LOAD SHOW

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映画で晩酌〜島村和秀の寄り道インタビュー〜第2回ゲスト 渥美喜子〈gojo〉(映画評論家)

一口のお酒で三言聞ける。美味しいお酒が道案内する、本日おすすめ映画話。

さすらいの俳人・島村和秀(LOAD SHOWスタッフ)がインタビュアーとなり、様々な映画関係者とその人の行きつけの料理屋で、普段語られることのない“映画の奥の細道”をたずねるインタビュー企画。第2回目はラブコメ研究会などLOADSHOWでも馴染みが深い映画評論家の渥美喜子〈gojo〉さん行きつけの、東京・大塚にある居酒屋「かるた」に訪れた。収録当時が年末ということもあり2014年の映画を振り返りながら、映画からみる男の傲慢さや、島村の女性に対する間違った幻想を渥美さんがスパッと切る…!?
(店内には所狭しとメニューが貼られている。お酒の種類も豊富で、仕事帰りにふらっと立ち寄って、ついつい呑み過ぎてしまいそう)

「今年に入って私の一番の特徴は、特集映画とか名画座に行く事がパタッと無くなったこと」(渥美)

島村和秀(以下、島村):渥美さん、今日はよろしくお願いします。
渥美喜子(以下、渥美):よろしくお願いします。
島村:渥美さんはお酒結構飲まれるんですか?
渥美:うん、それは否定出来ないな。
島村:お酒のことは、あまり自身のブログに書かれてないですよね?
渥美:うん、周知の事実だからね、今更書いたりはしないよ。
島村:実は今日の取材にあたって、渥美さんがgojo名義で書かれているブログを1年分読んでおさらいしてきたんです。
渥美:自分でも何書いたか覚えてないのに!
島村:すごいたくさん映画観てますよね。
渥美:いや、でも昔に比べたら大分減ったよ。今年に入って私の一番の特徴は、特集映画とか名画座に行く事がパタッと無くなったこと。フィルムセンターのジョン・フォード特集に行ったくらいで。前はそういうのしか殆ど観てなかったのに。
島村:イタリア旅行とかもされてましたよね?ハワイに最近行けてないとか。そういう情報だけは頭に残っていて(笑)。
渥美:(笑)。どんなイメージを持ってるのさ?
島村:気っ風が良い方だなとは感じました(笑)。あと、ブランドもお好きですよね?
渥美:そうだね。ブランドと酒好きは否定しません。
(渥美さんのマイボトル。何やら楽しげなイラストが!知らずに知らずに描かれていたキャラクターもあるとか)

2014年、ベスト映画

渥美:島村くんの今年の映画のベストって何になるの?

