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染谷将太×川瀬陽太『ストレイヤーズ・クロニクル』公開記念対談「映画監督・瀬々敬久を巡って」

6月27日(土)新宿ピカデリー他全国ロードショー!

染谷将太が出演する映画『ストレイヤーズ・クロニクル』(2015/監督:瀬々敬久)が、6月27日(土)より全国公開となる。若手実力派としてこれまで数々の映画に出演し、『ヒミズ』(2012/監督:園子温)では、第68回ヴェネチア国際映画祭 / マルチェロ・マストロヤンニ賞を受賞。現在、『寄生獣 完結編』 (2015/監督:山崎貴)、『ソレダケ / that's it』(2015/監督:石井岳龍)など、話題の主演作が劇場公開中だ。今回LOAD SHOWでは、瀬々敬久監督最新作『ストレイヤーズ・クロニクル』の公開を記念して、「映画監督・瀬々敬久を巡って」と題したサプライズ対談を企画。ゲストは、染谷と公私ともに付き合いの深い俳優・川瀬陽太。二人の出会いから、瀬々監督に関する様々なエピソード、そして『ストレイヤーズ・クロニクル』が始動する前の知られざる会合(飲み会)での出来事まで、必見の内容!

-瀬々組にあるファミリー感-

本日はサプライズゲストとして、瀬々敬久監督作品にゆかりの深い、川瀬陽太さんにお越しをいただきました。
川瀬:サプライズゲストとして呼んでもらったんですが、実は、昨日染谷くんと野暮用で会っていてですね、結局かなり深い時間まで飲んでしまったわけなんですが、そのときに僕はツルッと喋っちゃったんですよ(笑)。
一同笑い
川瀬:こんなんサプライズにもならんし、もういいかと思ってね(笑)。
染谷:一応驚いてねって言われて(笑)。
川瀬:芝居とかしてくれよ、頼むわって。そんなような経緯ですね。……で?
染谷:瀬々作品な訳ですよ。
川瀬:そうですよね。いや〜、今回瀬々さんらしからぬとんがった印象がございまして、楽しみな感じではありますね。染谷くんって、瀬々さんとの最初の作品は?
染谷:『泪壺』( 2008年)。
川瀬:その時、いくつ?
染谷:14歳です。
川瀬:その時は、、、あれ?俺は関係してたっけ(笑)?
染谷:『泪壺』はしてないです。ただ川瀬さん、してるかしてないか分からないほど瀬々作品に出ちゃってますよね(笑)。
川瀬:(笑)。1995年に瀬々さんの撮った成人映画で商業映画デビューをしたので、一番付き合いが長い監督なんです。染谷くんとは、共演はまだしていない頃も瀬々組の試写で見かけたりはしていて、その後別の作品で関わることになったんだよね。
染谷:スピンオフムービーとして作られた菊地健雄監督の『嘘つきみーくんと壊れたまーちゃん episode.0 回遊と誘拐』(2011年)ですね。
川瀬:そうそうそう、その時に初めてちゃんと関わったんだよ。監督の菊地健雄も瀬々作品の助監督をやったりしていたから、そういう関係性の中でよく会ってたって事なんだけど。ところで瀬々さんの作品は何本出てるの?
染谷:僕はそんなに出てないですよ。『泪壺』と『アントキノイノチ』(2011年)、『ストレイヤーズ・クロニクル』(2015年)の3本です。
川瀬:あれ、そんな感じだったっけ?もっと出てる気がしてた。
染谷:何ででしょうね?(笑)。
川瀬:いや、分かんないけど、瀬々敬久という監督のある種の特性のような気もするんだけど、対象との距離の取り方がすごく誠実な方で、ともすれば親戚のおじちゃんのような感じでもあるし、身内な感じがあるよね?
染谷:そうそう、何かファミリー感があるんですよね。
川瀬:会って酔っ払っちゃったら、屁もこく位の勢いの人で(笑)。そういう気さくな所があって、相手にバリアを作らない。
瀬々監督作品でのお二人の共演はまだ無いんですよね?
川瀬:うん、ないんだよ。それでね、一応こんなんでも瀬々さんの作品の主役やったりもしていて、一緒にいると分かるんだけど、瀬々さんって本気で若い人たちに対して希望を持っていて、それを信じてる人なんですよ。
染谷:それは本当にそうですね。『ストレイヤーズ・クロニクル』の時もそう言ってましたよ。
川瀬:やっぱそうだよね。
染谷:若い子たちが主役の映画だって言っていて、いつもよく言うじゃないですか、「こんな腐った世の中にしてしまったのはワシらの責任だ」って。
川瀬:そうそう。だから、あの人は上の人への違和感も隠さないし、それを陰で言うんじゃなくて、表明しているというかね。例えば、僕だったら80年代が青春で、「うすうす、やわやわの80年代やの〜」みたいな事は言うんですけど、否定してる訳じゃなくてそこに何があるかを探ってくれるっていうか、今だったら染谷くんであり、岡田(将生)さんにきっと託しているというか、自分たちがやってしまった事を変えてくれってすごく考えているんだよね。って、こんな褒めてていいの?

