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「連続ドラマW 夢を与える」放送記念対談

菊地凛子(女優)×鵜飼哲夫(読売新聞文化部編集委員)

5/16(土)夜10:00スタート(WOWOW・第1話無料放送)

菊地凛子が主演する、WOWOW 土曜オリジナルドラマ「連続ドラマW 夢を与える」(監督:犬童一心/出演:小松菜奈 他)が、5/16(土)夜10:00より放送開始となる。今回LOAD SHOWでは、芥川賞作家・綿矢りさの同名原作小説「夢を与える」(河出文庫)の初連続ドラマ化となる本作の放送開始を記念し、菊地さん、綿矢さん双方との交流がある読売新聞文化部編集委員の鵜飼哲夫さんをゲストにお招きしてのサプライズ対談を企画!久しぶりの対面となったお二人の、なごやかに進みつつも充実したトークをお楽しみください!

サプライズゲスト、鵜飼哲夫さん登場

本日はサプライズでゲストをお呼びしています。鵜飼哲夫さんです!
菊地凛子(以下、菊地):わあ!びっくり!!
鵜飼哲夫(以下、鵜飼):ご無沙汰しています(笑)。
菊地:ご無沙汰してます(笑)。何か怪しい雰囲気は感じていたんですけどね、まさか鵜飼さんがいらっしゃるとは……!
鵜飼:こうして大勢の方がおられる前で話すのは苦手で、緊張しています(笑)。
菊地:そうなんですね(笑)。
鵜飼:それでは改めまして本日はよろしくお願いします。
菊地:よろしくお願いします。
鵜飼:凛子さんと初めてお会いしたのは、7、8ヶ月前に馴染みのお店で共通の友人から紹介を受けた時でしたね。そこで随分本のお話をしたのを覚えています。
菊地:そうでしたね。
鵜飼:最近ではどんな本を読まれましたか?
菊地:最近だと、中沢新一さんの『アースダイバー』(講談社)を読みましたが、私たちは多神教だから様々な場所に神が宿る、という切り口から、地図の作られ方について語られていて、とっても面白かったです。他は、最近までずっと撮影に入っていたので、あまり読めていないんです。
鵜飼:映画のお仕事は、最近だとどんなことをされていたのですか?
菊地:『クミコ、ザ・トレジャーハンター』(監督:ネイサン・ゼルナー/15年)という映画に主演をしまして、プレミア上映のためにニューヨークを訪れたりもしていました。
鵜飼:世界中でお仕事をされているなかで、今回『夢を与える』を引き受けようと思った理由はどこにあったんですか?
菊地:オファーをいただいた役が母親の役だったのですが、これまで自分より10歳以上も上の役を演じたことがなかったので、そこに惹かれてチャレンジすることを決めたんです。

更なるサプライズ

鵜飼:実はですね、今日のインタビューのために、原作者の綿矢りささんにお話を伺ってきたんですよ。
菊地:ええ!?
鵜飼:綿矢さんは一度、撮影現場に見学に来られたそうですね。
菊地:はい、いらっしゃいました。
鵜飼:スタジオのシーンを見学されたそうで、「芸能の世界に詳しい人たちが、映画のなかで虚構のスタジオを撮影しているのが面白かったです」と仰っていました。また、「脚本を読んでみて、自分の作品を残しつつ新しい作品世界が出来ていたのが新鮮で、嬉しかったです。短いカットもいくつか拝見させていただきましたが、画面に緊張感と美しさがあり、人間がすごく綺麗だったので、ドラマ化されるのが一個人としても楽しみですし、視聴者の方にもそれを楽しんでもらえたら嬉しいです」とのことでした。
菊地:とても嬉しいです!現場でお会いした時の綿矢さんは、すごく可愛いらしい小柄な女性という印象でした。ですから、『夢を与える』の内容とのギャップに驚きもしましたね。
鵜飼:そうですね。お話としては、子役として芸能の世界に入る女の子(夕子)と、我が子をどんどん有名にさせようとする母親(幹子)が主人公で、あるダンサーと夕子が出会うことで起きたスキャンダルによって母娘関係が変化していく、というお話ですが、実際に演じられてみていかがでしたか?
菊地:この母親はエゴイスティックな性質が強いですよね。娘をコントロールしたいという願望も強いですし、私としては共感しづらいわけです。ただ、一つ一つの台詞が、人生で一度でも言えるか言えないかっていうくらいに面白いもので、例えばそれは「あなたを離さない」みたいな台詞であったりするんですけど、これはもう楽しむしかないなと思って、現場で一生懸命に演じていました。
鵜飼:「夢を与える」というタイトルの作品ですけど、「(母親の)夢を託す」という見方もできますものね。
菊地:そうですね。

