LOAD SHOW

A Rooted Soul. Vagabond Eyes.

映画の未来をいち早く
Be the first to witness the future of films

『東京戯曲』平波亘監督インタビュー

『スケルツォ』(2008)でぴあフィルムフェスティバル入選、国内外の映画祭で上映・受賞を果たした『青すぎたギルティー』(2010)、音楽と映画の祭典・MOOSIC LAB で全国上映された『労働者階級の悪役』(2012)など、多彩な作品を発表してきた平波亘監督の最新作品。自身の離婚経験をもとに、大都会東京で暮らす、総勢15名の恋愛模様を、現実と虚構を織り交ぜて描いた長編作品。今回、平波監督初となる単独上映が実現した。

悲劇のエンターテインメント

『東京戯曲』は離婚しそうな夫婦の話がメインです。これは平波監督の実体験が元になっているとお聞きしていますが、今このような映画を作ろうと思ったのはなぜだったのでしょう?
平波:『東京戯曲』は僕の離婚経験が元ネタの映画です。 10年位前、当時ENBUゼミナール(映画・演劇の学校)を出たばかりで、さあこれから頑張るぞというときに、妻に離婚を切り出されました。ものを作る人間は全てをネタにできなきゃならないと思って、当時から構想していたんですけど、全然面白くならなくて、ようやく今になって客観性を持って書くことができました。それに、『東京戯曲』はワークショップ企画で作った映画なので、自分でも出資していますが、俳優さんたちの受講料が主な制作費になっています。俳優さんのお金で成り立っている映画なので、自分もそれ相応の題材で挑まなければと思いました。当時は真面目だったんです(笑)。
離婚て実際は大変というか深刻な出来事だと思うんですけど、群像劇という形で、あのようなエンターテインメント要素が強い作品にしたのはなぜだったのでしょう?
平波:最初は夫婦の話にしぼって感情の深いところまで描こうとしていました。それをやれば映画としての強さを得られたと思うんですけど、そこにあまり魅力を感じなかったんです。自分の体験がネタなので、そこで自己陶酔的になってもいやだし(笑)。一人でも多くの人に観てもらいたくて、こういう形に辿り着きました。あとは、ワークショップに俳優さんが40人以上来てくれて、一緒にやってみたい人はたくさんいたんですけど、その中でなくなく14人にしぼりました。それで群像劇という形になったんですけど、今思えばちょっと多く選びすぎましたね。

メインキャスト総勢15人の演出

でも15人全員印象に残っているんですよね。例えば、ちょっとナヨっとしたバイセクシャルの大輔というキャラクターは、メガネをはずしたときに急に男っぽい顔になりますよね。出演時間は短くても、そういうちょっとした部分で描かれていない彼の一面が見えてきました。
平波:それは本当に狙ったので嬉しいです(笑)。最初シナリオに「メガネを取る」じゃなくて、「パンツ1枚になる。素晴らしく鍛え抜かれた肉体」と、ト書きを書いていたんです(笑)。でもまったく鍛えてこなかったので、メガネになりました。本来ならもう少しキャラクターを見せたいんですけど、予算も限られてる中であれだけの時間のものを撮ったので、そういう部分で補っていきました。逆にシンプルな情報とか設定しか描かなかったので、わかりやすいのではないかと思います。
セリフは多いですよね。会話のテンポが良くて、その印象も強く残っています。
平波:いつもよりセリフもシーンの分量も多くて、そこから編集で抜いていきました。この予算で長編を撮るとなると、会話劇はひとつの手段になると思います。会話劇って芝居がハマればそれなりの分量を撮れたりするので。会話のテンポ感だけは、ワークショップをやっているときからずっと言っていました。「自分の気持ちいいリズムだけで芝居してはいけない」とよく言っていました。多分誰かの言葉なんですけどね(笑)。
複雑な構成ですが、脚本を書くのは大変ではなかったですか?
平波:方向性が決まってからはやりやすかったです。最終的に上手くまとまっているか自分ではよくわからないんですけど、そもそも、まとまっていることが観る上で、作る上で、健全とも思えないんですよね。僕はよく考えてしまうんですけど、なぜ彼らは選ばれてスクリーンに映っているんだろうと。たまたま映ってしまったに過ぎないんですよね。映ってしまったものに観客が出会ってしまったってロマンチックじゃないですか。

