれこそ当たり前のことなのかもしれませんが。その流れに自然に乗ったというか、巻き込まれていった感じです。今までの現場が全くそうでなかったと言う訳ではないですが、私は余計なことを考えずに芝居に専念できたことが嬉しかったですね。
リラックスしてお芝居できましたか?
平野:初日は緊張していましたが、だんだんまわりのスタッフさんや染谷さんとコミュニケーションを取れるようになって、その場での態度がわかってきてからは視野が広くなりました。3日間で自分の中でも変化があって、それを手に取るように感じられたんです。変化してることを実感しながら変化するってすごいことだと思うんですが、それは自分のことに集中できる環境があったからなので、本当にありがたいと思うばかりです。

「俳優染谷将太じゃない人がそこにもう一人いる」

今回染谷さんは監督、俳優両方をされていましたが、どんな印象を持ちましたか?
平野:自分が出るシーンでも「スタート」「カット」は自分でかけていました。芝居中でも、俳優染谷将太じゃない人がそこにもう一人いるなと思うことは時々ありました。
言葉にするとありがちな表現になってしまいますが、すごく柔軟な人だと思います。現場で生まれたことをすぐに還元していたし、できないことに執着しない。それはこだわりを捨てるとか諦めるとかいうわけではなくて、変化を厭わないということなのだと思います。地に足のついた、バランスのいい人だなと。最初は私もモニターでチェックをするときに毎回見に行っていたんですけど、2日目の途中からは位置やタイミングを見る以外ほとんどチェックに行くのはやめたんです。OKを出すのは監督なので、染谷さんがいいと言うならいいだろうと思って。「終わったことは終わったこと」ということを染谷さんから感覚的に知ったような気がします。学ぶことがたくさんありました。
あと面白かったのは、演出を伝えにくるときに不思議な空気を纏っていることがあって。言葉にし辛いのですが、ちょっと困ったみたいな、考え事をしている顔をしながら、でも真っすぐサーっとこちらに向かって来る、それから小さい声で演出を伝える、というその空気感が魅力的でした。
こまかい演出はあったんですか?
平野:テクニカルなことについての指示もありましたし、感情面でも細かいことを言われることもありましたが、いろいろ言った後で結局「まあ俺の言うことはだいたい忘れてもらって大丈夫です」ってほとんど毎回言うんです。でも忘れたつもりになったって絶対どっかに残ってますけどね(笑)。それが狙いだったんだとは思うんですが。
それと、染谷さんに言われた言葉は脳みそに届くのがすごく早かったです。彼自身が俳優だから、そういう言葉を感覚的に持っているのかもしれないですね。自分が俳優をやって感じてきている言葉で話してくれていたんじゃないかと思います。私はこうしてしゃべっているときも適切な言葉を見つけるのに時間がかかることが多いんですけど、そのタイムラグが少ない気がしました。
演じている中で難しかったことはありますか?
平野:今までの映画ではカメラワークを気にしなくても大丈夫な演出がほとんどで、タイミングをはかることはあってもそんなに意識していなかったんです。でも今回はけっこう細かくやることも多かったので、そういうところは慣れるまで難しかったです。自分で、今のは意識が芝居じゃなく動作にいっちゃったな、と思うところもありました。そういう面で染谷さんは身体と意識の使い方とかがすごいなと思って、一度「どういう感じでやってるの?」と聞いたことがあるんですけど、「子役のときからやってるから体が覚えてるんだと思うよ」と言っていました。大先輩ですからね(笑)。

