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映画『ドライブイン蒲生』トークショー!たむらまさき×大石三知子×山根貞男【後編】

7月17日、たむらまさき監督作品『ドライブイン蒲生』のスチール写真展が行われた西荻tokiにて、監督のたむらまさき、脚本の大石三知子、そして「たむらまさきの大ファン」と公言する映画評論家の山根貞男の三氏により開催されたトークショーを採録。たむら監督独自の創作論や、監督とキャメラマン、俳優の関係について―

【前編】を未読の方はこちらから。
http://culture.loadshow.jp/interview/tamura-oishi-yamane/

「キャメラマンは役者と一緒ですから構えていてカチンコがなった瞬間自分なりのショットが始まる(たむら)」

山根:『ドライブイン蒲生』の撮影現場には、監督としてすぐに慣れました?
たむら:最初の撮影の2ショット目まではやっぱり少し緊張していました。で、それはハエもどきがぶんぶん飛んで窓ガラスにぶつかっているというショットで、次がそれを見ている主人公の切り返しなんですけど、その2ショットを撮ったらもう気持ちが楽になっていました。考えてみれば、ハエもどきに「ヨーイ、スタート!」って、これが初監督としてのクランクインか(笑)。
山根:「スタート!」のかけ声はどなたがされていたんですか?
たむら:あ、それは越川(越川道夫/『ドライブイン蒲生』プロデューサー)です。
山根:なぜ、たむら監督がされなかったんですか?
たむら:あの、キャメラマンは役者と一緒ですから構えていてカチンコがなった瞬間自分なりのショットが始まるんですね。だから、自分が「ヨーイ、スタート!」をかけたらなんだかずっこけてしまうんです。わかりますかね?
山根:うーん、ずっこけるねえ(笑)。
たむら:自分でかけ声かけてると、構えの間を持てないままいきなりカチンコで…。その時はもう役者たちは演じていますからね。乗り遅れます。
山根:終わりの「カット!」は?
たむら:カットはなんとなく自分でかけました。シュートしてしまえば監督にもなってるわけですからね。でも今いったようにシュートというか、本番直前はどうしてもキャメラマンなんですね、わたしは。撮る前の呼吸とでもいうか…。

「カット割りはいつも自分でやってきた(たむら)」

山根:そもそも監督の役割で「コンテ」があると思うんですけど、今回コンテは書きましたか。
たむら:「コンテ」というか、カット割りはいつも自分でやってきてますので。何しろ、映画ですから、脚本を映画に訳さないとなにも撮れないんですよ。
山根:カット割りを“いつも”やってた? それで監督ともめることは今までになかったんですか?
たむら:何度もありましたね。でもそれがわたしの「歴史」ですよ。
一同:(笑)
山根:監督はやりにくいでしょうねえ(笑)。
たむら:多分ね。訳し方が違うでしょうから。
山根:僕みたいな、出来上がった映画を見る人間から言わせてもらえば、その監督とキャメラマンの個性のぶつかりあいはとても良い結果に繋がっていくような気がするんですけどね。
たむら:えっ、わたしもそう思うんです。けど、なんか蟠(わだかま)られてしまって…。良い意味で一番ぶつかったのは青山真治ですね。
山根:ぶつかってるという割には青山監督と何本も撮られていますよね。
たむら:それはね、青山とはなんというか今山根さんが仰ったように、別の展開になるもんですから。
山根:葛藤が生まれた時、たむらさんから妥協することはあるんですか?
たむら:妥協じゃなくて…うーん…。納得ないしは説得、でなけりゃ喧嘩。

