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『100歳の華麗なる冒険』ジャパンプレミアトークイベント採録(フェリックス・ハーングレン監督×LiLiCo×綾戸智恵)

スウェーデンの大ベストセラー小説の映画化作品で、本国ではあの『アナと雪の女王』を超える大ヒットを記録、日本でも原作本が話題となっている『100歳の華麗なる冒険』のジャパンプレミアが行われた。 スウェーデンでは雑誌の表紙を飾るなど、もっともホットな俳優にして人気監督のフェリックス・ハーングレン氏(47)が来日し、監督と同じくスウェーデン出身の映画コメンテーターLiLiCoさんとともに登壇。さらに本作を絶賛し、ぜひ監督に会いたいとジャズシンガーの綾戸智恵さんも登場し、本作の魅力を語った。

日時:9月25日(木)

会場:スペースSF汐留ホール

登壇者:フェリックス・ハーングレン監督、LiLiCo(映画コメンテーター)、綾戸智恵(ジャズシンガー)

まず監督とLiLiCoさんから一言ずつご挨拶を。
監督:コンニチハ。実は今撮影中なんですが、日本でのお披露目ということを聞き、どうしても来たいと言っての来日となりました。
実は日本に来るのは2回目です。7.8年前に娘たちと滞在したことがあって、とてもよかったので、また来たいと思っていました。
LiLiCo:子ども7人いますからね。欲しいよね、こういう男性。探しております。

監督:埋まってます、すみません。
LiLiCo:いつもこうだ(笑)。でも自分の母国スウェーデンの映画が日本に来るたび、本当に嬉しいです。ちょうどスウェーデンで本屋さんの取材をしたことがあって、その時に大ヒットしてるということで、原作本を買ったんです。


その後すぐその本が映画化されると聞いて。ベストセラーの映画化というと、みんな心配すると思うんですよ。自分のイメージがあるので、それが壊されないかどうかと。それで、父、父の新しい恋人、義理の妹、その彼氏、親友たち、みんなに聞いたんですけど、「本も素晴らしいけど、こんなにも原作のイメージどおりに映画化されるなんて!」と。みんなベストセラーの映画って、観に行くことは行って、あーだこーだと文句言うことが多いんですけど、これはみんな大絶賛。誰も文句言わない。
スウェーデンって、900万人しかいないんですよ。
原作本は、100万部の売り上げということですよね。だから9人に1人買ってるということなんですよ。すごいですよね。
LiLiCo:スウェーデンって冬が長くて、秋・冬・春ずっと暗くて、みんな厚い本を読むのが大好きなんですよね。ミステリーならどんなハードカバーでも、リュックに穴が開くほど分厚いものでも、みんな仕事に持っていくんです。電車の中で読むんですけど。
今までは映画でも、子どもの頃にこういうパーティーやって、ちょっと酔っぱらっちゃって、忘れてしまいたい経験をしました、みたいなコメディが多かったんです。今回は100歳の老人が主人公です。自分の年齢よりもずっと先のことだから、夢を見れるところがよかったんじゃないか。で、意外とこの主人公、ダメ人間ですよね。本当は、人生ってこう上手くはいかない。でも上手くいくところが、またよかったんじゃないかと。
そこまで大ヒットした原作の映画化は、監督としてはすごくたいへんだったのではと思うんですが。プレッシャーなどはありましたか?
監督:ストーリーに惚れ込みすぎていたので、製作中はプレッシャーをあまり感じずにすんだんです。ただ、国内のプレミア上映の時は、数週間前から、もう内容を変えることができないということもあって、非常にナーバスになりました。観客の方よりも、原作者ヨナス・ヨナソンさんがどう思うかということが気になりました。脚本も読まれずに、「映画ができてから拝見させて頂きます」と言われていたんで、プレミア上映の1週間くらい前に観て頂いたんです。


そしたら、早朝に携帯にメッセージが入っていました。「3回、夜通し観た」と書いてあったんです。1回目は、「自分の本をどうしてくれたんだ」と思った。2回目は、「なるほど、こう来たか。なかなかいいじゃないか」。3回目は、「本当にいいものを作ってくれてありがとう」と思った、と言ってくださって。とてもホッとしました。
本国では去年のクリスマスに公開されて、『アナと雪の女王』を超えるヒットとなったんですよね。人口900万人のスウェーデンで、160万人の動員。伺ったところ、60万人を超えたらもう社会現象だという。
LiLiCo:主人公に100歳の役者さんを使うのも、なかなか言うこと聞いてくれないような気がしますが、今回はわりと若い、中年の役者さんを使っています。若いときから100歳の時まで、ずっと同じ人を使いたかったんでしょうけど、メイクが時間がかかったんでは?
監督:役者はロバート・グスタフソンさんですが、今LiLiCoさんがおっしゃったように、25歳から100歳までを一人の役者さんに演じてほしいと、最初から強いこだわりがありました。なぜかというと、年齢ごとに役者さんが変わると、その都度観客の気持ちが離れてしまうのではないかと危惧したんですね。その結果、特殊メイクをしなければいけなくなったんですが。
最初つけた時は8時間くらいかかってしまいました。最終的には4時間半くらいに抑えることができたんですけど。先にロバートさんに現場に入って頂いて、メイクをして頂く。4時間半後、監督が7時半くらいに現場に入って、「おはよう、ロバート!」と言うと、「私はずっと起きてるんだよ!」と怒られました。彼にとっては昼くらいの感じだったんですね。何時間も小さなストローでコーヒーを啜りながら我慢していたんですよ。