   (※取材時は2014年の年末)
島村:まず2014年になって映画館で初めて見た映画が『ゼロ・グラビティ』(監督:アルフォンソ・キュアロン/13年)だったんですけど、なんだか忘れられませんでした。序盤、宇宙にひとり放り出されて、くるくる回るシーンあるじゃないですか。あれって空気抵抗がないから止まることができないんですよね?なんだか、そういう抵抗ゼロの永久的な回転で真っ暗闇の未来に目まぐるしく吸い込まれるってことが現実でもある気がして。なんだかすごい感情移入してしまったんです。深田晃司監督の『ほとりの朔子』(13年)も好きでした。渥美さんはブログであまり触れていませんでしたけど。
渥美:今年は前半に良い映画固まってるね。
島村:渥美さんはブログで『インターステラー』(監督:クリストファー・ノーラン/14年)と比較して『コンタクト』(監督:ロバート・ゼメキス/97年)について言及してましたよね。
渥美:『ゼロ・グラビティ』とか『インターステラー』は『コンタクト』に比べるとちゃんちゃら可笑しいよね。
島村:渥美さんは今年のランキングをつけましたか?
渥美:洋画はまだ考えてない。でも、「NOBODY」にベスト映画考えてくれって言われてて…。邦画は映芸で、もうランキング出したんだけどね。おじさま達からは非難轟々やけど、邦画の一位は黒沢清監督の『Seventh Code』(14年)にしました。
島村:おお!
渥美:君みたいな若者たちは喜んでくれるんだけどね。
島村:おじさんに黒沢清さんは好かれないんですか?
渥美:若者の黒沢映画好きに、物申したいおじさん達がおるから。
島村:なるほど。ちなみに『ほとりの朔子』は何位に入ってるんですか?
渥美:残念ながら入ってないです(笑)。
島村:そうですか…!『ほとりの朔子』のバカンス感って良くないですか?
渥美:う〜ん。私にとってあの映画の最大のあかん所は、夏のバカンスの話なのに全然暑そうじゃないっていうところなんだよね。汗を一滴もかいてない。
島村:僕はむしろそこが好きだったかも…(笑)。あの、スイカ食べ過ぎてお腹痛くなっちゃった時の“夏感”というのか。終始天気の悪い感じが、凄い入りやすかったです。
渥美:ほとりのシーンが、“夢”みたいな感じ出すぎてない?こんな文句言ってたら、ふかっちょ(深田晃司監督)に怒られる(笑)。
島村:(笑)。怒られはしないと思いますけど。
渥美:私は今年の映画で『アメリカン・ハッスル』(監督:デヴィッド・O・ラッセル/13年)が異常に好きかも。詐欺師の話やねんけど、主人公が嘘まみれで、カツラつけてたり、存在自体が嘘みたいなやつが嘘をペラペラ喋るんだけど、段々と嘘をつく事に心を痛めていくみたいな映画でね。私はとにかく、自他ともに認める嘘つきで、嘘つきとしては涙なしでは観れなかったよ。
島村:嘘のカルマってありますものね。
渥美:うん、ある!私のMacに凄い奇跡が起こっていて。Appleの嫌がらせとしか思えないんだけど。ワードで、文章を明朝で書いてたら、嘘っていう単語だけ…これ観て(携帯の写真を見せる)。10年間位使ってるMacが、1年くらい前から漢字で書いても平仮名で書いても「嘘」という文字だけ、なぜかゴシック表記になるの(笑)。
島村:何すかそれ!(笑)。
渥美:Macに嘘つきって事を責められてるんだとおもう。東大卒のエリート君に直してもらおうと思ったんだけど、一時間くらいうちのMacと格闘しても直らなかった。
島村:それはまさに嘘つきの呪いですね。ちなみに、渥美さんの嘘って、大きい嘘なんですか?それとも、何でそんな事をっていう些細なものですか?
渥美:自分が窮地になった時に、ペラペラって状況を乗り越えるためにつく嘘かな(笑)。よう私こんなの思いつくなってくらい出てくる。
島村:三島由紀夫が「不道徳教育講座」のなかで、嘘つく人は頭が良い人だって言っていましたよ。
渥美:あらあら、嬉しい。そういう括りで言うと、『ウルフ・オブ・ウォールストリート』(監督:マーティン・スコセッシ/13年)も面白かった。
島村:面白いですよね。渥美さんはレオナルド・ディカプリオ好きですか?
渥美:昔、出て来たての頃の『バスケットボール・ダイアリーズ』(監督:スコット・カルヴァート/95年)とか『ロミオ+ジュリエット』(監督:バズ・ラーマン/97年)の時の美しさは最高に好きやって。最近はまた別の意味でいいよね。
島村:ディカプリオってすごいインテリで、嘘を使い分けて、人を騙してのし上がる役って結構多かったりするじゃないですか?
渥美:そうね。『華麗なるギャツビー』(監督:バズ・ラーマン/13年)もそうだもんね。
島村:だけど、いつも自分より一枚上手の人が現れて、潰されるじゃないですか?その時のディカプリオの敗北した表情が凄い好きなんです。
渥美:なるほどね。好きな俳優とか他にいる?
島村:ジェフ・ゴールドブラム…。彼がやる役も、頭が凄く良いんだけど、それを上回る人や事が起きて、うらぶれちゃう。嘘がばれたときの子供っぽさが好きなのかもしれません。
渥美:嘘つきにとっては恐ろしいね(笑)。
島村:僕は嘘が下手で。男って嘘つかない美学があったりするじゃないですか?
渥美:わかる。「その正直さ、誰も幸せにしないよ」みたいなね。
島村:まさにそれ(笑)。勝手な解釈なんですけど、女性の嘘ってすごい局面でバラしてきたりしないですか?「今だから言うけどさ」みたいな前置きをつけて。
渥美:ああー、それはあるね。
島村:あれ、犯罪なんじゃないかって思うことがあるんですよ。「この間、皆でボーリングに行ったっていったけど、実はね、その日、本当は…」みたいな。
渥美:どんな思いをしたのよ(笑)。

「ここは私の理想の居酒屋やねん、ここは、ひとりでも好きでよく来る」(渥美)

