LOAD SHOW

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映画で晩酌〜島村和秀の寄り道インタビュー〜

第4回ゲスト 月永理絵(映画酒場編集室/「映画横丁」編集人)

一口のお酒で三言聞ける。美味しいお酒が道案内する、本日おすすめ映画話。

さすらいの俳人・島村和秀(LOAD SHOWスタッフ)がインタビュアーとなり、様々な映画関係者とその人の行きつけの料理屋で、普段語られることのない“映画の奥の細道”をたずねるインタビュー企画。第4回目のゲストは、「すべては映画のために! アルノー・デプレシャン発言集」(アルノー・デプレシャン著)、「再履修 とっても恥ずかしゼミナール」(万田邦敏著)の編集を手がけ、小雑誌「映画酒場」(映画酒場編集室)や「映画横丁」(Sunborn)の編集人である月永理絵さんにお越し頂きました。神保町にあるBEER PUB「8taps」でお酒を嗜みながら、「映画横丁」の次号についての話や、島村の大胆な新企画提案も!月永さんにまさかの挑戦を仕掛ける!?
(BEER PUB「8taps」。神保町駅から徒歩1分と気軽に行けるのも魅力。)
(お洒落に並べられた酒瓶などを横目に階段を下りていく。)
(ドアの先には、広々とした店内。壁に飾られたレコードジャケットや、モニターには映画が映し出されている。)

-お店を選ぶ基準-

島村:今日は、月永さんが纏う、これまで明かされることのなかった神秘のベールを剥がしにかかろうと思っています!よろしくお願いします。
月永:そんな大層なものは無いですけど、分かりました(笑)。
島村:ところでこちらのお店にはよく来られるんですか?広々としていて、ブリティッシュな装飾がオシャレですね。
月永:常連って程ではないんですけど、映画の宣伝の手伝いだったり、「映画横丁」の営業などもあって、神保町の書店に行くことが多いんです。その帰りに、一杯だけ呑みに、一人でふらっと来たりします。
島村:一人で呑まれるんですね。僕も4年に一回くらいのペースでBARでひとり呑みするんですけど、その度に勝手にテンパってしまって。ひとりで何したらいいのか、そもそも何しに来たのか、飲んでいるときはどこに視線を向けたらいいのか、ひとりでダーツとかしてもいいのか、いやそもそもダーツしたことないけど…みたいな。もう何もかもが全く分からなくなる(笑)。
月永:(笑)。まあ大体、何か読むものが必要ですよね。じっくり本を読むまではいかなくても、私の場合は映画のパンフレットや雑誌を買ってパラパラと読んでたりしますね。
島村:洋画の世界だとBARで一人呑んでても絵になるし、「お隣いいですか?」みたいな展開もあったりしてすごく自然じゃないですか。日本だとなかなかそうはいかない感じがありますよね。
月永:BARの敷居がちょっと高いのかもしれませんね。
島村:月永さんだと様になりますよ!
月永:そうですか?私がお店でひとり呑みするときは、だれも話しかけられないよう「ひとりで完結」オーラを出してます(笑)。
島村:てっきり月永さんは、BARのカウンター席でマスターとハイコンテクストな会話を交わし合う感じだと思っていました(笑)。悲しいことがあった日はマスターが何も言わずに、マティーニを出すみたいな。
月永:そういうの、苦手なんですよ。その点、ビアパブは話し掛けられる事がなくて、好きに呑んでいて下さいって感じがあるので好きです。やっぱり、仕事とかで疲れた後に呑む事が多いので、そういう時に愛想振り撒きたくないというか。私は、話し掛けられると調子良くしてしまうので、1日がそればっかりだと疲れちゃうんですよね。
島村:お店の話が出ましたけど、「映画横丁」を読んでいて、ちょっと渋い感じのお店がお好きなのかなって印象を覚えました。
月永:本当にお店を選ぶ基準って難しいなと思うんですよね。みんなでワイワイ呑む時は、広い居酒屋がいいんですよね。でも一人で行くとなると、BAR程敷居は高くないけど、静かに呑める所を選ぶんです。そういう意味で、ビアパブは結構バランスがいいなって。
(パブの定番ギネス・ビール。夏の暑さも吹き飛ばしてくれる。)
(ギネス・ビールとセットで注文したくなるのが、フィッシュ&チップス。)