映画というロマン

平波さんがモデルだからでしょうか、主人公の梢も同じようにロマンチストですよね。特に妻・歩美を迎えに行って街を走るシーンは熱かったです。
平波:梢はもう少しデフォルメした存在にしようと思っていたんですけど、演じてくれた関口くんが重なる部分があったのか結果的に素直な芝居になりました。偏屈だけど愛を語るような。最後それでも奪いに行くっていうのは映画のロマンです。最初は普通の道を走らせるつもりだったんですけど、あまりにも東京感がないということになって(笑)、ゲリラで新宿で撮影しました。
対して妻の「私たち夫婦じゃなかったんだよ。仲良くなりすぎちゃっただけだよ?」というセリフ。言い方は優しいですが、なかなかきつい言葉ですよね。
平波:決定的なセリフになったと思います。どうやって書いたのか当時の自分に聞きたいくらいですよね(笑)。これは夫婦の話ではあるんですけど、例えば僕は映画をやっているけど、本当に才能があったのは映画監督じゃなかったかもしれないとか考えるじゃないですか。夫婦になったけど本当にこの人だったのだろうかっていう疑問はどうしてもいつか生まれるものだろうと思います。梢くんを1回落としたかったので、1番傷つく言葉って何だろうと考えました。女性って関係が終わりだと思ったら、よっぽど男性よりシビアじゃないですか。機嫌次第でちょっと優しくしたりとかもするし。そういう感じを出したかったんです。
キスシーンが多いですよね?どれも素敵だなと思いました。
平波:そうですね、基本的に映画はキスだと思っているので(笑)。単純に思うんですけど、欧米の映画ってみんなキスしてるじゃないですか。何で日本映画はしないんだろうと常々思っていて、僕はそれを毎回実践してるんですけどね。
戯曲の登場人物である清盛と恵理が途中から自由に動き出して、現実世界に登場してきますよね。あの2人は梢の味方なんですか?
平波:主人公の梢くんをどこまで追い込められるかっていうのは脚本を書くうえでテーマだったんですけど、僕が優しいのか味方をつけたくなってしまうんですよね(笑)。撮影の1ヶ月くらい前までは清盛も恵理も現実のキャラクターだったんです。でももうちょっと映画的な飛躍がほしいなと思って、敬愛しているウディ・アレン先生はよくこういうことをやっているので、ついにやるときがきたと(笑)。
音楽をクラシックにしたのはなぜだったのでしょう?
平波:昔チェロを習っていたこともあって、クラシックはなじみ深くて、自分の映画で3~4回目使ったことがあります。地元長野のオーケストラの音源を使用してもいいということもあって。ウディ・アレン先生はよくクラシック使うじゃないですか(笑)。