俳優に許された特権

鵜飼:僕は演じるということがよくわからなくて、まあ俳優ではないので当然ですが、そんな僕でも日常生活のなかでなにかを“演じる”ということはあります。今だって人前にいてちょっとカッコつけたりもしていますしね(笑)。だけど、そういうことは俳優が演じるということとは違うのかもしれないとも思うんです。凛子さんは演じるってどういうことだと考えていますか?
菊地:演じるって結局、アテンションじゃないかなって思います。人って普通、例えば、家に帰れば妻であり、この人の前では友人であるというように、複数の役割を演じ続けているわけですよね。年齢を遡れば、お母さんのアテンションが欲しいとだだをこねる赤ちゃんもそうだと思いますし、自分に注意を払って欲しいから惹きつけようとするわけです。でも実人生でアテンションを要求しすぎると、社会からはみだしてしまうこともありますよね。その点、私たちの場合は脚本があるわけなので、堂々と演じられるところがあります。場合によっては、決められた空間のなかで、あなたはそれをどんなふうに演じてもいいよ、という自由を与えられたりもするわけで、それだから、日常生活だったらそんなのカッコつかないじゃん、ということでも成立できたりするわけです。
鵜飼:それ面白いですね。制約があるから自由になれるっていうことですよね。
菊地:そうですね。
鵜飼:なんだか中村勘三郎さんの言葉を思い出しますね。勘三郎さんが、「歌舞伎の型は制約だと思われているけど、型があるから型破りができる。もし型がなければ型無しになっちゃうでしょう?」と仰っていて、すごく良い言葉だなって思うんですけど、それと相通じるものがありますね。
菊地:ええ、そして更に、俳優には司令官としての監督がいるわけです。やり過ぎれば指示して修正をしてくれるわけですから、益々良いですよね。
鵜飼:益々自由になれるということですよね。
菊地:ええ、そうですね。
鵜飼:今回出演してみて、監督とのやりとりで印象的だったことはありましたか?
菊地:親子で口喧嘩じゃないですけど、激しい応酬をするシーンがあって、そこでの監督とのやりとりが楽しかったですね。「もっと見下すくらいの感じで」と、監督から演出を受けて、母性が無くなっても良いですかと尋ねたら、「全く構いません」って(笑)。
鵜飼:娘からすると、いつも見てくれていて嬉しいけれど、成長するにつれてウザいお母さんとなっていっちゃうわけですよね。
菊地:やっぱり母親が求めていることは伝わっちゃうんでしょうね。このドラマで言えば、それって自分を充実させたいだけでしょう、ということが。

対立する、母親と娘

鵜飼:最近の小説では、母親と娘の軋轢を描く話が多いように思います。昔はあまりなかったんですけどね。男性作家は生涯、母親の母性を描くことが多いんですが、女性作家はむしろ母親と娘の軋轢を描くことが多い。
菊地:父親と娘だったらまた違うんでしょうけど、女同士って必ずなにかしらの対立があるような気はしますね。
鵜飼:それは何故でしょうね? やはり、私が注目されたいというアテンションを求める思いが強いからということでしょうか。
菊地:どうでしょうね。聞いた話で、介護って、父親が娘から受けるのは問題なくて、でも、母親が娘から介護を受けるのは嫌なんですって。それって妙に納得してしまうところもあるんですけど、何故なんでしょうか?(笑)。
鵜飼:何故でしょう?(笑)。僕もよくわからないんですが、「嫉妬」って女偏ですよね。実際、男だってたくさん嫉妬するんだから、女偏の必要はないと思うんですが、やっぱり意味はあるのかなって。
菊地:女はエゴイスティックなものですからね。
鵜飼:そんな……。僕たちの幻想をあっさり壊してしまいましたね(笑)。でもたしかにそうかもしれません。僕の妹がよく言うんですが、「お兄ちゃんの前では、良いお母さんでいたいから優しいけれど、私(妹)の前では言いたいことを何でもばんばん言うの。まあ、お兄ちゃんは見てないからわからないかもしれないけど……」って。
菊地:母親が息子を可愛がるのって普通だと思うんですよね。イタリアやフランスなんかでも、男の子を「かわいいかわいい」って育てるじゃないですか?
鵜飼:娘に対してはライバル意識を持つこともあるんですかね?
菊地:そこはあまりわからないですけど、「夢を与える」で言えば、自分が満たされずザラザラしてきてしまって、その満たされない部分を娘に託してしまう、娘さえ充実すれば私が充実するという、完全に投影した関係ですよね。
鵜飼:娘の人生が我が人生になっていってしまうところはありますよね。