-違う角度からの再発見-

島村:月永さんが編集された小雑誌「映画酒場」や「映画横丁」はどちらもお酒が切り口にありますね、それはなぜですか?
月永:「映画横丁」は確かに映画とお酒の関係が軸になるんですけど、「映画酒場」に関してはお酒はそんなに関係ないんですよね(笑)。映画酒場は、私の理想の酒場というイメージから出発した小雑誌なんです。というのも、私は映画って孤独に観るものだと思っているので、凄く良い映画を見ても帰って一人で反芻するだけなんです。
でも、本当はその後、呑みに行って誰かと映画についてお喋りしたい。だから映画を観た後に、お酒を呑みながら好き勝手に喋れる酒場というイメージで作ったのが「映画酒場」で、内容自体とお酒を絡めている訳ではないんですよ。ただ、「映画酒場」を作っていると、やっぱり映画とお酒についても書いてみたいなという風に思えてきて、それでSunbornにお願いして出していただいたのが「映画横丁」だったんです。
島村:なるほど。お酒を切り口に映画にアプローチしてみていかがでしたか?
月永:面白いです。昔観た映画でも、お酒という視点だから気づく発見があるんですよね。あの映画に確かウイスキー出てきたなと思ってもう一度見直すと、「そっか、この場面ってこういう事だったんだ」とかって思ったりして。
島村:どうしてこのシーンでお酒を呑んでいるのか、とかって事ですか?
月永:そうですね。例えばヒッチコックの『ロープ』(1948)って、私はそんなにはまった作品ではなかったんですけど、お酒に注目して見ていたら「ウイスキーをこんな風に呑んで、それがこの場面に繋がっていくんだ」とこれまで気づけなかった発見があって。ヒッチコック作品は特にウイスキー映画として観るとまた違った面白さに出会えますよ。
島村:確かに、映画って色んな角度から観るのも楽しみの一つだったりしますよね。
月永:そうですよね。だから「映画横丁」は、なるべく遊び心を持って、映画の見方をお酒だけに限定しないように編集しました。お酒視点で見ても面白いですよっていう位の軽い気持ちでいるんです。

-「映画キャバクラ」?-

島村:視点を変えて見ると、その映画の見え方がガラッと様変わりして、一段と好きになったりしますよね。奇遇ですけど、僕もつい最近ヒッチコック作品に対しての見え方がガラッと変わる体験をしました。
月永:なんですか?
島村:あの…、それはですね。この間ちょっとワイルドなキャバクラに行ったんです。
月永:……?
島村:いや、でもほんと、たまーに、縁起物みたいな感じで一年に一回くらいしか行かないんですけど。その時、隣にすごくタイプの女の子がついてくれたんです。また、その子が耳元に囁きかけるように話しかけてくれるんで、ついついテンパってしまい「どんな映画観るんですか?」って聞いてしまったんです。いやはやお恥ずかしい。
そしたらその子は僕の耳元で「ヒッチコック…」って。「『鳥』(1963)って…怖くないですか?」って囁かれて。その時の僕の横顔は見ものだったとおもいますよ。それでまあ、ヒッチコックの魅力も増しましたし、その女性もより好きになりました。
月永:(笑)。確かに、意外な映画の趣味を聞いてその人の新しい一面を知るってことはありますよね。島村さんみたいに楽しい話ではないですけど、今まで映画の話を全然してなかった年上の女性が「映画横丁」を読んでくださったみたいで、私に、「実は私も昔はすごい映画好きだったんです。一番好きなのはジョン・カサヴェテスの『フェイシズ』(1968)で」って言われて。大きなお子さんもいらっしゃるし、ふだんはすごく明るい人なのに実はあんな不穏な夫婦映画が好きだったんだって驚いたんですよね。
島村:そういう化学反応はありますよね。僕もキャバクラでついついLOADSHOWの名刺渡しちゃいましたもん(笑)。
月永:それは大分下心がありますよね(笑)。
島村:そうですね…。あ、じゃあ「映画横丁」に対抗して、自分は「映画キャバクラ」を刊行してもいいですか?大分下世話な感じになっちゃいそうですけど。
月永:キャバクラに取材に行くんですか?
島村:そうですね。キャバクラの女の子に好きな映画を聞いて、映画の魅力を語ってもらうみたいな。雑誌の最後にキャバクラマップを載せるんです(笑)。目当ての女の子の好きな映画を予習できるように。
月永:ああ、なるほど。いいんじゃないですか(笑)。
島村:グラビアとかもしっかりあって。コンビニの雑誌棚の隅にあるテープが貼ってあって、立ち読み出来ない部類の雑誌になると思いますが。どうですか、ライバル雑誌として認めていただけませんか?
月永:いや、ちょっとまだ全体像が見えていないので(笑)。
島村:結構僕の中では明確なイメージが出来てるんですけどね。もし作ったら読んで頂けますか?
月永:読みます、読みます(笑)。
島村:表と裏、光と影、天国と地獄みたいな感じで「映画横丁」とセットで考えてもらえたら嬉しいです。
月永:繋がりが見えるかどうかですよね。
島村:ただの片思いになってしまうかもしれませんね(笑)。「映画横丁」の事をこんなに好きなのに、月永さんはまったく振り向いてくれないみたいな。
月永:どっちかというと、キャバクラよりもスナックの方がいいんじゃないですか?
島村:確かに、キャバクラって横丁っていうより歓楽街ですもんね。スナックの方がセットで刊行できそうですね。

