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映画で晩酌〜島村和秀の寄り道インタビュー〜第5回ゲスト 草野なつか(映画監督)

一口のお酒で三言聞ける。美味しいお酒が道案内する、本日おすすめ映画話。

さすらいの俳人・島村和秀(LOAD SHOWスタッフ)がインタビュアーとなり、様々な映画関係者とその人の行きつけの料理屋で、普段語られることのない“映画の奥の細道”をたずねるインタビュー企画。第5回目のゲストは、初長編監督作品『螺旋銀河』で、SKIPシティ国際Dシネマ映画祭にてSKIPシティ・アワードと監督賞を受賞し、9/26(土)よりユーロスペースにて公開を控える若手映画監督の草野なつかさん。草野さん行きつけのお店、「Bar 太田尻家」に何か重いものを背負って取材に向かう島村。女性二人の関係性がいびつにも重なり合っていく様が、スリリングに展開されていく『螺旋銀河』を観て、女性の事がより一層分からなくなってしまった島村は、意を決してお店の暖簾をくぐるのであった。
(小田急線 経堂から徒歩8分ほどの場所にあるオシャレな佇まいの「Bar 太田尻家」。)
(店内にはこだわりの雑貨が盛りだくさん!雑貨の販売も行っているとの事。黒板には日替わりメニューと、『螺旋銀河』のチケット販売の文字も!)
(少し緊張した面持ちの草野監督と、少し様子のおかしい島村。)

-台詞のリズム-

島村:いきなりですが、『螺旋銀河』面白かったです。ただ、まだ言葉にできていないというか分かりそうで分からない事がたくさんあって。特に女性のリアルなメンタリティーについてなのですが…。そのため、今回は曖昧な発言が多いと思いますがご了承ください!
草野:私も曖昧な所はあるので、大丈夫です。
島村:ちょっとした空中戦になる予感がします(笑)。
草野:そうですね(笑)。
島村:いつもこちらのお店では何を食べられているんですか?
草野:黒板にオススメのものが書かれているので、基本的にその中から頼んでいますが、お魚は何かしら頼んでいます。
島村:お酒はよく何を頼まれてますか?
草野:ビールか、日本酒ですね。
島村:店内の絶妙な照明加減もあって、静かにゆったりお酒を楽しめそうですね。
(しめさば、スモークさばおろし和え、さんまのこうじ漬けの三種盛り!)
(サバサンドは、ヘルシーで味わい深い酒肴の逸品!)
島村:『螺旋銀河』の幸子(澁谷麻美)と綾(石坂友里)の顔が、関係が変わる事にどんどん変化して見えて、俳優の「顔」って雄弁だなと思ったんですね。草野監督は、どんな表情が好きですか?
草野:感情が無意識のうちに出ちゃっている時の顔が好きですね。そういう表情を見た時に、その人を少しだけ知れた気になります。
島村:じゃあ心が読めないようなポーカーフェイスは好きじゃないですか?
草野:ポーカーフェイスというか、ずっとニコニコしている人はちょっと怖いですね。
島村:…本当すみません。
草野:いや、島村さんはずっと困っている顔してるからいいと思います(笑)。こんな感じで(取材)大丈夫ですか?
島村:徐々に!徐々にヒートアップしていくので大丈夫です。
草野:島村さんは、演劇をやられているんですよね?どういう演劇がお好きなんですか?
島村:好きな劇団は青年団とチェルフィッチュです。この間、マームとジプシーの『cocoon』を観てきましたよ。
草野:ああ!私も観たかったんですけど、行けなかったんです。
島村:マームとジプシーはどの公演を観られた事がありますか?
草野:昨年の『小指の思い出』(2014)で、初めて拝見して、それで好きになって観ているんです。
島村:『ヒダリメノヒダ』(2015)も観ましたか?
草野:観ました。あれも凄い良かったです。
島村:マームとジプシーのどこが好きなんでしょうか?
草野:私は、いかにも演劇っていうお芝居はあまり好きではないんですけど、マームとジプシーってそういう部分が抑えられているから観やすいというのと、あと、声のトーンがすごく良いですよね。台詞の抑揚に音程があるようで。
島村:台詞っぽい会話の発話ではありませんよね。
草野:そうですよね。あとは、青柳いづみさんのお芝居が好きで。青柳さんの引き込む力は凄いです。憑依型ですよね。憑依型のお芝居はあまり好きではないんですが、彼女は別ですね。
島村:『螺旋銀河』でも台詞回しが独特だと思いました。日常会話的なノイズがカットされている印象があります。「あの」とか「えーと」っていうのがほぼ無いですよね。
草野:そうでしたか。あまりそこは意識していなかったですね。
島村:ニュアンス的な部分は削ぎ落として台本を作られていったのかなって思いました。
草野:確かに削ったりはしました。それと、幸子役の澁谷麻美さんが、きちんと台詞を頭に入れてくださって来てくれるので余計な言葉は言わないんですね。勘がすごく良い方なので、タイミングも彼女の塩梅を活かそうと思ってやっていました。
島村:綾と寛人(中村邦晃)が揃ったカフェのシーンで幸子が絶妙な間で「トイレ行ってきまーす」と言いますが、それも渋谷さんの間ですか?
草野:そうですね。ちょっと変な間は生んでほしいとは言ったかもしれませんけど。彼女はリズム感がすごく良いんですよ。
島村:「トイレ行ってきまーす」は、絶対必見ポイントだと思っています。