「『シミラー』の脚本は、ひとり密かにスルメ脚本と呼んでます(笑)」

俳優・染谷将太との共演はどうでしたか?
平野:染谷さんと芝居をして、自分の解釈が180度反対だったんだということに気付いたシーンがありました。
2人で車に乗っているシーンで染谷さんが、かまってほしいけどうまくできない不器用な、曖昧な顔をしたんです。それを受けて「この人本当は女のことすごく好きなんだ」ということに気付いて、急にものすごくチャーミングに思えて、それに対してうまく返せない女もじつはすごくかわいらしいんじゃないかと思いました。
本で読んだ段階では動作に関するイメージが強く残ったので、それによってもっと冷めた関係だと想像していたんですけど、そこに環境なり染谷さんという人だったり、温度がのっかることで気付けることが多かったです。芝居の面では、私は染谷さんに乗っかってみようと思ってやっていたので(笑)、染谷さんの演技に引っ張られてどんどん芝居がしやすくなっていきました。
『シミラー』の脚本は、ひとり密かにスルメ脚本と呼んでいるんですけど(笑)、本当に読めば読むほどいろんなイメージがふくらんでいきました。
平野さんはすでに完成版は見ているんですか?感想をお聞きしたいです。
平野:まだラッシュでしか見ていないんです。でも思ったよりもロマンチックになったと思いました。甘いなと(笑)。16mmフィルムの質感をうまく言葉にできないんですけど、今まで自分が出てきた映画とは違うように見えました。重いというか、密度が高い感じはすごくしました。言葉のないシーンが多いので、そういったものが浮き彫りになっているような気がして、動きもいちいちひっかかってくるような感じで。鋭い爪で、すごく弱くちょっとずつひっかかれているみたいな感じがあって、それは心地よいノイズでした。完成版を見られるのを楽しみにしています。
楽しみですね!ありがとうございました。
オーディトリウム渋谷上映スケジュール
2013年12月20日(金)
21:10/【追加上映】22:00
*整理番号順での入場/自由席(136席)/各回入替
21:10の回の上映終了後と、22:00の回の上映前に、染谷将太(監督、出演)、平野鈴(主演)他、舞台挨拶予定
『シミラー バット ディファレント』B2ポスターは当日券購入者の先着順・数量限定
■ チケット
前売券・当日券ともに1500円均一
前売券(『シミラー バット ディファレント』B2ポスター付き/数量限定)
⇒所定の販売枚数に達したため販売終了
21:10の回の当日券(若干数の販売)および追加上映22:00の回のチケットは当日劇場(オーディトリウム渋谷)オープン時10:00からの販売
22:00の回の前売券の販売なし。当日券(整理番号制/自由席/136席)のみの受付。
*当日券の購入はひとり2枚まで
『シミラー バット ディファレント』B2ポスターは当日券購入者の先着順・数量限定
■ 公式Facebook
公式Facebook:https://www.facebook.com/SBDfilm
聞き手・構成・写真: 石川ひろみ
『シミラー バット ディファレント』

平野 鈴 × 染谷 将太

bim/岡本 英之/佐藤 幸子/影山 祐子/武井 麻里子

プロデューサー:金林 剛/監督・脚本:染谷 将太/共同脚本:瀬田 なつき/撮影:佐々木 靖之/照明/永田 英則/美術:布部 雅人/録音/齋藤 泰陽/編集:横山 昌吾/ヘアメイク:有路 涼子/スクリプター:貞木 優子/助監督:菊地 健雄/制作:鈴木 英生/プロダクション:MIXVOXXXX/音楽:渡邊 琢磨
とある女と男。車の中、部屋の中と、同じ時間と空間を共有するふたりは、ある朝にそれぞれの道へと歩いていく。お互いに旧友と再会するも、もの憂げな表情を浮かべる女と、どこか心ここに在らずといった男。綾織りのように絡み合う人間関係が、タバコの灯りに照らされながら描かれる。
  • 『平野鈴(ひらの・れい)』
    高校時代より演技を始め、2010年度ENBUゼミナール映像俳優コースを卒業。在学中より舞台作品にも多数参加し、主演を務めた修了作品である濱口竜介監督『親密さ』(2012)では、劇中劇の舞台演出も手掛けた。以降、平波亘監督作品『東京戯曲』(2013)などに出演。来年3月には商業映画の公開も控えている。