-素っぽくイカれてくれ-

『ストレイヤーズ・クロニクル』は題材としてもそういう要素が強いんじゃないですか?
染谷:大人たちによって作られた行き場のない状況の中で、若者たちがそれでも戦い反抗し続けるというアクション青春映画なんですよ。
川瀬:瀬々さんってヒーロー好きなんだよね。『スパイダーマン』はニューヨークっていう街のヒーローなんだけど、瀬々さんの信じてるヒーローは超然としているものではなくて、誰もがヒーローであるという様なところが広く言えばある。だから、ヒーローについてはすごく考えている人だと思う。
染谷:確かに。よく言ってますね。
川瀬:うーん、褒めまくりだな(笑)。
染谷:(笑)。
川瀬:撮ってる時はどうだった?
染谷:やっぱり瀬々さんという名前を出して語るとすれば、今回はアクション映画だという、そこですよね。あの瀬々さんがアクションを撮るという。
川瀬:あの瀬々さんというのは、どういうことなの?(笑)。
染谷:いや、そんなに撮られてないじゃないですか?
川瀬:まあ、もともとアクション映画を好きで撮ってきた監督でないのは確かだね。
染谷:面白かったのは、もちろん芝居をつけてくれる時はいつもの瀬々さんな訳ですよ。いつもの瀬々さんを説明すると……まあ……。
川瀬:かっこ笑い?
染谷:(苦笑)。まあ、情念と観念を役者にぶつけて、あとは任せたみたいな。で、芝居の手数は減らしてくれと。僕に言った名言で、「素っぽくイカれてくれ」というのがあって、いや、僕の素はイカれてないしなと思って、どうやって素でイカれたらいいんだろうって(笑)。
川瀬:それは難しいね。
染谷:初日の一番最初に言われたんですよ。
川瀬:瀬々さんが難解なお題を出す時ってあるんだよね。抽象的なもので、ちょっと考えても分からないような事を託される時があって、そんな事考えてるうちに現場が終わったりもするんだけど、素でイカれては、確かに困るね(笑)。
染谷:そう。困りますよね?(笑)。
川瀬:要するに「キエー!」とか、そういう事じゃないよっていう。役者のナルシズムでやる狂った芝居じゃなくて、本当の狂気を出してほしいって事だと思うんだけど。
染谷:例えとして出されたのは『ノーカントリー』(監督:コーエン兄弟/2007年)のハビエル・バルデムでした。
川瀬:まあ、それは確かに分かるよね。あれは役者のナルシズムで出てる狂気ではないように見えるから。そういう事を瀬々さんは現場の時に汗ダラダラで言いに来るからね、クマが来るみたいな感じで。
染谷:そういったことは、アクションシーンになっても変わらなかった(笑)。そこはもう、安心と信頼。