(お店自慢の串焼きが運ばれる。タレの美味さがお肉を一層引き立たせる!)
(新鮮なお刺身も焼酎とともに堪能)
島村:ねぎま、めちゃくちゃ美味い!肉感がめっちゃある。
渥美:ここは私の理想の居酒屋やねん。大塚ってなかなか友達が飲みに来てくれないけど。ここは、ひとりでも好きでよく来るから。いつもど素っぴんでパジャマみたいな格好で来るから、この間珍しくちゃんとした格好で来たら女将に誰か気づいてもらえなくて(笑)。
島村:ライフスタイルに組み込まれてるんですね!渥美さんは和食的なお店が好きなんですか?
渥美:そうね、まあ枝豆があればどこでも。普段から結構飲むの?
島村:結構飲みます。でも若い人はノンアルコールの人も多いですよね?
渥美:最近の若者は飲めないよね、ほんっとに。5、6年前まではフィルムセンターとかアテネフランセとかで友達と会って、そのまま飲みに行ったりが毎日やったけど、最近は映画終わった後に、じゃあお茶しようとか言われることがおおくて、「え、お茶いらんし」みたいな。
島村:確かに多いですよね…えっと、脱線しちゃいました(笑)。今年のベスト映画は他どんな感じですか?
渥美:今年は、ベスト1が『アメリカン・ハッスル』(監督:デヴィッド・O・ラッセル/13年)か『ビフォア・ミッドナイト』(監督:リチャード・リンクレイター/13年)で悩ましい。
島村:同じくリチャード・リンクレイター監督の『6才のボクが、大人になるまで。』(14年)も結構良かったってブログで書かれてましたよね。
渥美:うん。変な監督だけど。オバマも第1位に選んでたし。
島村:あ、そうなんですね。オバマも選ぶんだ。
渥美:あ、今年はね、LOAD SHOWでラブコメ研究会をやっておきながら、ラブコメが不作で。唯一、アメリカのラブコメで面白かったのが『なんちゃって家族』(監督:ローソン・マーシャル・サーバー/13年)っていう映画だったかな。
島村:疑似家族がマリファナを移送する話でしたよね?未見なんですけど。
渥美:あんまりラブコメは見ない?
島村:メロドラマの方が好きです。この間、パトリス・ルコント監督の『暮れ逢い』(14年)を観たんですが、面白かったです。メロドラマの文学っぽい感じが好きなんだと思います。ラブコメって女性がメインというイメージがあります。
渥美:まあ、そうね。アメリカのラブコメっていうと女優の方がラブコメの女王とか言われたりするけど。あんまり男性でね、ラブコメ俳優みたいな事は無いかもね。
島村:「ラブコメで見る男像」ってどのようなものですか?
渥美:男の方がぐずぐず悩んでる方が面白かったりするけどね。
島村:ヒュー・グラントはどうですか?
渥美:ヒュー・グラント苦手やねん。イギリス人俳優とかイギリスの監督が苦手で。
島村:ウディ・アレン監督は好きですよ。
渥美:あそこまでいくとね。でも、『(500)日のサマー』(監督:マーク・ウェブ/09年)とか『モテキ』(監督:大根仁/11年)とか、男に都合良すぎじゃね、みたいなさ。
島村:『(500)日のサマー』は確かに男のロマンというか、夢みたいなのが強いですよね。『モテキ』も都合の良いところはある気がしますけど、こういう人いるよなって印象もありました。
渥美:出てくる女がみんな男にとって都合良すぎるやん。
島村:本当はそんな女性いないんだよって事なんですね。よく、強い女性のイメージで美人編集長って出てくるじゃないですか?ああいう人って本当にいないんですかね?仕事がバリバリできるんだけど実は寂しくて、仕事出来ない後輩とうっかり寝ちゃってみたいな。
渥美:それが現実にあるかどうかは知らんけどね。
島村:何か憧れるんですよね。綺麗な編集長。

「『おとぎ話みたい』はその男たちに死ねって感じが全開に出てて、良かった」(渥美)