-異空間にいるような-

島村:というのも実は、渋谷さん演じる幸子が、僕が昔付き合っていた彼女に似てるんですよ。
草野:容姿がですか?
島村:容姿もですし、考え方やアクションも。クローゼットに隠れているシーンがあるじゃないですか?あれは、既視感でしかなくて(笑)。ただ、寛人ほど僕は優しく振る舞えなかったですけど…。
草野:…なるほど。
島村:僕はもっと感情的で「どこ行ってたんだよ!めっちゃっめちゃ心配したんだよ!」みたいな感じでした(笑)。元カノに似ているからか、寛人が綾ではなくて幸子を追ってしまう心境はとても良く分かります。
草野:あのシーンは、脚本家の高橋知由さんの趣味ですね。
島村:その趣味、共感しちゃうなー…。是非多くの方に共感していただきたいですね。寛人役の中村さんにはどういうお芝居を要求されたんですか?
草野:女性二人が主役なので、中村さんの事を信用した上で、あまりお芝居をし過ぎないようにとは思って演出していました。
島村:男の人なら幸子にあれだけ振り回されたらもっとイライラするはずとは思ったんですが、確かに物語としては少し邪魔になりますよね。でも、その事で女性二人の関係がより明確に映し出されますよね。あの、実は『螺旋銀河』を観て、僕は根本的に女性を知らないんだなと痛感させられました。
草野:あ、そうなんですか…。
島村:はい…。
一同:…。
島村:あと、映画の重要な場所でもありますが、コインランドリーがとても魅力的でした。凄く日常的な場所であるはずなのに、特別な場所に見える。物語が生まれる余地のある空間というか、そういう特異な場所はもともと好きなのですか?
草野:好きですね。私自身、コインランドリーをたまに使うんですけど、夜中に自分しかいないと異空間にいるような感じがして気になってたんです。あとは、逆に喧騒の中で自分がいるこの場所だけ現実に存在しないって想像をするのも好きですね。
島村:たまらなく寂しくならないですか?
草野:いえ、緊張している時とか、その方が安心する時もあります。
島村:僕、草野監督のひっそりとした場所の選び方が好きで。ラジオ収録の録音ブースも好きでした。二人以外の全てが遮音され、これ以上ないっていう程、完璧な均衡がうまれ。また、それがブルって震えるほど精密で。…あの、小さい頃しか行けなかった道とかって草野監督にはありませんでした?
草野:あ〜…。ん?
島村:小さい頃、ここに絶対道があったのに!みたいな。
草野:あ、小さい頃家の近くに廃墟があって、そこにはよく行っていたような気がしますね。
島村:そうですよね、廃墟って事ですよね。
草野:(苦笑)。
島村:いやいや、僕も本当そう思いますよ!草野監督が撮ると、その場所が世間と遮音であったり、遮断される特別な空間になるなって思ったんです。
草野:恐縮です。
島村:いや、こちらこそ恐縮です!