-俺が悪かった-

変わらなかったっていうのは演出が変わらなかったんですか?
染谷:演出が変わらなかった。もちろんアクションの立ち回りをつけるのはアクション・コーディネーターですけど、ただ、そのコーディネーターに対しても、役者たちに対しても、言っている事は変わりませんでした。熱く語った後にアクションを始めたり、コーディーネーターの方もそういう感情を引き出すためのアクションを組んでくれたりはしていましたね。
川瀬:瀬々さんは瀬々組っていう組、要するに一家を作るっていう事に重きを置いていて、みんなに思いの丈を言って、あとは任せたっていう事をしてくれる人だよね。思いを伝えて、そこからは信じる。さっきの「素でイカれてくれ」も近いものがあるんだけど、人物の行動の「動機と結果」が出ていても、そこにある空白が描きたくて映画をやっているって事をよく言っていて。若い人の事だとか、瀬々さんにも分からない事があると思うんだよ、分からないから分かろうとするみたいな行為の中で映画が産物として出来上がるみたいな感じっていうのはあると思うんです。とにかく俳優からの信頼は厚い人。
染谷:瀬々さんを嫌いなんて人、聞いた事ないです。
川瀬:あのね、女優さんでたまにいる(笑)。
染谷:(笑)。
川瀬:それはね、女優さんをいじめてるんじゃないんだよ。なんというかね。
染谷:それに近くはある。
川瀬:そう。本当に男子な人だから、とにかく男に好かれる人だね。現場でこっちがもし困った事があったとしても、こっちが諦めない限り絶対に諦めない人って感じ。
『ストレイヤーズ・クロニクル』に関しても、現場中どこかのタイミングで託されたんですか?
染谷:初日のシーンの中で色々試してみて、こんな感じなのかなっていうのを掴んで、そこから軸を決めて作っていったんです。その後、瀬々さんが完全に自分に託してくれたなって瞬間があって、それは段取り終わった後に僕のところに来て、「完全に自分のものにしたな」って。あ、これは託してくれたなと思って、そこからはあんまり何も言われなかったです。もちろん、重要なシーンで「悪魔が天使になるようにやってくれ」とか言われましたけどね(笑)。
川瀬:いいそう(笑)。
染谷:あとは、「もうちょっと上めを見ながらやってみたらどうだろう」とか、瀬々さんらしからぬ目線の要望もあったりして。
川瀬:へーそんな事を言うようになった、とか言うと殴られそうだ(笑)。
染谷:やった訳ですよ。何回も何回もやって、で一番最後に「俺が悪かった。全部忘れてくれ」って(笑)。
川瀬:それ見える見える!「すまん、すまん、俺が悪かった」。分かるわ〜。
染谷:で、オッケーが出たんです。

-奇跡みたいな瞬間-

川瀬:とにかく相手の面目を守る人だから、それこそ草野球やったっておかしな人で、ピッチャーやるとかって言うのよ。で、失投するとマウンド上から外野に向かって土下座をするの。「すまん、悪かった」って(笑)。勝手に背負ってくれる人だから。
染谷:だから、信頼出来ますよね。
川瀬;そうそう。それでかつ一緒に進んでくれる人だからね。『ストレイヤーズ・クロニクル』は、瀬々さんにとって新機軸の映画だと思ってるので、すごく見たいですよ。撮影中は監督と飲んだりはしなかったの?
染谷:撮影中は一度もないですね。岡田くんやみんなで瀬々さんを囲んでというのはあったらしいですけど。
撮影前に渋谷で飲みましたよね?
染谷:飲みました。
川瀬:そう、なぜか俺もいたな。なのに、俺作品に呼ばれてないんだよ。
染谷:(笑)。
川瀬:岡田さんも後から来てね。あれ、偶然だったよね?
染谷:そう、この企画がまだやるかやらないかくらいの時に、瀬々さんを囲む会で、僕と川瀬さんと岡本さんと菊地健雄さんがいて、なぜか酔っ払ってきて、僕と瀬々さんで岡田くんを呼んでみようって話になったんです。で、岡田くんに電話したら、偶然近くにいて5分くらいで来た(笑)。
川瀬:ほんと、この映画が出来る素地がそこにあったんだよね。
染谷:瀬々さんと岡田くんっていう組み合わせは何となくあって、その日に岡田くんに「将太出ろよ」って言われて、「出たいけど、呼ばれなきゃ出れないでしょ」みたいな事を話してたら結果実現したという。
川瀬:そんな奇跡みたいな瞬間があってだよ、俺に仕事が来てないってどういう事なの?
染谷:(笑)。