-原点はSF映画-

島村:月永さんは、映画を観るようになったキッカケの作品ってなんですか?
月永:小学生の頃に日曜洋画劇場で観た『バック・トゥ・ザ・フューチャー』(1985/監督:ロバート・ゼメキス)に衝撃を受けて、その後『スター・ウォーズ』(監督:ジョージ・ルーカス)の最初の三部作もTVで観て好きになりました。
島村:意外ですね。SFが原点だったんですね。
月永:実は…、今日スター・ウォーズTシャツを着て来ようか凄い悩んだんですよ(笑)。
島村:着てきてほしかった!月永さんって温厚なイメージがあるんですけど、映画を観てイラッとする事もあるんですよね?そういう時はやっぱりお酒飲みながら誰かと話したりするんですか?
月永:そうですね、誰かと話したくなりますね。「あれの何がダメだったか、話しましょう」って。でも、ただ批判をするんじゃなくて、突っ込み合って楽しくしようとします。
それこそ、渥美さん(「映画で晩酌」第2回ゲストの映画評論家・渥美喜子)とかに、「あの映画観ました?」って連絡して、その反応を見て、「ちょっと呑みませんか?」ってお誘いしたりとか。
島村:呑んでいる時って、面白い映画について話すのもいいですけど、イマイチだった映画について話すのも盛り上がったりしますよね。
月永:一度、ある映画の悪口を言う会をやりましょうって集まったことがあるんです。でも、そうやってあらたまった感じで集まると意外と盛り上がらなかったりして。自然な流れで言い合えるのが良いんですよね。
島村:批判するために集まると「分かる、だよねー」で終わっちゃうんですかね。
月永:そうなんです。この前VALERIAの小倉聖子さんと、シネクラブと題して課題映画を観て呑みながら話す会もやったんです。何人か来て頂いて。渥美さんも来てくれました。その時に選んだのは、『バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)』(2014/監督:アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ)と『セッション』(2014/監督:デミアン・チャゼル)だったんです。そしたら擁護する側と批判する側でうまく分かれて白熱しましたね。
島村:盛り上がりそうですね。僕も今度参加してみたいです!

-「映画横丁」次号はワイン特集!?-

島村:「映画横丁」の次のテーマなどは決まっているんですか?
月永:今回はウイスキー特集だったので次はワイン特集を考えています。年内に出せればなと思って動いています。
島村:この前の「映画横丁」はガンガン増刷もしているみたいで、この出版不況の時代に凄いですよね。
月永:いえいえ。まだまだ、反省すべき点も多く、2号目でどうブラシュアップしていくか考えながらやっています。
島村:次はワイン特集ですかぁ!ワインが似合う日本の俳優さんって誰ですかね?
月永:川島なお美さん、石田純一さんとかですかね?そういう、いかにもな感じではなく、一般的なイメージを裏切りたいですけどね。
島村:たしかに日本でワインだと、トレンディーなイメージがありますね。
月永:まだどうなるか分からないですけど、気取ったものにならないように、崩していきたいなというのはあります。
島村:良いですね!映画とワインの新しい見え方が生まれそうです。
月永:ワインってお店で上品にグラスを傾けて飲むだけじゃなく、それこそフランス映画なんかだと、飲んだくれのおじさんが紙袋に入れてラッパ飲みしてるイメージもあるじゃないですか?そういう風にワイン=高級感とするのではなく、なるべくフラットに捉えていきたいです。
島村:楽しみにしています!僕の「映画キャバクラ」も併せて刊行できるように頑張ろうと思います。
(その後、LOAD SHOWのプロデューサーの岡本英之も合流。島村は「映画キャバクラ」を提案するが……)

BEER PUB「8taps」

【住所】:東京都千代田区神田神保町1-6-1 タキイ東京ビル B1F

(地下鉄【神保町駅】A5出口から靖国通り沿いを徒歩1分)

【TEL】: 03-6273-7489
【営業時間】:[月~土] 16:00~24:00 [日・祝] 16:00~23:00
【定休日】:不定休(月に1日)
映画と酒の小雑誌 『映画横丁』創刊号
A5判/本文28ページ
定価:500円+税
ISBN978-4-9906656-3-0 C0074
発行元:株式会社Sunborn
編集人:映画酒場編集室 月永理絵
聞き手・構成: 島村和秀
構成・写真: 川邊崇広
  • 『月永理絵(つきなが・りえ)』
    1982年、青森出身。映画酒場編集室として「映画横丁」編集人をつとめる。出版社勤務の後、現在はフリーランスで書籍や映画パンフレットの編集、また映画公開にあわせた選書フェアの企画などを手がける。2013年に個人冊子「映画酒場」を創刊、現在2号まで発売中。「映画横丁」も、年内に2号目を発行できるよう目下奮闘中。いちばん好きな俳優はクリストファー・ウォーケン。
    https://www.facebook.com/eigasakaba
    Twitterアカウント @ eiga_sakaba
  • 『島村和秀(しまむら・かずひで)』
    埼玉県出身。多摩美術大学在学中に演劇制作を開始。 サウンドアーティストの浜田洋輔氏と共に俳句と環境音を用いたサウンド作品『ヒッチハイク』で2011年AACサウンドパフォーマンス道場入選、2013年千代田芸術祭音部門「さいたまんぞう賞」 受賞。2012年に俳句集『電話を切るのが下手な人』を上梓。現在パフォーマンスチ―ム『情熱のフラミンゴ』を主宰。前夜映画祭2014では自身初監督作『あおいちゃんの星座』を発表。LOAD SHOW 舞台芸術部門 「そことここ」 Director。