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「台湾エンタメ談議 台湾式ケータリング 總舗師の祝宴~究極のグルメコメディ『祝宴!シェフ』日本公開を記念して~」(10/5)によせて

冴えない人生を応援するグルメコメディ『祝宴!シェフ』

1995年、賞狙いの作家主義的映画が増加中だった台湾映画界に、誘拐騒動を描いた喜劇『熱帯魚』で一石を投じたチェン・ユーシュン監督。彼の映画は、当時の台湾コメディの主流であったスラップスティック的アイドル映画とは異なり、社会風刺を織り込みつつ、独特のユーモアで観客を笑いに引き込んだ。その手腕とセンスが支持され将来を嘱望されていたが、97年に2作目『ラブ・ゴーゴー』を発表した後、台湾映画界未曾有の大不況の影響でぱったりとなりを潜めてしまっていた。それから16年、待望の新作である。

アイドルスターを夢見て台北に出たもののさっぱりうまくいかないシャオワン(キミ・シア)。男に騙され、借金取りから逃げて郷里・台南にいる継母(リン・メイシウ)の許に身を寄せたものの、継母も伝説的宴会料理人だった亡き夫・蠅師の弟子に裏切られ、流行らない食堂を細々と経営しているような状態だった。やがて、料理医師ルーハイ(トニー・ヤン)の指導を受けた母娘は、ひょんなことから全国宴席料理大会に出場することになる。だが、ライバル陣営に雇われた料理人がルーハイの師匠だったことから、ルーハイは敵陣営に就くことになってしまう。

本作の題材である出張料理人による野外宴会料理は、台湾独自の伝統的な食文化である。ゆえに、シャオワンたちの暮らす町角にはレトロなムードが漂う。その町角にオタクな親衛隊や天然かつパワフルな継母らが妙にマッチして、それだけでも滑稽で楽しい。ヒロインを演じるキミ・シアは、テレビの美少女コンテスト出身らしい、いかにもといった愛らしさがあるが、そんな自らの容姿を逆手に取ったかのようなコメディ演技が愉快だ。そして、また、濃い人物たちに囲まれて、清涼飲料水のように清々しい若き日の恋物語を語るのが老人たちだという組み合わせの巧みさ。クライマックスの料理大会での抱腹絶倒超絶美味表現のオンパレードのなかにおいても、人生の酸いも甘いも知り尽くした老人たちはマイペースを保ち続ける。そのミスマッチが、なんとも可笑しい。それこそ、宴会メニューの品々の組み合わせの妙を見るような絶妙な人物バランスだ。

監督のチェンは、冴えない市井の人々を日常のなかの笑いで包み込み、前へ進めと背中を押す。都会から逃げ帰ってきた娘も、料理センスがないのに食堂を営む継母も、料理大会に巻き込まれる周囲の人々も、皆どこか冴えないが、ひたすら前へ進もうとする。我が身の不運を笑い飛ばしつつ、笑いをパワーに変えていく。監督の人々を見つめる視線は、16年の歳月を経ても変わることなく暖かく、その愛情はコミカルで泥臭い。以前との違いを敢えて言うなら、サービス精神がより旺盛になったように思う。本作で大笑いしてほっこりして前向きな気持ちになれる人は少なくないはずだ。

台湾の食文化にスポットを当てた「台湾エンタメ談議 台湾式ケータリング 總舗師(ツォンポーサイ)の祝宴~究極のグルメコメディ『祝宴!シェフ』日本公開を記念して~」が10月5日(日)に德絃社(東京都新宿区)にて開催されます。


【日時】2014年10月5日(日) 14時30分開演(会場は20分前)16時30分終了予定


【ゲスト】蔡易達(帝京大学文学部史学科専任講師、専門:植民地研究、中国・台湾近現代史、エスニック論)


【ナビゲーター】稲見 公仁子(台湾映画・ドラマ研究家)


【会場】德絃社


【入場料】2,000円(当日会場にて現金払いとなります) ※残席残り僅か


詳細は、德絃社HP( http://tokugen.jp/info/20141005/ )をご覧ください。

【関連記事】チェン・ユーシュン監督作品『祝宴!シェフ』 11/1(土)よりシネマート新宿、ヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国ロードショー決定! http://culture.loadshow.jp/topics/syehu/

【Story】

20 年以上前の台湾では、お祝いごとには屋外で宴席が設けられ、そこで腕を振るう、総舗師 ツォンポーサイと呼ばれるおもてなしの心を極めた宴席料理人がいた―その中でも、“神”と称された伝説の料理人を父に持つシャオワンは、料理を嫌い、モデルを夢見て家を飛び出していたが、父の死をきっかけに帰省。そこで父がレシピノートに残した“料理に込めた想い “に心を動かされたシャオワンは、時代の趨勢で衰退の一途をたどっている宴席料理の返り咲きをかけ、全国宴席料理大会への出場を決意する。しかし料理は初心者。果たして、シャオワンは父の想いを引き継ぎ、人々のお腹も心も幸 福で満たす“究極の料理”に辿りつくことができるのか?
『祝宴!シェフ』
監督/脚本:チェン・ユーシュン(陳玉勳)
出演:リン・メイシウ(林美秀)、トニー・ヤン(楊祐寧)、キミ・シア(夏于喬)
2013年/台湾/145分/中国語、台湾語/カラー/スコープ/DCP5.1ch
  • 『稲見公仁子(いなみ・くにこ)』
    80年代末より中華圏等アジア映画に興味を持つ。雑誌社勤務を経てフリーランスライターに。さまざまな中華系エンターテインメントムック、台湾の日本語情報誌「な~るほど・ザ・台湾」(台湾文摘)に寄稿するほか、「中華電影データブック 完全保存版」(キネマ旬報社)では台湾パートの監修を務める。昨今は、台湾映画・ドラマを核とした文化講座の企画も手がけている。