-分からなくていい-

島村:僕が今回草野監督に最も聞きたかった事なんですが、女の人達って見ず知らずの他人同士でも、集まると凄い速さで近しくなりますよね?
草野:仲良くなった風に見えるだけですよ。
島村:それが、本当に分からなくて。めちゃくちゃ仲良く話しているのに、内心は全然関心がなかったり。身体的な距離と心がバラバラでも、それが自然であるかのようじゃないですか。あの器用さは凄いですよね。
草野:男の人の方が、言葉通りの人が多いですよね?女の人は計算して人と付き合ったりしますからね。崩れやすいヒエラルキー的なものが女同士にはあるのかもしれません。
島村:この間、異業種交流会に行ったんですけど、本当に誰とも話せなくて。でも女性は、すぐに4、5人のグループを作って、仕切る人とか相槌を打つ人、ツッコミを入れる人とか自然と役割分担していたんです。
草野:私自身は、人が多くなればなる程喋らなくなりますね。そういうのが苦手で。
島村:でも、『螺旋銀河』では女性同士の人間関係が綿密に描かれてますよね?
草野:多分、自分がその渦中にいかない方だから、少し俯瞰して観察出来るんだと思います。
島村:なるほど。いや、実はそれ以外にも女性の分からない所は、多くありましてですね、例えば…。
草野:分からなくていいんじゃないですかね?
島村:そうなんですよね!それを言おうと思って今日来たんですよ!
草野:(笑)。
島村:分からなくても面白いと言える事が、前向きでいいなと思ったんです。『螺旋銀河』は、それを教えてくれたんです!分からないことがあっても決定的な瞬間があって、それに立ち会えるっていうのは分からないを超えて嬉しいんです!
草野:それを聞けて私も嬉しいです。

-映画を撮りたいと直感で思った-

島村:『螺旋銀河』の見所は、女性についてだけじゃなくて、反意語という意味で使われる「antonym/アントニム」という言葉の利かせ方もありますよね。反意語とはまた意味が変わってきますが、僕、何かの対となる物を探すのが好きで。面白いんですよねー対義語を考えるのって。ピストルと対になる物って何だろう、とか。
草野:ピストルの対の物って何ですか?
島村:…すいません、考えてなかったです…。ちょっと真剣に考えます。……。後で思い付いたらお答えしますね!草野監督は、どんな映画に影響を受けたんですが?
草野:答え楽しみにしてます(笑)。私はダニエル・シュミットの映画を観て、自分も映画を作ってみたいと思ったんですね。
島村:何という作品ですか?
草野:『ラ・パロマ』(74)『書かれた顔』(95)は、強く印象に残ってます。大学生の頃に追悼上映がアテネ・フランセでやっていたんですね。それを観て、直感的にですけど「これは全部観なきゃ」って思ったんですよ。
島村:ダニエル・シュミットが作る映画のどこに草野監督は魅力を感じたのでしょうか?
草野:映画の中の人に自分が見られていると感じる瞬間があって、それと同時に、登場人物が本当に、ここではない別の世界で生きているように感じたんです。自分が今どこにいるのかが危うくなるような感覚というか。
島村:映画美学校に通い始めたのは、その後ですよね。ダニエル・シュミット監督の存在が大きかったんですか?
草野:それも勿論ありますし、大学で授業をして下さった山根貞男さんが、映画を撮りたいって私が言ったら、「映画美学校はどう?」って言って下さったんです。
島村:監督というイメージがあってという事ですか?
草野:何になりたいというよりかは、映画を撮りたいと直感で思っただけですね。
島村:ちなみになんですが、草野監督が今まで観た映画の中の登場人物で面白いと思った男の人ってどういう人ですか?
草野:この間、『ローリング』(監督:冨永昌敬/2015)を観て、川瀬陽太さんが演じる「先生」が凄い面白かったですね。全然反省をしない感じが(笑)。
島村:(笑)。
草野:あと、「いい靴が買える」という話になった時に、川瀬さんが「足だけイタリア人になっちまうよ」って言うんです。あそこが好きです。思い出す度に、面白くて。多分、実が無さそうな人の方が好きなのかもしれないです。実際、向き合うのは別として(笑)。
島村:見てる分には面白いってやつですね(笑)。締めくくりに、大変おこがましいのですが、ひとつお願いしてもいいですか?是非いつか草野監督に女性スパイものを撮って頂きたいです。
草野:スパイもの面白そうですね(笑)。考えておきます。
島村:お願いします!『裏切りのサーカス』(監督:トーマス・アルフレッドソン/2012)みたいな濃厚なものを是非。いま構想中の映画は、どんなものですか?
草野:女性の老いを題材にした話を考えています。
島村:なるほど。じゃあ、スパイは次の次といった形ですかね。
草野:そうですね(笑)。
島村:次回作も楽しみにしています!あの最後に…、ピストルの対義語分かりました。
草野:何ですか?
島村:多分ですけど…、「ストロー」なんじゃないかって。
草野:…何故ですか?
島村:吸うんで。
草野:は〜、ん〜……?
島村:……。あの…しばし、しばしお待ち下さい!
(取材後は、日本酒「初孫」を呑みながら、まったりと雑談タイムへ。)