「夢を与える」ということばの裏・表

鵜飼:女優の仕事って、夢を与えているという印象があるんですが、夢を与えるという言葉を聞いて何を思われますか?
菊地:一方通行ですよね。だって、誰も求めてなくないですか? 誰かに夢を与えてもらうことなんて。
鵜飼:夢は自分で掴むものかなって感じはしますよね。
菊地:そう、そんなふうに投げられたボールは拾いたくないですよね。“夢を与える”って、肯定的でポジティヴな言葉にも聞こえますけど、実はものすごく危険な言葉だという、そのことが面白いなと思いますね。実際に娘は、夢を与えるという言葉にいやらしさというか、違和感を覚えていくわけで、そこに母親との確執が重なってきます。そして、娘がダンサーと出会ったことで全ての歯車が狂っていくわけですが、その出会いってある種人生においてちょっとしたことじゃないですか。だけど、エンターテインメントの仕事に関わっていることで、あれだけのことになっちゃう。
鵜飼:ある意味では普通に恋愛をしているだけですからね。
菊地:人生で何かが掛け違っていくことのきっかけって、ちょっとしたことですよね。それが結果取り返しのつかないことになるのかならないのかという話になると、私はどんな人生も取り返しがつかないということは絶対にないはずだと信じているので、そこに希望を見出していたいなって。
鵜飼:ラストがまさにね、原作と違って希望に溢れていますよね。
菊地:そうですね、まだ希望がある感じがしますね。
鵜飼:夢っていい夢ばかりでなくて、悪夢もあるわけで、つまりスキャンダルにまみれた現実も含むわけですよね。逆に、夢って必ず覚めるものでもあるわけで、そういう意味で、この「夢を与える」というタイトルはとても相応しいものだという印象があります。
菊地:あ、なんか全部言っていただけた気がします(笑)。
一同:(笑)。

愛すべき人間の愚かさ

鵜飼:「映画と私」という凛子さんのインタビューで、なんで映画俳優になりたいと思ったかについて“見たくないものも見せることのできるのが映画であって、そこには愚かな、私たちの愛すべき人間が映っている。(俳優の仕事が)ビューティー”だけでなく、人間の襞(ひだ)を表現することなのだとしたら、もしかしたら自分にもできるのかも知れない”と仰っていて、今回の作品で言うなら、人間が持つ愚かな部分はたくさん含まれていますよね。
菊地:そうですね。そもそもきれいな人間なんていない気がしますし、人間ってもっと愚かだと思うんです。そして、映画のような虚構を描く装置は、愚かさを表現して良いとされているはずですし、そういった愚かさを演じるっていうのは面白いです。そこを演じることで初めて人を理解できることもあるわけですし、そうやって理解や想像力を養っていく仕事というのは、俳優ならではの部分もあると思います。
鵜飼:そういう想像力があると優しくなれるってこともありますよね?
菊地:そうですね。あとは、人と関わることが楽しくなりますよね。やっぱり人と関わらないと自分の輪郭が見えてこないわけじゃないですか?人との距離があって初めて自分はこんなことを考えているんだと気づくことができますし、人との関係性のなかでしか自分のことがわからないということはあると思うんです。
鵜飼:例えば、恋愛もそうですよね。こんなに人に依存しているんだとか、こんなに求めているんだとか、こんなにいやらしいのかだとか、色々なことに気づかされてしまう。
菊地:愚かさって人間の愛おしさでもあると思うんです。それをさらけ出せる相手がいないと成立しないですし。
鵜飼:まさにこの作品も、ある種の愚かさを曝け出しますよね。
菊地:そうなんです。けれど、やはりそういうことは親子という関係でしかできないんじゃないかなとも思いますよね。