-こういうの得意でしょ?-

川瀬:これは冗談で言われたんだけど、「いや、ヤングのあれだったからさ。希望も何もない人は呼べないんだよ」って(笑)。そういう意味じゃ、ここ最近うっすらとでも瀬々組は常に関わってたけど、まったく関わってない作品って何か楽しみなんだよね。本当に何も知らずに見れるから。
染谷:今回、撮照が近藤龍人さん(撮影)と藤井勇さん(照明)で、瀬々さんと初タッグで。
川瀬:もっか売れっ子のね。
染谷:あと、美術はいつも通り磯見俊裕さんだったし、アクション・コーディネーターは下村勇二さん、『GANTZ』なんかを担当されてる方ですね。
川瀬:君もアクション映画連発だよね。
染谷:今回は車椅子の役だからアクションは何もしてないですよ(笑)。
川瀬:あ、そっか(笑)。じゃあ岡田くんが大変だったんだ。
染谷:いや、みんな大変だった。僕らのチームが一斉に逃げる時に銃撃とかされるんですけど、僕は(車椅子を)押してもらって、一人ですごい楽してました。もう一回やりますってなると、みんな息切れしてましたけど。
車椅子役が二作続いてますよね?
染谷:そう、青山組(連続ドラマW 贖罪の奏鳴曲/監督:青山真治)と。『ストレイヤーズ・クロニクル』終わってから、青山組の撮影でした。
川瀬:え、すごい偶然だね!ま、それとは別に瀬々さん自身、染谷くんに託したい役はこういうのだっていうのが見えてる感じがするよね。
染谷:衣装合わせに行くと、「こういうの得意でしょ?」って言われる。
川瀬:慣れてくると、「すまんな」ってなる。
染谷:(笑)。
川瀬:そんなキャスティングある?って思うんだけど(笑)。
染谷:僕はまだまだって事ですね!
川瀬:20年くらい経つとそういう感じで言われるから!
- (終)
   企画・構成 :岡本英之
採録・構成・写真 :川邊崇広
『ストレイヤーズ・クロニクル』

監督:瀬々敬久/原作:本多孝好/脚本:喜安浩平、瀬々敬久

出演

岡田将生、染谷将太、成海璃子、白石隼也、清水尋也、栁俊太郎、鈴木伸之、瀬戸利樹、豊原功補、石橋蓮司、伊原剛志

  • 『染谷将太(そめたに・しょうた)』
    1992年9月3日生まれ、東京都出身。9歳の時に『STACY』(01/友松直之監督)で映画デビュー。『パンドラの匣』(09/冨永昌敬監督)で長編映画初主演。以降、日本映画の新世代を代表する俳優として活躍し、2011年『嘘つきみーくんと壊れたまーちゃん』(瀬田なつき監督)で第66回毎日映画コンクールスポニチグランプリ新人賞、2012年『ヒミズ』(園子温監督)で第68回ヴェネチア国際映画祭マルチェロ・マストロヤンニ賞、『ヒミズ』と『悪の教典』(三池崇史監督)で第36回日本アカデミー賞新人俳優賞、2013年にエランドール賞新人賞を受賞。近年の主な出演作に『リアル〜完全なる首長竜の日〜』(13/黒沢清監督)、『永遠の0』(13/山崎貴監督)、『不気味なものの肌に触れる』(13/濱口竜介監督)、『WOOD JOB! 神去なあなあ日常』(14/矢口史靖監督)、『ぶどうのなみだ』(14/三島有紀子監督)、『さよなら歌舞伎町』(15/廣木隆一監督)、『寄生獣』(14/山崎貴監督)。公開中作品に『寄生獣 完結編』(15/山崎貴監督)、『ソレダケ / that's it』(15/石井岳龍監督)、などがある。
  • 『川瀬陽太(かわせ・ようた)』
    1969年生まれ、神奈川県川崎市出身。当初、自主制作映画の助監督の仕事を中心に活動していたが、たまたま参加していた福居ショウジン監督の自主映画『RUBBER'S LOVER』に主役として出演する事に。この後、福間健二監督の『急にたどりついてしまう』(1995年)に出演。この映画の制作に参加していたスタッフの多くがたまたまピンク映画出身であったため、そうした経緯で瀬々敬久監督をはじめとしたピンク映画の関係者と交流を深め多くの作品に参加、近年では『サウダーヂ』(11/富田克也監督)、『クローバー』(14/古澤健監督)、『超能力研究部の3人』(14/山下敦弘監督)、『みずち』(15/堀江実監督)、『ジョーカー・ゲーム』(15/入江悠監督)、『さよなら歌舞伎町』(15/廣木隆一監督)、『乃梨子の場合』(15/坂本礼監督)など一般映画やテレビ分野、舞台へも進出し、その個性的な演技で注目を集めている。公開待機作に『新しき民』(14/山崎樹一郎監督)、『息衝く』(木村文洋監督)、『蜃気楼の舟』(竹馬靖具監督)、『月夜釜合戦』(佐藤零郎監督)、冨永昌敬監督の新作『ローリング』など。瀬々敬久監督とのコンビが有名。