「今回は反発する監督がいないわけですよ。それがスカッとおもしろかった。(たむら)」

山根:たむらさんがキャメラマンの立場から監督の意図を取り入れてあげるということはなかったんですか?
たむら:青山とは話し合ってそういうことになってくるんですけどね。他の監督はぶつかってもこないもんで虚しいわけです。
山根:今回も撮影をいつもと同じスタンスでやっていたんだと思うんですけど、しかし監督もしなくてはいけない。そういう意味では「現場」を対象化しなくてはいけないわけですよね? ですから今まで通りの撮り方とは違ったと思うんですよ。それはたむらさんとしては面白かったんですか?
たむら:というか、おかしかったんです。今まではいつも監督に反発するみたいな態度で映画を撮ってきてましたから。ほんとにそうなんですよ…。でも今回は反発する監督がいないわけですよ(笑)。それがスカッとおもしろかった。対象化にもなんの懸念もなくて…。そんな言い方しかできませんが…。
山根:気がついたら反発する人はいなかったんですね。
たむら:そうなんです。つまり、葛藤もなかった…。でもなんだか寂しい話になってしまいましたね。
山根:なんで寂しいんです?
たむら:“反発”とかって、なんだかねぇ……。
山根:たしかに「反発」ということばは誤解を生みますけど、ものを作る以上、そういう葛藤はあって然るべきなんじゃないんですか? 映画作りで反発や葛藤がなければ、その映画はおもしろくならないですよ、おそらく。
たむら:そうですけどね。いつも一方的に終わってしまって、反々発がなかったなあとか…。こうやって話してみるとねえ…。
山根:それはシナリオ書く人にもありますよね。大石さんが自分なりに考えたものが画面になって見た時、がっかりすることや、驚くことなど、“面白さ”は色々あると思うんですが。

「みんながたむら監督の周りにいましたので、千手観音のような、たむらさんにたくさんの手があるようにみえました。(大石)」

大石:はい、あります(笑)。映画の場合は文字を書いてひとりで完成というわけではないんで、そこが小説とは違うところだと思うんですけど。
山根:大石さん、今回現場には?
大石:蒲生家の撮影に半日伺いました。
山根:たむらさんがここにいますけど、いないつもりで答えてくださいね(笑)。たむらさんは現場でどう見えましたか? 監督でしたか?
大石:監督でしたね。実際に「たむら監督」って呼びましたし(笑)。人数のすくない現場ではあったんですけど、みんながたむら監督の周りにいましたので、千手観音のような、たむらさんにたくさんの手があるようにみえました。
山根:ああ、やっぱり!
大石:それはいままで自分が書いた脚本の現場に行った時にはなかった印象でした。みんなが手となり、足となり、それぞれの役割をやっているなという感じがしていました。
山根:いままでの他の映画では、たむらさんはキャメラマンとしてスタッフのひとりですよね? でも今回は違います。そこの差はありました?
大石:たしかに、何でも思うようにできたと言ってしまえばそうなのかもしれないんですけど、「大きなところに飛んでいく」みたいな感じがあったんじゃないかなと思います。“反発”というのではなく、脚本も一緒に飛んでいく、みたいな。それだからできあがりは楽しみでした。
山根:今回、この場に来てくださっているみなさんは、まだ映画を見ていないと思うんですけど、大石さんは完成した映画を見てどう感じました?
大石:おもしろかったですし、「こうなるのでは」という予測がついていたところと「こうなったのか」という驚きのところがありました。脚本を担当した『東南角部屋二階の女』と『ゲゲゲの女房』もたむら監督の撮影ですが、デビュー作の『東南角部屋二階の女』は「これがたむらさんの映画なのか」と知るきっかけになったんです。それから『ゲゲゲの女房』そして、『ドライブイン蒲生』と続いて“たむらさんの映画の脚本”というのがあるということに気がついたんです。
山根:えっ、ちょっとわからない。大石さんが出来上がったものを見て、たむらまさきさんの脚本を書いたんだと感じたといことですか?
大石:私の中にたむらさんの撮る映画がすでにイメージとしてあって、そのイメージを念頭に脚本を書いていたということです。だから脚本のありかたが少し違うんですよ。
山根:ほう! それはとても面白いところですね。
大石:脚本自体が“焼き鳥の串刺し”みたいな感じで、既に全部出来上がった脚本を書いているイメージではなくて、肉付けしながら脚本を書いているので、空間があって、“橋”がある。そこに登場人物を乗っけていく。まあこの図式に串が刺さっていれば良いなという感じです。