何をせずとも叶うのが「夢」

鵜飼:ところでそろそろ時間がきてしまいましたので、思い切ってお尋ねします。こういうのって答えづらいと思うんですけど、凛子さんの夢ってなんですか?
菊地:ゆめ……。病気をしない、かな(笑)。
鵜飼:それは大切ですね(笑)。
一同:(笑)。
菊地:病気はしたくないです。病院に入ったりは嫌ですし。
鵜飼:病院には入りたくないですけど、年を取ると……。(笑)。病気をしないための努力とかされてます?
菊地:よく食べ、よく飲み、よく寝る、ですかね。
鵜飼:飲んで二日酔いはないですか?
菊地:二日酔いはあるので、常備薬を……。(笑)。
鵜飼:殺陣や合気道、乗馬をされてたんですよね? いつ頃からですか?
菊地:乗馬は5、6歳のころからですね。
鵜飼:今はされてるんですか?
菊地:今はしていないですね。
鵜飼:身体を動かすことは?
菊地:ええと、ほぼやってないですね……。
鵜飼:じゃあ健康になれないじゃないですか?(笑)。
菊地:だから夢なんです(笑)。なにもせずとも病気をしないという。
鵜飼:それは夢かもしれませんね(笑)。
菊地:夢ですよね(笑)。

「連続ドラマW 夢を与える」

5/16(土)夜10:00スタート(WOWOW・第1話無料放送)

企画・構成 :岡本英之
採録・構成 :島村和秀
   写真 :川邊崇広
『連続ドラマW「夢を与える」 』
原作:綿矢りさ「夢を与える」(河出文庫)

監督:犬童一心 (『ジョゼと虎と魚たち』『のぼうの城』「連続ドラマW グーグーだって猫である」) 脚本:髙橋泉 (『ソラニン』『凶悪』)

音楽:上野耕路 (『ヘルタースケルター』『のぼうの城』『マエストロ!』)

出演:小松菜奈 菊地凛子

太田信吾 永岡佑 陰山泰 / 真剣佑 濱田龍臣 谷花音 ・ 田中泯 夏帆 / 浅野和之 / オダギリジョー
Story : 13年前、とある郊外の自然に囲まれた街へ引っ越してきた阿部家。フランス人の父親・トーマ(ド・ランクザン望)と、日本人の母親・幹子(菊地凛子)、そして2人の娘である美しい少女・夕子(谷花音)。それは完全無欠な家族のよう。幹子は幼い夕子をあるCMのオーディションに参加させる。広告代理店のクリエイティブディレクター・村野(オダギリジョー)に見いだされた夕子は芸能界入りする。 数年後、大手芸能事務所に移籍した夕子(小松菜奈)は、母親の念願どおり、ついにブレイクする。雑誌の表紙、バラエティー番組、テレビドラマ・・・急速に人気が高まる中、夕子は世間に向けて作り出されたイメージと自分自身とのギャップに強い違和感を覚えていた。そんな最中、夕子は世間に媚びず生きているダンサー・正晃(真剣佑)と出会い、恋愛にのめり込んでいく。だがそれは、すべての歯車が狂いだす悪夢のはじまりだった。
  • 『菊地凛子(きくち・りんこ)』
    1981年生まれ。新藤兼人監督映画『生きたい』(99年)で映画デビュー。2006年、アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ監督の映画『バベル』での演技が高く評価され、アカデミー助演女優賞にノミネート。2010年公開の映画『ノルウェイの森』では直子役を演じた。その後、拠点をアメリカ/ニューヨークに移し、『パシフィック・リム』(13年)や『47RONIN』(13年)などハリウッド作品に続けて出演。近年ではイタリア映画『Last Summer』(13年)や『ノーバディ・ウォンツ・ザ・ナイト』(スペイン・フランス・ブルガリア合作/)14年)などヨーロッパでも活躍。『クミコ、ザ・トレジャーハンター』では2015年インディペンデント・スピリット賞で主演女優賞にノミネート。最新作 連続ドラマW『夢を与える』(監督:犬童一心)では芸能界デビューした娘に対して過剰な思い入れを持つ母親役を熱演。また、2014年12月、音楽家名Rinbjö名義で、菊地成孔プロデュースにより、彼主宰のレーベルTABOOよりファーストアルバム『戒厳令』を発売するなど、女優業のみならず多岐にわたり精力的な活動を展開している。
  • 『鵜飼哲夫(うかい・てつお)』
    1959年生まれ。1983年に読売新聞社に入社。長く文芸担当記者を務め、安部公房、吉行淳之介、中上健次など多くの作家にインタビューを行う。現在、読売新聞文化部編集委員。