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「台湾エンタメ談議 日台合作映画の現場より~『南風(なんぷう)』プロデューサーに聞く~」(7/20)によせて

『南風(なんぷう)』~自転車はバックできない

さまざまなタイプの日台のコラボレーション企画が見られる昨今。映画に関しては、台湾主導型が目立っていたが、そんななか『南風(なんぷう)』は、萩生田宏治監督、黒川芽以主演という、日本の目線から撮られた一作だ。

ファッション雑誌の編集者・藍子(黒川)は、不本意な台湾自転車旅の企画ページの取材で台湾を訪れた。気の乗らない出張で、しかも、恋人を奪った女に瓜二つのトントン(テレサ・チー)をガイドに雇う羽目になってしまう。トントンは16歳で、藍子の最終目的地・日月潭で開かれるモデルオーディションに参加するため19歳と年齢を偽っているが、怖いもの知らず、意気揚々としている。

そして、真逆なテンションの26歳と16歳の自転車旅が始まる。当然のことながらふたりは反発してばかり……と書いてしまうとありきたりかもしれないが、ロケーションのなせる技なのか、トントンの猪突猛進さも、年下相手に熱くなってしまう藍子もやけに可愛らしく爽快だ。途中から美形サイクリストのユウ(コウ・ガ)が加わることで、恋のさや当て要素も出てきてコンビネーションのちぐはぐさは加速し、それがじつに心地よい。

台北から九份に向かい、基隆港へ。そこから西回りで、冨貴角、淡水、永安漁港に立ち寄り、鹿港の九曲巷で迷子になりつつ、そこから内陸へ入って日月潭へたどり着く。メジャーな観光地もめぐるが、そのほとんどはふつうの観光旅行では通らないサイクリングロードであり、自転車ならではのルートだ。なぜ自転車なのか。世界一の規模を誇る自転車メーカーが台湾にあるということもあるが、考えてみれば、自転車は前に進む乗り物だ。自動車のようにバックすることはできない。ただ前に進むしかない。藍子もトントンもユウも辛いことがあっても余計なことは考えず、前に向かってペダルを漕ぐしかないのだ。

本作では四国愛媛県今治と広島県尾道を結ぶサイクリングロード・しまなみ海道も登場し、日台を自転車で結んでいる。台湾で撮られた日本絡みの映画の多くは、多少なりとも歴史的な関わりを匂わせている場合が多いのが常だ。それらは、台湾の監督によるもので、自らの歩んできた道を真正面から見つめようという意思に基づいている。だが、この日本人監督による『南風』は、歴史ではなく現在のふたつのサイクリングロードが日本と台湾を繋いている点が興味深い。自転車を漕ぐように、時間の流れの中を前へと進むのだ。

そう考えると、自転車を駆るこの映画の爽快感もまたひとしおだ。

【関連記事】 萩生田宏治監督作品『南風』 7/12(土)より、シネマート新宿ほか全国順次ロードショー!

http://culture.loadshow.jp/topics/nanpuu/

日台共同製作『南風』の日本側プロデューサー・朱永菁氏を招いてのセミナー「台湾エンタメ談議 日台合作映画の現場より~『南風(なんぷう)』プロデューサーに聞く~」が7月20日(日)に德絃社(東京都新宿区)にて開催されます。


【日時】2014年7月20日(日) 14時30分開演(開場は20分前)16時30分終了予定


【ゲスト】朱永菁(女優・プロデューサー)


【ナビゲーター】稲見 公仁子(台湾映画・ドラマ研究家)


【会場】徳絃社


【入場料】2,000円(当日会場にて現金払いとなります)


詳細は、德絃社HP( http://tokugen.jp/info/20140720/ )をご覧ください。

『南風』
■7/12(土)より、シネマート新宿ほか全国順次ロードショー!
監督:萩生田宏治
出演:黒川芽以、テレサ・チー、郭智博、コウ・ガ
2014年/日本・台湾/93分/デジタル/1:1.85
©2014 Dreamkid/好好看國際影藝
配給:ビターズ・エンド

《Story》

私、風間藍子(黒川芽以)は東京の出版社で働く26歳。最近彼氏を年下の女に奪われ、さらに大好きだったファッション誌の編集から地味な単発の企画担当へ飛ばされ、まさに仕事も恋愛も崖っぷち状態。4日後に日月潭(リーユエタン)で元プロサイクリスト植村豪が主催するサイクリングイベントの取材のため台湾へやってきた。頼れる先輩・由貴さん(シュ・エイセイ)に取材を手伝ってもらうつもりでいたら、会ったらまさかの妊娠中! 中国語も話せないし、これからどうしよう……そんな時、レンタサイクルのために立ち寄った自転車屋で出会ったのが、ファッションモデルを夢見る高校生の少女・トントン(テレサ・チー)。その子の顔を見てびっくり!だって元彼を奪った女に瓜二つだったから……しかもこの子、私のガイドをしたいと言い出した。内心かなり不満だけど、由貴さんに頼れない今、背に腹は代えられない。トントンは妙に浮かれてる。 こうして、私とトントンは日月潭に向けて出発した。
■公式サイト
http://www.nanpu-taiwan.com
  • 『稲見公仁子(いなみ・くにこ)』
    80年代末より中華圏等アジア映画に興味を持つ。雑誌社勤務を経てフリーランスライターに。さまざまな中華系エンターテインメントムック、台湾の日本語情報誌「な~るほど・ザ・台湾」(台湾文摘)に寄稿するほか、「中華電影データブック 完全保存版」(キネマ旬報社)では台湾パートの監修を務める。昨今は、台湾映画・ドラマを核とした文化講座の企画も手がけている。