島村:邦画だとブログで『トワイライト ささらさや』(監督:深川栄洋/14年)が面白かったって書かれていましたよね。
渥美:ああ、あの監督はね出て来た頃はすごい良かったんやけど、一時期『白夜光』(10年)とか『神様のカルテ』(11年)とか、おもろなくなかったなって思ってたんだけど。この間久しぶりに観に行ったら、いいやんって。
島村:『おとぎ話みたい』(監督:山戸結希/14年)はどうでした?
渥美:あの子は、あんま映画を撮る能力があるとは思わへんけども、こんなに盛り上がったのは周りのおっさんが盛り上げたからやん。『おとぎ話みたい』はその男たちに死ねって感じが全開に出てて、良かったね。
島村:自主映画は観られるますか?
渥美:最近はほんと観なくなったな。まあ、友達のとかだったら観るけれども。前までは、私と柳下毅一郎くらいしか観てないんじゃないかみたいな映画を、最近は観に行くパワー無くなったなあ。『ルパン三世』(監督:北村龍平/14年)とか観れなかったよ。前だったら絶対に行ってたのにな。
島村:邦画の大作だと『寄生獣』(監督:山崎貴/14年)面白かったです。
渥美:うん。『永遠の0』(監督:山崎貴/13年)も一応観てる。
島村:渥美さんはBLものはあまり観ないんですか?
渥美:BLはあんま興味ないかな。まあ、王道やけど漫画「BANANA FISH」(作者:吉田秋生)の英二とアッシュくらいは良いけどね。
島村:僕、「BANANA FISH」の良さもちょっとわかんないです…すいません!
渥美:あの、「友達なのかできてんのか」みたいな微妙な感じがええんやん!
島村:なる、ほど…。ちょっと、わからないかもです。
渥美:まあでも、女は自分がレズビアンでなくても、手つないだり、キスしたりできるけど男はちょっとガード固いよな。
島村:じゃあ、逆になんですけど、僕はこういう女性に対して意地の悪い行動をしてしまうっていう話なんですけど。ファスナーが背中にある、ドレスではなくてこう、ゆとりがあるみたいな…そういう女性はどうですか?
渥美:えっ!ごめん、具体的になにひとつ伝わってこなかった(笑)。
島村:六本木とかで背中に大きなボタンをつけた服を着ている人とかいるじゃないですか?
渥美:うんうん、いるね。
島村:そういう人を見かける度に、「はいはいはい」と察してしまうんですよね。だってその服を脱ぐためには、誰か別の人がいなくてはいけないから…。
渥美:ちょっとそれ、妄想が過ぎるよ!単にその服を「可愛いな」と思って着てるだけだよ(笑)。
島村:いえいえ、僕はわかっています。あれは性のメタファーです!だってひとりで脱げるわけないですもん。
渥美:いやいや、手を回せば余裕やって!それは単に可愛いと思って着てるだけやから、そんな風に見てるなら迷惑やで!
島村:えー!そうだったんですか!僕はそういう女性と接する度に、いやらしい感じで接していました。今夜君のボタンを外すのは…。みたいな。
渥美:26歳ってそんなんなの!?
島村:渥美さんも気をつけてくださいね。
渥美:ああ、でかいファスナーが背中にある服着ないように?知らんわ!(笑)。
(その後、取材スタッフ各人の恋愛相談をしていたら、LOADSHOWのプロデューサー・岡本英之が登場)
岡本英之(以下、岡本):これただの飲み会じゃないですか!?
渥美:おお!いやだって、普通にコイバナしてたからね。
島村:いやいやそんなことないですよ!一旦、映画の話に戻しましょ!
渥美:まだ振り返って3月くらいで止まってるけどね(笑)。
岡本:全然振り返れてないじゃないですか?
一同:(笑)
渥美:まあでも面白かったから次も呼んでや。
島村:もちろん、ぜひ!毎年恒例企画にしていきたいです。来年もまたよろしくお願いします!
(懇切丁寧にお店のメニューの説明をして下さった店員さん)
居酒屋「かるた」

営業時間:17:00~24:00 L.O/23:30 日曜営業

定休日:土曜日

住所:東京都豊島区北大塚2-11-4

JR大塚駅北口より4分

座席数:52席 (座敷36席、カウンター4席、テーブル12席)

  • 『渥美喜子/gojo』
    1979年生まれ大阪出身、立教大学社会学部社会学科卒。2005年より自身のサイト「gojo」にて映画日記を執筆、2010年には蓮實重彦、黒沢清『東京から 現代アメリカ映画談議』(青土社)の出版記念トークイベントにてインタビュアーをつとめた。「森﨑東党宣言!」(インスクリプト)に寄稿。 gojogojo.comで映画日記を更新中。
  • 『島村和秀(しまむら・かずひで)』
    LORDSHOW 舞台芸術部門 「そことここ」 Director、劇作家/演出家、(パフォーマ ンスチ―ム『情熱のフラミンゴ』主宰)、俳人。
    大学在学中より演劇作品を制作。また、サウンドアーティストの浜田洋輔と俳句と環境音を用いたサウンド作品『ヒッチハイク』で2011年AACサウンドパフォーマンス道場入選、2013年千代田芸術祭音部門「さいたまんぞう賞」 受賞。2012年に俳句集『電話を切るのが下手な人』を上梓。初監督作品『あおいちゃんの星座』を「前夜映画祭2014」で発表。