「脚本を映像化するのがキャメラマン、その映像を“そうであれ”と願うのが監督。今回はその両方が働いています(たむら)」

山根:大石さんが脚本を書く時はすでに、染谷将太さんや黒川芽以さん、永瀬正敏さんといったキャスティングは決まっていたんですか?
大石:全部決まっていました。
山根:となると脚本を書いた時は、例えば染谷将太さんの顔を思い浮かべながら書いたんですか?
大石:ええっと、それは思い浮かべながら書きます。
山根:当て書きという感じになっているんですね。
大石:はい。今回はドライブインが2カ所あって、その間に橋があるんですけど、それを隔てて手前側と向こう側のドライブインがあってそれを役者が車で行ったり来たりするんですよ。そこから順序だてて書いていくんで、空間の中に役者が居て、台詞があれば、あとはたむら監督がやってくれるだろうっていう、そういう脚本の作り方です。
山根:いまの話は面白いから、それを念頭に映画を見るといいですね。今回作品の中身については言わないつもりだったんだけど、『ドライブイン蒲生』は空間のあり方がすごく印象深いんです。そこで、またたむらさんにお話を伺いたいのですけど、たむらさんはそのような大石さんの想いが書き込まれた脚本を絵にしていったわけですね。
たむら:脚本を映像化するのがキャメラマン、その映像を「そうであれ」と願うのが監督。今回は両方が働いています。だからいつもそういう脚本が生まれろ、生まれろと“想う”わけです。
山根:脚本の直しとロケハンの過程で、大石さんにも、たむらさんにも、役者さんにも、それぞれのイメージがありますよね。それが積み重なって映画になっていく。そのあり方が他の映画より珍しいというか、大変そこにエネルギーが入っていたということですか?
たむら:はい、仰られるとおりです。各々のイメージの掛け合いの成果だと思っています。こういう脚本たれと願ってたんですよ。これは演出といえば演出でしょうか。

「今回みたいに監督と両方と言われたら大変ですけど、もう1回やりたいという気持ちはあります(たむら)」

山根:『ゲゲゲの女房』の時にもそういう感じはありました?
大石:そうですね。
たむら:『ゲゲゲの女房』の時は、あれは「鈴木卓爾の想い」と「わたしの想い」の葛藤なんですよね。で、台本はどちらでもないです。
山根:『ゲゲゲの女房』では脚本までも巻き込んで葛藤することはなかったとすると、大石さんの立場としてはどうでした?
大石:そうですね。『ゲゲゲの女房』の場合はまだ、削ぎ落としきれていない部分も脚本としてあって、ただお膳立てというか、たむら監督がひとつひとつ、脚本に基づく形でたむらさんの絵をつくっていったという感じはありました。『東南角部屋二階の女』の時も空間というのを共有できたなあとは感じました。
山根:大石さんは1作ごとに仕事がどんどん面白くなってきてます?
大石:シンプルになってきてるなという感じはあります。「ドライブインが2つあって蒲生家があって、橋がある」そういう考え方になると、本当に行って帰ってくるだけの話になるので、そこに色々なものは乗せるにしても、シンプルなものにできたと思っています。
山根:内容に関しては見てもらうしかないないのですが、いまその話を聞いていてもう1回見ないとダメだと僕自身思いました。最後に、ひとつ聞こうと思うのですが、たむらさんは今後も監督をやりたいですか? 監督とキャメラマンのどっちもやりたいですか?
たむら:撮影はまだやりたいですけど、監督になる気は全くないです。でも、今回みたいに監督と両方と言われたら楽しいだろうから、もう1回はやってみたいですね。で、その時は「演出」と呼ばれたいですね。
山根:是非、両方やってもらいましょう。

10月18日(土)より第七芸術劇場、10月25日(日)より京都みなみ会館、ほか全国順次公開!!