撮影自体は1時間です。シリコンで作られた、塗っていくタイプのマスクで、撮影が終わるとベリッとはがします。もう2度と使えない。それをはがすのに1時間、値段が70万円です。1日70万円ということで、今回の製作費の多くはそこにつぎこまれています。
70万円! それはいったいいくつ作ったんでしょう。
監督:55個作りました。
55個! あと、家族や親戚、そしてご本人も映画に出ているとのことですが。
監督:マスクでお金がかかりすぎて、家族を引っ張り出したんです(笑)。息子たちがそれぞれ、冒頭墓地でいたずらをしている少年と、10コマくらいなんですが、自転車に乗って登場する子が出ています。おじさん、おばさんも出ています。両親は、スウェーデンの首相が出てくるレストランのシーンで、後ろにいます。娘が一人はうさぎの恰好をして出ていて、もう一人がキャビンアテンダントとして登場しています。
僕はエキストラが当日一人来なかった時があって、駅でナチスが出てくるシーンなんですが、しょうがないんで自分で演じています。
LiLiCo:役者さんの30%は素人さんなんですよね。スウェーデンじゃよくある話なんですけど。主演が素人さんで、映画が終わったら普通の人に戻るというのも、実はそんなに珍しくないんです。
実は、裏で早く感想を言いたいとうずうずしている方がいらっしゃるんです。ジャズ・シンガーの綾戸智恵さんです。
(綾戸さんが花束を持って登場)
綾戸さん、映画の感想をまずお聞かせください。

綾戸:主人公のおっちゃん、行き当たりばったりですね。でもすごいのは、偶然を上手に必然に持っていく。オトク人生というか。スパイになるところなんかね、「俺はスパイやで。かっここいいだろ」なんてね、入り込む速さ。躊躇がない。このおっちゃんは100歳やけどね、下手をすると500歳分くらいの人生を生きたのではないかと思います。
あともう一つ。スウェーデンというのは、私はもうちょっと静かな国だと思ってたんですよ。白夜があって、自然がいっぱいあって。やっと、LiLiCoちゃんがオモロイ女のわけが分かった。大阪人と近いんじゃないかと思って。
LiLiCo:自分の人生を最高のものにしたいという気持ちがあるんですよ。自分から楽しくしようと。よく、スウェーデン人って、みんなこんなうるさいのって聞かれるんですけど。
監督:LiLiCoは僕のおばあちゃんにそっくりだよ。とても素晴らしい女性だ。
スウェーデンのイメージというと、ベルイマン監督など、ダークでシリアスなものが多いですよね。その後もミレニアム3部作など、ダークなイメージが固定してしまったのかもしれません。でもたくさんと笑いと歓びがある国なので、違うスウェーデンのイメージを伝えることができたとしたら嬉しいです。

【Story】

100歳の誕生日を迎えるアランは誕生日パーティの当日、お祝いなんてまっぴらと老人ホームを抜け出してしまう。ひょんなことから大金入りのケースを手に入れてしまいギャングと警察両方から追われる事に。 旅先で出会う一癖ある仲間たちを巻き込みながら繰り広げられる珍道中を通し、アランはかつて気の向くままに世界をまたにかけ、世界史の重大なシーンに立ち会ってきた自身のハチャメチャな人生を振り返っていく。
フェリックス・ハーングレン監督作品『100歳の華麗なる冒険』
11/8(土)新宿ピカデリー他 全国ロードショー
■公式サイト
http://www.100sai-movie.jp/
■関連記事
http://culture.loadshow.jp/topics/100sai/
取材・構成: 夏目深雪
『100歳の華麗なる冒険』

監督: フェリックス・ハーングレン/脚本:フェリックス・ハーングレン、ハンス・インゲマンソン/原作:ヨナス・ヨナソン

出演:ロバート・グスタフソン、イヴァル・ヴィクランデル、ダヴィド・ヴィバーグ

英題:The 100-Year-Old Man Who Climbed Out the Window and Disappeared(2013/スウェーデン/115分/カラー/スウェ―デン語・英語・露語ほか/シネマスコープ/5.1ch)

後援:スウェーデン大使館 提供:KADOKAWA、ロングライド 配給:ロングライド 宣伝:クラシック

(C)NICE FLX PICTURES 2013. All Rights Reserved

原作書籍「窓から逃げた100歳老人」(著/ヨナス・ヨナソン 訳/柳瀬尚紀)
  • 『フェリックス・ハーングレン』
    1967年2月4日生まれ。1990年より、監督、脚本家、プロデューサー、俳優として活動。TVでは1996年にスタートしたトークショーの「Sen kväll med Luuk」(96)でブレイク。2010年には、原案、脚本、監督、出演を務めた「Solsidan」(10)がエピソードごとに200万人を越える視聴者を獲得しノルウェー、フィンランド、デンマーク、ベルギーでも放送されると共にコメディ・シリーズとして2年連続でスウェーデン・テレビ賞を受賞。
    映画ではミカエル・パーシュブラント主演コメディ「Vuxna människor」(99)で監督、出演デビューを果たす。その後もスウェーデンエンターテイメント界の第一線で活躍。
    『アナと雪の女王』などの大作を超える大ヒットを記録した本作ではスウェーデンのアカデミー賞にあたるゴールデン・ビートル賞において最優秀観客賞を受賞した。