経験したからこそ作れた映画

冒頭の演劇のシーンの中で、薫と静がセリフを掛け合います。そのシーンで平波さんは女性の気持ちをわかってる人だなと勝手に思ったのですが、いつもどうやって女性を描いているんですか?
平波:女性の気持ちわかりますよ、僕は(笑)。それはある処世術としてわかならいと生きていけないと思って。家がもともと姉、妹、そこに母親が加わった女性が強い家族だったので思春期は大変でした(笑)。それに東京戯曲に出てくるような恋愛の失敗も積み重ねてきたので、単なる経験ですよ。
『東京戯曲』ってぴったりのタイトルですが、どのようにして付けられたのですか?
平波:ワークショップの段階では全然違うタイトルでした。言うのも恥ずかしいんですけど、『ザ・コミュニケーション』てタイトルでした(笑)。『東京戯曲』を思いついたときは、でかいタイトルなので、多くの人に心配されましたけどね。結果的にタイトルが決まったら脚本もかなり進みました。
最後にメッセージをお願いします。
平波:みなさんが楽しめるようなエンターテインメント作品になっています。最終的には笑えるってことに対して、ちょっと立ち止まって、笑えるけど笑いないよなと思っていただけたら嬉しいです。登場人物が抱える弱さとか痛みは、誰もが持っているものだと僕は思っています。是非、スクリーンで観てください!
本日はありがとうございました。
聞き手・構成・写真:石川ひろみ
平波亘監督作品『東京戯曲』
http://www.tokyo-gikyoku.com/
■上映日程
2014年3月22日(土)〜4月11日(金)/連日21:00〜
■会場
新宿K's cinema(東京都新宿区新宿3丁目35-13 3F)
■料金
一般:1,800円/大・高:1,500円/中・小・シニア:1,000円
リピーター割引:¥1,000
■トークゲスト
3/23:吉田浩太監督、大畑創監督
3/24:白石晃士監督×天野千尋監督
3/25:山本政志監督、山本政志監督、太宰美緒&大沢まりを(出演者)
3/26:今泉力哉監督、片岡翔監督
3/27:市井昌秀監督、伊集守忠(撮影)
3/28:三浦直之(ロロ主宰・劇作家/演出家)
3/29:冨永昌敬監督、池田千尋監督
3/30:三宅唱監督、秦俊子監督
3/31:根本宗子(月刊「根本宗子」主宰・劇作家/演出家)
4/1:青柳文子(モデル/女優)
『東京戯曲』
【Story】私の名前は深澤梢。戯曲作家を生業としている。ある日知人の舞台を観た帰りに妻の歩美から突然別れを告げられてしまった。どうやら他に男が出来たらしい。この作品は、私たち夫婦の危機と再生を主軸に、演劇人達の愚かな恋愛模様を描いた壮大な群像戯曲になる…はずだ……。 果たしてこれは、映画なのか、演劇なのか、現実なのか、虚構なのか、恋なのか、愛なのか…?今もこの瞬間、恋が生まれ、愛が迷っている街、東京。そこで生きる演劇人達の恋愛模様を、現実と虚構を織り交ぜて、多重的に描いた『東京戯曲』。体裁を第一に考えてしまう者の弱さや情けなさ。猪突猛進に恋に走る者の強さや脆さ。自分の限界や現実の壁にぶち当たった者の焦りや往生際の悪さ。そんな彼等のことを他人事のように笑えながらも、いつしか他人事とは思えなくなってゆく。
監督・脚本・編集:平波亘/撮影・照明:伊集守忠/録音:根本飛鳥/助監督:細川充由・鶴岡由貴/ヘアメイク:Masayo/スチール:天津優貴/撮影助手:大川和徳/制作進行:松本昌之/応援:内田沙季・齋藤慎哉/プロデューサー:手島昭一/劇伴演奏:アンサンブル・セバスチャン/製作:800 LIES PRODUCTION/出演:関口崇則、太宰美緒、大沢まりを、ミネオショウ、猪爪尚紀、古内啓子、富士たくや、福田らん、平野 鈴、藤田健彦、今野麻美、島田桃依、圓谷健太、吉塚拓哉、竹田誠志/2014/カラー/ビスタ/83 分
http://www.tokyo-gikyoku.com/
  • 『平波 亘(ひらなみ・わたる)』
    1978年生まれ、長野県出身。2004年 ENBUゼミナールを卒業して自主制作活動を開始。2008年『スケルツォ』が、ぴあフィルムフェスティバル・PFF アワードに入選。2011 年『青すぎたギルティー』が田辺弁慶映画祭・映検審査員賞を受賞 など、国内外の映画祭で上映。2012 年『労働者階級の悪役』、2013 年『トムソーヤーとハックルベリーフィンは死んだ』 が、音楽と映画のイベント・MOOSIC LAB で全国上映される。また、自身でインディーズ映画のイベント「映画太郎」を主催したり、 ミュージックビデオの制作も手がけたり、第一線で活躍する監督の現場を演出部でサポートするなど、その活動は多岐に渡る。現在、最新作となる長編映画の準備中。
    公式ホームページ http://800lies.jimdo.com