■『ドライブイン蒲生』全国劇場情報

札幌
シアターキノにて11月29日より
宮城
桜井薬局セントラルホールにて11月15日より
新潟
シネ・ウインド にて1月10日より
静岡
シネマe_raにて11月8日より
愛知
キノシタホールにて11月1日より
富山
フォルツァ総曲輪にて11月15日より
大阪
第七藝術劇場にて10月18日より10月31日まで
京都
京都みなみ会館にて10月25日より
兵庫
元町映画館にて11月1日より
広島
シネツイン本通りにて10月25日より
宮崎
宮崎キネマ館にて11月15日より
※詳しくはこちら
http://drive-in-gamo.com/theater.html
取材・写真・構成:岡本英之
採録・構成:島村和秀
『ドライブイン蒲生』

出演:染谷将太、黒川芽以、永瀬正敏、小林ユウキチ、猫田直、平澤宏々路

吉岡睦雄、黒田大輔、鈴木晋介、足立智充、田村愛

監督・撮影:たむらまさき/原作:伊藤たかみ

プロデューサー:石井稔久(キングレコード株式会社)/製作:キングレコード(株)

企画・プロデュース:越川道夫/企画協力:(株)河出書房新社

音楽プロデューサー:平田和彦/脚本:大石三知子

撮影補:戸田義久/照明:山本浩資/美術:平井敦郎/音響:菊池信之/編集:菊井貴繁/音楽:ヤマジカズヒデ

制作:スローラーナー/配給:コピアポア・フィルム/製作年:2014年/89分/ビスタ/カラー

© 2014 伊藤たかみ/キングレコード株式会社

《Story》

街道沿いのさびれたドライブインに生まれ育った姉サキ(黒川芽以)と弟トシ(染谷将太)。ろくでなしの父(永瀬正敏)のせいで、物心ついた時から「バカの家の子ども」と蔑まれたふたりの人生にはろくなことがない。周囲への反発からヤンキーになったサキは、あげくの果てに妊娠して家を飛び出してしまう。それから数年後、夫にDVを受けたサキが出戻ってきた。ヨリを 戻すのか別れるのか?

決断すべく、幼い娘・亜希子とトシを引き連れ夫の元へと向かうサキ。道中、サキとトシに去来するのは意外にも、あの父のことだった…。ふたりは父から受け継いでいたなにかを胸に抱き、いま決戦の場におもむく。

■公式サイト

http://drive-in-gamo.com/
  • 『たむらまさき』
    1939年生まれ、青森県出身。1970年、小川紳介監督『日本解放戦線 三里塚』でキャメラマンデビュー。1973年、東陽一監督『日本妖怪伝 サトリ』で初めて劇映画の撮影を担当。以降、小川紳介監督の『1000年刻みの日時計 牧野村物語』が完成する1987年頃まで、小川プロのドキュメンタリー作品と劇映画を並行して手がける。1982年、柳町光男監督『さらば愛しき大地』で毎日映画コンクール撮影賞を受賞。1990年代半ばより、青山真治監督をはじめとする新進監督と組み、日本のインディペンデント映画の支柱的存在となる。1997年、河瀬直美監督『萌の朱雀』と諏訪敦彦監督『2/デュオ』で毎日映画コンクール撮影賞受賞。2002年、名前を『田村正毅』から『たむらまさき』に変更。2008年、文化庁芸術選奨映画部門文部科学大臣賞受賞。2014年公開、染谷将太主演『ドライブイン蒲生』で75才にして映画監督デビュー。
  • 『大石三知子(おおいし・みちこ)』
    1965年生まれ、東京都出身。東京藝術大学美術学部卒業後、会社勤務を経て、2005年に東京藝術大学大学院映像研究科映画専攻脚本領域入学、田中陽造氏に師事。2007年、同校卒業。2008年、映画『東南角部屋二階の女』(池田千尋監督)で脚本家デビュー。主な作品に、『ゲゲゲの女房』(10)、『楽隊のうさぎ』(13/以上、鈴木卓爾監督)がある。アッバス・キアロスタミ監督『ライク・サムワン・イン・ラブ』(12)では日本語台詞監修をつとめた。『ドライブイン蒲生』(14)には脚本として参加。
  • 『山根貞男(やまね・さだお)』
    1939年生まれ、大阪府出身。映画評論家。映画批評誌『シネマ』の編集・発行に携わり、映画関係者へのインタビュー、聞き書き、対談の仕事も多数。主な著書に『映画の貌』(みすず書房)、『日本映画時評集成2000-2010』(国書刊行会)など。同じく映画評論家の蓮實重彦や山田宏一との共著もある。