Bar 太田尻家

住所:東京都世田谷区宮坂3-51-1 海野ビル1F

(小田急線 経堂駅徒歩8分)

営業日:[土~木]19:00~翌1:00(ラストオーダー翌0:30)
定休日:金曜日、最終木曜日

草野なつか監督作品『螺旋銀河』

9月26日(土)よりユーロスペースにてレイトショー公開!ほか全国順次公開!

【Story】
シナリオ学校に通う綾(石坂友里)の原稿が学校課題のラジオドラマに選ばれるが、共同執筆者を立てることが放送の条件だと言われる。嫌がる綾は、偶然言葉を交わした会社の同僚・幸子(澁谷麻美)のおとなしい性格に目をつけ、共同執筆者に仕立て上げようとする。地味な自分とは違う華やかな綾に憧れ近づきたいと思う幸子、美人だが自分本位な性格が災いして人間関係を構築できない綾。対照的な二人の関係による"ラジオドラマの共作"は、やがて彼女達を奇妙な空間へと誘うが・・・。
■公式サイト
http://littlemore.co.jp/rasenginga/
■公式Twitter
https://twitter.com/rasen_ginga
■公開初日舞台挨拶
日時:2015年9月26日(土) 21:10~ ※舞台挨拶後に上映
劇場:ユーロスペース(東京・渋谷)
舞台挨拶登壇者(予定):石坂友里さん、澁谷麻美さん、草野なつか監督
聞き手・構成: 島村和秀
構成・写真: 川邊崇広
『螺旋銀河』
監督:草野なつか

脚本:高橋知由 草野なつか

出演:石坂友里 澁谷麻美 中村邦晃 恩地 徹 石橋征太郎

統括プロデューサー:城内政芳 音楽:上野紘史 撮影:岡山佳弘 照明:田上直人 録音:島津未来介

助監督:滝野弘仁 花山奈津 ヘアメイク:小野寺里紗 整音:黄永昌 編集:鈴尾啓太 草野なつか

制作:今田恭輔 徳元優太 佛木雅彦 助成:第10回シネアスト・オーガニゼーション・大阪(CO2)

日本/2014/カラー/73分/16:9/ステレオ 配給:リトルモア/ヨアケ 宣伝美術:井上嗣也
  • 『草野なつか(くさの・なつか)』
    1985年生まれ、神奈川県大和市出身。
    東海大学文学部文芸創作学科卒業。在学中、当時同学科の特任教授であった映画批評家・山根貞男の講義を受講し、映画に興味を持つ。 卒業後は映画美学校12期フィクションコースに入学し、在籍中から自主映画の現場に制作などで参加。初長編監督作品『螺旋銀河』で、SKIPシティ国際Dシネマ映画祭にてSKIPシティ・アワードと監督賞を受賞し、ニッポン・コネクションではニッポン・ビジョン審査員賞を受賞した。
  • 『島村和秀(しまむら・かずひで)』
    LORDSHOW 舞台芸術部門 「そことここ」 Director、劇作家/演出家、(パフォーマ ンスチ―ム『情熱のフラミンゴ』主宰)、俳人。
    大学在学中より演劇作品を制作。また、サウンドアーティストの浜田洋輔と俳句と環境音を用いたサウンド作品『ヒッチハイク』で2011年AACサウンドパフォーマンス道場入選、2013年千代田芸術祭音部門「さいたまんぞう賞」 受賞。2012年に俳句集『電話を切るのが下手な人』を上梓。初監督作品『あおいちゃんの星座』を「前夜映画祭2014」で発表。