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「台湾エンタメ談議 美麗島に寄せる想い~『天空からの招待状』日本公開を記念して~」(11/16)によせて

美しさと繁栄の陰に隠れた現実を直視する覚悟の一作 『天空からの招待状』

身近な海外旅行先として人気の台湾。空からの景色なんて珍しく思わないかもしれないが、航空機から見ることのできる台湾島はそのほんの一部だ。

本作『天空からの招待状』は、全編空撮で台湾島の様々な表情を捉えたドキュメンタリーである。ただひたすら空撮の映像が続き、初めて目にする景観美は我々を感動させるが、わずか千数百円で上空から台湾観光ができてお得なんて浮かれていると、激しく裏切られることになるかもしれない。16世紀の大航海時代、日本に向かったポルトガル人は「イル・フォルモサ(麗しの島)」と台湾島を呼んだという。たしかにスクリーンに映し出される台湾島は美しく、その存在感たるや特筆すべきものだ。だが、このドキュメンタリーは美麗島賛歌で終始するような生易しいものではない。

3000メートル級の山々が連なる中央山脈、碧く透きとおった南部・ケンティンの海……高く、また低く、カメラは自在に高度を変え、上空から緑の山肌を愛で、触れてしまいそうな低空飛行で農作業に励む農民たちを見つめる。めりはりのある映像は飽きることがない。だが、やがて、開発の名の下に切り崩された岩山、コンクリートで固められた海岸線、生活排水や産業排水で変色した河川、人間の無知が引き起こしてしまった災害と環境破壊という現実を容赦なく突きつけてくる。

監督のチーは、元々カメラマンで、生活の安定のために公務員となり、日本で言うところの国土交通省にあたる省庁で空撮カメラマンとして台湾島を記録していた。その仕事を通して、母なる大地が病んでいく様に気づいたという。

邦題は『天空からの招待状』といささかロマンチックだが、原題はずばり「看見台湾(台湾を見る)」という。余計なものはない。映像と一体化した音楽とナレーションだけ。百聞は一見に如かず。ストレートな映像の力強さが際立つ。世界には光と影があり、裏と表がある。善悪を問うわけではない。美しさの対極にあるもの、繁栄の陰に隠されたもの、人間が引き起こしてしまった矛盾を、真正面からとらえた覚悟の一作と言えよう。台湾島を描いているが、それは地球のなかのほんの一部、数ある例のひとつを映したに過ぎない。他人事ではないのだ。衝撃的現実を前に何をすべきか、映像は観客に判断を委ねる。

本作は、台湾ではドキュメンタリーとして異例の2億台湾ドル(日本円で約7億円)もの興行収入を記録した(ちなみにチケット代は日本の半分、人口は日本の1/5から1/6)。最初は空撮の物珍しさもあったろうが、人々は映像を通して現実を直視し、社会現象を引き起こし、政策にも影響を与えたそうだ。

「台湾エンタメ談議23 美麗島に寄せる想い~『天空からの招待状』日本公開を記念して~」が11月16日(日)に德絃社(東京都新宿区)にて開催されます。美麗島・台湾に寄せる人々の想いを見つめるとともに、昨今の台湾でのドキュメンタリー映画の興行状況を紹介します。

【日時】2014年11月16日(日) 14時30分開演
(会場は20分前)16時30分終了予定

【ゲスト】辛 正仁 氏(一般社団法人日本から台湾の世界遺産登録を応援する会 事務局長)

【ナビゲーター】稲見 公仁子(台湾映画・ドラマ研究家)

【会場】德絃社

【入場料】2,000円(当日会場にて現金払いとなります)

詳細は、德絃社HP(http://tokugen.jp/info/20141116/ )をご覧ください。

【関連記事】チー・ポーリン監督作品『天空からの招待状』12月20日(土)よりシネマート新宿・シネマート六本木ほか全国順次公開 http://culture.loadshow.jp/topics/tenku/
【内容】

空中を漂うカメラは、台湾の様々な姿を捉えていく。フォルモサ(麗しの島)と呼ばれる美しい、山・海・田園や人々の暮らし、日常の営み。また、工場の煙突から噴き出る白煙や、工場排水が流れてしまっている河川など、環境破壊の実態も浮き彫りにする。台湾最高峰の玉山(3952m)頂上から原住民の子供たちが誇り高く歌う様子が映し出されるシーンは自然と人々の暮らし・そして祖先から未来への繋がりへの感謝と希望が感じられる圧巻の世界。
『天空からの招待状』

監督・撮影:チー・ポーリン

製作総指揮:ホウ・シャオシェン

音楽:リッキー・ホー

中国語版ナレーション:ウー・ニエンジェン

日本語版ナレーション:西島秀俊

(2013年/台湾/93分/中国語/ワイドスクリーン/カラ―/5.1ch/©Taiwan Aerial Imaging , INC.)

後援:台北駐日経済文化代表処、台湾観光協会

協力:亜東親善協会、日台経済文化交流会、ニチホランド、アミューズソフトエンタテインメント、Google
  • 『稲見公仁子(いなみ・くにこ)』
    80年代末より中華圏等アジア映画に興味を持つ。雑誌社勤務を経てフリーランスライターに。さまざまな中華系エンターテインメントムック、台湾の日本語情報誌「な~るほど・ザ・台湾」(台湾文摘)に寄稿するほか、「中華電影データブック 完全保存版」(キネマ旬報社)では台湾パートの監修を務める。昨今は、台湾映画・ドラマを核とした文化講座の企画も手がけている。